新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.770 一旦契約した新聞を断りたいのですが
投稿者 MM さん 投稿日時 2009.9. 1 PM 1:30
実家のほうでS新聞を取っています。
長年A紙を取っていましたが、S紙のほうがサービスがいいからと父が言って2年ほど前に切り替えました。
切り替え直後に、A紙が来て「S紙の契約が終わったら、またA紙を取ってください。商品券を差し上げます。」と言って2年後(つまり今年)から2年間という申込書(葉書サイズの簡単なもの)に母のサインを取っていきました。(押印はしてありませんし商品券もまだもらっていません)
それを知らない父が、母の不在時に、またS紙と継続契約をして引き換えにビールをもらいました。ビールはもう飲みました。
A紙から電話が来て「今月から配達します。」と言ってきたので「気が変わりS紙と継続することにしたので、やっぱりやめます」と言うと「困ります。配達しますから!」と引き下がりません。
まず、担当配達員から電話があり、断るとエリアマネージャーが訪ねてきて不在だったので名刺と2年前に書いた申込書のコピーを置いていきました。
母が書いてしまった申込書はそんなに効力のあるものなのでしょうか。
契約を解除することで違約金のようなものが発生してしまうのか心配です。
わかりにくい文章でスミマセンが、毎日のようにA新聞から電話があり困っています。
回答者 ゲン
『母が書いてしまった申込書はそんなに効力のあるものなのでしょうか』ということやけど、新聞の「申込書」というのは購読するという意志を示すもので、それに自筆の署名があれば「契約書」と同じものと扱われ、立派な「契約」として法律で保護される。
つまり、「申込書」=「契約書」ということになる。よって、それに示されとる契約期間を守る義務が法的にも契約者に生じるわけやが、「申込書」というと何となく拘束力が弱いと誤解されておられる人が結構多い。
『押印はしてありません』というのも「契約書」にはそれが必要と思われがちやが、新聞の場合、契約者もしくは、その夫婦の一方が、購読の申込みと承知して自筆で記入したものならば、その意志を表明したものとして法律上、捺印までは特に必要とはされていない。
逆に、実印、もしくはその本人が常時使用している以外の印鑑が押してあった場合、契約者の自筆と違うものは、その本人がそれと認めない限り無効と判断されるケースが多い。
印鑑が必要な契約は、不動産関係、金銭貸借関係、ローン関係など実印、及び銀行印の捺印によって成立する契約くらいなもので、それ以外は特に捺印がなくても「契約書」として認められるものは多い。
例え『それを知らない父が、母の不在時に、またS紙と継続契約をして』というのも、民法761条の「夫婦の日常の家事に関する債務の連帯責任」が適用される可能性が高いから、契約そのものは有効と考えられる。
ただ、あんたの言われるように『葉書サイズの簡単なもの』というのがあるためか、新聞の購読契約など、タカが約束程度のものと軽く考えておられる人は多いがな。
そのためか、例え購読中であっても「止める」と言う人も、そう珍しいことやない。また、いつでも止めることができると考えている人がかなり、おられる。
中には、次回を期して契約者の機嫌を損ねることを嫌い、その要望に簡単に応じる販売店もあり、問題なく止められるというケースもあるが、今回のあんたのように『「困ります。配達しますから!」と引き下がりません』という販売店もある。
その販売店次第ということで、いずれも間違った対応やない。
たいていの人は、そのときになって初めて「申込書」や「契約書」の持つ意味を知ることになる。これは大変やと。
一般的に、契約者が無条件で契約を無効にできるケースは、クーリング・オフ期間中であること、明らかに違法な勧誘であること、その新聞販売店の営業エリア外に引っ越すこと、単身独居契約者の死亡くらいなものとされとるが、残念ながら、そのいずれも、あんたの話からは該当しそうにないと思われる。
クーリング・オフ制度のことは知っておられると思う。契約日を含めて8日間以内なら、契約時に貰ったものを返せば無条件に契約を解除できるという法律や。
もっとも、クーリング・オフというのは通称で、そういう名前の法律はなく、正しくは「特定商取引に関する法律」の第9条に規定されとる「訪問販売における契約の申込みの撤回等」のことを言うがな。
消費者にとって、これほど有利で問答無用の法律がなぜできたかと言えば、その裏には通常では「解約」するのは難しいとされとるという事情があるからや。そのための免罪符でもある。
その期間をすぎると、あんたの方は否応なくその契約を認めたことになるわけや。その権利を放棄したものと見なされて。
それなら、その販売店の言うとおり、どうしようもないのかと言うと、あんたの場合、僅かながら合法的に契約を解除できる可能性は残されている。
『商品券もまだもらっていません』というのが、それや。
その契約書に「商品券を後で届ける」と記載されとるか、もしくはその販売店がそれを認めている場合、その契約の開始日、つまり最初の新聞配達日までに、それが届かなかったら、あんたの方は「契約不履行」を主張できる。
当たり前やが、契約はお互いの条件を満たして成立するものやさかいな。その約束が守られていない契約は契約とは認められんということや。
但し、その販売店の方がその商品券を持って来たのにも関わらず「購読するつもりはないから受け取れない」と、あんたの方で断っていたら、その主張は無理やけどな。
その販売店が、その約束の商品券を持って来たら、残念ながら、あんたの方から一方的に契約を解除することはできんという理屈になる。契約とはそういうもんや。
それでも契約解除したいというのは、「自己事由」ということになり、あんたの懸念する『契約を解除することで違約金のようなものが発生してしまうのか心配です』というのが現実のものになる可能性がある。
ただ、その販売店によって違約金を請求するところもあるし、請求せんところもある。また、それが高額な場合もあるし、比較的支払いやすい金額のケースもあるから、その確かなことは何とも言えんがな。
この業界では、その解約違約金の額は特に決められているわけやない。法律でも双方が話し合って決めるべきとされとるだけやから、それこそケース・バイ・ケースなわけや。
その請求があって、あんたの方がそれなら仕方ないと認められる程度のものなら、それで手を打てばええし、予想外に高額やと思うのなら、その金額の減額交渉をするか、その判断が難しければ再度、ここに相談してくれたらええ。それに合わせてアドバイスするさかい。
ただ、その販売店が、あくまでも『困ります。配達します』と突っぱねるようやったら、あんたの方から、その解約違約金の額を提示して、その交渉に臨むしかないとは思うがな。
その額も、あんたの納得できる範囲で交渉したらええ。
それとも、あきらめて購読するかやな。ただ、その場合は、一度に2紙の購読はしんどいやろうから、どちらかの販売店に、その事情を話して購読の開始時期を延長して貰うことやな。重ならんように。
「解約する」と言うと抵抗する販売店は多いが、延長やと言えば応じるケースが大半やと思う。
状況的には、まだ揉めてないS紙にその申し入れをした方が無難な気はするがな。
最後に、これが一番肝心やが、契約者であるご両親の意志を良く確認されてから、そうされることや。ご家族で揉めることになるのはつまらんさかいな。
いずれの方法を選択するにしても良く話し合われてから、決められることや。
それで揉めるようやったら、またここに相談してくれたらええ。その状況に合わせたアドバイスはするつもりやさかい。
但し、先にも言うたように、その販売店に落ち度がない状態では、あんたの方が望むような結果にはなりにくいと知っておいて貰いたい。
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