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NO.607 ライトノベル作家志望の者です
投稿者 黄昏日曜さん 投稿日時 2008.7.30 AM 10:26
突然メールを差し上げて申し訳ありません。
私はライトノベル作家志望で、新人賞による投稿をしている者です。
ライトノベルというのは、所謂ファンタジー系やジュブナイル系のジャンルを中心にした小説のことを指します。
先日、とある実業家の方とお話をする機会があり、そこで私は、新人賞を通じてプロの小説家になりたいと実業家の方に申し上げましたところ、「出版社業界全体が、新人賞の応募からの入選より、業界内部のコネから新人作家の採用を重視する」というお話を聞きました。
それは本当のことなのでしょうか?
もし、ハカセ様の方で知っている事があったら、教えて頂けないでしょうか?
ライトノベル業界の事についても何かご存知の事があるなら、それも教えて頂けると助かります。
回答者 ハカセ
『私はライトノベル作家志望で、新人賞による投稿をしている者です』ということですが、それはそれで続けられたらよろしいのではないでしょうか。
私も若い頃、今から30年ほど昔になりますが、作家を目指してせっせと新人賞に応募していた時期がありました。
何度か最終選考まで残ったこともありましたが、結局は力足らずで挫折しました。
その頃から『業界内部のコネから新人作家の採用を重視する』という話は良く聞きました。
実際、そういうこともあったのではないかと思っています。新人賞の応募作品の中にもそういうものは当然あったでしょうしね。
ライトノベルという言い方は私たちの頃にはなく、その頃で言えば若い人向けのSF小説ということにでもなるのでしょうが、そういう分野は昔から人気がありましたから応募作品も多かったと記憶しています。
おそらく今もそうなのだと思います。
そうだとすると、その応募作を読むというのは選考する方としては大変な労力と時間を要することになります。
その選別のための読み方には技術的なものがあって、それで篩(ふる)いにかけるわけですけど、業界内部のコネからの応募作品だと、一応のレベルにあるのが普通ですから、第一次、第二次選考あたりまでなら、ほぼ読む必要もないということで選考側にとっても有り難いことなわけです。
また、私のようにしつこく応募していて、毎回、ある程度のレベルを維持していると評価された応募者についても同じような扱いをしていたようです。
その反面、残酷なようですが、まったく読まれず廃棄されるという作品も数多くあったと聞き及びます。もちろん、主催者側は、そんなことはなくすべて目を通しているとは言うでしょうけどね。
先ほど、選別のための読み方に技術的なものがあると言いましたが、それは梗概(あらすじ)と書き出しにその大きなウェートが占められています。
たいていの応募規定には、1、2ページほどの梗概の添付を義務つけているものと思いますが、その内容次第で選考者が、その本編を読むに値するかどうかを決めるわけです。
その作品を募集する出版社の規模や応募作品の数にもよりますが、通常、一人の選考者が任される作品数は200〜300程度と言われています。
第一次の選考者はたいていその出版社の社員の方ですから、それだけが仕事ではありませんので、なるべく時間をかけたくないのが本音だと思います。
梗概というのは、そのためにあると言っても過言ではありません。それを書くのは、ある意味、本編以上に重要で難しいと言えます。
ちなみに、応募される方がよく陥りやすい間違いに、最終選考者の作家の顔ぶれに合わせた作品を書こうとする方がおられるようですが、それはあまり意味がありません。
最終選考にまで残るためには、その他の選考者に認められなくてはならないわけですからね。
それに、運良く最終選考作に残ったとしても、その作家と同じような傾向の作品だと、より厳しい目で審査される分、不利になっても得にはならないと考えます。
その次に重要視されるのが、書き出しの数行ですね。
本屋で手に取って読み始めて最初の数行が面白くなかったら読み進む気が起きませんよね。それと同じことだと思ってください。
これは、プロでも多くの作家の方が苦労するところです。
応募作は読まれない、と考えて、それをいかに読ませるかが応募者の腕の見せどころということになるわけです。間違っても、無理して最後まで読んで貰えるだろうと楽観的に考えるべきではありません。
出版社が求めているのは即戦力の作家であって、これからトレーニングを積めばものになるという人材ではないということです。
コネがあるというのは、その点だけでもかなり有利になるわけです。
当然ですが、そのコネがある人も、ただ人間的な付き合いだけでそうするわけではありません。
箸にも棒にもかからない作品をコネで押しつけたら、結局はその推薦者自身が恥じをかくわけですから、それ相応のレベルでないとだめなわけです。
単にこの世界でコネといっても、他の世界のそれとはまったく意味合いの違うものだと理解してください。
それ以外で作家になる方法として、出版社への作品の持ち込みというのがあります。
その実業家の方が言われたという『業界内部のコネから新人作家の採用を重視する』というのは、その持ち込みの際のコネのことだと思います。
はっきり言って、持ち込みにコネがない場合は、新人賞に応募するより読まれる確率は低いと考えていた方がいいでしょうね。
なぜ出版社に新人賞というものがあるのかと言えば、それで賞を取ったこと自体が大きな宣伝効果を呼び売り出せるからなのです。
つまり、それと同じくらい、またそれ以上に売れる要素を秘めていれば、最終的にはその出版社の判断次第ですが作家デビューさせることもあるようです。
しかし、その場合は、その作家志望の人に、それなりの知名度がある場合がほとんどだと聞き及びます。
作家になれば大金が稼げると考えておられる一般の人は多いと思いますが、実際には、そんな甘いものではありません。
そこそこ名の売れたプロ作家でも食べていくのがやっと、というのは珍しいことではありません。
作家の平均年収は300万円程度ということです。一般のサラリーマンよりもはるかに下回ります。
もちろん、それは平均ですからそれ以下という人も相当数、存在します。
売れずに廃業するか、それでもいつか売れると信じて頑張るかのいずれかになります。
一発当たって100万部売れるという大ヒットにでもなれば、数千万円単位の儲けになることもあります。
売れない作家はそれを夢見るわけです。物書きが水商売に似ていると言われる所以がそこにあります。
それでも、ちょっと昔の出版業界のように隆盛を誇り、華やかであった頃は、そういうのも結構あったと聞きます。
現在、活躍している有名作家の多くが、そういった世代の人たちという事実もありますしね。
どこかの新人賞を取った無名の若者が一躍売れっ子作家になるというのも、それほど珍しくなかった時代ですから。
今は、その頃と比べると出版業界全体がかなり冷え込んだ状況にあると言えます。
単にどこかの新人賞を取ったという程度では大した宣伝にはならない、売れないというのが出版業界の常識ということのようです。
現在、出版業界は、有名人、著名人に出版依頼が集中しているのが現状です。または売れる話題性のある人ですね。
それでしか売れないと考える出版社もあるくらいです。
新しい才能を発掘して作家を育てるという出版社も昔に比べれば激減しています。
私が、個人的に懇意にさせて頂いているある出版社の人に聞いた話ですと、新人賞などで発掘した新人作家で利益に結びつくようになるのは、そこそこ売れる作品が5、6作ほど続いた後からだということです。
それまでは、その作家を売り込むためにかけた宣伝費すら回収できないというのが現実のようです。
ただ、私はライトノベルがどうなのかは詳しく知りませんが、人気のある分野で頭角を現すためには、やはり作品に卓越したものが求められると思います。
あなたが、どの程度のレベルにあるのか私には分かりませんから、これ以上のアドバイスはできませんが、誰にも負けないくらい面白いものが書けるという自信があるのでしたら、冒頭でも言いましたように、新人賞の応募を続けられた方がよろしいかと思います。
コネを得るというのは、それがない人にとっては難しいですからね。
夢に燃えるということは素晴らしいことだと思いますので、とことん納得されるまで頑張ってみてください。
私のような者で良ければ、いつでも相談は受けますので。
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