新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.617 新聞業界のモラルと待遇の向上について
投稿者 H.Sさん 新聞販売店専業員 東京在住 投稿日時 2008.8.26 PM 10:45
お久しぶりです。H.Sです。
No606の有給休暇の質問に大変興味深く拝読させて頂き、僭越ながら私もゲン様とハカセ様お二人に、ご意見、質問させて頂きたくと思いカキさせてもらいます。
貴サイトのコンセプトが、より良い新聞業界の模索があるならば、そこに従事される人々の社会的地位の向上は、とりもなおさず質の向上を齎(もたら)し、それがひいては新聞業界の世間から見られる評判の向上になるのではないかと、浅はかな私は考えるのですが、それについてどのようにお思いになられるでしょうか?
年次有給休暇の件にしてもそうですが、販売店によっては、事業所に五人以上の従業員がいるにも関わらず、社会保険にも厚生年金にも加入しない会社もあります。
労働条件の善し悪しのみで、そこに従事する人々のモラルが左右されるとは思いたくないのですが、それを否定できないことも(つまり今の状況を維持したいと考えることによる自己抑制)あながちないとは言えない話であると思います。
新聞業界のヒエラルキー(身分階層制)の底辺を支える人々のモラルの向上、そして待遇の向上(少なくとも労働法に則ること)は、斜陽産業と懸念される新聞業界の、今以上の延命(発展とはとても言えない気がします)に資するのではないかと思います。
最低限のモラルとも言える法律すら守れぬ業界の体質を一笑に付すか、或いは今だからこそその指摘が必要なのか、ゲン様ハカセ様のお二人の考えをお聞かせ下されば幸甚であります。
よろしくお願い申し上げます。
回答者 ゲン
あんたの言う『社会的地位の向上』とは、一般の会社並に有給休暇が得られ、福利厚生などの労働環境の改善があればという意味やとは思うが、それで従業員の質が上がり『新聞業界の世間から見られる評判の向上になるのではないか』というのは、どうかなという気がする。
まず、一般の人は新聞販売店に有給休暇のある所が少ないという事実を知っている人は少ないと思う。一般の事業所と同じく有給休暇くらいはあるものと普通は考えるもんや。
福利厚生については、あんたが指摘するとおり『事業所に五人以上の従業員がいるにも関わらず、社会保険にも厚生年金にも加入しない会社もあります』という販売店も確かにあるが、今は、株式会社という形態の新聞販売店も相当数増えていて、社会保険や厚生年金、雇用保険に加入するのも当たり前という風潮になりつつある。
その意味では、昔に比べればかなり向上しとると言えるが、それについても一般の人はあまり知らんやろうと思う。
つまり、そういうことが評価の対象にはなっていないということや。
ただ、ワシの知る限り、有給休暇の有無は別にして、福利厚生の充実した販売店は従業員も意欲的やし、地域の評判も高い傾向にあると言えるのは確かやがな。
一般の人の新聞販売店に対する評価というのは、その地域や販売店毎でもかなり違いがある。
「新聞屋さん」と好意的な所もあれば「新聞屋か」と蔑まれがちな所もある。いろいろや。
つまり、一般の人にとって新聞販売店での労働条件が改善されることが、即、そのまま評判の向上になるとは限らんということや。
従業員のモラルや質の問題にしても、多少はそういうことも関係してくるやろうが、それよりも、その経営者の考え方により多くのウェートがかかっていると思う。
突き詰めれば、その経営者が客に対して、どのように考え接しているかで、そこの従業員の質まで決定され、それによって彼らと接することになる一般の評価も決まるということや。
きちんとした経営者には、きちんとした従業員が集まり、ええ加減な経営者のもとには、ええ加減な従業員しか集まらんさかいな。
ええ加減な従業員しか集まらん新聞販売店の評判が上がることは絶対にないわな。
単に評判ということだけで言えば、その新聞販売店が自ら決定しとると言うても過言やないということや。
『最低限のモラルとも言える法律すら守れぬ業界の体質を一笑に付すか、或いは今だからこそその指摘が必要なのか』
『業界の体質を一笑に付す』のは簡単やが、それやとそれだけで終わり意味がない。
『指摘が必要』なのは確かやが、これも外部からやと単なる批判に終わるだけのことになる。
労働条件の改善については『NO.606 新聞販売店に有給休暇はないのですか?』の中で、『労働環境の改善は、そこの労働者が立ち上がらんことにはどうにもならんことや』と言うたが、そのとおりやと思う。
多くの業種で労働者がその権利や待遇を勝ち取ったのは、その思いが結束した成果でもある。
それと同じように、新聞販売店の従業員も劣悪な環境を改善させるには団結するしかないと考えるがな。
劣悪な環境に甘んじるというのは、それをしてこなかった従業員自身にも責任のあることやと思う。少しきついかも知れんがな。
法律云々を摘要しようにも肝心の労働者が立ち上がらな誰も手なんか差し伸べられへんさかいな。単にその境遇を嘆いとるだけやとどうしようもないということや。
自らの運命は自ら切り開くしかない。
ただ、そうすることで、即、一般の人の新聞販売店に対する評価を向上させられると考えるのは早計かも知れんがな。
人には、それぞれ刷り込まれた思い、観念というのがある。
新聞販売店は所詮こんな所やと考えとる人間に、ええ意味でその評価を変えさせるのは至難の業やと思う。
それが長い期間に渡って培われた思い込みなら尚更や。それを払拭させるには、その期間以上の長い時を要する。
評判の向上というのはそういうもんや。こういう事をしましたからと言うて、一朝一夕に劇的に変化するものでもない。
ただ、そのための一歩として、まずは自らの境遇は自らの力で変えるというのはええことやとは思う。
他力本願、あなた任せ、あるいは誰かが悪いと批判するだけでは何も変わらんのが世の中やさかいな。
これが、ワシとハカセの共通した考えやと思うて貰うてええ。
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