新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.624 応じなければならないのでしょうか?


投稿者 Y.Sさん  投稿日時 2008.9.10 AM 2:56 


相談させていただきたい件があります。

平成14年7月に平成20年10月から24ヶ月の新聞購読契約書(3×10cmの紙)を結んだことをM新聞販売所より、平成20年9月9日に配達員が自宅に訪問して通知があり、その当時の契約書を妻においていきました。

平成20年10月からの新聞配達と請求を受けることが示唆されます。

契約の解除を先方にその場で妻より申し合わせたところ、契約日より日時が過ぎており解除はできないとの返事をもらったようです。

なお、その当時の契約者はすでに他界しており、また当時契約を交わした住所(平成14年当時)とは違い現在(平成20年)は同一地区内ですが他の住所に引越しをしております。

この場合、先方の言うとおり解約は認められず、新聞を受け取りかつ請求に応じなければならないのでしょうか?

購読契約書は販売店用を受け取りました。

新聞(セット・朝・夕) 
月額購読料1部 円 部

の項目において新聞内容および金額は未記入でした。「縛り」という判が押されています。

よろしくご教示のほどお願いいたします。


回答者 ゲン


ハカセから、すでに死亡されている契約者とあなた方ご夫婦と、どんなご関係にある方なのかメールで問い合わせがあったと思うが、返答がないので、この質問文だけの内容で答えさせて頂く。

通常、『その当時の契約者はすでに他界』していて、『他の住所に引越し』しているというのであれば、たいていの新聞販売店ならあきらめることの方が多い。

今回の場合は、他界された契約者が誰で、現在住まれておられる家族構成によって、大きな違いが生じると思われる。

当時の契約者が、あなた方ご夫婦のご両親のいずれかで、そのどちらか一方と現在お住まいの場合は、その方に対してのみ、その販売店は契約の続行を申し入れることが可能になると考えられる。

民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)というのがある。

それには、

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。 

とある。

つまり、夫婦の一方が日常の家事に関する事で契約を交わした場合は、他の一方はそれによって生じた債務について連帯して責任を負う、というものや。

あなた方ご夫婦が、そのどちらかの方と同居されておられる場合、その契約は有効と判断されるということになる。

当サイトの法律顧問をして頂いている今村英治先生の見解では、「新聞購読は日常家事債務に該当する」ということなので、ワシらもこのサイトではそれを支持している。

但し、新聞購読費についての判例は今のところまだないから、確実とまでは言い切れんがな。

今回の場合が、そのケースとして回答する。

『契約日より日時が過ぎており解除はできないとの返事をもらったようです』というのは、クーリング・オフの期限のことを言うてるのやろうと思う。

その契約を結ぶ際に不法行為などがない場合、クーリング・オフの契約日から8日間がすぎれば、その契約は確定することになる。

『当時契約を交わした住所(平成14年当時)とは違い現在(平成20年)は同一地区内ですが他の住所に引越しをしております』というのは、その販売店の配達区域内(営業範囲内)であれば、どこに引っ越しをされようと、その契約が生きることに変わりはない。

この場合の契約解除希望は、自己事由での契約解除ということになり、そうするにはその販売店と話し合って決めるしかない。多くの場合、ペナルティとしての解約違約金を支払ってということになる。

無条件の契約解除には応じることはないやろうが、解約違約金を支払ってということなら、たいていは応じるはずや。

その際、解約違約金はどの程度かと良く聞かれるが、それはその販売店毎でも違い、業界としての決まりというものが一切ないから、あくまでも当事者同士で話し合って決めるしかないことや。

まずは、その販売店の意向を聞いて、それで納得すればそうすればええし、納得できなければ納得するまで話し合うしかない。

ただ、今回のケースは実際の契約者が亡くなられておられるわけやから、そのことを訴えれば、それほど無理な要求をすることなく話がつくのやないかと思うがな。

ごくまれに、一切の話し合いに応じないという販売店もあるが、その場合は、あんたの考えや意志を明確にして別途、相談してくれたらええ。それぞれで回答が違うてくるし、方法もいろいろあるさかいな。

別のケースとして、死亡されている契約者があなた方ご夫婦のいずれかの親御さんで、独身やったという場合について考えてみる。

その場合も普通は、契約者の死亡ということで大半の販売店はあきらめるもんやが、中には、法定相続人ということを理由に、債務としての新聞購読契約を引き継げと要求してくるケースもあると聞く。

新聞購読契約が債務という判断は法的には可能やと思うが、いかんせんそれについての判例が見当たらんさかい、確実なことは言えん。

「新聞購読契約は債務には当たらん」と言うて、その契約を拒否すれば、その新聞販売店は、裁判に訴えんことには、その正当性を主張できんということになる。

たいていの販売店は、こういうケースで裁判に訴えるようなことはせん。せやからこそ、その判例がないわけやしな。

但し、通告したということで平気で新聞を投函してくるということは考えられる。

それに対して、あんたの方は、嫌なら「新聞を投函しても、その契約は当方とは関係ないから購読料の支払いには一切応じられん」と言うしかないと思う。

そこまで言えば、あきらめるか、話し合いに応じるとは思うのやが、それでも拒否し投函するというのなら他の手段を考えるしかない。それについても別途、相談してくれたらええ。

『購読契約書は販売店用を受け取りました』というのは、確かにその販売店のミスであり不備やが、それについても、あんた方の立場により大きく違うてくる。

民法第761条に該当される方と同居されていれば、それは単なるミスということで契約そのものをひっくり返すのは難しいと思われる。

『新聞内容および金額は未記入でした』というのは、一般の契約書からすれば契約書の体をなしてないから無効やと思われるかも知れんが、事、新聞購読契約書に限って言えば、それがなくても不備に問われない可能性の方が高いと思う。

新聞購読契約書というのは、その販売店のメインの新聞(業界では本紙と呼ぶ)のみに適用される契約書なわけや。

通常の新聞販売店には、他の業界紙や機関紙などの新聞を何種類か扱っているのが普通やが、契約書があるのは、その販売店の本紙のみということになっている。

もっと言えば、そのM新聞の販売店のような専属販売店は、その本紙を売ることを条件に存在しとると言うても過言やない。裏を返せば、その販売店は本紙以外の新聞を売り込む必要もないということになる。

便宜的にスポーツ紙にも契約書を渡す販売店もあるということやが、その場合は、当然のようにその金額の明記はしとるということや。

もっとも、それもまれなケースで、ほとんどの場合、本紙以外の購読契約書はないと考えてええと思う。

もっと分かりやすく言えば、新聞購読契約書というのはある特定の値段が確定されている商品(本紙)のみの契約書ということや。

ちなみにM新聞であんたの住所なら、朝夕セット版の3925円がその契約金額で確定しとるということになる。

特に全国紙であるM新聞の購読価格は、1994年4月以降、14年間に渡り変動していないということがある。

それからしても、新聞の購読価格は周知の事実と認定される可能性の方が高いと思われる。一般常識ということでな。また、価格を調べるのもその気になれば簡単なことでもあるしな。

それならなぜ、

新聞(セット・朝・夕) 
月額購読料1部 円 部

という部分があるのかということになるが、これは、その種類の選択のためにあると考えられる。

セットというのは、朝夕刊。朝というのは朝刊のみ。夕というのは夕刊のみ、ということになる。契約者が朝刊のみ、夕刊のみの選択をした場合は、当然、値段は違うものになる。

そのために「新聞(セット・朝・夕)」のマーク欄があり、その下の「月額購読料1部 円 部」というのは、その金額を書き込むためにあると考えられる。

それらに何も記入されていない場合は、あんたの地域の新聞価格であるセット価格、1ヶ月3925円で確定しとるという意味になる。少なくても業界での考え方はそれや。

但し、これについても法的に争われたことはなくその判例もないから、それが100%通用するとは限らんがな。

もっとも、それ以前にそこが空欄になっていれば、あんたのように誤解される人もおられるわけやから、販売店としては記入はしといた方が良かったという気はする。たいていの販売店なら、マークし金額の記入もあるはずやけどな。

それでも契約書の体をなしてないとして、その不備を追求することは可能かも知れんが、この場合も契約当事者(契約者と婚姻関係にある者も含む)が、それを指摘するのは無理があると思われる。

なぜなら、その契約書を渡された時点で、それはすぐ確認できたことやさかいな。

それを6年も経って持ち出したというのは、どう考えても契約履行間近になって契約解除の理由を探したという風にしか受け取られんのやないかと思う。

さらに言えば、この契約時には、それ相当のサービス品も受け取っているはずやから、その授受があった時点で契約者は納得していたと考えられる。

サービス品を渡す最大の目的は、それによりその契約を納得したと証明するためやさかいな。当たり前やが、そのときに納得してなければ誰もそんなサービス品は受け取らんはずやという考え方や。

加えて、クーリング・オフの期間の8日間という期間が設けられとるのも、その間にその契約を良く考え直しなさいよということやなんやさかいな。その期間がすぎれば、その契約を納得したということになり解約は難しくなるということでな。

しかし、これが契約当事者やなく、法定相続人ということを理由に、債務としての新聞購読契約を引き継げと要求された場合は微妙やと思う。

先にも言うたが、まず、この契約を債務として認めさせなあかんということになる。それをあんたが拒否すれば、法的機関、つまり裁判の場でその判断を委ねるしかないわけや。

せやから、あんたとしては「新聞購読契約は債務には当たらん。それを債務とするなら、裁判所の判断を持ってきてくれ」とでも言えばええ。

その結果は何とも言えんが、過去の例からもそういう裁判を起こした販売店は皆無やさかい、それであきらめる公算は大やないかとは思う。

『「縛り」という判が押されています』というのは業界内だけで通用する隠語で、要するに、その契約は2年契約にしましたという印のようなものや。

この縛りというのは1年以上の契約の場合に使われることが多い。これについては、契約者には何の関係もないから気にする必要はない。

結論として、その契約に対して、あんた方の立場が当事者になるか、そうでないかによって大きく違うということや。

このまま、その契約を認めて購読されることにしたのなら、それでもええが、もし、異を唱えられるのなら、ハカセから問い合わせのあった内容を教えて貰わんことには、これ以上のアドバイスは難しいと思う。


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