新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.727 法務局に供託するというのはどうでしょう?
投稿者 D.Nさん 関東在住 投稿日時 2009.5.10 AM 11:46
ゲンさん博士さん、お久しぶりです。
Q&A,NO.724を読んで少し提案というか質問があります。
現状質問者さんのほうに新聞代3か月分の負債がありかつ解約を望み、消費者センターのほうで販売店が新聞代3か月分での解約に合意していることを認識しているという状態ですよね。
そして質問者のほうが相手の恐喝的な対応におびえている。
こういった場合、解約金兼原状復帰代として、新聞代3か月分を法務局に供託するというのはどうでしょう?
多分供託すれば、相手が裁判所を通さず直接金銭を要求するのは違法行為となると思います。
素人考えですので穴がありそうな気がしますし、このような供託の仕方がありかもよくわかりませんし、どの程度の費用がかかるかもわかりませんので、遠慮なく欠点を突っ込んでくれれば幸いです。
回答者 ゲン
『解約金兼原状復帰代として、新聞代3か月分を法務局に供託するというのはどうでしょう?』というのは、面白い発想やな。
それが可能なら、ワシらにとっても、その選択肢が増えるわけやから、アドバイスをする上でも、その方がええんやけど、残念ながらこのケースでは難しいと言うしかない。
あんたの『多分供託すれば、相手が裁判所を通さず直接金銭を要求するのは違法行為となると思います』というのは違う。
法務局に供託金をすれば、相手側、つまり販売店にその通知が届くようになっている。それが届けば、その相手側には、還付請求権というのが発生するから、裁判などしなくても自由にいつでもそれを引き出すことができるわけや。
ここで供託制度について簡単に説明する。これは実際、ハカセが法務局に行って供託の担当官から聞いた話やという。
供託するには、「法令に供託を義務付けまたは許容する規定がなければすることはできない」とされている。
これを定めた法令の条文(供託根拠法令)には、民法、民事訴訟法、民事執行法などいろいろある。
このケースで摘要されそうなのは、その中の民法第494条の弁済供託に関する項目やろうと思う。
金銭その他の財産の給付を目的とする債務を負担している債務者が、その債務を履行しようとしても、債権者が受領を拒んだり、債権者の住所不明によりその受領ができなかったり、あるいは債権者が死亡し、その相続人が不明である等債務者の過失によらないで債権者を確知できない等の理由により、その債務の履行ができないときに、債務の目的物を供託所に供託することによって債務を免れることができる。
というものや。
ここで『債務者が、その債務を履行しようとしても、債権者が受領を拒んだり』という点が問題になる。
Q&A,NO.724のケースでは、その相手の販売店が解約金としての『3か月分の無料サービス分』の受け取り拒否をしていないと考えられる。
その消費者センターの相談員が、相手の販売店に確認したら『その話は、3か月分払ってもらうことで解決している』という答が返ってきたというのが、それを証明しとるさかいな。
むしろ、相談者の方に『3か月分、払って終わりにしたいです』と言いながらでも『それで済むのはどうしても得心が行きません』と、納得していないと思われるフシがある。
つまり、供託する条件としての『債務者が、その債務を履行しようとして、債権者が受領を拒んだ』というのを満たしてないわけや。
ただ、その販売店の人間が売り言葉に買い言葉の延長として『オタクは気分が悪いから、違約金は要らない』というのを、その拒否と受け取るとする。
あるいは、契約の解除そのものを拒否したとして『3か月分の無料サービス分』の新聞代の受け取りを拒んだとする。
相手が、その供託金を受け取らんかったら、この考え方は成立するかも知れん。
しかし、その場合は、その販売店は、すでにその『3か月分の無料サービス分』の新聞代
の返還は眼中にないわけやから、それが宙に浮いたとしても一向に差し支えないわけや。
それにより、契約の解除が強制されるわけやないさかいな。
そして、『そのかわり、新聞を入れ続けるから、新聞代を払わないと訴える』というのも、供託することで対抗するのは難しいと思う。
それならと、今度はその新聞代を供託しようとしても、相手がその受け取りを拒否することはないやろうから、その条件に外れる。
それでも、相手と揉めているというのを理由として、その受け渡しのために会えんということで、何とかその供託を認めて貰うとする。
その場合、新聞の支払い義務というのは1か月毎に発生するから、1か月分ずつ毎月法務局に供託手続きをして、その認定を受ける必要が生じる。
それが、面倒やということで数ヶ月分まとめてそれをしようとすれば、今度はその間の支払い請求を止めさせることが不可能になる。
供託に必要なものは、供託書(法務局で配布)、支払うべき金銭、被供託者(この場合、相手の販売店)宛の切手を貼った封筒だけということになり、そのための費用というのは必要ない。しいて言えば、その切手代くらいやな。
ただ、そんなややこしいことまでして供託したとしても、先にも言うたように、相手側には還付請求権というのが発生するから、特に裁判などしなくても自由にいつでもそれを引き出すことができるわけや。
つまり、供託というのは、相手がその受領を拒否するという前提がない限り成立せんということや。
しかも、それがないと相手が困るということが条件になる。
このケースでは、そのいずれにも該当せんと考えられるから、せっかくのご提案に水を差すようで悪いが、その供託をするという意味が何もないとしか言えん。
ただ、この供託という考え方は、他のトラブルに使える可能性はあると思う。
例えば、契約時には「2000円」でええからと言われて契約したが、実際には「3000円」請求されたので、その「2000円」を供託するというものや。
これなら、契約者はその支払いをする意志があり、相手の販売店はその受け取りを拒否したということになる。
この場合なら、その販売店が、あくまでも「3000円」を請求する限り、裁判を起こすしかないということになるわけや。
もっとも、それについても、そのケース毎で若干、事情は違うてくるやろうがな。
ただ、そういうアドバイスの選択肢を教えて頂いたという意味で、今回のご提案はとても有り難かったと思う。
書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』好評販売中