新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.639 ちゃんと払いたいのですが…
投稿者 Sさん 投稿日時 2008.10.30 PM 3:33
もうK新聞を受け取り続けて8年になります。
自分で販売店に頼みに行ったのですが、契約書ではなく住所と名前だけをメモ用紙に記入して「明日から」と言われお店を後にしてきました。
その後仕事や出産で忙しく、ずっと銀行引き落としだと勘違いしていました。
最近ふと思い出し、通帳を確認したところ、引き落としされていないことが判明しましたが、8年も経っているので請求額が怖くてどうすべきか迷っています。
何ヶ月分までさかのぼって請求されるんでしょうか?
回答者 ゲン
あんたの話からすると、その新聞販売店は8年間も集金に来てなかったことになるわけやな。
ほんま、驚いたというか、あきれた新聞販売店やで。俄(にわか)には、とても信じがたい話やけど、実際にそういうことがあるんやな。
『何ヶ月分までさかのぼって請求されるんでしょうか?』ということやけど、法律的には過去2年間の新聞代だけの支払いでええ。
新聞購読の場合、2年間、その代金を請求しない場合は時効になるとされている。
民法173条1項に、
生産者、卸売り商人又は小売り商人が売却した産物又は商品の対価に係る債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
とあるのがその時効の条文や。
ただ、この時効というのは自然消滅するのではなく、「時効の援用」というて「その新聞代は時効になっているので支払うことはできません」という意思表示が必要になる。
具体的には、内容証明郵便などの文書で出すのが一番ええが、普通は「それは時効やで」と言えばたいていあきらめるから、そこまでする必要もないやろうがな。
その時効を主張するつもりなら、絶対に言うたらあかん言葉、または気をつけあかんことがある。
それは「その支払いは、もう少し待ってくれ」、「何月何日には支払う」と言うか、あるいは「取りあえず1ヶ月分だけでも払っておくから」と言って実際にその支払いに応じてしまうことや。
それをしてしまうと、その債権、つまり新聞代の支払いすべてを認めてしまうことになり、時効の中断ということになって、振り出しになる。
余談やが、金融屋は時効になった債権でも、その言質を取ったり一部の入金をさせたりして、その時効を消滅させようとするさかいな。
例え時効にかかった債権でも「時効の援用」をしてへんかったら、いつまででも「返済してくれ」とは言えるわけや。
金融屋の中には10年以上経過していて、あきらかに時効にかかっている債権でも平気で請求し続ける所もあると聞くさかいな。
素人の言葉尻や揚げ足を取って、その支払いをさせるためにな。
それらを十分、頭にいれて貰うた上で、今からその交渉のアドバイスをする。
もう分かったと思うが、その交渉が終わるまでは、時効の主張を考えておられるのなら、例え1ヶ月分にしろ支払いは一切せんことや。
極端な話、あんたが先月分の支払いのつもりで支払ったものでも、その8年前の支払いに充当させることは現時点では可能やさかいな。
そうなると、その時効の権利も失いかねんことになる。
もっとも、あんたが「支払うべきものは支払わなあかん」と言うのなら、それはそれでええ。それを止めとけとまでは言えんさかいな。
それに、もともと、そのつもりで銀行にその分の金も入れていたのやろうしな。当然、その分の金も銀行に残ってなあかんことになる。
そう考えれば、特段、あんたに不都合もないやろうと思う。
ただ『8年も経っているので請求額が怖くて』というのは分かる。
それを単純に計算すると、
朝夕セット版の新聞代として、3925円×8年分96ヶ月=376800円という途方もない金額になるからやと思う。
時効の権利を主張したとしても、
3925円×最近2年分24ヶ月=94200円は、請求されれば法律的には支払わなあかんことになる。
それにしても一括となると考える額やわな。
ただ、8年間も請求してないということは、単なる処理ミスということも考えられるが、他の何らかの理由で集金済みとして処理されている可能性もある。
その何らかの理由というのも、ワシにはある程度、予想はできるが確かなことやないので、ここでその説明をするのは控えたいと思う。
憶測でヘタに情報を与えると却って混乱を誘うだけやさかいな。
いずれにしても、単なる処理ミスなのか、入金処理されとるのかを確かめるには、その不払いのことは何も言わず単に「新聞の購読を止めたい」と、その販売店に言うてみることや。
購読を止めること自体は、契約書のない契約のようやから、明日からでも止めるのは何の支障もない。
契約というのは何も契約書がなくても、お互いの意志が合致すれば成立する。但し、期間を取り決めた契約書がない場合は、いつでも一方の意志だけで契約解除できると法律で定められている。
そのいつでも契約解除されないために期間の設定された契約書があるわけやさかいな。逆に言えば、期間の取り決めのない契約はいつでも破棄できるわけや。
せやから、「新聞の購読を止めたい」とだけ言えば、それである程度分かるはずやと思う。
「分かりました」と、その販売店が素直に認めて何も言うて来なければ、その支払いは済んでいるものとして処理されとるやろうから、それですべて終わる。
当たり前やが、請求もされん新聞代を無理に払う必要はないさかいな。
ただ、その時点で単なる処理ミスによる不払いの新聞代の存在が分かり、それを支払ってくれと言うてくる可能性はある。
そのときは少しとぼけて「銀行引き落としになっているのやないか」と言い、後日、確かめて返事をすると言う。
そうとぼけるのは気が引けるかも知れんが、これは後で交渉を有利にするための方便やと割り切ることや。
たまたま、あんたはつい最近、それに気づいただけの話で8年間ずっとそう思うてきたわけやしな。
それに、どんな理由があろうと8年間も集金を放っておいた販売店が一番悪いのは確かやわな。ワシに言わせれば商売人として失格や。
後日、「調べたら、そちらの言うように銀行で引き落としになってないようやな。それでどうしたらええんや」と聞く。
「全額払ってほしい」と言えば、「それは無理や。少なくとも2年以前のものは時効になっているから払う必要はないはずや」と返し、時効の説明をする。
「その2年分にしても、集金に来てないというのは、そちらのミスやから全額すぐというわけにはいかん」と言う。
その支払い義務の発生する新聞代については、分割での支払い交渉するなり、一括で払う場合の値引き交渉をするなりして、あんたが納得できる方法で話し合いができるのなら、それでええ。
このとき、一旦、契約を解除しとけばより有利に話ができる。
その折衝案の一つとして、その販売店の本音は、購読を続行してほしいはずやから、あんたの方もそのK新聞を購読すること自体が嫌でなければ、この先8年の購読契約を結ぶから、それまでの分はナシにしてほしいと言うのも可能やと思う。
これだけを聞くと何かムシの良すぎる話に聞こえるかも知れんが、そのK新聞では、1年契約で3ヶ月の無料サービスというのをしているのが普通やと聞く。
それからすると、8年で2年分のサービスということになる。
つまり、本来受けることのできるサービス分を返上して、再度、改めて契約すると持ちかけるわけや。
新聞販売店にとって、契約を失うのとそうでないのとは、相当違うからメリットもあり、まとまる可能性はある。
もちろん、その他にもあんたが納得できる条件で折り合えるのなら、それでええと思う。
この後は、その販売店の出方次第でその対応が変わってくるが、話し合いにもならず、事を荒立ててくるようなら、またここに相談してくれたらええ。
相手の出方次第で、いくらでも対処法はあるさかいな。
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