新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.768 未配達による解約は可能ですか?
投稿者 たいやきさん 36歳 会社員 投稿日時 2009.8.23 PM 11:41
4年契約で残り1年半の契約期間が残っています。契約時に液晶テレビを2台もらいました。
配達開始から約2年間の間に未配達が2回あり、2回目の時に販売店に、「次あったら解約します」と連絡した。
しばらくはきちんと配達されていたが、3回目があり、その時は「またか!!」と思いつつも様子見で見逃しました。
それからすぐに4回目があったので、販売店に連絡し解約を申し出ました。
すぐに謝りには来たのですが、結局販売店が言うには、「残りの契約期間新聞を取るか、液晶テレビの代金を支払うかどちらかにしてほしい。」とのことでした。
液晶テレビ2台で5万円、2年間で1台なので金額2万5千円、最後の2年の内半年購読していることを考慮して2万円、というのが販売店の言い分です。
しかし、こちらに落ち度がないのにお金を払うのは納得がいかなかったので、消費者センターと公正取引委員会に相談すると、「正式に訴えを起こすと迷惑料として購読料の2ヶ月分を販売店からもらえる。そもそも、液晶テレビ2台というのは高額サービスで違法だ。」との回答をもらいました。
そこで販売店担当者と会って話をし、「こちらが迷惑料をもらえるらしい。2万円から2ヶ月分(8000円)を差し引いて1万2千円払う」と提案したが聞き入れてもらえず。
その担当者は、「未配達があったが連絡を受けてすぐに届けたので、欠配にならない。3回目があった時に連絡しなかったのは、おたくの落ち度。次に未配達があったら解約すると言ったのはどこに証拠があるのか? 契約書にあるとおり解約の申し出には料金が発生する。契約解除の場合は物品の返還も必要だ。」と言いました。
私は、「それならばテレビ返しますよ。もう使ってるけど。」と答えたら、急に怒りだして、「ここで話しても解決しないので一緒に消費者センターへ行きましょう。」と言って帰っていきました。
契約は間違いなく新聞を配達するという義務を果たしてもらったうえで成立することだと僕は考えるのですが、間違った考えなのでしょうか?
解約は可能ですか? また、使用しているテレビでも返還できるのですか? 返還できる場合は2台とも返還するべきですか?
回答者 ゲン
法律上、新聞の未配達というのは『債務不履行』に該当すると考えられ、正当な解約理由になり得る場合がある。
『契約は間違いなく新聞を配達するという義務を果たしてもらったうえで成立することだと僕は考えるのですが、間違った考えなのでしょうか?』というのは間違った考えやないと思う。
新聞の購読契約というのは、新聞販売店は遅滞なく新聞を配達する責務を負い、契約者はその対価を支払う義務を負うということになっている。そのいずれか一方がそれを怠る、また破れば『債務不履行』ということになる。
しかし、それはその頻度や程度で判断は違うてくるのやないかと考える。
あんたの言う『配達開始から約2年間の間に未配達が2回あり』というのが、その『債務不履行』と言えるほど重大な失態やと断じるのは、いかがなものやろうかという気はする。
あんたの話やと一年に一回、未配達は許せんと考えておられるのかも知れんが、業界の人間の立場からすると、それくらいは大目に見て貰えんかなと思う。
人間は精巧な機械とは違い、間違いを冒すもんや。どんな仕事でも100パーセントの達成率というのは人である限り絶対にないと断言できるさかいな。
あんたの仕事が何なのかは知れんが、仕事に失敗や間違いは必ずあると思うのやがな。
普通は、間違いがあれば、それを謝罪して次からそれをせんように心がける。また、それを許して受け入れるということが、社会を円満にしていくのやと考える。違うやろか。
もっとも、『しばらくはきちんと配達されていたが、3回目があり、その時は「またか!!」と思いつつも様子見で見逃しました。それからすぐに4回目があったので、販売店に連絡し解約を申し出ました』というのは、あんたなりの譲歩、猶予を与えたということで気持ちは分からんではないがな。
実際、あんたのように「そんなんやったら解約や」と言う人も珍しいことやないさかいな。
これに対しては、その販売店毎で、それぞれ対応が違う。
『未配達があったが連絡を受けてすぐに届けたので、欠配にならない。3回目があった時に連絡しなかったのは、おたくの落ち度。次に未配達があったら解約すると言ったのはどこに証拠があるのか?』と言う販売店も確かにある。
あんたの落ち度と断じるのは言いすぎやが、その未配達のアピールはしとくべきやったとは思う。せやないと、相手にはそのミスがあった事自体、分からんわけやから、単なる言いがかりと受け取られるおそれもある。
『次に未配達があったら解約すると言ったのはどこに証拠があるのか?』というのも、法律的な観点で言えば、その通告をしたという客観的な事実が必要になるのは確かや。
具体的には、書面でのやりとりということになる。そこまでせなあかんのかと思われるかも知れんが、あんたが、その間違いが許せず、次は強引にでも解約するつもりでいたのなら、後のトラブルを防止する上でもそうしとくべきやったと思う。
それが、明確な意思表示というやつや。当たり前やが、その意思表示が相手に伝わったという客観的な事実がなければ、それは伝わってないという事と同じやさかいな。書面でそれを取り交わしていれば、それに従わざるを得んから契約解除についてはトラブルになることはまずない。
その件に関しては、それがなかったという点で、その販売店の言い分が通る可能性の方が高いと思う。
実際に、この手の揉め事で裁判沙汰になったことがなく、その判例もないから、その未配達が『債務不履行』と裁判所で認められるどうかは何とも言えんが、過去、ワシが幾多の民事裁判の現場に関わってきた経験から言わせて貰えば、このケースで裁判所が『債務不履行』を認めるのは限りなく難しいのやないかと考える。
もっとも、ワシは裁判官でもなければ法律家でもないから、そう断じることはできんがな。実際には、その裁判が開かれて判決が下されてみな分からんというのが正しい答えになる。
もっとも、裁判とはそうしたもんやがな。
それとは逆に、客がそこまで言うのなら仕方ないとあきらめる販売店もある。
この販売店にしても、当初はそう言うて抵抗はしたようやが、『残りの契約期間新聞を取るか、液晶テレビの代金を支払うかどちらかにしてほしい』と言うたというのは、取りも直さず、その契約の解除もやむなしと考えたからこそやと思う。
どうやら、あんたは「契約解除」ということに対して何か大きな考え違いをされておられるようや。
万が一、今回のケースが『債務不履行』として裁判所で認められたとしても、この『債務不履行』というのは、その契約を一方的に解除できる正当な理由を得たというだけのことにすぎん。
せやから、契約解除はできる。
しかし、『契約解除』というのは、その契約をなかったもの、あるいはその契約が締結される元の状態に戻すということを意味するものなわけや。
解約を希望するには、その契約を全うすることを条件に貰ったものはすべて返還する義務があるとされている。そうでないと、契約以前の状態にはならんわけやさかいな。
これは、民法第545条の原状回復義務というのに、その規定がある。
金銭なら、その分。品物なら、同じ商品の新品での返還、もしくはその当時の時価に相当する金銭のうち、好きな方ということになる。
その意味で言えば、その販売店の『液晶テレビの代金を払え』という要求は正当なものということになる。
しかも、『液晶テレビ2台で5万円、2年間で1台なので金額2万5千円、最後の2年の内半年購読していることを考慮して2万円、というのが販売店の言い分です』というのは、至って常識的で良心的な部類の販売店やと思う。
本来なら、解約を希望する以上、その契約を守られんと言うわけやから、その全額を返せと言われても、法律的にはおかしな話やないさかいな。
落としどころとしては、その販売店言うてることは妥当な線や。
それやと、あんたは『こちらに落ち度がないのにお金を払うのは納得がいかなかった』と言われるが、相手の販売店は、その落ち度についてはすでにペナルティをあんたに支払い済みのはずやないかな。
『すぐに謝りには来た』際、普通は迷惑をかけたということで、粗品を持ってきて渡しとると思う。
普通、迷惑料というのは、受けた被害に応じて支払われるものや。それから言えば、新聞一部の宅配料金は、100円〜130円程度のものやから、それに見合う対価ということになる。
本来なら、その新聞を持って来るだけでもええのやが、たいていはその迷惑分として、ゴミ袋なり洗剤なりといった粗品を渡すことが多い。
その販売店が、その粗品を持って来て、あんたがそれを受け取った時点で、そのペナルティは終わっていると考えられるということや。
それ以上、あんたが要求する理由はないと思うがな。
後、法律で認められているのは精神的な慰謝料ということになるが、新聞の未配達があんたにどんな精神的な被害をもたらしたのかを立証できん限り、それを要求するのは無理やと考える。
さらに、あんたの言うてることには大きな疑問がある。
『消費者センターと公正取引委員会に相談すると、「正式に訴えを起こすと迷惑料として購読料の2ヶ月分を販売店からもらえる。そもそも、液晶テレビ2台というのは高額サービスで違法だ。」との回答をもらいました』というのは事実なのやろうか。
ワシにはとても信じ難い話や。もし、事実やとしたら、これは大問題になると思う。
消費者センターや公正取引委員会というのは、行政機関、役所の一部やさかい、法律に則った以外の事や立場を超えた言動というものはせんはずやし、したらあかんことになっとる。
『正式に訴えを起こすと迷惑料として購読料の2ヶ月分を販売店からもらえる』というのは、どちらが言うたことなのやろうか、ぜひとも教えてほしいもんや。
消費者センターの人間が言うたのやとしたら、何を根拠にそう言うたかということになる。
先にも言うたように、この新聞購読契約に関する裁判例というのは皆無なわけや。当然、その根拠とする判例もない。
それに何より、『正式な訴え』とやらを起こす名目は一体何やと言うとるのやろうか。当たり前やが、民事で損害賠償を起こすには、それ相当の被害、損害が生じたという客観的な事実が必要になる。
新聞一部は100円〜130円のものやさかい、未配達になったことで、その被害請求をしたとしても知れてる額にしかならんわな。
しかも、請求した時点で、すぐにその新聞を持ってきたというのなら尚更や。すでに終わっとると判断される可能性の方が圧倒的に高いさかいな。
請求してない分に関しては、それがあったという事実が証明されな法律ではどうしようもない。
そうなると、新聞を未配達されたことによる精神的慰謝料という以外には考えられんが、果たしてそれが被害と呼べるのかということや。その未配達によって、あんたが受けた被害というのは何やということになる。
一般的には、朝、新聞が配達されんというのは気分が悪いということになるだけのことや。それを被害と認定するには無理がありすぎる。
その消費者センターの人間は、そんなものを本気で裁判所が認めて「賠償金を支払え」という判決を下すとでも思うて言うたのやろうか。
まあ、民事で裁判を起こすのは国民の権利やから、裁判所も受理くらいはする可能性もあるし、そんなバカな依頼でも金になりさえすれば引き受ける弁護士もおるかも知れんから、訴えるのは自由や。好きにしたらええ。
しかし、それを一行政機関の消費者センターの人間がそそのかしたとなると、これは大問題になる可能性が高い。
公正取引委員会が『そもそも、液晶テレビ2台というのは高額サービスで違法だ』と言うたというのは「景品表示法」以外には考えられんが、それを違法とするかどうかはその当の公正取引委員会が調べた上でないと断定できんことや。
それを一般人の話を聞いただけで、そうと断言する人間が公正取引委員会にいとるというのは、およそ考えられんことや。
ちなみに、新聞購読契約の景品表示法違反に問われたケースは、平成13年の和歌山の販売店にまで遡(さかのぼ)る。それ以降の摘発はない。
有形無実の法律とまでは言わんが、事、新聞販売に関しては現実に機能してないのは確かや。今後もそれが機能して、その法律で摘発されるというのも限りなく怪しいと思う。
まあ、百歩譲って、その公正取引委員会がそう言うたとしよう。しかし、それでも、その景品表示法違反では民事裁判にはなり得ん。一般の裁判所が扱う事案と違うさかいな。
景品表示法違反に問われても、一般の法律とは違い、個人がその責を負うことは絶対にないし、罪に問われるのは、この場合、販売店だけや。それにしても「もう二度とこんなことはしません」と公示、つまり公に表明しなさいという程度で終わる公算が大きい。
悪質やと判断されたら罰金を科せられることがあるという話やが、あってもそこまでがこの法律の限界ということになる。
公正取引委員会が、例え、それでその販売店を摘発したとしても、『迷惑料として購読料の2ヶ月分を販売店からもらえる』と言うようなことは絶対にないと断言できる。
当たり前や。公正取引委員会にそんな権限はないさかいな。
いずれにしても、行政機関や役所が自らの立場を超えた発言をするというのは、ワシには考えられんし、信じられんことや。ワシらは、このQ&Aを5年以上もやっとるが、そんな話は聞いたこともないさかいな。
もし、そんな言葉を吐いた者が本当にいとるとすれば、よほど不用心な人間か、その話が外部に漏れることはないと考えたからやないかと思う。
それとも、その彼らの説明をあんたが、誤って、または勘違いして、そう受け取ったかやな。言うとくが、この事が公になれば、間違いなくそれを言うた人間は「そんな話は知らん」と逃げを打つはずや。そうと認めることはまずない。
たいていの消費者センターや公正取引委員会なら、このサイトのことくらいは知っとるはずやから、ワシがそう言うてたと言うて貰うても構わん。ワシとしても、その真意を聞きたいしな。
『そこで販売店担当者と会って話をし、「こちらが迷惑料をもらえるらしい。2万円から2ヶ月分(8000円)を差し引いて1万2千円払う」と提案したが聞き入れてもらえず』というのも当然やと思うから、コメントの必要はないやろうと考える。
『私は、「それならばテレビ返しますよ。もう使ってるけど。」と答えたら、急に怒りだして、「ここで話しても解決しないので一緒に消費者センターへ行きましょう。」と言って帰っていきました』というのも、その販売店の人間の言うとおりで、一緒にその消費者センターとやらに行って、白黒をはっきりつけた方がええのと違うかな。
『解約は可能ですか?』というのは可能やが、その場合は契約時に貰うたものは返還する義務が生じるということや。
『また、使用しているテレビでも返還できるのですか?』というのは、できん。それは元の状態のものとは違うからな。どうしても品物で返す場合は、その商品の新品やないとあかん。
『返還できる場合は2台とも返還するべきですか?』というのは、その販売店が1台分でしかも2万円でええと言うてるのやから、それでええのと違うかな。
今回は、あんたが法律的にと言われとるので、法律的な解釈が中心になったが、それとは別に良く考えてほしいことがある。
あんたは、その条件で契約を結んだわけや。おそらく、その条件やなかったら、その契約もしてなかったと思う。
つまり、あんたは4年間は購読すると納得した上でその景品を貰って契約したわけや。その約束が守れんと言う以上、貰うたものは返さなあかんというのが道理と違うやろか。
未配達によるペナルティは、解約するということで十分すぎるほどその販売店は受けとるわけやし、あんたにも利益が得られとることになるからな。
本来、この事がなくて、単純に解約を希望した場合、その貰った物を返還した上で、残りの契約期間に対して解約違約金を請求されても仕方がないとされとる。
その解約違約金の請求から免れたというだけで、十分、あんたの方には利益になっとると考えられるということや。
『債務不履行』による契約解除というのは、そういうものやと思う。
相手に落ち度があれば、こちらの言うことは何でも通るという勘違いはせん方が、あんたのためやと言うとく。当たり前やが、相手に負担を強いるのは、あくまでも、その行為に見合う程度のものやなかったらあかんさかいな。
それを超えた要求は無茶やと、ワシは思う。
以上が、ワシのアドバイス、忠告ということになるが、この後どうされるかは、あんたの判断次第や。良う考えて決められたらええ。
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