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NO.71 新聞販売店は労災に入ってない?


投稿者 Jさん 新聞配達員 投稿日時 2005.2.11 PM2:55


ゲンさんに質問したいことがあります。
それは、仕事中のケガのことです。店から、現在もじゅうぶんな補償が得られない状態なのですが、それはこの業界ではあたりまえなのか?という質問です。

具体的には、こういう流れです。

12月のある日、バイクから降りて新聞を投函中に、何の変哲もない地面でコケて右足首を捻挫ました。

即日病院に行きましたが、治療にかかった費用は、個人の健康保険を使っても自己負担金として5630円でした。他に、後で薬局で購入した固定テープ代などがあります。

幸い、その翌日の仕事を1日休んだだけで、あとは通常の仕事に復帰できました。(ただし、本当は数日間は安静にしていなければならないと医者に言われていました。)

1月になって、店が損害保険会社に保険金の申請をするというので、私の方で書類に書き込みました。今月になって、その保険会社から振込があったのですが、通院保険金として
2千円が振り込まれました。

補償に関してはそれで終わり。あとは「出ない」と言われました。

しかし私は、こう考えます。

1.そもそも仕事中のケガは、アルバイトであろうとも、労災保険が適用される
のではないか?
2.それゆえ、治療に健康保険を使うのは誤りではないのか?
3.治療費はもとより、休業補償も上乗せされるべきではないのか?

拡張員のゲンさんが、どこまで販売店のそういった事情にお詳しいかは存じませんが、何か私の主張することに関してアドバイスがありましたらお願いします。

では、よろしくお願いします。


回答者 ゲン


ハカセの調べた所によると、労災保険は、アルバイトやパートタイマーに限らず、労働者であれば、業務災害又は通勤災害発生時、適用事業に使用されていれば、受給権が生じるとある。

適用事業と言うのは、農業、漁業の5人未満の労働者を使用する民間個人経営以外、または、民間個人経営の林業の事業において、労働者を常時は使用せず、かつ、1年以内の期間においても使用延べ人員が300人未満以外のすべての事業のことを言う。

つまり、労災保険は、原則として1人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何に関係なく、すべてに適用されるということや。

そこで働いとれば、その業務中の怪我や病気のすべてが労災保険で適用されるということになる。

せやから、法律的解釈で行けば、あんたの質問の答えはこうなる。

1.そもそも仕事中のケガは、アルバイトであろうとも、労災保険が適用される
のではないか?

適用される。

2.それゆえ、治療に健康保険を使うのは誤りではないのか?

本来、業務中のケガには、労災保険が適用となるから、健康保険は使用できない。

3.治療費はもとより、休業補償も上乗せされるべきではないのか?

治療費は全額。休業補償は休職日の賃金の60%保証やが、これは4日め以降でないと出ない。3日間は待機期間となり、休業補償は出んということや。

しかし、あんたは、こんなことくらい、先刻、承知のはずやと思う。あんたが、本当に知りたいのは「この業界ではあたりまえなのか?」ということのはずや。

あたりまえかどうか、この業界で公然とささやかれとる「ケガと病気は自分持ち」というのが昔からある。「体あっての物種」「体を壊せばそれまで」式な考えが根づよい業界なのは確かや。

ワシの知ってる販売店も概ね、こういう考えの所が多い。あんたと同じ、ケースを投げかけたら、ほとんどが、同じような答えやった。業界の常識では、その程度のケガは自分持ちということのようや。

念のため、このサイトの新聞販売店関係者の方たちに、例によってメールでのアンケートをお願いした。専業、奨学生、アルバイト配達員の現役や経験者の方々や。

この3連休中の忙しい中、16名中12名もの方々からメールを寄せて頂いた。この場を借りて、お礼を言いたいと思う。

この中で、やはり一番多かったのが、ケガは自分持ち式の回答やった。


ある元新聞奨学生の方からのメールを紹介する。


自分は新聞奨学生時代に、単独での事故は数回ありました。事故のほとんどが、たいした怪我もなく仕事にも影響がなかったので病院にすら行かずに済んだものです。

ただ、1回だけこけて手を突いた際に手のひらの皮がめくれたことがありました。最初は病院に行かなかったんですが、化膿している可能性があったため病院に行きました。でも、その分の治療費は全額自己負担です。

仕事を休まなかったので、たいした出費にもならなかった記憶があります。ちなみに、事故での怪我で販売所がそういう申請をしてくれるのは、軽い怪我だと稀だと思います。いくら仕事中の事故とはいえ、自己責任の部分が強いと思うからです。

配達中にした怪我は数多くありますが、上記の外傷以外で一番ひどかったのは、病院に行ってないのでわかりませんが左足脛の打撲(多分骨にひびが入った)ぐらいですね。仕事は休みませんでした。

販売所が申請する場合は、多分代配が必要なくらいの怪我をした場合ではないかと思います。販売所としては、申請することにより月々の保険料が高くなりますが、多分代配の費用等も保険が補ってくれるからではないかと思います。

自分の意見としては、『お金が入ってよかったね』ですね。本当に、仕事中とはいえ自分の不注意等による事故は、自己責任だと言っても過言ではないと思います。


また、あるアルバイト新聞配達員の方からのメールには、こうある。


質問の件ですが、申し訳ありませんが、ちょっと分かりかねます。
自分もそうですし、店の人間も仕事中に怪我をしたという話を聞いたことが無いので…。

ただ、ウチの店では専業員ならともかく、アルバイトが怪我をした場合は保険金は出ないような気がします。

わたしだけかも知れませんが、働くにあたって履歴書も出していませんし、なにやら紙に名前を書いただけで、どこの誰かも分からないような状態ですので…(店の配達範囲に20年ほど住んでいる自宅があるので店もどこの誰かは分かっているとは思いますが。)

調べてみると、アルバイトでも労災の保険金は下りるようですが、働いていてもどこの誰かも分からないような人間に保険金が下りるかどうか…。


また、ある地方紙専業の方は、メールで、こう言っとられる。


1、のこたえは店事態が小さい場合、社会保険に入ってないので労災の適用が不可能なのでは。まず社員の方に保険入ってるかどうか聞いてみたほうが良いと思います。

2、交通事故以外の勤務中のけがの場合どういう保険に入ってるかわかんなかったので私のケースでは、バイク運転中スリップして左ひじを電柱に強打、2、3日してもチラシ作業時ひじが非常に痛かったので整形外科でレントゲンをとりシップ治療してもらいました。

まずいとは思ったのですが医者には自宅の階段をふみはずしてひじを強打した旨を伝えて健康保険を使用しました。

3、掛け金によって保証規模が違ってくるのでは。店主にそこのところお聞きした方が良いとおもいます。


この他にも、ほぼ似たような意見が、後、8件あった。やはり、と言うか、業界の常識が浸透しとるように思う。自己負担的な意見が圧倒的やった。

ただ、一件だけ、東北の専業の方でこういうのがあった。


1.そもそも仕事中のケガは、アルバイトであろうとも、労災保険が適用されるのではないか?

労災は適用になります。そもそも労災は国の運営で行われているため、事業主としては保険を使うことにより厳しい調査が入ります。

事故の原因、どうして事故は起きたかなど。そのためあまり使いたくないのが本音でしょう。保険料が上がるとも聞いたことがあります。

そのため大抵の事業主さんは任意で損害保険に加入していると思います。そこから支払われたのだと思います。保障内容は分かりませんが。

2.それゆえ、治療に健康保険を使うのは誤りではないのか?
  
健康保険を使うのは詐欺です。健康保険は業務中は使えないことになってますから。

3.治療費はもとより、休業補償も上乗せされるべきではないのか?

労災を使えば60%〜80%の保障はつきますが(一日だけでも可能かは不明です)話を聞くと労災は使われていないようなので保障は事業主の判断に委ねるしかありません。(専業で月給であれば休んでも引かれないと思いますが)保障の上乗せとありますが保険詐欺など多発するため上乗せはありません。先に述べた保障のみです。


この人の意見は、かなり踏み込んだ意見や。かなり、核心をついてると思う。あんたとしても、一番、共感出来る答えやないかと思う。但し、業界では、少数意見ということになる。

最後に、ワシのアドバイスを伝える。

法律的な見解で言うなら、あんたの思うてることが正しいと思う。法律に則って、正当性を主張するのは当然の権利やから、どうするかの最終的判断はあんたが下すしかない。

ただ、送られて来たメールの文面からも分かるように、業界の常識として浸透しとることに異論を唱えると、確実に軋轢が生じる。下手をすると、この後、そこでは働きにくくなる可能性が高いと思う。

今回のような程度のケガであれば、販売所の対応で良しとするべきやないかな。世の中、正しいことを主張するばかりが、ええ結果を招くとは限らん。

それよりも、我慢出来ることやったら、知って知らん素振りをすることが得策やないやろか。ワシならそうする。

そして、もっとも、重要やと思う時に、伝家の宝刀として鞘から抜けばええ。例えば、骨折などの大怪我をした場合に、正当な権利として堂々と労災保険の適用を主張すればええということや。

それまで、このことは、自分の気持ちの中に収めとくのが、一番、賢いと思う。それが、本当の意味での保険やないかな。

因みに、労災保険に関して非常に分かりやすいサイトがあったから紹介しとく。

労災保険情報センターQ&A


このアンケートに関して、元新聞奨学生の方から、ある事情で回答が遅れていたということでメールが届けられたので、それを紹介しとく。


健康保険の件ですが、普通は労災加入なんですが、店によっては経費削減のために加入していないところもあると昔聞いたことがあります。

学生は奨学会がついているのでそのようなことはない(ただし、積極的に払ってもらうよう言う必要はある)と思います。

専業は店によりけりなのでわかりません。うちの店で専業入りたてが新聞つんだバイクが倒れてその下敷きになり骨折したときは全額店が出したようですが、配達業務以外の事務の仕事を毎日やっていたので休みはなしでした。

個人的な意見ですが、おそらくこの方の場合、労災を使ったのではなくバイクにかけてある自動車保険(原チャ保険?)の自損事故の特約での支払いを受けたのではないでしょうか?

もしくは自賠責で(対人賠償は運転者も含まれる、ような気がします。昔、損保でバイトしていたことがあるのですがうろ覚えなので聞いてみます)。

質問の1,2,3どの内容も正論です。
1,2は店によりけりです。3に限ってはどの店にいっても受け入れられないでしょう。こういった場合に備えて個人で保険(傷害や生命)にはいっておくことが必要かと思います。


この問題に関して、当サイトの法律顧問をして頂いている法律家の今村英治先生から貴重な情報を寄せて頂いているので、そちらも参考にして下さい。(ハカセ)

ゲンさんのお役立ち情報

その1 労災についての情報


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