新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.712 この場合は解約できるでしょうか?
投稿者 やまさん 20歳 学生 投稿日時 2009.4. 4 PM 11:44
はじめまして。いくつかかぶってるところもあったりはするかもしれませんが・・・
先日一人暮らしをはじめ、すぐにA新聞の勧誘が来ました。
そのときは「いつでもやめられるから・・・」等といってきて、僕は「来月になったら考える」といいました。
すると「わかった。じゃあまた来月直接来るから、そのときにまた読むか読まないか言って」と言って「じゃあここに名前と電話番号を」と言われるがままに書きました。(そのときはそれが契約書だとは知らなかった)
そして、「1年でいいよね?」といわれたので、とりあえず返事をしたら返ってくれました。
するとその月の終わりから新聞が投函されるようになり、おかしいと思い販売店に問い合わせたら「契約書はちゃんとある」と言われました。でも僕は契約書の控えをもらっていませんし、判子も押していません。
契約書をもらっていたら僕はおそらくクーリングオフをしていたと思います。
それから数日後、スーツを着た販売員と名乗る人がやってきて「購読ありがとうございます」と言ってきたので説明をしたら「販売店に確認する」と言って引き返し、それから数時間後にまたやってきて「こちらの手違いみたいなので今回の契約は無しにして、新たに契約を・・・」と言われました。
そこで僕は「来年以降にならないとわからない」と答えたら、予約と言う形で・・・ということで来年の1年間の契約を求められました。そのときも「必要なければいつでもやめれる」と言われたので、ついつい契約書に名前を書いてしまいました。(今回は契約書と認識しています)
しかし、いろいろ調べてみると予約という形でのトラブル等があるようで、怖くなってこの件についてはクーリングオフをしました。
それから数日後、そこの販売員の人が来て「今回のクーリングオフは承ったが、前回のは解約できない」と言われ、「話が違う。前回別の販売員の人が来て、あの契約は一旦白紙にしてくれると言った。」と言うと「このエリアは僕しか販売員はいない」と言われ「そのひとは拡張員です」と言われました。
さらに「その人は今年1年間の契約の後の契約を取りにきたんだ。」と言われました。」
てっきり僕は販売員と名乗り、月の購読料も安くしてくれたので、そこの現場で働いてる人だと勘違いをしていました。
僕としては今現在新聞を読む気もなく、経済的にも余裕はありません。違約金を払ってでも解約をしたいのですがこの場合は解約できるでしょうか?
ちなみに「今までの分の新聞代等は払うから解約して」と販売店に電話をしても「無理。1年契約は1年契約。」の一点張りです。
回答者 ゲン
『この場合は解約できるでしょうか?』ということやが、あんたのケースは解約可能な事案やと思う。
その法的根拠を幾つか挙げる。
1.「不実の告知」「錯誤」による契約無効の主張
「いつでもやめられるから・・・」、「わかった。じゃあまた来月直接来るから、そのときにまた読むか読まないか言って」と言って、あんたに契約書と知らせず、またいかにも契約書とは違うように錯覚させ、言葉巧みにサインさせたというのは、消費者契約法の「不実の告知」に該当する可能性がある。
また、民法第95条の「錯誤による契約は無効」が摘要される可能性が高いと考えられる。
但し、それには、確かにその勧誘員が、それを言うたという証拠とあんたがそれを契約書と認識してなかったという具体的な事実が必要になる。
加えて、勧誘員の言葉を否定されると、言うた言わんという水掛論になりやすく、法的にもそう認められるかどうかは微妙なところがある。
口頭で伝えただけというのは、それを信じるかどうかは、その相手次第やさかいな。確実性に欠けることやというのは認識しとかなあかん。
しかし、現在、新聞協会の姿勢として、この手の揉め事は、申し合わせとしてそう訴えた契約者側の弁を採用する可能性が高くなっているということがある。
それには、去年、2008年6月11日に成立した「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律」が大きく影響しとると思われる。
この法律の第3条ノ2第1項に「勧誘の意志の確認」というのがある。
販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。
と、規定されたというのが、それや。
つまり、「これから、新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになるわけや。
それに照らせば、今回、あんたに言うたような、その勧誘員のやり方は、はっきりと「契約の意志を示してない」わけやから、その法律に違反することになる。
しかも、それについては、証拠云々よりも、契約者がそう訴えたということの方を重視して取り上げるというのが、新聞協会としての公式な姿勢でもある。
せやから、その事実を新聞社の苦情係に訴えれば、それが通る可能性があるということや。
この法律の施行日はまだ決まってないが、遅くとも今年中には施行される予定になっている。
新聞各社としても、その法律の制定は知っているさかい、例え、その施行日になってなくとも、それに該当するような事案を無視することはできんということやな。
あんたの場合は、その販売店の人間の言うところの「後の契約」をクーリング・オフもしとるわけやさかい、訴えの信憑性は高いと判断されるはずやと思う。
通常、ほぼ同時期に交わした契約の場合、先の契約だけを認めて、後のものだけをクーリング・オフするというのは考えにくい。
第三者がこの話を聞いた場合、あんたの言われるように、その販売店の人間が『「こちらの手違いみたいなので今回の契約は無しにして、新たに契約を・・・」と言われました』ということの方が真実味があり、その契約そのものが嫌やからこそクーリング・オフしたと捉えるのが自然やろうと思う。
もちろん、ワシも、実際に現場でそういう真似をする輩(勧誘員)は嫌というほど見てきとるから、あんたの話を100パーセント信用するがな。
ワシに限らず、この業界の人間なら、そういうこともあるやろうなというのは百も承知やから、ほとんどがそうやと思う。
新聞社の苦情係も件(くだん)の新聞協会の申し合わせ事項というのは承知しており、たいていの担当員もその話を信用するはずや。今まででも、そういう苦情は山のように聞いとるやろうしな。
但し、このクーリング・オフは、文書で出してなあかんで。口頭で「クーリング・オフする」と伝えただけでは、法的にはクーリング・オフは成立せんさかいな。
サイトの『ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報』 を見て貰えば、そのことが良く分かるはずや。
2.契約書の控え不渡し、およびクーリング・オフ告知違反による無効の主張
『僕は契約書の控えをもらっていません』というのは、契約そのものが認められない可能性が高い。契約書の原則は、同じ内容のものを双方が持つということやさかいな。
新聞購読の場合、契約書を渡してないということは、クーリング・オフの告知をしてないということを意味する。なぜなら、そのクーリング・オフの告知文は、たいていその購読契約書の裏面に書いてあるからや。
それを貰ってないということで、クーリング・オフの告知違反に問えるということや。
クーリング・オフの告知がされてないということは、その期限がないと考えられるから、いつでも、理屈上、クーリング・オフが可能やとなる。
もちろん、この告知義務違反のみを理由に契約解除も主張できる。
あんたが、『契約書をもらっていたら僕はおそらくクーリングオフをしていたと思います』と言っておられるとおり、実際に契約書を貰っていれば、それが可能やったわけやしな。
しかし、このケースでは、その販売店側が、その契約書を渡していると主張する場合がある。
あんたの話からは、そのあたりのことがはっきり分からんが、もし、その契約書の不渡しをその販売店の人間が認めるような言動をしとるか、する可能性があるのやったら、再度確認することや。
「最初の契約書の控えを貰ってないのですが、それはなぜですか」と聞けばええ。その返答の中で、「それは拡張員のしたことやから知らん」とでも言うようなら、あんたの勝ちになる可能性は高い。
3.勧誘員の使用者責任を問える。
拡張員は、組織上は新聞販売店とは別会社の人間やが、それは契約者には何の関係もない。
例えそうであっても、表向き、新聞販売店の意向で営業活動をする仕組みに業界ではなっている。また、勧誘員は身分証の携帯を義務づけられていて、その大半が、そこの販売店の社員証なわけや。
つまり、実態はどうあれ、形の上では販売店の使用人として勧誘営業しとるから、その言動の責任を負う義務がある。使用者責任というやつや。
せやから、
「今回のクーリングオフは承ったが、前回のは解約できない」と言われ、「話が違う。前回別の販売員の人が来て、あの契約は一旦白紙にしてくれると言った。」と言うと「このエリアは僕しか販売員はいない」と言われ「そのひとは拡張員です」と言われました。
と、それやから、その拡張員が何を言うたとしても販売店に関係ないといういう言い訳は一切認められんということになる。法的には、その勧誘員の弁はそのまま販売店の言葉として解される可能性が高いと考えられるさかいな。
ただ、それも今のところ、その人間とあんたの間だけで交わされた会話やさかい、それを否定されると難しくなる。
その証拠を掴むためにも、同じような質問をして、今度はそれを録音しとくことや。
そうすれば、「拡張員のしたことやから知らん」という言い訳自体が、あんたの主張する言動があったと認めることになるさかい、有利になると思う。
4.中途解約制度を利用する。
特定商取引に関する法律の第49条に、新聞購読契約などのように「長期間にわたるサービスはクーリングオフ期間経過後であっても、一定の解約手数料を払うことで契約解除できる」という規定がある。
あんたがそれを望めば、その販売店の『「無理。1年契約は1年契約。」の一点張りです』という拒否は法的にはできんことになっている。
それを伝えれば、たいていの販売店は、それに応じるはずやと思う。但し、その金額については特に決まりのようなものはないさかい、双方で話し合って納得できる線で折り合うしかない。
しかし、ごく希にそれでも納得せん販売店があるのも事実や。一切の交渉をせず、契約書を盾に新聞を入れ続け、集金しようとする。
その場合は、あんたの考え、気持ちの持ち方次第で、どうするかを決めたらええ。
今回のことが納得できんのなら、とことん争うのも手やし、あきらめてその契約に従ういう選択もある。
とことん争う気があるのなら、1〜3までの根拠で、まずは新聞社の苦情係にそう訴えることや。
それで、ラチがあかんかったら、新聞代の不払いという手がある。
但し、その場合は、一応、その契約の法的無効を明記して、その新聞の受け取りと、支払いを拒否するという文面の内容証明郵便を出しといた方がええと思う。
それがなく、あんたが不払いをした場合、その販売店が民事裁判に訴えてその支払いを請求するというケースも考えられる。
その際、例えその契約の無効が認められたとしても、その間に配達された新聞代は支払わなあかんことになりかねんさかいな。
内容証明郵便で、その支払い拒否を明確にしとけば、その日以降の新聞代の支払いを免除される可能性が高くなるということや。
まあ、ほとんどは販売店側から裁判に訴えるというケースはないやろうが、皆無とも言えん。少なくとも「裁判するぞ」と脅かす販売店くらいはあるようやさかいな。
せやから、それなりの対抗措置は考えとく必要がある。
裁判というと大事(おおごと)やと萎縮する人もおられるが、この手の民事裁判は、そんなに大袈裟に考える必要はないと思う。
簡単に、訴えられた際の民事裁判についての手順と心構えを知らせとく。
普通、裁判になると、弁護士を雇ったり裁判所に出向いたりと金がかかると思われるやろうけど、弁護士を雇わんかったら、訴えられた側は、交通費くらいしか金はかからん。
別に、民事裁判は絶対に弁護士を雇わな出来んということでもない。特に民事で訴えられた場合はな。それに対して訴える側は、法律の知識や法的手続きなど素人ではなかなか難しい面も多いさかい、たいていは弁護士を雇うがな。
どうしても裁判に弁護士が必要なのは、刑事事件で検察に起訴された場合のみと覚えていたらええ。その場合でも、その弁護士を雇う金がなければ無償で国選弁護士がつく。
裁判所に行くために学校や仕事、アルバイトなどを休むことになるかも知れんが、弁護士を雇う費用のことを考えれば安いもんや。
こんなことを言えば、弁護士先生方からクレームがつくかも知れんが事実や。ワシ自身、何度もその経験をしとるさかいな。
もちろん、その費用対効果を度外視してでも争いたい、勝ちを得たいと言われるのなら、弁護士をつけてた方が有利やとは言うとく。たいていの場合、その相手である訴える側には弁護士がついとるもんやさかいな。その対抗にはなる。
まず、裁判所の出頭通知というものが来る。指定された期日と時間には必ず出向く。この場合、絶対に行かなあかんのは、契約人や。出頭通知にもそれが記載されとる。
これを無視したら、いくら分のあることでも、民事では一方的に相手側の言い分が認められることになる。
民事の場合、初めは調停から始める。場所もテレビドラマに出て来るような物々しい法廷やない。こじんまりとした会議室みたいな所が多い。中央に大きめなテーブルがあり、その回りに輪になって座る。対面の場合もある。
裁判所の方は、裁判官と書記官が立ち会う。裁判官の服装も普通の役所の人間が着てるスーツ姿や。喋り方も取り立てて変わっとる所もない。訴えた側は、弁護士と訴えた人間が来る。弁護士だけの場合もある。
訴状の説明があり、その認否を訴えられた人間に聞く。間違いと思うことははっきり言う。こういう、訴えられた側が理不尽と思っている場合は、普通は争う姿勢を示す。
ここで、ポイントなのは、相手方に理解を示すような発言をする必要は微塵もないということや。訴えるという行為自体が喧嘩を仕掛けているわけやさかいな。
せやから、そんなことまでもと思うような事でも、相手の落ち度は徹底的に言うという姿勢が必要になる。
そのためには、証拠となるものは出来るだけ多く集める。先に言うた、録音というのもその一つや。
あんたの場合は、前回の契約書のコピーと今回クーリング・オフをしたという契約書を必ず持参する。クーリング・オフの場合は、それをしたという証拠になるものやな。
具体的には、内容証明郵便の控えか、簡易書留ハガキのコピーということになる。
加えて、勧誘時の状況は詳しく文書で作成しておく。この文書の作成というのが民事裁判の場では大きく物を言う。
ある意味、民事裁判というのは書類審査みたいな要素が強いさかいな。それにより信憑性が争われるケースが多い。
相手の弁護士は、そちらの不備を突っ込んで来る。今回の場合やと、言うた言わんの水掛け論に持ち込む可能性が高いと思われる。
ここで、理不尽やと思って腹を立てん方がええ。裁判とはそうしたもんやさかいな。
特に弁護士は依頼人に落ち度が高いと思うても、少しでも有利にすることが仕事や。そのためには相手の落ち度を突くしかないということを分かってなあかん。
相手を攻撃し合うのが裁判で、和気藹々とした話し合いの場とは違う。それが分かっとらんかったら、いくらこちらが正しいと思っていても足下をすくわれる恐れがある。
裁判官はそれらのことが形式通り済むと、どちらか一方を室内に残し、他方を室外で待たす。それぞれと面談する。裁判官は双方の話しを聞いた上で、助言という形で意見を交え、相手の方針を確かめる。調停にするか本裁判に進むかや。
この場合、訴えられた側は調停を選ばん方がええと思う。この場合の調停は、ほとんどが金額の交渉やからな。一銭も払う気がなかったら、一切の交渉は、はねつけることや。
参考までに、本裁判に進むと、法廷での争いとなる。これはテレビドラマで見るような物々しさがある。このときには、弁護士を雇う方が無難やろうと思う。
慣れん者には、この雰囲気自体が強烈なプレッシャーになる。こちらに弁護士がいなければ、相手の弁護士の攻撃を防ぐのは普通はしんどいからな。逆に言えば、ここまで来てから初めて弁護士に頼めばええということや。
もちろん、自信があれば、それも必要ないがな。
因みに、弁護士費用やが、その弁護士によっても事件の程度によっても違いがあるが、民事の場合は一件、30万円程度が一般的や。
裁判の結果やが、今回の事案やと、かなりの高確率であんたの勝訴になるとは思うが、ワシはその裁判官やないから、絶対とまでは言えん。
今回のケースは、相手の具体的な言質が録音などの証拠により取れていればええが、そうやなかったら、その信憑性の判断は、その裁判官個人の心証に委ねられるさかい、何とも言えん部分があるのは確かや。
まあ、このことは参考程度として考えてくれてたらええがな。ワシの知る限り、新聞販売店が、客を裁判に訴えたケースはないはずや。そんな話も聞かんからな。
ただ、新聞代の支払い拒否をした場合、「訴えるぞ」と脅しをかけられる可能性はあるから、そのときのために理論武装をする意味で覚えとくのは悪いことやないとは思う。
また、実際にそういう自体になった場合でも、それほど慌てることもないやろうしな。
その販売店が裁判に持っていくか、どうかは別にして、あんたの意志や出方次第でその販売店の対応も変わるのやないかと思う。
あまり、感心した話やないが、販売店の中には学生さんとか若い人が相手の場合、それだけで甘く考えて高飛車に出るケースがままあると聞く。
要するに世間の事を何も知らんボンボンやと決めつけ見下すわけや。それがために、比較的強気な態度に出る。
これが同じような事案でも、ヤクザのようなややこしい相手と見たら、あんたに言うたようことはなく簡単にあきらめるという販売店があるのも事実やさかいな。
せやから、徹底抗戦を宣告することで、そのややこしい相手と見て貰える可能性もあるということや。
あるいは、あんたのお父さんあたりに、今回の事情を話して法的な面から、その販売店と強気に交渉して貰うたら、また違う結果になることも考えられる。
その販売店と争う方法は、いくらでもあるということや。
最後に苦言を呈するようやが、『いつでもやめられるから』という契約もなければ、『予約と言う形』の新聞購読にサインをさせるということもないというのは分かっといてほしいと言うとく。
自分の名前を自筆でサインすれば、それはすべて契約書と考えて、まず間違いないと。
まあ、あんたも今回のことで、それは分かったとは思うがな。以後、類似のケースは気をつけることや。
あんたの取るべき方法としたら、「徹底抗戦」、「和解による金銭での解決」、「あきらめてその契約に従う」ということやが、いずれを選択されるかは、あんた自身で良う考えて決められたらええと思う。
何かあれば、また気軽に質問してくれたらええさかいな。ほな、頑張って。
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