新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.683 集金に関するトラブルの相談です


投稿者 もくれんさん 某販売店専業員  投稿日時 2009.1.26 PM 0:16


こんにちは。いつもお二人のHPを拝読しております。

その節はお世話になりました。アドバイスのおかげでなんとか専業を頑張ってこなしております。

慣れない営業でも月1本くらいはカード契約をいただけるようになりました。専業として続けて行くには現在のところはまずまずだと思っています。

さて、本日は契約の解除について、「販売店側(専業者)から契約解除できないか」の相談をお願いしたいのですが・・・。集金で困っていまして、なんとか解決の道はないかとメールしました。

状況を申しますと、

・私がカード契約をしました。(無理な勧誘はしておりません。)

・半年契約をいただいて配達を始めました。

・最初の月だけ支払いをいただいた後、2ヶ月間続いて集金ができない状態でいます。

・集金できない理由は、「払いたいがいまお金が無いのでまた来てほしい」です。

・指定の日にいっても払ってくれず、何度かその状態が続いています。

・集金に行くとご本人が対応することも、ご家族が対応することもあります。

・契約者は老齢で、年金生活しているようです。

・私がとりあえず立替払いをしています。(集金手当ては給与にありません)

・集金では結構周囲ともめているようです。(近所の話)

こうした状況で、この先払ってくれるかわからないため大変不安ですので、できればお店に相談してカード料を返納した上で契約を解除したいと考えています。立替払いした分は、回収できれば良し、できなければ諦めるつもりでいます。

この件に関して主任さんに相談したところ、

・事前に相手には通告したうえでやること。

・一度でも払っているから、そう簡単には新聞を止められない可能性があること。

・自分でカード契約してきたのだから、すべて自分の責任であること。

・契約切れ後も継続の意思がある可能性もあるから自腹が5か月分で終わるとは限らないこと。

・可能性は低いが民事訴訟を起こされて、お店に対して責任を取れる覚悟があるかどうか。

といった意味のことを言われました。

特に「訴訟」の言葉は寝耳に水で、そこまで考えねばならないかと驚いています。

新聞配達は双務契約のはずです。新聞をお届けしている以上は代金をいただく権利があると思いますし、代金を支払えない場合は新聞を一方的に(一時的にでも)止めることもできると思うのですが。

それでないと、お客様次第で永久に立替払いさせられてしまう上に、鎖につながれて毎月鞭打たれるようで大変不安です。

この件は一応お店に相談した上で新聞を止めたいと考えています。しかし、店では専業による立替払い(切り取り)が通常行為として行われておりますのでお店の意向次第では解
決できないかもしれず困っています。

なんとか無事に処理したいのですがいい知恵はないでしょうか。

以上ですが、よろしくお願いいたします。


回答者 ゲン


『この先払ってくれるかわからないため大変不安ですので、できればお店に相談してカード料を返納した上で契約を解除したいと考えています』というのは当然なことや。

『立替払いした分は、回収できれば良し、できなければ諦めるつもりでいます』とまで考えておられるのなら何の問題もない。契約を解除すればええ。

問題があるとすれば、むしろ、その客よりも、勤めておられる販売店側の考え方であり姿勢やと思う。そして、その販売店の考え方は違法であり、間違っとる部分が多いとも言える。

それを今から説明する。

主任さんとやらが『事前に相手には通告したうえでやること』というのはそのとおりや。

新聞の購読契約とは、事業者である新聞販売店はその新聞を毎日配達する責務を負い、契約者は遅滞なくその代金を支払う義務があると決められている。

どちらか一方が、それを守らない場合は契約不履行ということになる。

契約不履行による契約解除については、民法第541条に、履行遅滞等による解除権というのがある。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

とあるのが、それや。

『相当の期間を定めてその履行の催告をし』というのが、『事前に相手には通告したうえでやること』というのに当たる。

この場合、こちらから何日までといった期限を切るより、相手に「いついつまでに支払いますので」と、約束させた方がええ。できれば、その証拠となるメモでも書いて貰うとくことやな。

その約束が守られん場合は、「新聞の配達は止めます」と書き添えていても何の差し支えもない。

それがあれば、販売店にも「新聞を止めますので」と、堂々と言えるやろうと思う。

『一度でも払っているから、そう簡単には新聞を止められない可能性があること』というのは何の法的根拠もない。そんな可能性などないと断言してもええ。

水道料金や電気料金ですら、その支払いが滞れば役所や電力会社がその供給を止めるくらいやさかいな。

それらは、新聞と比べればはるかに生活に密着していて、場合によれば命の存続すらおびやかされんほど重要なものにも関わらず、当然のようにそうするわけや。

いわんや、新聞代を支払わんという理由で新聞の配達を止められんというようなことは絶対にないわな。

したがって、その主任とやらの言う理屈はおかしいということになる。

『自分でカード契約してきたのだから、すべて自分の責任であること』というのは、ある意味仕方ないことやと思う。

あんたもそれについては『お店に相談してカード料を返納した上で契約を解除したいと考えています』と言うておられるのやから問題ないやろ。

『契約切れ後も継続の意思がある可能性もあるから自腹が5か月分で終わるとは限らないこと』ということやが、それは絶対ないと断言してもええ。

このケースは、その相手というより、その販売店の意向という意味合いが強そうやから、「そうではありません」と言えるように、購読者からその約束を取り付けとくことや。

『可能性は低いが民事訴訟を起こされて、お店に対して責任を取れる覚悟があるかどうか』というのも絶対にあり得んことやと思う。

どんな法律をもってしても、商品の代金が支払えん客が民事訴訟で訴えることなどできるわけがない。

当たり前やが、その購読者にとって新聞を止められても何の損失も不利益もなく、あんたがその新聞代の支払いがなくてもええとさえ言うてるわけやから、却ってその分、得をしたことになり、その購読者が裁判に訴える根拠は何もないことになる。

民事訴訟というのは、被った被害に対する弁済を主張することやさかいな。

ただ、民事で訴えるというのは国民の権利でもあるから、必死で何かの落ち度を探してということがあるかも知れんが、万が一、それをしたとしても、先の通告、および約束の書き付けを貰っていれば絶対に裁判で負けることはない。

これも、あんたにそれをさせんためのその販売店の口実であり意向やと思う。

せやから、この質問に対しては「はい」と答えといたらええ。まあ、そんなことになることは絶対と言うてええほどないとは思うが、あってもいくらでも対処できるから心配せんでもええ。

それはそのときになった場合にアドバイスする。

『店では専業による立替払い(切り取り)が通常行為として行われておりますのでお店の意向次第では解決できないかもしれず困っています』という、切り取り行為は完全な法律違反でもある。

これについては、『NO.145新聞購読料金の切り取り行為は違法なのでしょうか?』の中に、このサイトの法律顧問をお願いしている今村英治先生の見解がある。

その部分を抜粋する。


さてご質問の件ですが、労働基準法に定められた「賃金全額払いの原則」に反し違法です。

たしか集金の仕事は、業務外の請負という形になっていることが多いのでしたよね。

そもそも この制度そのものが違法性が高いとNo109でお返事したのですが・・

それはさておきまして、では「集金」が労働でなく「請負」であると仮定します。

集金という請負において、締め切りに間に合わなかった場合の切り取りというのは、販売店の集金人に対する債権譲渡に該当しましょう。

立て替えはつまり、集金人が販売店に対し、その債権の譲渡代金の支払です。これは労働の対価として支払う賃金とは本来全く無関係であるものです。

ですから、労働基準法第24条第1項「賃金全額払いの原則」に抵触し明らかに違法です。

そしてこれはあくまでも労働ではないですから「オレは集金しないよ」と言ったことでクビにされたりなんかしたら、根拠のない不当解雇になります。

「集金」は「労災も残業代も出ないよ。労働じゃないんだから」という店側の理屈を前提にするなら、じゃあ給料から差っ引くのは明らかにおかしいよってことです。

ところがNo109でもお返事しましたが、契約上どのような取り決めになっていようと、外形上判断すると、集金業務は労働です。

多くの社会保険労務士及び労働基準監督官は、これを労働とみなすんじゃないでしょうか。

では労働とした場合、非常に苦しい詭弁なのですが、期日までに集金できなかったので、店側に損害を与えた。従って集金人たる労働者が店に対し損害賠償債務を背負ったという「ヘ理屈」を前提にしてみます。

期日に間に合わなかったとは言え、いずれ回収できそうな債権であるならば、その時点での損害賠償額を算出することは難しいと思いますし、そのようなあやふやな状態で給料から差っ引くというのはやはり「全額払いの原則」に抵触すると思います。

法律的にシロクロはっきりさせるためには、 そもそも集金業務が請負なのか労働なのか最初に明確に定義する必要がありそうですね。

労働である場合
労災保険が適用になる。時間外割増賃金が発生する。「集金してこい」は業務命令。労働契約の一部。サボったら当然懲戒の対象となる。

請負である場合
労災未適用。賃金ではなく請負代金。店と集金人の請負契約。集金や切り取りを拒んだことで給料を下げられた・解雇されたとなると、これは不当な理由による不利益処分となる。

店側にとって労働でも請負でもないグレーゾーンにすることで、双方のいいとこ取りをしているように以前から思っていました。

いずれにしても切り取りは債権譲渡という商取引ですから、労働契約とはなんら関係のないことです。商取引である以上、切り取りそのものには違法性はありませんが、労働条件・労働契約に密接に関連していたりすると途端にいかがわしさが増しますね。

こうしたことを条文では直接定めていないですし、判例もないので、私も様々な類推解釈をせざるを得ないのですが、新聞代金の集金業務は、購読契約や配達と密接に関連しており、事実上「集金してこい」という命令を拒めないのであれば、その集金業務だけを切り離して「請負」とし「労災の対象外」とすることは非常に無理があります。ましてや半ば強制的に債権を譲受させられてしまうという状況は劣悪です。

「切り取り」を店側からオファーされた時は、法律的には「債権を買いませんか?」というセールスをされているだけなので、「いいえ、いりません」と言えなきゃおかしいです。

「いいえ、いりません」と言ったときに「じゃあ あんたクビね」と言われたら不当解雇です。少なくともこれだけはどんなお役人も認めてくれると思います。


ということや。

この質問は、3年以上も前のものやけど、その頃でさえ、今もって切り取り行為をしとるという販売店は少なかった。それについてのアンケート結果も、そこにある。

こういう販売店にとっては、例え客が新聞代を払えなくても従業員から強制的に取れると考えとるから、別に集金ができようができまいが関係ないわけや。

むしろ、あんたのように「集金を払ってくれないから新聞を止める」ということになったら困ると考える。金の入ってくるところがなくなるさかいな。

つまり、販売店としては今のような状態が、この先もずっと続いてくれることが一番ありがたいわけや。それがあるために、あんたに愚にもつかんことを言うて、何とかそれを止めさせようとしとるのやと思う。

ちなみに、この切り取り行為をしてない販売店やと、その新聞代金の支払いがない場合、ほとんどの所が新聞の配達を停止して、その家を拡禁扱いにするはずや。

今回は、何とかそれで逃げられても、そういう販売店やと何かと理由をつけ、従業員から絞り取ろうとするやろうな。

そして、それはこれからも止むことは考えにくい。まことに気の毒やけどな。はっきり言うて、その販売店はろくな所やないと思う。

ただ、この行為が法律違反やからと言って、新聞社に通報しても、おそらく「それはその販売店とお話しください」と言われて終いという気がする。

組織的には、新聞社と販売店は別ものやさかいな。その行為が犯罪と発覚せん限りは「指導」というのはできんというのが公の立場でもあるしな。

言うとしたら、労働基準局へということになるが、そのときには、その販売店を辞める覚悟ができてからでないとあかんと思う。

しかし、現在の雇用状況を考えたら、そうするのも難しいかも知れんな。

結論として、今回のケースは、先のアドバイスで契約解除にもっていくことはできるやろうと思う。

その後は、なるべく支払いの滞りそうな客との契約は避けるしかないわな。もしくは、その販売店には内緒にして、それと気づかれず次の勤め先を探すかや。

それで、切り取り行為をしてない販売店を見つけて、そちらに移るというのが、今のあんたにとっては最善の方法やという気がする。

言うて悪いが、従業員を食い物にしとるような販売店でこの先、長く勤めてもろくなことはないと思うで。結局は、どこかで嫌気を差すだけやと思う。

もっとも、どうされるかは、あんたの生活もかかることやから、ご自分で良う考えられて決められたらええ。


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