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NO.730 有給休暇の話をしようと思いますが
投稿者 匿名希望さん 新聞販売店従業員 投稿日時 2009.5.19 AM 6:50
お久しぶりです。覚えていらっしゃいますか?
前に有給休暇について質問、ご回答していただいたものです。
6月15日に販売店を退社する事になりました。勤務年数は去年の3月半ばから退社予定の6月15日までです。
有給休暇の話をしようと思いますが、しても大丈夫ですか?
このぐらいの勤務年数では話をしないほうが良いですか?
回答者 ゲン
『覚えていらっしゃいますか?』かということやが、良く覚えとるよ。去年の7月頃の相談やったと。
もっとも、ワシが忘れていたとしても、同じメールアドレスで相談されて来られる限り、ハカセの方にそのデータが残っとるから、誰からのどんな相談なのかというのは、すぐ分かるがな。
『有給休暇の話をしようと思いますが、しても大丈夫ですか?』ということやが、辞める日まで決まっているのなら、別に構わんと思う。
今更、それを言うたところで、怒って解雇もないやろうからな。
ただ、あんたの過去3回の相談内容からは、その販売店経営者の性質がもう一つ掴みにくいので、それを言うてどういう態度に出るかは何とも言えんさかい慎重にした方がええとは思うがな。
以前の回答で、この業界には昔からの慣習として有給休暇がないのは当たり前という風潮があるという類の話をし、実際にも、多くの販売店がそれを認めることはないやろうと言うた。
この業界で慣習となっていることに異論を挟み、正論を唱えて正当な権利を得ようとするのなら、それ相応の覚悟を決めなあかんということも。
それ相応の覚悟とは『辞めても構わん』ということを指す。そうやないのなら、ぎりぎりの状況になるまで我慢するしかないとアドバイスした。
あんたは、そのときのことを覚えていて、今がその状況やと判断し、この相談をされたのやと思う。
その覚悟さえあれば、前回でも言うたように、
労働基準法第39条で、雇用者は労働者が6ヶ月以上働き、その就業日の8割以上出勤した場合には、6ヶ月経過後には、その後の1年間に10日間の有給休暇を与えなければならないと決められている。
ということを根拠に、その有給休暇の要求をすればええ。
但し、その場合「その権利があるから絶対貰う」という強硬な姿勢で交渉するのはどうかと思う。と言うより、それは止めといた方が無難や。
あまり、それを言い過ぎるとヤブヘビになる畏(おそ)れがあるさかいな。
その法律を、あんたの場合に当て嵌めると、『去年の3月半ばから』勤めたということなら、『6ヶ月以上働き』という条件がクリアされ、その権利が得られるのは、去年の9月半ばから今年の9月半ばまでの間ということになる。
前回のアドハイス時に、
基本的には労働者はいつでも自由に有給休暇をとることができる。
但し、業務に重大な支障が生じる場合に限り振り替えらさせられることもあるとされとる。これを、時季変更権という。
と言うたが、その『時季変更権』というのを盾に取られることも考えとく必要がある。
あんたとしたら辞める6月15日までに、その10日間の有給休暇を消化したいという考えやろうが、法的には、販売店側はその後の3か月間までに与えたらええということになるわけや。
そうなれば実質的にその時期には辞めとるから、その有給休暇の請求を時季変更権を使われ先延ばしにされると、それを取ることが難しくなる。
こういう場合、その辞めると宣告する前に、その請求をして消化してしまうか、今年の9月半ばの期限がくる10日前あたりで言えば、ええということになる。
もっとも、辞める前やとその請求をしても一笑に付され、取り合って貰えないという危惧もあるし、ヘタをするとその時点で揉める畏(おそ)も十分考えられるけどな。
後者の『今年の9月半ばの期限』近くまで待つというのも、有給休暇の消化だけが目的ならそれでもええが、辞めるにはあんたなりの事情もあることやろうから、現実的な解決策やないわな。
せやから、現時点では、なるべく穏便な形で、「ある人から、半年以上働けば、次の年に10日間の有給休暇が法律で貰えるはずだと聞いたのですが、うちの会社(販売店)では、どうなっているんでしょうか」と尋ねてみることや。
この場合、できれば、その店主と1対1のときに、他に誰もおらんところでの方がええと思う。その方が店主も折れやすいさかいな。
その店主次第やが、それならと、書類上その辞める日を10日間先延ばしにしてその分の給料を貰えるかも知れんし、その有給休暇分を買い上げたことにして金銭で支払ってくれる可能性も考えられる。
もちろん、「とんでもない。この業界にそんなものはない」と断られることもある。
この件で販売店を擁護するというのでもないけど、販売店は販売店なりに苦しい立場があるわけや。それは、あんたも理解されておられるとは思う。
たいていの販売店は手一杯の人員でやっているから、誰かが休めば、即、他の誰かがその分の負担をせなあかん。ただでさえ過酷な仕事がより過酷になる。
日々の新聞配達量は変わらず、何があっても休めんわけやさかいな。
余裕のある販売店なら別やが、一杯一杯の人員でやっている所に、法律の決まりを持ち込んでも、どうかなという気がする。
もちろん、法律の決まりがあることやから有給休暇を請求すること自体は当然の権利で一向に構わん。
ただ、穏便にと考えるのなら、どういう返事があろうと、この業界はそんなところやと承知して従うというのも選択肢の一つやとは思う。
しかし、いくら昔からの業界の慣習があり、それなりの事情があるとはいえ、こういうアドバイスしかできんのは、ワシも残念で仕方ないがな。
この有給休暇の考え方というは、その業界、会社によってかなり違いがあると、つい最近になって知った。すべてが、その法律どおりやないと。
今年、東海の一流自動車企業に就職した、ハカセの長男でシン君という子がいとるのやが、その彼の話によると、「有給休暇は積極的に取るように」と、社内研修の際に指導されたという。
しかも、入社6か月未満の者は1か月めから取得可能で、1か月めで1日、以降1か月毎に1日増え、6か月越えた時点で、法律の規定どおり1年で10日間の有給休暇が与えられるようになると。
さらに、その勤続年数により、有給休暇の日数が毎年増え続け、最大で6年6か月後の勤続時には、1年で20日になるという話や。
またこれは、決まりでも何でもないということやったが、コウ君が体調を壊して休んだ翌日、出社すると、会社の方から「有給休暇扱い」にするから「その申請をするように」と言われたそうや。欠勤にならんからと。
これは新入社員ということや、この企業だけに限った特別な処置、あるいは直属の上司の温情があってのことなのかは分からんが、この新聞業界に身を置く者としては、何とも羨ましい限りの話ではある。
しかも、それは現在の多くの企業においては取り立てて特別なことでもないらしい。
それが社会の趨勢(すうせい)と言えるのかどうかまでは、すべての職種を調べたわけやないから何とも言えんが、それと比べ、ワシらの業界が、如何に時代遅れなのかというのを痛感したのは確かや。
この業界は、いつの時代にも慢性的な人手不足というものが続いている。
それを解消するには、この一流自動車会社並とまではいかずとも、せめて法律の決まりくらいの有給休暇は何の問題もなく取れるようにする必要があると思う。
仕方ないで済ませていたら、いつまで経っても仕方ないということにしかならんさかいな。
それでは先がない。
まあ、これは、この仕事を辞めると決めた今のあんたには、あまり意味のない話かも知れんがな。
ただ、世間話にでも、「他の会社ではこういうことをしているようですよ」、「せめて有給休暇は常識ということになれば人手不足の解消になると思いますよ」とその店主に言えば、あんたの要求も案外すんなり受け入れられるかも知れんとは思う。
保証はできんけどな。
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