新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.739 勧誘トラブルは学校教育が不十分だからか?


投稿者 K Mさん 30代男性 千葉県在住  投稿日時 2009.6.12 PM 10:21


新聞の勧誘トラブルの原因は学校の消費者教育が原因ではないかと思います。

まず客側は消費者教育が不十分だから「タダでいいから」「いつでも解約できる」と言われると鵜呑みにしてトラブルになってしまい。

勧誘する側は労働法、社会保障について教育されてないから失業し、生活に困り仕事を探しても新聞勧誘の仕事しか見つからないから勧誘の仕事をしてノルマが達成できずに「タダでいいから」などと言ってしまうと思うのです。

私の場合は学校卒業後は非正規の仕事しか見つかりませんでしたが会社がやめてくれと言ったら「ハイそうですか」と従うしかないと思い込んで失業したこともありました。

現在ならインターネットが普及して新聞の勧誘トラブルは消費者センターやゲンさんのサイト、ウィキペディアの新聞拡張団の項目を見れば防げますし、不当解雇の対処の仕方も労働組合や公的機関に相談することや失業給付、生活保護についても知ることができます。

しかし、私が学校を卒業したころはパソコンは高価でインターネットもまだ始まったばかりで生活に必要な情報は入りませんでした。

今でもインターネットを見ることの出来ない家庭もあるでしょうから学校で消費者教育をすれば新聞拡張のトラブルだけでなく悪質商法や契約のトラブルを防げるでしょうし、労働、社会保障のことを教えれば不当解雇に泣き寝入りする人を減らせ生活保護の出し惜しみによる餓死や刑務所に入るためにワザと犯罪を犯す人を減らせると思います。

具体的な教え方は社会の教科書に生活に関することを掲載し授業で教え、卒業する生徒には小冊子を配るようにすれば効果があると思います。

消費者教育については政府与党からも実施しようという声がありますが、労働、生活に関することはもっと学校で教えたほうがいいという意見に賛成できますか?


回答者 ゲン


『労働、生活に関することはもっと学校で教えたほうがいいという意見に賛成できますか?』ということやが、個人的には賛成したいと思う。

ただ、どの時点でそれを教えるのかという問題があるのやないかな。

普通に考えて、国が強制力をもって決定、指導できるのは義務教育期間ということになるから、小学生には理解しにくいということで中学生ということに落ち着くと思うが、現実的に見て、それで効果があるのかどうかは大いに疑問やと思う。

それは、教える意義とか内容、方法の問題やなくて、それを勉強する側の中学生の立場に立って考えた場合、そんなものを覚えても無意味やと受け取るのやないかという気がするからや。

これは、学校教育の大きな弊害の一つやと考えるのやが、中学は高校入試のための受験期間という位置づけが強いように思う。

極端なことを言えば、高校受験のために中学があると。

しかも、これは今だけに限らず、少なくともここ30年以上は続いていることで、それなりに歴史の積み重ねがある。ある意味、制度化されとると言うてもええくらいやろうと思う。

一般の高校入試は、公立高校で国語、数学、英語、社会、理科の5教科。私立高校になると国語、数学、英語の3教科に絞られるというのが多い。

それの優劣で希望校に入学できるかどうかが決まるわけやから、それを望む多くの中学生は、その受験科目だけを必死に勉強する。

他の教科は内申の査定対象にはなるのかも知れんが、あまり力を入れることもなく、おざなりにされていると考えてええ。

そんな状況で、「消費者教育」を導入しても果たして効果が望めるのやろうかということや。

その効果を望めるようにするためには、ええ方法とは言い難いが、その「消費者教育」を受験科目として導入するしかないと思う。

しかし、今の学校教育のシステムで、そうするのは難しいわな。

百歩譲って、「社会」の教科の中に、それを組み入れた教育ということにでもすれば、ある程度の知識を植え付けることは可能かも知れんが、そうなると、他の歴史や政治、経済などとの関係で、茶を濁した程度の授業にしかならんやろうと考える。

ワシらが中学卒業する頃の昭和40年代初めまでは、卒業と同時に働く者もまだ相当数いてたから、高校受験など気にせず、それを学ぶ、また教えるということもできたと思う。

その「消費者教育」のようなものは社会に出る直前が、勉強するには最もええ時期やさかいな。

しかし、現在のように、94.4%の高校進学率を誇る日本の中学教育では、それを望むのはとても無理や。

本来、年齢的には高校で「消費者教育」なるものを教える方が最もベターやと思う。

もちろん、高校でも大学受験というのはあるが、その進学率は2007年で短大も含めて53.7%やから、まだおよそ二人に一人は、進学とは関係がないということになる。

それに、その大学受験する者も、合格すると親元を離れ独身生活をするケースが多く、その直後に、その彼らを狙う勧誘員の熾烈な勧誘の洗礼を受けることになる。

その知識がないために、あくどい勧誘員に騙される、ええように扱われるということが起きるわけや。

実際、このQ&Aにも、その大学生からの相談が相当数あるさかいな。

あんたが『現在ならインターネットが普及して新聞の勧誘トラブルは消費者センターやゲンさんのサイト、ウィキペディアの新聞拡張団の項目を見れば防げます』と言われるように、その学生さんたちも、事が起きてからそうされとるわけや。

というか、その知識がないさかい、事前にそれと注意することなんかできんわな。

勧誘員に美味しそうな話を並べられる、あるいは威圧されると、ついそれに従うてしまうということになる。

それを未然に防ぎ自身の身を守るためにも、その「消費者教育」が必要やと諭せば、その受験生たちも一応の勉強もするのやないかと考えられるし、簡単な知識くらいは身につくやろうと思う。

さらに、あんたの『卒業する生徒には小冊子を配るようにすれば効果があると思います』という提案には、ワシも大いに賛同できる。

しかし、高校は義務教育の範疇やないから、国が絶対にそうしろとまでは強制することができん。ある程度は、その高校独自の教育方針というのに任せなしゃあないさかいな。

やはり、進学校として名を馳せとる高校では、どうしても受験科目優先の授業ということになるやろうしな。生徒もおそらくは、それを望む。

そして、実際の被害者になるのは、その彼らの可能性が高いと思われるわけで、もっとも必要と思われる所に拒否、おざなりにされる可能性があるという矛盾が生じる。

せやから、その「消費者教育」を高校に導入するとしても、強制力がなければ、どこまで効果があるのかは怪しいと思うということや。

高校を、「義務教育」とすればそれはある程度、解決しそうや。実質的には大方の国民が通うてるわけやから、高校を義務教育化しても問題は少なそうに思うがな。

そうすれば、強制的にでもその「消費者教育」は可能やろうと考える。

もっとも、それが簡単にできんシステムというのも、すでに出来上がっとるさかい、よほどの指導力を国が発揮せん限りは難しいやろうと思う。

ただ、現在でも高校によれば各界の著名人を講師として招いて「人生教訓」めいた講話を実施しとる所があるとは聞くがな。その中には、そういった内容もあるようや。

少なくとも、ハカセの長男シン君が通っていた高校では、結構、頻繁にそういうのがあったと言うてたさかいな。

いずれにしても難しい問題や。単にこうした方がええという提案だけでは、なかなか解決つかんやろうからな。

『消費者教育については政府与党からも実施しようという声があります』ということに期待をかけるしかないやろうが、その政府与党が次の選挙でも、その政府与党でいられるかどうかが怪しい現状では、それもどうかなという気がする。

もっとも、それでも、こういう問題に対して提案したり議論したりするのはええ事で、その声が大きくなれば、次にどの政権が樹立しようと無視することはできんやろうから、それなりに意味があるとは思う。

『まず客側は消費者教育が不十分だから「タダでいいから」「いつでも解約できる」と言われると鵜呑みにしてトラブルになってしまい』というのは、確かにあるな。

しかし、『勧誘する側は労働法、社会保障について教育されてないから失業し、生活に困り仕事を探しても新聞勧誘の仕事しか見つからないから勧誘の仕事をしてノルマが達成できずに「タダでいいから」などと言ってしまうと思うのです』という指摘は、ちょっと違うのやないかと考える。

失業するのは、それぞれのケースでいろいろあるやろうから、単に『労働法、社会保障について教育されてないから』ということではないと思う。

いくら『労働法、社会保障について』について詳しくても、勤務する会社が倒産、あるいは業績悪化によりリストラを余儀なくされたら、個人の力ではどうしようもないさかいな。

特に今は、明日、誰が失職するかも分からんという労働者にとっては暗黒の時代に突入しとると考えられるから、よけいやと思う。

『新聞勧誘の仕事しか見つからないから勧誘の仕事をして』というのは、どうやろうか。

すぐに見つかる仕事というのは新聞の勧誘だけとは限らんと思うけどな。それ以外にいくらでもある。

現在、新聞拡張団では、住民票の提示は当然としても、保証人まで要求しとる所が多く、一頃のように誰でもという職場ではなくなっとるというのもあるから、却って求人先を探すのが難しい業種になっとると思う。

それに住み込みでという条件があったとしても、求人募集なら圧倒的に新聞販売店の方が多い。

こちらの方は慢性的な人手不足が続いとるから、すぐ雇って貰える確率は高く飛び込みやすいはずや。よほどでないと断られることも少ないと聞くしな。

数から言うても、日本全国に新聞販売店は2万店あるのに対して新聞拡張団は千社ほどしかない。新聞販売店は誰にでも探せるが、素人に新聞拡張団を探すのは困難を極める。

あるいは、古紙回収業者、屋台のラーメン業者や竿竹屋、石焼き芋屋などの移動販売業者はいくらでもあるし、営業職に至っては、住宅リフォーム会社、保険勧誘員、浄水器、布団業者の求人の方が、はるかに多い。

新聞、スポーツ紙などでの求人は、それらが大半を占めるはずや。

過去においては、かなりの数の新聞営業の募集も確かにあったが、今は激減しとるのが実状や。むしろ、それら中から、この業界を探す方が、難しいくらいやないかとさえ思える。

せやから、この業界に飛び込む人は、一応、それらの中から自らが選択したうえで、そうしとると考えられるわけや。何も他になかっからとは違うと思う。

『ノルマが達成できずに「タダでいいから」などと言ってしまうと思うのです』というのも、ほんのごく一部の人間で大多数の拡張員は、そんなことはしてないと断言する。

当たり前や。そんなことをしてたら儲からん。儲からん仕事など続けられるわけがないさかいな。

あんたは、その一部の人間だけを見て、そう思われたのかも知れんが、良く考えてみてほしい。この新聞営業は昭和20年代の前半から60年以上にも渡って延々と続けられてきた仕事や。

そんなアホなことをする人間ばかりやったら、とっくの昔に消滅しとると思うがな。

どんな仕事でもそうやが、長く続いてきた仕事には、それなりの収入の道があったからや。儲かりもせん仕事なんか誰もするわけがないさかいな。

まあ、そうは言うても、一般の人にそこまでの業界事情というのは分からんやろうから、そう誤解されるのも無理はないとは思う。

ただ、ここに相談されたのも何かの縁やと思うので、ワシの説明に納得できるようやったら、その認識を改めて頂くと有難いがな。

あんたが、どんな立場の人で、今回の「消費者教育」を推奨されておられるのか知らんが、そのための運動をされるのは、ええことや。ぜひ、頑張って頂きたいと思う。


感想 こういうのはどうでしょうか

投稿者 Jさん  投稿日時 2009.6.15 AM 9:55


私は昔、商業高校に通っていましたが、おそらく今でも、商業系の高校では、商売人の心得として、民法や商法をさわりだけでも理解しておく必要があるということで、それに関する授業があるかとは思います。

しかし、仮にあったとしても、昨今、国民生活センター等で問題視されているような消費トラブルについての知識までは習得できるカリキュラムにはなっていないでしょうね。

さらに、高校卒業者の多くが大学に進学するという社会情勢を考えますと、タイミング的にも適当でないかもしれません。

さて、学校教育では不可能だとすると、残るは、若者が新生活を始める直前のタイミングでの教育(情報伝達)ができないかどうか考えることになります。

私は、投稿者のKMさんが引き合いに出されている被害の多くが「親元を離れた若者が一人暮らしを始めた直後」という点に着目し、そうであるならば、転入届を受け付ける役所が、そういった冊子を配る役目を担うのが、社会的役割の意味合いからも、効率の面からもよいのではないかと思いました。

これなら、最善のタイミングで、しかも、ピンポイントで教育するべき人に情報が届くので、コストもさほどかからないはずだからです。(もし消費者庁ができるのであれば、冊子を統括する監督官庁として、是非とも機能して欲しいものですが、現状では、経済産業省が国費でもって冊子を作るのが妥当ではないかと思います。)


意見 教科教育と現代生活:試験に出るか否か?

ゲンさんのちょっと聞いてんか 
NO.4 ISO審査員の独り言
第34回 教科教育と現代生活:試験に出るか否か? より

投稿者 皇帝関西人さん 投稿日時 2009.6.29 PM 10:30


NO.739 勧誘トラブルは学校教育が不十分だからか?>を読んで思ったことです。

 学校教育が不十分だから、新聞に限らず契約でトラブルが起きるというのは暴論とまではいかなくても、結論を急ぎすぎているように思えます。それに新聞購読契約で失敗するくらいなら損害額(結果的にサービスを享受しているのに損害と規定するのもどうかと思います)はせいぜい数千円から一万円程度と小さいため、世間を渡っていくのに必要な授業料だと思えば安いものです。新興宗教の勧誘や欠陥住宅などの取引で失敗してしまうと取り返しがつきません。人間は失敗から学ぶことは多く、小さな失敗は必要です。

 学校教育において、安易に科目を増やすことには賛成しかねるというのが私の立場です。授業時限には制約があり、単に増やせばいいというわけにもいきません。また現実問題として、どのような教員をその科目に充当するのかなどといったクリアしなければならないハードルも出てきます。細かいことは置いておくとしても、今ある教科教育の中で、特に理科や社会科において教科内容をアレンジして現代生活と結びつけることが大切かと思います。内容が身近でないから学校のお勉強に実感が湧かないのだと思います。

 現代社会において、高等学校は義務教育にすべきでしょう。高度に複雑化した社会で暮らしていくために必要な知識量は、高度経済成長期とは比較にならないほど増えているのが実態でしょう。分数の計算ができない大学生なんて言語道断です。

 問題に対して大切なことは、「広く捉える」ことと「根本原因を探る」ことです。現象は違っていても、根本原因が同じであれば、少ない手間で大きな改善ができます。

 ISO9001に基づいて内部監査や協業先監査で不適合などを指摘すると、新しいプロセスやユニット、下手するとシステムまで組んで是正してしまう組織があります。不具合や不適合があれば是正処置が必要なのは言うまでもありません。しかし、問題の大きさに対して過剰な処置を施すことは、投薬治療で治る病気に不必要な手術をすることと同じで、「百害あって一利なし」となりかねないです。くしゃみ3回で精密検査を受けることはないでしょう。

 何か目に見える新しいものでないと「改善」しましたと説明しにくいのも事実です。だからといって、新しい仕組みを作ればいいというものでもありません。今ある仕組みが本当に古くなって、根本的な考え方が現実にそぐわなくなってきているのであれば、新たなものを考えないといけません。しかし、多くの不具合は運用の問題や各プロセスの相互関連やバランスの悪さであることが原因で、システムそのものが問題であることは少ないです。そもそもシステムそのものが問題であるとすると、制度や組織自体が成り立たないので、場合によっては潰してしまったほうがいいときもあります。

 何はともあれ、試験に出るから、受験科目だから勉強するというのもどうかと思います。少なくとも初等・中等教育(いわゆる小学校から高校まで)における教科教育は現実社会に根付いている内容です。しかし実態としては知らなくても生活を送ることはできてしまいます。そこが問題なのです。


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