新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.685 販売店が価格を任意に変更することはできないのではないでしょうか?


投稿者 Hさん  投稿日時 2009.2. 3 AM 5:53


ホームページを拝見して僭越ながらメールさせていただきます。

No.344ですが、独禁法の新聞特殊指定で定価が定められており、販売店が価格や商品構成を任意に変更することはできないのではないでしょうか?

もし、仮にこのような事が行われている事実があれば、新聞業界が廃止に反対している「新聞特殊指定」の存続の問題に及ぶ、極めてクリティカルだと思われます。


PS.

私は転居当時、配達区域外のS新聞の販売店から見本紙のポスティングを数回受け、同紙を購読しようと何度も電話しましたが、一度も通じなかった事があります。

その後、本社に購読を申し込みした所、配達区域の別の販売店を紹介され、そちらから電話をもらい即日契約となりました。

うちでは私の方針でY新聞、A新聞は完全オフリミット状態で最近は勧誘にすら来ません。

以下は断りの例です。

応対例A:ロイター電や時事電の配信より早くニュースを受けられるなら購読してもよい
(新聞社は通信社から配信を受けて記事を掲載してるのでできるわけない)

応対例B:官報より正確な情報を受けられるなら購読してもよい

番外応対A:社説で「地上の楽園」は誤りであったと正しく認め、社主が謝罪するなら考えてもいい(本当に社説で掲載されたらどうしよ。)


回答者 ゲン


『独禁法の新聞特殊指定で定価が定められており、販売店が価格や商品構成を任意に変更することはできないのではないでしょうか?』ということやが、これはあんたの言われるとおりや。

新聞社も販売店が勝手に価格を変更することは厳しく禁じとる。もっとも、新聞販売店の中には新聞社に隠れて個別に値引きしとるようなケースも確かに存在はするがな。

『もし、仮にこのような事が行われている事実があれば、新聞業界が廃止に反対している「新聞特殊指定」の存続の問題に及ぶ、極めてクリティカルだと思われます』というのも、仮の話やなく事実として存在するから、その可能性があるとワシも思う。

しかし、それはあくまでも決められた「定価の厳守」であって、残念ながら『NO.344 新聞代について教えてください』で話したのは、朝夕セット版地域での朝刊のみの価格についてで、これに関して全国紙などでは、特に価格が決められとるわけでもないということや。

本来、朝夕セット版地域では、その朝夕セットで売ってほしいというのが新聞社の意向としてある。

特に全国紙に言えることやが、地域により朝夕セット版地域と全国版という朝刊のみ地域というのに別けられている。

その状況で、朝夕セット版地域での朝刊のみの購読を公に認めてその価格を決めると、区別しとる意味がないと新聞社は考えるわけや。

また、朝夕セット版地域では、朝刊と夕刊の二つが一緒に読まれるものやという考えのもとに日々の紙面が構成されとるから、よけいどちらか一方だけの購読は好ましくないということにもなる。

朝夕セット版の場合、大きな事件事故などが発生すると、朝刊でその第一報、夕刊でその補足。逆に夕刊で第一報、朝刊でその詳細というケースが一般的や。

それが朝刊のみやと、第一報の後の続報は翌日の朝刊で分かるとしても、第一報の補足記事については分からんということになる。

翌日の朝刊には、前日の夕刊に載せたのとまったく同じ記事が掲載されることはまずない。読者は、すでにその記事は読んだものとして、その継続紙面を作るからな。

つまり、新聞社としては、朝夕セット版地域では、朝刊と夕刊の二つを購読して貰わな意味がない、またそうするもんやと考えとるわけや。

そのために、朝刊のみの価格、夕刊のみの価格というのが特に設定されていないということになる。

ワシら拡張員も朝夕セット版の地域でなら、それを中心に勧誘する。また、販売店もそれを望む。

ただ、客の中には、「夕刊を読む時間がない」「必要ない」ということで、朝刊のみでええと言うケースがある。また、それでないといらんという客さえおる。

それには、朝刊と夕刊には同じ記事が掲載されとるという思い込みがあるからやと思う。

そこで今回のような問題が起こる。

本来、朝夕セット版は、新聞社、販売店双方にとって「朝夕刊一体」という考えがあるから、例えが適切かどうかは分からんが、朝刊のみやと、たこ焼きにマヨネーズやネギがいるか、いらんかというのと似た話になるのやないかと考える。

たこ焼きはソースだけで食えるという客はそれだけでもええわけや。いくら、「マヨネーズやネギがあった方が美味しいでっせ」と店主が言うてもな。あくまでも客にしたら好みの問題ということになる。

そこで、これはひょっとすると関西だけかも知れんが、「マヨネーズとネギがない分、安うしてや」と言う客が現れることがある。

普通は、「それは無理でっせ」と断るが、どうしても売りたいと思うたら、「しゃあないな」と言いつつ値引きに応じる、または、たこ焼き1個を余分にサービスするということにもなる。

それに近いことやないかと考えられるわけや。

ただ、新聞の場合は、いくら新聞社が一体と考えていても現実には朝刊、夕刊は別々に配達されるから、それぞれ独立したものやと客は考えやすい。

法律的なことで言えば、セット販売で一つの商品とされとる物の場合、客の好みで、その中の一つが「いらん」と、客の意向でそれを除外したケースについては本体価格で売っても差し支えないと考えられている。特に値引きに応じる必要もないわけや。

ただ、それやと販売店の方にも後ろめたさもあるやろうし、法律云々は別にして、客に与えるイメージが悪くなるというのもある。

「あの販売店、朝刊だけでも夕刊込みと同じ値段を取っとるで」となって、いかにも聞こえが悪いさかいな。当然やが、そんな風評が立ったら新聞そのものの売れ行きにも影響する。

そこで値引きに応じることになるのやが、その際に、朝刊のみの場合はいくらと明確に決められてないさかい、販売店毎で任意の値段設定をしてしまうわけや。

朝夕セット版の方を優先的に購読してほしいと考える販売店は、その割安感をなくすために朝刊のみの価格を高めに設定する。「どうせなら、夕刊も一緒に購読した方が得ですよ」と思わせられるようにな。

あるいは、そうやなく、全国版の朝刊のみの価格が3007円ということで、それに近い価格で売るのが筋やと考える販売店は、その価格に設定する。

それらの販売店の考え方の違いが、価格設定にバラつきを生んどるということになる。

これらはいずれが正しくて間違っているということやなく、いずれも暗黙の了解がなされ、黙認されとるわけや。

ただ、これらはあんたの言われるように、「新聞特殊指定」の存続には同一価格の維持ということが条件になるから、その意味での違反行為やないかという考えも成り立つ。

しかし、これを違反と認定するかどうかというのは、あくまでもこの法律を運用する公正取引委員会の判断に委ねられる。

そして、ここでワシが言うてるような程度の事実は公正取引委員会なら、すでに先刻承知しとるはずや。

もし、これが違法と判断されとるのなら、公正取引委員会は正式にその価格の表示をするように命令、あるいは促しとるはずやと思うが、それはない。

現在、公正取引委員会が公募しとる「環視モニター」というのが日本全国に900名ほど存在する。

その人たちから、独禁法などの違反行為と思われる報告を日々、公正取引委員会は受けとる。その率、95%強におよぶというから相当なもんや。

もちろん、独禁法というのは新聞業界だけのことやないさかい範囲は広いんやが、この業界はその評判の悪さから、常にその報告の上位ベストテンには毎年入っとるということもあり、その報告事例はかなりあると予想される。

その中には当然のように、景品表示法や新聞特殊指定に抵触するものも多いと思われる。

ちなみに、この業界でS(サービスの略)、公正取引委員会では無代紙と呼ばれとる無料新聞サービスに関して、独禁法や景品表示法には触れにくいが、新聞特殊指定では値引き行為違反に抵触すると判断される可能性が考えられる。

もっと言えば、極一部ではあるが、実際に新聞代そのものを安く値引きして販売する販売店が存在するのも確かや。

酷いのになると、関東あたりでは「タダでもええから」と拡張員が新聞代を払うというケースまであるというのが、このQ&Aの相談にもある。

それらは議論の余地さえない。

先の朝刊の件とも併せ、それらの情報、事実すべてを公正取引委員会が把握しとるのはほぼ間違いない。

しかし、事、この新聞業界に関して言えば、ワシが知る限り、平成14年に和歌山の新聞販売店が数店舗同時に景品表示法で摘発されて以来、違反に問われたケースはなかったと思う。

警察がそれを事件化するかどうか、検察が起訴するかどうかという裁量権が認められているのと同じく、公正取引委員会にも、その裁量権というのがある。

あんたの指摘も含めて、それらの事案を違反と認定するまでには、今のところ公正取引委員会として至ってないということになる。

世の中、法律に触れとるからと言うて、すべて摘発され罪に問われるかというと残念ながらそういうことにはなってないということや。

本来はすべての違反は法に問われるべきなんやが、それを摘発する側の事情というものもある。

特に公正取引委員会というのは、それほど大きな組織やない。全国で300名ほどの職員しかおらんと言うしな。

その摘発業務の大半が企業の不祥事に没頭しとるのが現状や。特に昨今は、その企業の不祥事が多発しとるさかい、公正取引委員会は大変やろうと思う。

それでも新聞社を独禁法や景品表示法、あるいは新聞特殊指定違反に問えるのなら、その姿勢、取り組みもまた違うやろうが、新聞社自身が、それらの法律に積極的に協力しとるという姿勢を見せとる限り、それは難しいと言うしかない。

公正取引委員会が摘発できるとしたら個々の新聞販売店が限界ということになり、それにしても、それぞれで証拠を集め、内偵を重ねるという途方もない時間と手間のかかる作業が必要になる。

それで、結果として上手く摘発にこぎつけたとしても、氷山の一角程度のものでしかない。

そうなっても、最高でも罰金刑が科せるくらいで実際にそうなるケースは少なく、たいていはもう二度とこういうことはしませんと公示しなさいで終わるケースの方が多い。

それは単に一つの新聞販売店の摘発ということだけに止まり、新聞業界を揺るがすまでの問題にはなりにくいということや。

その摘発された新聞販売店がよほどの違反行為をしとると発覚すれば、新聞社はその販売店と業務委託契約を解除すれば終いの話になるだけのことやさかいな。

ちなみに、これは個人に摘要されるような法律やないから、刑法のように個人がその罪に問われ罰せられるようなことはないというのも言うとく。

もし、それらの法律で新聞業界を揺るがすほどの問題が持ち上がるとしたら、それは新聞社が指導的立場で、それらの違反行為を煽り助長してたと発覚した場合やが、それは現実的やないし、あり得んことやと思う。

実際にも、新聞社は定価販売のみという姿勢を貫いていて、一週間の試読サービス以外の無料サービスというのも認めていない。

サービス付与にしても、現在、公正取引委員会が一般の企業に認めている景品付与は取引金額の20%までと緩和されとるんやが、それを新聞業界は自主規制で決めた8%までしか認めておらず、それが法律(景品表示法)になっとるわけや。

ちなみに、現在の新聞業界の自主規制は、景品の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになっとる。

これを業界では、6・8ルールと呼んどる。

つまり、世間よりもより厳しい法律で、新聞社自らが業界を縛っているという構図になっとるわけや。

そして、世間で違反行為と呼ばれとるものすべては、各新聞販売店、および各拡張団が、新聞社の目を盗んで個別にやっている行為ということになる。実際にもそうやと思う。

しかし、世間一般では新聞社と新聞販売店、または新聞拡張団は一体という見方が根強いさかい、新聞社も同じ穴のムジナと考えられとるようやけどな。

ただ、そうは言うても、実際に勧誘の違反行為、不法行為が一般にも良く知られ、公正取引委員会やこのサイトのQ&Aの相談にもその事例が数多く寄せられとるのが実状やさかい、その新聞社の意向と指導、および監視が十分に機能していないと言われれば、そのとおりやとは思う。

その意味での責任は新聞社にもあるのは確かや。ただ、その責任が法律違反に問われるかと言うとそうはならんだけの話でな。

もちろん、今後どうなるかは分からんがな。

2006年に起きた「新聞特殊指定」見直し問題は、先送りという政治決着で一応の解決を見たが、来年あたりその問題がまたぞろ再燃するのやないかと言われとることでもあるしな。

そのときになって、前回同様、新聞業界にとっての好結果が出るという保障はどこにもないさかい、そのときにはまた大騒ぎすることになるやろうと思う。

以上が、あんたの質問、疑問に対するワシの見解ということや。分かって貰えたやろうか。

もっとも、理解して頂くのと納得して貰うのとは別のことやから、あんたがそれについてどう考えられるかは自由やけどな。

ついでと言うと語弊があるが、寄せて頂いた補足についても、ワシの考えを一応伝えておこうと思う。若干、誤解されておられるところもありそうやさかいな。

『ロイター電や時事電の配信より早くニュースを受けられるなら購読してもよい』ということやが、ロイター電というのはドイツのロイター通信社が発信する情報のことで、時事電というのは、それらの通信社すべてが発信する情報のことを言うておられるのやろうと思う。

それらは、その情報を買う契約をした報道機関に発信されるもので、その発信を受け新聞紙面になったりテレビ放送されたりするわけやから、それについての早さ云々を言われてもどうしようもないことやと考えるがな。

お互い、まったく性質の違う報道機関なわけやさかいな。

また、何も新聞紙面には、その情報がすべてではないということもある。むしろ、それ以外の情報の方が圧倒的に多く占められとるはずや。

総体的に、海外の情報に疎い日本の新聞社が、そのロイター電なり時事電なりの情報に頼りがちになるのは、ある意味、仕方のないことやと思う。

逆に、日本の新聞に報じられた内容が、それらの媒体を通じて世界に発信されるということもあるわけやしな。

言うて悪いが、日本国内の事件事故の情報ならば、それらの媒体よりはるかに日本の新聞社、報道機関の方が早いと思うがな。当然、内容も詳しく濃い。

それに、それらの媒体と日本の新聞社とは持ちつ持たれつの関係やさかい、優劣を論じられるもんでもないと思う。ワシには比べる意味すらないという気さえする。

もっとも、それをどう受け取られ、どう感じられるかは、あんた次第やけどな。

『官報より正確な情報を受けられるなら購読してもよい』というのも、ワシには良う分からん理由やと思う。

官報というのは、国が発行する機関紙の総称のことで、国の政令や政策、法律の公布などの広報および公告をその目的、使命としとるものや。それには該当するすべての事柄が掲載される。

対して、一般紙と呼ばれる新聞には、その大半が日常の事件事故、話題が占められ掲載されている。

確かに、ある面では官報の方が詳しい情報が掲載されとるということもあるやろうが、逆に言えば新聞紙面の内容が官報に反映されることはほとんどないとも言える。

両者はまったく異質の情報媒体なわけや。

国の政令や政策、法律の公布などの広報および公告の詳細が必要な人は官報を見ればええし、日常の事件事故、話題が知りたければ新聞を読めばええだけの話やないかと思うがな。

『社説で「地上の楽園」は誤りであったと正しく認め、社主が謝罪するなら考えてもいい』というのは、ワシには難しすぎてコメントはできんさかい、あんたがそう考えておられるのなら、それでええのやないかと思う。

最後に一言、それらを断り文句としていることに対しては、ワシには何の異論もないことやさかい、それはそれでええのやないかと言うとく。

何か、今回の回答は、あんたの考えにケチをつけただけの印象やったと受け取られるかも知れんが、別にそういう意図や他意はなく、単にこれがワシなりの回答であり考えということで、理解できるようやったらそうしてほしいと思う。


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