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NO.606 新聞販売店に有給休暇はないのですか?


投稿者 匿名希望 さん 新聞販売店従業員  投稿日時 2008.7.24 PM 7:53 


はじめまして。質問があります。有給休暇の事なのですが、ずばり、ないのですか?

販売店に勤めてまだ5ヶ月なので与えられないのはわかりますが、もう何年も勤務している人は気にしていないみたいです。

有給休暇がないのは当たり前みたいな答えが返って来ました。

この販売店はやめたくないのですが。本社とかに問い合わせしてもよろしいのですか?

それとも有給休暇はないのですか?


回答者 ゲン


『有給休暇の事なのですが、ずばり、ないのですか?』ということやが、新聞販売店の従業員にも法的には、その有給休暇を取る権利はある。

労働基準法第39条で、雇用者は労働者が6ヶ月以上働き、その就業日の8割以上出勤した場合には、6ヶ月経過後には、その後の1年間に10日間の有給休暇を与えなければならないと決められている。

これを年次有給休暇という。一般で有給休暇と言うてるものや。                      

その10日は連続で取っても分けて取っても構わんとされとる。基本的には労働者はいつでも自由に有給休暇をとることができる。       

但し、業務に重大な支障が生じる場合に限り振り替えらさせられることもあるとされとる。これを、時季変更権という。

時季変更権というのは、その日を他に振り替えてくれと言えるだけで、その年次有給休暇自体を与えんというのは違法ということになる。
 
つまり、これを理由に、労働者がこの年次有給休暇を請求しても、まったくその要望に応えない、無視、あるいは拒否するということは許されんということや。

この年次有給休暇を得る権利を形成権と言い、労働者側の一方的な意思表示で当然に成立するとされているもので、使用者が許可や承認をして成立するような性質のものやない。

法律上も堂々と取れる権利なのやが、なかなかそれを認める新聞販売店はないようや。

あんたが言われとることが、この業界に多い実状やろうと思う。

昔からの慣習で、販売店の従業員に、この業界には休みはないという考えが定着しとるのと、『もう何年も勤務している人は気にしていないみたいです』ということで『有給休暇がないのは当たり前みたいな答えが返って来ました』とあきらめとるわけや。

これを正常な状態に戻すのは、その販売店の従業員全員がその意志を示す必要があるのやが、あんたの所ではそれは難しそうやな。

正当な権利は、本来、正当に請求できなあかんものや。

しかし、この業界でそれをすると間違いなく、その販売店はあんたを排除しにかかるやろうと思う。

実際、そうされて退職に追い込まれたというケースもある。ただ、それでもあきらめずに裁判で争って勝訴したという人もおられるがな。

この業界は、契約者と新聞販売店との裁判での争いはほとんどないが、従業員と販売店との労働争議というのは結構ある。

残念やが、この業界で慣習となっていることに異論を挟み、正論を唱えて正当な権利を得ようとするのなら、そこまでの覚悟を決めなあかんケースが多いということや。

『この販売店はやめたくないのですが』ということなら、そういうぎりぎりの状況になるまで我慢するしかないと思う。

そのぎりぎりというのは、その人によるから一概には言えんが、事、この年次有給休暇について納得できんのなら、今後2年間は、その権利を保有できるから、そのときに辞めてもええという腹が決まっとれば、堂々とその請求をして労働争議に持ち込めばええ。

たいていは勝てるはずや。

その今後2年というのは、労働者が年次有給休暇権を行使せんかったら時効で消滅する期間やから、そう言うたわけや。

『本社とかに問い合わせしてもよろしいのですか?』というのが新聞社ということなら、止めといた方がええと思う。

表向き、新聞社と販売店は新聞の業務委託契約書を交わしとるだけの別企業、別会社やさかい、言うても取り合うことはまずないはずや。

また、組織的にも新聞社には販売店の就業にまでは表立って口出しはできんようになっとるというのもある。

おそらく、それを言うても現状が好転する可能性は少なく、逆に「あんたの所の従業員がこんなことを言うてたで」と言われるのがオチやと思う。それで睨まれるだけバカをみる。

労働環境の改善は、そこの労働者が立ち上がらんことにはどうにもならんことや。たった一人だけやと、その経営者もその一人を排除すれば終いやと考えるだけやろうしな。

あんたには、あまりええアドバイスとは言えんかったかも知れんが、それが本当のところやろうと思う。


この件について意見が寄せられたので紹介させて頂く。


追記 新聞販売店の有給休暇について

投稿者 T.Y さん 元専業 投稿日時 2008.8.10  PM 7:58


ゲンさんが回答されているとおり、有給休暇は法的に認められている権利です。しかし、国家が法的な権利として労働者に対して保障しているからといって、黙っていて与えられるものではありません。
 
従業員に休みを与えるとなれば、代替要員の手配や、休暇分の給与支払など、経営者にとって利益が減ることにつながります。当然、休みなど与えたくないのが本心です。極端なことをいうと、無給であっても休暇を与えたくないものです。 
 
私も過去に新聞販売店をふくめ、多くのアルバイトをこなしてきました。採用に始まり、有給休暇や労働時間、給与支払から果ては解雇に至るまで「これって、労働法に照らして、おかしい。」ということがたくさんありました。

特に、「アルバイトに有給休暇は存在しない」ということが慣習、常識とされています。 

法律と常識。さて、どちらが正しいのでしょうか? 法律が正しいと思うならば、できることはいくつかあります。

一番お金がかからない方法として、労働基準監督署への申告があります。 ただし、労基署もお役所です。抽象的な「休みをくれない」とか「長時間労働」といってもまともに取り合ってくれません。せいぜい、話を聞いてくれるのがオチです。

ある程度は、具体的に「○月×日から3日間の有給休暇取得を申し出たが、業務多忙を理由に時季変更などもなしに却下された。」と証拠となる、申請書面(恐らく新聞屋に定型書式は存在しないから、勝手に作って突きつける)やタイムカード(のコピー)、給与明細などを持っていくと効果的です。 

ただし、労働者の当然の権利である労基署への申告をされただけで逆上する経営者もいるでしょう。解雇されることもありえます。 

闘う気があるのなら、証拠書類を揃えておきましょう。最終的に司法に委ねることになったときも、スムーズに事が運びます。


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