新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.658 今回のメルマガ、派遣社員のリストラについて
投稿者 H.Sさん 新聞販売店専業員 東京在住 投稿日時 2008.12.12 PM 9:21
お久しぶりです。
今回のメルマガ『第27回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■人の恨みを買う怖さを知るべし』で、派遣社員のリストラについての、ゲン様の考えを拝読させて頂きました。
おっしゃることは、ハカセ様の表現力や文章力もあり、大変良く理解出来たのですが、どうも偏り過ぎる御意見ではないかと思い、小生の感想を認(したた)めたいと思います。
まずゲン様のお考えは、大企業の経営者は、当事者意識の下、行っているのではないかと推察されるのではないかと思います。
彼らが庶民感覚に疎いものがあるのかも知れませんが、それでも自身の出した結論とその行為に対する帰責性については、分からないわけではないと思います。
それでも尚、リストラという決断をしたことの本当の意味をどのようなものだったか、理解しようとする姿勢が必要だったのではないかと思いました。
また別の観点で、派遣社員の労働条件やリスクは、一般社会通念上知りませんでしたでは、済まないと思います。
私の勤務している店に、とある方が日曜日に新聞を買いにきました。
その方は、日曜日の新聞の折り込みチラシの地域版の求人広告が目当てであるとおっしゃいました。
私はすかさず「うちの店は求人募集してますよ」と申し上げたら、その方は「新聞の仕事はきつそうだから自分には出来ない」とおっしゃいました。
職業選択の自由と表裏一体で、その選択の結果責任は選択者本人にのしかかることは、火を見るより明らかであります。
つまり今回の派遣契約打ち切りの憂き目は、派遣社員を選択した方に、全く責任がないということはないと思います。
そこの所についての言及が、メルマガには全くなかったことに、浅慮の小生は些か疑問に思いました。
生きる為にどうするか。
ないない尽くしの中でも、歯を食いしばって生きている人もいれば、生きることを当たり前のように安易に考える人もいる。
多様な考え方があっていいと思いますが、本当に切羽詰まれば、生き抜きたいと強く思う人程、どんな境遇に陥っても、あがきもがくものなのではないでしょうか?
理不尽なのも非常識だという指摘も分かりますが、なんか今回の派遣リストラが、さも重大なことであると、そしてゲン様の怒髪天を衝くというものであるということが、小生の浅はかな思慮では、なかなか得心が行かなくて、自身の不明を恥じるものであることを自覚しつつも、拙文を認めた次第であります。
是非とも思慮深い、ゲン様ハカセ様の小生の考えに対する御意見を賜れば、大変有り難く存じます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
回答者 ゲン
今回のメルマガに関して、その中で『今回は常になく、きつい言い方に終始したかも知れん』と言うてたように、ワシ自身、過激な言動やったというのは認める。
公平さに欠けていたと指摘されれば、そうかも知れん。
しかし、言い過ぎたとか、一方的やとは考えてない。むしろ、あれでも、ハカセが抑えて書いたと思うとるくらいや。
ワシの生の声をそのまま載せたら、とてもやないが、あの程度の表現では済まんさかいな。
今回のことに関しては、罪もない購読者が極悪無法な拡張員と遭遇したときと同じくらいワシには腹立たしい思いがしてならんのや。
その経営者連中のしたことは、それら極悪無法な拡張員の数倍もえげつないと今も確信しとる。人として、やるべきことやなかったと。
あんたのように、『彼らが庶民感覚に疎いものがあるのかも知れませんが、それでも自身の出した結論とその行為に対する帰責性については、分からないわけではないと思います』というような寛容な気持ちにはとてもなれん。
その理由は、至って単純明快や。
それは彼らが、契約事を平然と無視して一方的に破ったということに尽きる。
あんたが言うように『派遣社員の労働条件やリスクは、一般社会通念上知りませんでしたでは、済まないと思います』というのは、そういった職業を選択する人なら、派遣や契約社員の一般的な労働条件やリスク程度のことは、たいてい承知のはずや。
しかし、それには雇用時に交わされた雇用契約が守られるという絶対の前提があってのことやと思う。
派遣社員、期間社員の多くは3ヶ月から1年間程度の契約期間が設けられ雇用されているのが普通や。
彼らの多くは、相手が大手の一流企業ということもあり、まさか、その雇用契約が途中で解除されるとは夢にも思うてなかったはずや。今回のような前例は過去にも皆無やしな。
当然やが、たいていの人はその雇用契約に基づいて生活設計をするもんや。考えるのなら、その雇用契約が終了した後やと思う。
もしかしたら、その後の契約はないかも知れんというのは、こういう社会情勢になったら、ある程度の予測はつく。また、そのくらいは考えとく必要がある。
それをリスクと呼ぶのなら、まだ分かる。
しかし、いきなり何の前触れもなく契約解除やと通告され、住んでいる住居も出て行けという事態まで、リスクとして考えとかなあかんのやろうかと思う。しかも、12月の真冬の今の時期にや。
あんたの論法で言うと、そういうことになる。
また、リスクということを持ち出すのなら、そういった派遣、期間従業員などを雇った企業側の方が、そのリスクを被らなあかんのやないかと思う。
一度契約が成立した限りは、その契約は守られるべきや。
この人間の社会において、契約事というのは絶対のものでなかったらあかん。簡単に契約事が破られてそれが是認されるような時代になったら、人間の社会そのものが崩壊する。
そのために、法律で契約事は保護されとるわけや。
今回のこの事で、一部に裁判沙汰にするという動きがあるが、おそらく、かなりの高確率で企業側が敗訴するのは間違いないと思う。
しかし、訴えてその勝利を得たとしても、途方もない日時と労力、および資力と精神力が必要になる。
大多数の明日の糧、命のかかっている切羽詰まった人たちからすれば、そんな裁判を起こす余裕なんか、とてもやないがないわな。
穿った見方をすれば、ほとんどはそんな真似はせんやろう、できんやろうという仮定のもとに、今回の事が実行されたと言えんでもない。
世界同時不況の最中やから、この程度の事は世間からも許されると計算してな。
何人とも、契約を自己都合のみで解除したいのなら、それ相応のペナルティを覚悟せなあかんし、それなりの責任も持たなあかんと考える。
ワシは、そう言うて、今までこのQ&Aで多くの人にそのアドバイスを続けてきた。そして、これからもその姿勢に変わりはないつもりや。
つまり、ワシにとって、今回の企業の愚挙には、そういう思いもあるさかい、よけい認めるわけにはいかんのや。
これが、経営が立ち行かんで明日からその企業が倒産すると言うのなら、まだ分かる。あるいは、企業のトップが、賃金カットをするなど、あらゆる企業努力をした結果というのなら、ここまでのことはワシも言わん。
それが微塵もないと確信しとるから憤って怒っとるわけや。
心ある企業の経営者なら、例え、契約を解除するにしても、それ相当の猶予期間も与えるやろうし、保障もそれなりに厚くするはずや。せめて、次の住まいが確保されるまでは、今すぐ出て行けとは言わんと思う。
そうすれば、後手後手に回っとる政府の対策も間に合う可能性もあるさかいな。
しかし、現実はそうやない企業の方が圧倒的に多い。
『それでも尚、リストラという決断をしたことの本当の意味をどのようなものだったか、理解しようとする姿勢が必要だったのではないかと思いました』ということやが、それはハカセとも十分に話合った。
そして、ある結論に達した。
それは、現在の企業の多くが誰の目を意識して経営しとるかという点についてや。
昔の経営者の多くは、それが消費者であり労働者やった。消費者の望むものを提供し、労働者とともにそれを作ってきた。あるいはサービスに力を注いできた。
その頃の経営者が今も存命なら、こんな愚挙は皆無やったと言うてもええと思う。
そもそも、リストラという言葉が使われ出したのは、ここ数年のことや。
過去にも、企業にとって経営の厳しい時代はいくらでもあった。
しかし、そんなときでも、それらの経営者は、労働者のリストラをすることまで考えることはなかった。あっても、ここまでのことはなかったと記憶しとる。
それらの創業者たちが世を去ってから、徐々に変わっていったとワシは見とる。
変わった結果、それらの企業の経営者たちは、株主の方ばかりを見るようになった。
今回でも、真っ先に株主への配当金を辛抱して貰うたら、彼らのリストラの大部分が回避されていた公算は大きいと経済通の多くの識者たちも言うてることや。ワシもそう思う。
やっこさんらは株主のご機嫌を伺って、その期待に応えていれば、自分たちの生活が守れると思うとる。
そのためにも、赤字経営は絶対にあかんとなる。そこで物が売れんのなら、生産を抑えコストを下げればええとなる。
その具体的な数字を、それらの株主たちに示すためにも、今すぐの人員整理、つまり比較的切りやすい派遣や期間従業員のリストラに着手することが、最もてっ取り早い効果を生むと思うたわけや。
そうすることで、昔の経営者では考えられんような欧米並みの高額な自らの役員報酬に手をつけずとも済むわけや。
あんたの言われる『つまり今回の派遣契約打ち切りの憂き目は、派遣社員を選択した方に、全く責任がないということはないと思います』ということに、真っ向から反対するようで悪いが、今回のこの件に関して言えば、彼らに責任は一切ないと断言できる。
あんたの言い方やと、その派遣なり期間従業員を選んだこと自体に責任があるように受け取れるが、それはなんぼなんでも言い過ぎやと思う。
世の中には、生きるために仕方なく就く仕事というのはいくらでもある。
ワシら拡張員もそうやし、あんたには悪いが新聞販売店の従業員を選択するのもそうやと思う。
初めから、なりたくてその職業を選んだという人間は皆無やないにしても極端に少ないはずや。他に何もなかったからというのが大半やと思う。
例え、そういう仕事であっても、ある日、突然、まじめに仕事をしているにも関わらず、いきなり「解雇や」と宣告され店の寮も今すぐ出て行けと言われたら、とんな気がする?
それも、行くアテもない真冬の12月の最中にやで。
そんな状況になったら、誰でも恨み節の一つも言いたくなるのと違うやろか。
何度も言うが、今回のことは、単に契約、つまり約束事さえ守っていれば済む問題やったわけで、彼らに責任を押しつけ咎め立てするような話やないと思うがな。
ただ、あんたの公平な目でみるべきやという意見は、そのとおりやと思う。ワシらの理念として一方だけの見方はあかんとも言うてることやしな。
しかし、それは、相手がまともな対応をしている場合に限られることや。無法な相手に対しては、それなりに対処せなあかんし、きつい言い方にもなるということや。
今回のことはそう理解して貰えんやろうか。
最後に、メルマガでも言うたが、いつまでもこんなことが続くわけはないから、希望だけは捨てんといてほしいと、今回このような憂き目に遭うた人たちに言いたいと思う。
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