新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.775 悪質販売店への対応について
投稿者 T さん 関西在住 某新聞販売店店長 投稿日時 2009.9. 8 AM 6:53
いつも楽しく拝見させて頂いております。
さて、掲題の件で困っており、今回お知恵をお借りしたくメールいたしました。
自分は関西で店長をしております。
同じエリアの全国紙のY紙の所長が今年に入って変わり、悪質な営業を行うようになりました。
その内容は、
@2人1組で回り、一方はY紙の営業マン、もう一方の人間には、A紙の顧客には「A新聞のものです。」と言い、(地方紙)の顧客には「(地方紙)新聞です。」、という役割でドアを開けさせて、営業をする。(二人ともY紙の専業です)
Aうちのエリアでは現地会(該当エリアの全紙の販売所責任者の会議)で契約のサービスとして、Y紙の所長が来る前から、1年の契約につき、2Sもしくは、8000円の商品券又は物品まで、という風に同意を結んでいますが、Y紙の新しい所長は、これを無視して2年の契約で朝刊1カ月2900円+20000円分の商品券+ビール2ケースというサービスで営業をする。
@とAの合わせ技で、Y紙以外の顧客に営業しています。
もちろん、現地会で違法な営業を止める様何度も注意をしていますが、その場ではやめるというのですが、一向に収まる気配を見せず、また@番の他紙の人間を語る行為については、「証拠を見せろ」と、逆に開き直る図太さです。
現地会にはそれぞれの本社の担当も出席していますが、Y紙の担当は欠席が多く、Y紙の所長にも注意をしていないように見受けられます。
うちの店ではまだそんなに被害は出ていませんが、A紙の所長や地方紙の他の所長はかなり被害があるらしく、憤慨しています。
放っておけばこのような店が長く持たないのは見えてはいますが、エリアが荒らされて、黙ってみているという訳にもいきません。
実際、自店への苦情も多く、現読からは「Y紙はこんなにサービスしてるのに、何で自分とこはすくない?」と言われる始末です。
また、想像の範囲ですが、Y紙の上げたカードは正月入れカードが多く、本社から何らかの援助があるのでは?とも思います。
現在、対応としては、
・顧客からY紙の上げたカードの控えのコピーをもらう
・「違法な営業があると連絡を受けているので注意してください」と書いた折込チラシを入れる。
をしています。
ある程度これで防げているとは思うのですが、今後どのように対処していけばよいか、また、他に良い方法があるのか、お知恵をお借りしたいです。
よろしくお願いいたします。
回答者 ゲン
何ともタチの悪そうな販売店やな。こういうのは何とか止めさせるか、それができな排除するしかしゃあないわな。まあ、外野のワシが言うほど簡単なことやないとは思うがな。
『@2人1組で回り、一方はY紙の営業マン、もう一方の人間には、A紙の顧客には「A新聞のものです。」と言い、(地方紙)の顧客には「(地方紙)新聞です。」、という役割でドアを開けさせて、営業をする。(二人ともY紙の専業です)』
これは、業界で「ヒッカケ」と呼ばれている悪質な手口で禁止行為の一つにされとるものやが、この販売店に対しては単にそれを諭(さと)すくらいではどうしようもないやろうなと思う。
『もちろん、現地会で違法な営業を止める様何度も注意をしていますが、その場ではやめるというのですが、一向に収まる気配を見せず、また@番の他紙の人間を語る行為については、「証拠を見せろ」と、逆に開き直る図太さです』というのでは、まさにカエルの面に小便というやつや。
この人間の言い訳や反論自体に大きな矛盾があるのやが、それに気づいてないのではどうしようもないわな。『その場ではやめるというのですが』とその行為を認めておいて『証拠を見せろ』はないやろうと思うけどな。
今日び、子供の喧嘩でもそんなアホなことは言わんで。徹底して「そんな事実はない」と言い張るのなら、まだ分からんでもないがな。
あんたには言うまでもない事やが、現在、新聞業界全体で違法、不正な勧誘行為を一掃しようという動きが強くなっとるというのがある。
また、それに関連した新たな法律が施行されるのも決まっとる。
去年、2008年の第169回通常国会で、特定商取引法と割賦販売法の改正法案が、6月11日参議院本会議において原案通り全会一致で可決、成立したもので、今年の12月1日から正式に施行されることが決まったというのが、それや。
この法律の第3条ノ2第1項で、
販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。
と、規定された。
つまり、「これから、新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになるわけや。
当然やが、『新聞の勧誘をさせて頂きます』と言う限りは、その勧誘者がどこの誰かを正しく名乗る必要があるから、その「ヒッカケ」のようなものは完全に抵触するわけや。
既存の消費者契約法でも「不実の告知」に該当する可能性は高かったわけやが、新聞セールスインフォメーションセンター(旧新聞近代化センター)や新聞各社もこれは絶対に厳守すると公言しとるさかい、今までにも増してより強固な姿勢でその違法行為に対処するのは間違いないと思われる。
もっとも、こんなものは法律以前の問題で誰が考えても無法なやり方なのは明白やから、放置されることの方がおかしいのやがな。
『現地会にはそれぞれの本社の担当も出席していますが、Y紙の担当は欠席が多く、Y紙の所長にも注意をしていないように見受けられます』ということなら、Y紙の販売部の責任者に直接それを通告するか、新聞セールスインフォメーションセンターにその事実を告げるくらいしか止めさせる手だてはないのと違うかな。
はっきり言うて、そのY紙の販売店は現地会というのを舐めとると思うで。そのうち脱退したいとでも言い出すような気がするな。そのつもりがなかったら、こんな真似はできんやろうしな。
ここは業界内だけで問題にして「現地会」の存在意義を示さなあかんやろうと考えるがな。
対応として『・顧客からY紙の上げたカードの控えのコピーをもらう』というのは、その証拠を固めるという点では、ええやろうと思う。
また、「A新聞のものです」と言われたことで、勘違いからY紙を契約させられて困っているという顧客に「それは、違法な行為ですから、問題なく契約解除できますよ」と助言するのも問題はない。
但し、これには微妙な問題があって、客が嫌がっている、あるいは騙されたと怒っている状況でもないのに、その事実を知ったというだけで「そんな契約は無効になるから止めときなはれ」と積極的に働きかけるのは拙いと言うとく。
あくまでも、客の意志を尊重してという姿勢を崩さんことや。
『Aうちのエリアでは現地会(該当エリアの全紙の販売所責任者の会議)で契約のサービスとして、Y紙の所長が来る前から、1年の契約につき、2Sもしくは、8000円の商品券又は物品まで、という風に同意を結んでいますが、Y紙の新しい所長は、これを無視して2年の契約で朝刊1カ月2900円+20000円分の商品券+ビール2ケースというサービスで営業をする』
これは、あんたの所属する現地会としての協定違反やというのは良う分かる。しかし、それを客が納得、もしくは喜んでいた場合は、見て見んフリをしといた方が無難やと思う。
それには『1年の契約につき、2Sもしくは、8000円の商品券又は物品まで』というのも『2年の契約で朝刊1カ月2900円+20000円分の商品券+ビール2ケースというサービス』というのも程度に差があるだけで、いずれも景品表示法に照らせば違法になるということがあるからや。
景品の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになっとる。俗に業界で6・8ルールと呼ばれとるものやな。
この法律で言えば、6ヶ月契約以上はすべて同じ金額相当の景品以内と決められとるわけや。つまり、6ヶ月契約も1年契約も渡す景品は同じやないとあかんということになる。
それで計算すると朝夕セット版地域の購読料月3925円に対して、その景品表示法の上限として許されるサービスは最大で1884円分までということになる。
それからすると、いくら協定が結ばれとるからと言うても『1年の契約につき、2Sもしくは、8000円の商品券又は物品まで』というのは違法行為になる可能性が高い。
この業界の人間なら、その程度は許容範囲と考えやすく、その法律を取り締まる公正取引委員会も摘発はせんはずやと思いたいのは良く分かるが、違法行為の程度の差で競うような愚は避けた方がええということや。
業界外の人間にとっては五十歩百歩にしかならんさかいな。同じ違法なものなら、より多くの景品が貰えたと喜ぶ顧客がおっても仕方ないとあきらめるしかないということや。
味方にする顧客は、あくまでも「騙された」と怒っている、後悔しとる人に限ることやと思う。
ワシのアドバイスとしては、Aの件は極力問題にせん方がええと思う。@だけでも十分、追い込めるさかいな。
『実際、自店への苦情も多く、現読からは「Y紙はこんなにサービスしてるのに、何で自分とこはすくない?」と言われる始末です』という人には、「そんな極端なことをしていると公正取引委員会あたりに目をつけられ、そのうち手入れされるかも知れませんよ」とでも言うておけばええのと違うかな。
「もし、そういう事態にでもなったら、それを貰ったお客さんの方へも事情を聞きにきて、うっとうしい思いをされるだけですよ」と。
実際、摘発する際には、その事実を掴むためにそういうことがあるとのことやさかいな。
余談やが、Y紙には昔から顧客を獲得するためには何でもするという風潮があるのは確かや。それが値引きや景品の渡しすぎという形で表れる場合が多い。ワシは数年間、そのY紙で拡張していたことがあるから、それが良く分かる。
もちろん、すべてのY紙の販売店や拡張員がそうするわけやない。他紙の販売店や拡張員にも似たようなことをするケースはいくらでもあるさかいな。
ただ、そういう体質があるのだけは否めん事実やろうと思う。そして、その協定破りを平気でする者は、当然のようにその脱退まで視野に入れてそうしとるということや。
そのY紙の販売店の言い分は「そんな協定を守っていたら部数なんか伸びへんわい」というところやないかな。
『また、想像の範囲ですが、Y紙の上げたカードは正月入れカードが多く、本社から何らかの援助があるのでは?とも思います』というのは、年末の特別報奨制度というのを言うておられるのなら、販売店だけでなく拡張団へもそういうのはある。
もっとも、ワシ自身、今はそのY紙とは関係ないから、あったと言うべきかな。
ただ、それは表向き奨励金なわけやから、それがために違法行為をしろとY新聞が煽っているわけやない。
例え、そういう疑惑を持ったとしても、それは口にせん方がええ。その証拠は掴みにくいし、ヘタをするとその一言で、言うた人間が窮地に追いやられんとも限らんさかいな。
『・「違法な営業があると連絡を受けているので注意してください」と書いた折込チラシを入れる』というのには、ワシは懐疑的であまり賛成できんけどな。
止めとけとまでは言わんが、するのなら慎重にすることやとは言うとく。
Q&Aに『NO.311 新聞勧誘の警告チラシについて質問があります』 というのがあり、ここでは名指しで相手の新聞販売店を警告チラシを入っていたとのことやったが、これはヘタすると営業妨害に相当するさかい、それで反撃されるおそれもある。
それにこういったものは、相手を非難しとるつもりでも、一般読者からは「どっちもどっちやろ」とか「勧誘はそんなことまでするんか」といったよけいな危惧を植え付けることにもなりかねん。
その相手の販売店が悪いというよりも、勧誘そのものが悪いという風に捉えられがちになるというマイナスの面の方が大きいと思う。
もし、警告の意味でそのチラシを入れるのなら、「Y紙が」という表現は避け「最近、当新聞販売店の名前を騙って契約を迫られることにより、被害にあって困っておられる読者が続出されておられますので、お気をつけください。その業者から渡された『控え』に当新聞販売店の名前があることをお確かめ頂き、もし間違って契約された場合は速やかに当販売店までお知らせください」とでも書いておくことや。
これなら、それほど問題はないやろうと思う。
ワシも過去に、それはそれはえげつない「バンク荒し」と対峙した経験がある。
過去のメルマガ『第57回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ 希望ヶ丘の決闘 前編』 および『第58回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ 希望ヶ丘の決闘 後編』 の中でもそれについて話したことがある。
多少、物語風に面白おかしく話しとるが、こういう問題はうかつな動きができんだけ結構大変やったと記憶しとる。
ただ、これに早めに対処するには、懇意にしている顧客との連絡を密にしてその協力を仰ぐ、あるいは、その組織力でそれをさせんように見張るといったことの方が実際的な効果は高いと思う。
もちろん、それに加えて、相手の新聞社や新聞セールスインフォメーションセンター(旧新聞近代化センター)に@の違反行為に対して厳重抗議するというのもええ。
その証拠は、その販売店が『もうやらないと謝った』という事実だけでもええが、『・顧客からY紙の上げたカードの控えのコピーをもらう』という具体的な証拠を集めとくのもええ。加えて、それを証言してくれそうな顧客がいれば、さらにええと思う。
ただ、あまりその地域では大騒ぎにはならんようにな。それには、ヘタに大騒ぎにでもなれば、この地域での勧誘の評判自体が落ちることになるさかいな。
世間は誰が良うて、誰があくどいか、ちゅうなことは当事者ほど分からんし、そんなことなんか考えすらせんの普通やからな。
皆、同列の扱いにしかならん。そんな評判の後やったら勧誘もやりにくいやろうしな。なるべくなら、人知れず片づけるのが鉄則やと思う。
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