新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.589 新聞販売店で勤務する際のアドバイスをお願いします
投稿者 H.Hさん 投稿日時 2008.6.15 PM 8:50
はじめまして。いつも拡張員ゲンさんの嘆きを拝見しておもしろく読んでおります。また、世間にはこんな世界もあるんだなぁと興味深く思っております。
私は40歳半ばの中高年です。30歳後半で家族を抱えているのにかかわらず、会社が売買されてしまい働く場所がなくなりました。
学卒で少しは才能もあると、うぬぼれていたものですから、簿記やら英語やら労務士などの資格をとって、なんとかなるだろうと思っていましたが、不況やら、雇われる身として根性出してどんなことがあっても我慢しなくてはならないところを我慢ができなくて、挙げ句の果てに次から次へとアルバイトを重ねてしまいました。
たまたま正社員になれる職場もありましたが、うつ病の上司をあてがわれたり、産休要員程度にしか扱われなかったりと運もなく、いまは無職の身であります。
結局、コネなく、元の業界にも事情があって戻るわけにいかず、得られた知識はなかなか実務がなくて売り物になりません。
この数年間は苦労したにも拘わらず金になることはありませんでした。結果として汚れた履歴書程度しか残りませんでした。
こうなりますと新聞専業店とか廃品回収などスポーツ新聞に求人が載っているようなところに自然と目が行くものです。
本日近くのA新聞販売店に面接に行きました。
その所長さんは元は高校中退で、ふるさとで自営業をしておったそうですが倒産させてしまい、30歳近くで何も知らない新聞の世界に入って10年ほど修行を積んだあと、当時の所長さんの許しを得て独立を果たし、それから20年で直営店4店舗、弟子店3店舗を構えています。
いまや100名を超える方を雇っていて、この地域では一番の店とのことです。更に近郊の専売店の権利を3千万円ほどで購入して、もっとグループを大きくしたいという野望を持ったもうすぐ60歳の方です。
入社前に会社案内をDVDで30分ほど見せられました。
社員になると、朝刊配達は午前2時から午前6時まで(誤配対策、掃除などの後処理も含む)午前の営業が午前11時から午後1時。夕刊配達が午後2時から夜8時(集金、勧誘営業を含む)そうです。
非常に長い拘束時間であります。
これですと一日の労働時間が8時間を超えてしまうのですが、ガッツだしてやらないと給料が上がらないから、これは従業員の生活のためでもあるそうです。
配達、集金は社員扱い、午前11時からと夜の営業は別会社に所属させて業務委託の個人事業主扱いにしていております。この方法は合法的だそうです。
会社案内のDVDの最後には、会社の繁栄は社員の犠牲の上には成り立たないと謳ってありました。
所長さんは、たたき上げで苦労してここまで来た人ですし、実績もあって、人生勝ち組のようですし、自分とは器も違うのはわかります。
新聞はいろんな要因があって、購読者が減ってきているが、やる気のない他店を統合すれば、自分の組織は拡大できるから、そこにビジネスチャンスが転がっていると言う方でした。
私は自分の性格が不器用で世渡りがうまくないのです。雇われるからには雇う側の要求にあわせなくてはなりません。
最初は無我夢中ですから指示や命令に沿えても、次第に反発する気持ちを抑えられなくなるのではないか、結局長く勤務できないのではと思っています。
ただ、あのくらいガッツがないと今の世間は渡っていくことができないんだろうなぁとも思います。
面接の最中も私に対して笑顔を絶やさず、営業のときに大切なのは、新聞の中身を売るのではなくて、自分を売って信用を相手から信用を得るようにと諭してくれました。
また、道で知らない人に会ってもちゃんと挨拶すれば、いつか自分の成績に反映されるとおっしゃっていたことはすごいなと思いました。
まず体を動かして、ガッツだせば人の1.5倍の時間は働ける、だけどそれだけ汗しても成績は十分上がらない。
同じ時間働いて効率的に売上げつくることを考えよ。それには、お客さんや世間の人と世間話をしたり、愚痴を聞いてあげたりして、心の扉を普段から開いてあげることが大切だとおっしゃておりました。
基本的なことなんですけれど、なかなか自分にはできないことです。
ゲンさん、専業店も結構厳しいんですね。午前中も営業に回らないと集金や売上げにアップにつながらないのでしょうか。
タウンワークの広告では朝刊配達後は午前中はフリーと書いてあったんで、午前中にも仕事があるとは知りませんでした。他店もこんなもんでしょうか。
一代で大きくしたので、かなり無理してんではないでしょうか。
実は私の親も一代で会社を起こしたのですが、結局最後は金に飲み込まれるようなかんじで人生を終えました。ちょっと私の親が会社を経営していたころの雰囲気というかオーラに似ていたものですから、なんとなく危険な感じがしております。
私に何かアドバイスをお願いします。
この年で裸一貫からとなると、すごくたいへんなのが身に染みてきます。
回答者 ゲン
あんたは、その販売店に勤めることを決められたのかな。決められたのやったら頑張るしかないと思う。
そのためのアドバイスをする。
まず、その販売店やが、あんたの話を聞く限り、ワシの印象としてはええのやないかと思う。
会社案内にDVDを見せるというのは良く聞く話やから、取り立てて珍しいというほどでもないが、それに厳しさも説明されとるというのは評価できる。
一般的に、求人の面接時というのは、たいていその会社のええところしか話さんのが普通やさかいな。
それに、その所長の経営姿勢というか理念はワシには良う分かる。
『面接の最中も私に対して笑顔を絶やさず、営業のときに大切なのは、新聞の中身を売るのではなくて、自分を売って信用を相手から信用を得るようにと諭してくれました』
というのは、このサイトの『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座』 の中でワシが言うてることと符号するさかいな。
『また、道で知らない人に会ってもちゃんと挨拶すれば、いつか自分の成績に反映されるとおっしゃっていたことはすごいなと思いました』というのも、『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座 第1章 新聞営業の基本的な考え方 人間関係構築編 その8 挨拶の大切さを知れ』に、その詳しい解説があるから良ければ見てしい。
その所長の言われることの意味がより分かりやすいと思う。
『同じ時間働いて効率的に売上げつくることを考えよ。それには、お客さんや世間の人と世間話をしたり、愚痴を聞いてあげたりして、心の扉を普段から開いてあげることが大切だとおっしゃておりました』というのも、同じく『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座 第1章 新聞営業の基本的な考え方 人間関係構築編 その7 雑談から入れ』にそれがある。
ワシと同意見やからというわけでもないが、新聞営業の基本的な理念は熟知されておられる人というのは良く分かるから、その人のもとで、この仕事をするというのなら、まず間違いはないと思う。
あんたのやる気次第では、何とかなると思う。この業界は、そのやる気さえあれば『この年で裸一貫からとなると、すごくたいへんなのが身に染みてきます』というのは、それほど気にする必要はない。
気休めになるかどうかは分からんが、あんたよりはるかに酷い境遇で成功した人も実際におられるさかいな。その人が新聞販売店の仕事を始めたのは、あんたとほぼ同年配の頃やった。
旧メルマガ『第28回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■一枚のお助けカード』および『第29回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■勝ち組、拡張員?』 にその事例がある。
この人は、結局、成功されて、販売店の経営者になられた。その所長さんと同じやが、この世界には、その程度の成功譚というのは結構ある。
もちろん、そういう例は少ないし、生半可な甘い考えでできることやないのは確かや。皆さん、それ相当の努力と苦労をされておられる。
ただ、厳しいが、その可能性のある仕事やというのは間違いないと思う。
『基本的なことなんですけれど、なかなか自分にはできないことです』と考えておられると厳しいかも知れんな。
成功されておられる方々は、例外なくそんな迷いを持たず頑張っておられる。何でもそうやが、迷いがあると、それに打ち込む姿勢にも影響してくるから難しいと言うしかない。
『私は自分の性格が不器用で世渡りがうまくないのです。雇われるからには雇う側の要求にあわせなくてはなりません』というのが、分かっておられるのなら、常にそのことを心しとく必要があるやろうな。
『最初は無我夢中ですから指示や命令に沿えても、次第に反発する気持ちを抑えられなくなるのではないか、結局長く勤務できないのではと思っています』というのも、同じや。
これは、どこで働くことになっても、あんたには永久について回ることや。自分自身でそれと分かっておられるのなら、ご自身で克服するしかないと思う。
ただ、多かれ少なかれ、世の中は自分の意のままにならんことの方が多いのやから、反発しても損やで。変なプライドを捨てて受け流せば結構楽になると考えるがな。
『ゲンさん、専業店も結構厳しいんですね。午前中も営業に回らないと集金や売上げにアップにつながらないのでしょうか』というのは、新聞販売店のように競争の激しい世界ではそうなるな。
少なくとも、経営者はそう考え、従業員にもそれを要求すると思う。
『タウンワークの広告では朝刊配達後は午前中はフリーと書いてあったんで、午前中にも仕事があるとは知りませんでした。他店もこんなもんでしょうか』ということやけど、それはその販売店次第やないかな。
のんびりできる所もあれば、厳しい所もある。いろいろやとしか言いようがない。
別に新聞販売店は、こうあらねばならないという決まり事というのも、新聞をきちんと宅配すること以外には特にないしな。
『実は私の親も一代で会社を起こしたのですが、結局最後は金に飲み込まれるようなかんじで人生を終えました。ちょっと私の親が会社を経営していたころの雰囲気というかオーラに似ていたものですから、なんとなく危険な感じがしております』
という危惧がまったくないとは言えんが、事、この新聞販売店に限っては、その店舗を増やし規模を拡大することで経営が行き詰まるというのは考えにくいと思う。
行き詰まるのは、むしろ、縮小して購読者数が減ることや。店舗を増やすというのは、当然、購読者を増やすということやさかい、この業界に関して言えば、マイナスの要素は少ない。
『新聞はいろんな要因があって、購読者が減ってきているが、やる気のない他店を統合すれば、自分の組織は拡大できるから、そこにビジネスチャンスが転がっていると言う方でした』というその所長の考え方は間違ってないと思う。
現在、確かに部数減などの要因により販売店の数が減少傾向にあるのは確かやが、その反面、その所長の言われるように、周りの販売店を吸収併合して伸びる販売店も目立ってきとる。
ワシが良く言うてることに、ピンチはチャンスというのがある。悪い状況が必ずしも悪い結果を伴うとは限らん。捉えようによれば、十分チャンスになるということや。
結局、人の成否を分ける要因は、そう考えられるかどうか、そういうところにあるのやないかと思う。
最後に、このQ&Aに『NO.46 新聞店の販売スタッフとして勤務するにあたり心構え等を教えて下さい』 というのがあり、その中で、新聞販売店で仕事する上での心得を言うたものがあるので、抜粋しとく。
まず、仕事に関してやけど、専業の仕事は、配達、集金、営業とあり、これが基本業務や。個別に初心者向けの心構えとして説明する。
@配達について
紙受けと言うて、朝刊をトラックで運んで来るのを受け取るのも、専業の仕事や。時間は深夜1時〜3時の間。店によって時間はまちまちやが、毎日ほぼ同時刻に配達される。
新人の内は、この時間に遅れないこと。出来れば、先輩より5〜10分程度早く待つようにする。逆に5分でも遅かったら印象が全く違うものになる。
何でも最初が肝心で、やる気があるなと印象づけるのと、ルーズやなと印象づけるのとでは、えらい違いや。しかも、その境は僅か10分程度のことなんや。心しといた方がええ。
販売所の従業員の中には、いつも遅くて紙受けが終わってからしか起きて来ん先輩がおると、良うぼやいとる人間がおるが、もし、そういう人間がおっても放っておいたらええ。
ぼやいても、あんたが得をすることは何もない。それよりも、そういう人間がおればチャンスとばかり真面目に文句を言わず仕事をすることや。
心配せんでも、どんな世界でも見てるものは必ずおる。腐る必要はない。そこで、愚痴やぼやきを言うたら、ぶち壊しや。見てる人間かて、不平不満を並べる人間なんか相手にせんもんやからな。あんたが逆の立場でも分かるやろ。
ルーズでさぼる人間がおれば、自分が目立つくらいに思うてたらええ。おそらく、あんたがこれくらいは普通やろと考える程度が目立つ世界なんや。
配達区域は当然やが、なるべく早く覚えるようにする。そのためには、順路帳、業界で「あんちょこ」と言うんやが、それを覚えることや。
順路帳の見方が一通り分かったら、昼間の空いた時間に、空で回ってみることや。そうすれば、配達順路を覚えるのも早いと思う。その時、目印になるようなものをチェックしといたら尚ええ。
この時、配達区域の客、特に配達する家の客に出会ったら、軽くでええから会釈しとくことや。
これは、後で「営業について」で言うが、この癖をつけとると何かと得する。せやから、と言うて、何も声をかけんでもええ。客から、声をかけられたら別やがな。
配達時、特に朝は、客と出会(でくわ)したら必ず「おはようございます」と大きな声をかける。言われた方だけやなく、言うた方も気持ちええもんや。この癖は絶対つける。
客だけやなく、未配達の家の人間にでも挨拶しといて損はない。これも、さっきの会釈と同じで営業に役立つ。
A集金について
集金も大事な業務や。せやけど、この集金業務を嫌がる専業が多い。集金の時、客に嫌みを言われることが良くあるらしい。
しかし、これも考えようで、客の話を良う聞くことで、客とのコミュニケーションを図るつもりやと、それほど苦にもならんやろと思う。
客から嫌みや不都合があると言われた場合は、そのことを取り敢えず謝っておく。ここでその不都合は前任者が悪いなどと言い訳したらあかん。最初の内は、自分はまだ新米なんやから、そんな前のことを言われてもと思いがちやが、そんな考えは捨てた方がええ。
例え、そのミスが前任者の責任であっても言い訳をすれば、悪く見られるのはあんたや。客にとったら、あんたであろうが前任者であろうが同じ新聞の販売店なんやからな。言い訳は客の気分を害する。
せやから、そんな場合は、主任なり店長なりにそのことを伝えて、どう対処するか指示を仰げばええ。最初の内は、問題はなるべく上司に振っといた方が無難や。
客とのコミュニケーションはそのまま人間関係の構築になる。当然、専業の営業には役立つ。苦情も親身に聞けば、客からは必ず気に入られる。文句言われるのもええもんやと考えれば、苦にならんやろと思う。
金払いの悪い客や帰宅時間が遅かったり、留守がちやったりする客がおって、集金が思うようにならんとぼやく人間も結構おる。
せやけど、そんな連中の話を聞いとると、そんな客やからしゃあないと言う。そういう客がおったら、そんな客を少なくすればええことやと思うんやがな。
集金しにくい客は銀行振り込みにして貰うとか、個別に客の都合を聞き、その客に会わせた集金日、集金時間を設定するようにしたらええ。ぼやく人間は大抵、自分のペースや都合で回っとる場合が多い。客側のことを考えんからそうなる。
まあ、確かに中にはどうしようもない客もおるがな。せやけど、今はあんたはそんな心配までせんでもええ。さっきも言うたように、難しい客は教えを乞うという姿勢で上司に振ることや。
B営業について
これが、ワシの一番得意分野やけど、ここで、全部それを説明することは無理やから、考え方だけや。
配達と集金のところで言うたように、日頃から客とのコミュニケーションをとるようにしといたら、それほど難しいことやない。
改めて営業だけで回ろうとすると、慣れん内は緊張してどうしても上手く行かん。専業の営業は止め押しと引っ越し客確保が主や。
止め押しは集金日に調整して話すとしやすいと思う。客は、改めての営業というのはどうしても構えてしまうから、初心者では厳しい。
日頃から何でもええから雑談が出来るようにコミュニケーションが取れとれば簡単や。客もそれほど嫌がることもないはずやと思う。
引っ越し客は、日頃から空き屋チェックをしとく。最初の内は、配達範囲の空き屋を手帳なんかに書き込むようにすることや。新築工事中の家もな。営業するときにそこを確認するようにする。
この空き屋チェックに限らず、手帳なんかに思いついたこと、その日の出来事など何でもええから、常に書き込む癖をつけることや。データ、情報が増えて損をすることはない。
正直言うて最初から、あまり詰め込み過ぎてもどうかと思うから、知識程度に知っておいて、自分がすぐにでも取り入れられると思うことだけをすればええと思う。
自慢やないが、このサイトをじっくり読んで内容を理解出来、やり方がマスター出来れば、営業員としたら、そこそこのレベルにはなれると思う。
以上や。
あんたが、まだ、その販売店で働くことを決めてないのやったら、これらのことを良う考えて決められたらええ。
そして、やる限りは厳しいのは当たり前という意識は最低持ってないと、続けるだけで難儀する仕事なのは間違いないと思うよ。
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