新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.667 故人が7年前に契約した4年間の契約解除ができるか


投稿者 KMさん  投稿日時 2008.12.23 AM 0:58


今年の9月に死亡した父が7年前に契約した新聞の配達が、21年1月から始まると新聞店から連絡がありました。

契約期間は4年間です。今年の1月から別の新聞を2年契約で取っているのですが、契約者が死亡した場合の解約はできるのでしょうか?

契約者欄のご主人と奥様を○で囲んでいます。ご教示下さい。


回答者 ゲン


お父さんが亡くなられたとのことお悔やみ申し上げる。

『契約者欄のご主人と奥様を○で囲んでいます』ということは、お母さんは存命されておられると思われるが、そうなら、残念やがその契約を解除するのは難しいと言うしかない。

良くて、その販売店にあきらめさせることくらいやが、頑として、あきらめんかったら、法律的にはあんたの方が不利になるやろうと思う。

民法第761条に、夫婦の日常の家事に関する債務の連帯責任についての規定がある。

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。 

というのが、それや。

サイトの法律顧問をして頂いている今村英治先生に、これについての見解が寄せられたことがある。


民法761条の件ですが、私見ながら、新聞購読は日常家事債務に該当すると思います。

該当しないもの(贅沢品など)不動産、アクセサリー類、妻の高級外出服。

該当するもの 妻の普段着。


というものや。

これをもとに、当サイトでは、夫婦の一方が契約した新聞購読契約は日常家事債務に該当するものとして、もう一方が責任を持つべきというアドバイスをしとる。

つまり、お母さんが存命ならば、そのお母さんに契約の責任があるということになるわけや。

但し、これには、最高裁判所による判例がないから、確定されたことやない。

せやから、お母さんがとことん争う気なら「判例のないものに従うつもりはないので、裁判に訴えてその判決を貰ってから請求してくれ」と言うても、筋としては通る。

たいていの新聞販売店は、裁判沙汰にしてまで請求するという所は少ないから、あきらめることも考えられる。

それが、ワシの言う『良くて、その販売店をあきらめさせられること』という意味やが、販売店次第では、実際に裁判所に損害賠償請求をする可能性もゼロやない。

そうなると、あんたには気の毒やが、勝てる見込みはかなり低いと思われる。もっとも、裁判というのはやってみな分からんから、絶対とまでは言えんがな。

あるいは、その販売店は裁判を起こさず、そちらの意志を無視して、そのまま新聞の投函を開始することも考えられる。

可能性としては、こちらの方が高いと思われる。

そして、法的にこれを阻止するには、その販売店の違法性を証明して、その契約の無効を主張せなあかんわけやけど、あんたの話を聞く限り、それは難しそうや。

単に、その契約があったこと自体を忘れていたと判断されるのがオチやと思う。

これが、お母さんがいなくて、その家に息子さんのあんただけやというのなら、その法律の適用は受けんから「そんな父のした契約は知らん」と言える。

その場合は、販売店があんたに支払い義務があると証明してからでないと、その新聞の投函はできんと考えられる。

その証明とは、あんたがお父さんの遺産相続人やと確定することや。遺産相続には債務も引き継ぐことになっとるから、その新聞の契約も債務として引き継がれると考えられる。

但し、あんたにご兄弟がおられたら、その相続は相続人同士で随意に決められるから、遠く離れたご兄弟が、その債務を引き受けたとすれば、あんたは関係なくなる。

その販売店が、その契約を実行しようと思えば、遠く離れたご兄弟の家に、その新聞を配達せなあかんわけやけど、そこが、その販売店の配達エリア外やったら、それもできん。

新聞販売店には、宅配制度というのがあって、その販売店が配達できるエリアというのが決められとる。

それ以外の遠隔地やったら、実質的にそれはできんようになるから、その契約は自然消滅することになる。

その際、その販売店が請求できるのは、契約時に付帯条件として渡したサービス品の返還だけということになる。もっとも、それも、お父さんの受け取り証などの確かな証拠が残ってなければあかんがな。

販売店の中には、同じ新聞を配達する販売店に委託する、あるいは新聞社に任すと言う所もあるようやが、それは通用せん。

多くの人が、新聞の購読契約とは、新聞社と個人との間の契約やと思われておられるようやが、それは違う。

新聞の購読契約とは、その販売店と契約者個人との間でのみ有効なものなわけや。新聞社は、公にも個人客との契約事には一切タッチせんという姿勢を貫いとる。

つまり、そういうケースでは、一般的にも契約者死亡の場合は、あきらめる販売店が大半やと思う。

お母さんが存命の場合は契約解除が難しいとは言うたが、その契約を認めるのなら、その販売店、および『別の新聞を2年契約で取っている』という販売店との交渉の余地がまだ残されるとは思う。

具体的には、その『別の新聞を2年契約で取っている』という販売店の方に、「父が7年前に契約した販売店との契約が残っていたので、申し訳ないが、そちらの契約はその後にしてほしい」と言うことや。

契約を解除したいと言えば抵抗する販売店は多いが、先延ばしということなら応じるケースもある。

もっとも、そうは言うても4年契約なので4年待てというのも酷な話やから、両方の新聞販売店と相談して、1年毎の交代の配達ということなら話はつきやすいのやないやろうか。

「そうして貰わな、2部もの新聞代を払う余裕がないから、両方に新聞代が払えんようになって迷惑をかける」とでも言えば応じる可能性は高いと思うがな。

しかも、それにはお父さんが亡くなられたという事情も絡んどることやさかいな。

あんたは『別の新聞を2年契約』しているということやから、新聞を購読すること自体は抵抗がなさそうやから、ワシのアドバイスとしては、それを勧める。

結論として、お母さんが存命ならば、民法第761条の規定には新聞購読に対しての判例はないと言うて、とことん争う姿勢を見せて突っぱねるか、二つの販売店と折り合いをつけた交渉をするかの、いずれかやと思う。

どちらを選択されるかは、あんたの判断次第やから、良う考えて決められたらええ。


書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


Q&A 目次へ                                 ホーム