新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.582 契約書に契約期間が記入されていません
投稿者 S.Yさん 投稿日時 2008.6. 4 PM 8:10
先日は『NO.579』でのご丁寧なアドバイスを本当にありがとうございました。
成る程、そういう対処方法(会話録音作戦)があるのかと大変感心しましたが、まだ不安もあり実行に移せていません。
ちなみに、相手の販売店はY新聞なのですが、やはり京都から兵庫への移動というのはありえないのでしょうか?
それと、移動したことになってるお兄ちゃんからいただいた契約書には2年という契約期間は書かれていません。
下記の通り、Y新聞の購読契約をします。という、契約書の記載の下に何年何月から何年何月まで何ヶ月と記入するマスがあるのですが、空欄なのです。
このような状況でも結果は変わらないでしょうか?
度々で申し訳ありませんが、ご助言をお願いします。
回答者 ゲン
『ちなみに、相手の販売店はY新聞なのですが、やはり京都から兵庫への移動というのはありえないのでしょうか?』ということやが、新聞社と販売店は、同じ組織で一体と考えて勘違している一般の人が結構おられる。
新聞社が独立した企業で株式会社になっているというのは分かると思うが、販売店もそれぞれ、独立した株式会社、有限会社という企業形態になっている場合が多い。
その両者は、業務委託契約書が交わされている関係の別企業同士でしかない。
新聞社と販売店の関係は、問屋と小売店の関係に例えれば分かりやすいのやないかと思う。
問屋である新聞社は、小売り業者の販売店に新聞を売るまでが仕事ということになっている。新聞社が公表している販売部数というのは、その販売店に売っている部数のことを指す。実際の読者数がそれというわけやない。
その新聞社から買った新聞を販売店が、購読者に売り込む。
因みに、その販売店の依頼を受けた拡張員が新聞の勧誘営業をしているわけや。少なくとも表向きはそういうことになっとる。実際には、新聞社が関与しとるがな。
よく購読者の中には、新聞社と購読契約を交わしているように考える方がおられるが、新聞社は一般読者との契約には一切関わっていない。そういうスタンスをとっている。
せやから、新聞購読契約は、特定の新聞販売店とその購読者間だけで有効な売買契約ということになる。
当然、Y新聞の販売店間もそれぞれ独立した別企業やから、ごく限られた地域での交流はあるやろうが、他府県のそれとなると、普通は何の関係もないケースが圧倒的に多い。
新聞には宅配制度というのがあって、それぞれの新聞社の専属販売店、もしくは複数の新聞を扱う合配店と呼ばれる委託販売店などは、各新聞社の店舗毎にその営業区域が決めている。
つまり、Y新聞などの新聞販売店は限られた区域に1店舗しか存在せんわけや。
もっとも、その区域については決められた範囲というものがなく、その販売店の規模次第ということになる。
一般的な新聞販売店の規模は、その取り扱い部数が2000部〜3000部やと言われとる。実際にもその程度の規模の販売店が最も多い。
この業界では、1万部以上の部数を「万紙」と呼び、それを扱う所は大規模販売店として認知されとる。それが、10万部を越す部数を扱うような販売店となると全国でもまれな存在ということになる。
いくら大きい販売店やと言うても、その程度までが限度ということや。
それにしたところで、その部数を有する範囲というのも、それほど広範囲やないというのは分かって貰えるのやないかな。
もっとも、その部数を有する販売店の区域は、その地域での新聞のシェア、人口密度によっても大きく異なるから、どの程度の広さとは言えんがな。
あんたが京都のどこに住まわれておられるのかは分からんが、京都市内だけでもY新聞の販売店は45店舗ほどある。
当然やが、それぞれの販売店は独立していて、それぞれ経営者が存在している。京都市内だけを例にとっても、一つの販売店グループが仕切っとるということはあり得ん話やと言える。
もっとも、販売店には、どこの地域でも販売店協力会というのがあるから、それなりの組織、つながりはあるが、それにしても、その販売店の従業員を同系列の他店に移動させて働かさせるということは普通は考えられん。
もちろん、同じY新聞の他の販売店に勤めるということはあり得る。しかし、その場合は、元のY新聞の販売店を正式に辞め、新たに再就職という形をとらなできんことや。
同じ京都市内であってもそうやのに、遠く離れた兵庫県へ単なるグループ店内の移動というのは考えにくいということになる。そんな巨大なグループ店の存在は知らん。
ただ、例外というのは何にでもあるから、前回の回答でも『もっとも、その兵庫県の販売店を親戚縁者などの身内が経営しているというのなら、そこがグループ会社という可能性もあるかも知れん』とは言うた。
もちろん、『普通では考えにくい話やと思う』とも言うてるがな。また、そういう可能性が考えられるだけで、実際にはそういったケースをワシも知らんし、サイトへの情報にもない。
これが地方紙というのなら、一部には、直属の販売会社を組織しとる所もあるから、そのエリア内であれば、そういうこともあるやろうが、Y新聞のような全国紙には、今のところ、まだその動きはない。
その販売員のお兄ちゃんとやらが、あんたにそう言うたのは、同じY新聞に勤めているということもあって、辞めて勤め直したという説明より、単に移動したとした方が言いやすかっただけやという気がする。
ひょっとしたら、その京都の販売店は、その販売員のお兄ちゃんが兵庫県の他のY新聞に勤めていることも知らん可能も考えられる。
それがあるから、『現在は、その販売店とは何の関係もないはずや』とも言うたわけや。業界の人間として、そう考えるのが自然やということでな。
いずれにしても、その販売員のお兄ちゃんが、京都のその販売店に舞い戻ってくる可能性は限りなく低いやろうと思う。絶対にないとまでは断言できんがな。
『契約書には2年という契約期間は書かれていません』というような契約書があるとは、普通は考えられんのやが、それが確かなら、そういう契約書は無効になる。
『下記の通り、Y新聞の購読契約をします。という、契約書の記載の下に何年何月から何年何月まで何ヶ月と記入するマスがあるのですが、空欄なのです』というやから、そのとおりなのやろうな。
そんなことはまずないやろうと思うて、前回『しかも、あんたが受け取った契約書には『2年契約の半年無料サービス』という文言が、どこかに書いてあるはずやと思う』と言うたわけや。
さすがに、そこまでひどいとは考えもせんかったさかいな。まったく話にもならんな。
契約は、当事者の申込みと承諾の合致によって成立するという大原則があり、新聞購読契約の場合、その契約期間を明記するのは、その承諾の合致の要因の一つになる。絶対になくてはならんものや。
普通、販売店は、新規契約の場合、その契約期間の記載のない契約書を契約と認めることはまずない。これは、法律云々というより業界の常識や。
おそらく、販売店の方の契約書にはその期間の記載があるのやろうと思う。その販売員の独断で、あんたの契約書にはその期間を書かず、販売店の方にはその期間を書き入れたということのようや。
前回の相談文の中に『半年無料なのは2年契約のうちの半年であって、後一年半の契約が残っている』と、集金に来た人間がご主人に言うてたことで、それが分かる。
こういうケースでは、その販売店は、こちらの契約書にはその期間の記載があるから解約には応じられんと言うかも知れんが、法的には、それは通らん話ということになる。
これも、契約書の原則ということになるが、契約書は、双方同じ内容のものを持つというのがある。
一方が違う契約は、一方が拒否をすれば無効になるから、それを主張できる。
ただ、そうなると、その契約書の内容を確認するために、その販売店の人間が来たときにそれを指摘せんかったということが問題にされる。
それを隠して、その販売員にそそのかされるまま、嘘の申告をしたのは拙かったし、突っ込まれる要因にはなると思う。
その販売店にすれば、そのとき、そのことさえ分かっていたら、その契約を販売店の側で解除して、その6ヶ月分の新聞を配達することもなかったと言えるわけやしな。
事実、その販売店の動きを見ていたら、そうしていた可能性の方が高そうに思う。その販売員の信用はほとんどなかったのやないかと考えた方が自然やというのもな。
さらに言えば、その記載がないのは、確かに契約書の要件を満たしてないのやが、あんたは、その販売員にそそのかされたとはいえ、その契約書の内容を、その販売店の人間に認めてしもうとるということがある。
例え、それがどんな内容の契約であっても、公序良俗に違反してない限り、一旦、それと認めてしまうと有効と判断されることが多い。それも、契約の成立要件としてある。
総合的に考えて、その契約書の不備を持ち出して戦うのはええが、それやと、いかにも今更ということになり、あんたも対応に苦慮するのやないかと思う。
あんたの正当性、整合性という点でな。
これが、まだ配達が開始されていない状況やったら、今気がついたという言い分も通るかも知れんがな。
『成る程、そういう対処方法(会話録音作戦)があるのかと大変感心しましたが、まだ不安もあり実行に移せていません』というのが、どういう不安かは分からんが、ワシとしては、前回の『NO.576』でアドバイスしたように、その販売員の言質を取って、販売店と交渉した方が、よほど整合性があってええと思うけどな。
今回は、さらに「契約書に契約期間の記入がないけど、どういうことなの?」と聞くのもええと思う。その答えも言質となる可能性が高いさかいな。
何でも、そうやが、後出しは相手の不信感を買い、結局は、その話し合いでも不利な状況になることが多い。少なくとも、ワシの経験ではそうや。
同じことを言うのでも、先に言うとくのと、後から言うのとでは、えらい違いになるさかいな。
今回は、やはり、あんたの主張の整合性を高めるためにも、その販売員の言質を取ってから交渉することを勧める。
法律上は、その契約書の不備をついて、今後の契約を解除に持っていくことは可能やとは思う。今気がついたというのも苦しい言い訳やが、それでも押し通せば、実際に契約書の不備もあることやから戦うことはできるさかいな。
ただ、相手の販売店は、それではおそらく納得せん可能性の方が高いやろな。そのために事前に訪れ、あんたに契約の不備がないかを確認しとるわけやさかいな。
その場合は『会話録音作戦』と比べて揉める要素は大きいと思う。
ワシからのアドバイスとしては、前回のものを勧めるが、どうされるかは、あんたの判断次第ということになる。良う考えて決められたらええ。
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