新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.782 サービスの正常化規制は本当に実行されていくと思いますか??


投稿者 匿名希望 さん A新聞拡張員 関西在住  投稿日時 2009.9.20 PM 3:08


はじめまして、サイトの方をいつも楽しく拝見させていただいております。

さて、今回はゲンさん、ハカセさんの考えを伺いたく投稿させていただきました。

私は関西地区のA紙系列のチームに所属しており、関西・中国・四国地区で活動をしています。

ご存じかとは思いますが、関西地区では今年に入ってから、ほとんどの販売店が他系統との現地会においてサービスの正常化規制が敷かれるようになってきています。

拡材頼みの営業でやってきていた現地班はどの組織も軒並み業績が悪化し、所属する拡張員も人数が激減しているらしいです。

そんな中、9/17の新聞に、関西地区新聞を発刊する7社が、サービスとして新聞公正競争規約で上限とされている約2000円を違反しているところに対して、早急に是正する必要があり、ルールの遵守状況を地区ごとに毎月点検する旨の共同声明が出されました。

6・8ルールに乗っ取ってやっていくということでしょうが、今までにない社側の本気の姿勢を感じています。

これらは本当に実行されていくと思いますか??

また、これからこの業界の向かう方向についてご意見・お考えをお聞かせいただけませんか??


回答者 ゲン


『これらは本当に実行されていくと思いますか??』ということやが、これに似たようなことは過去にも何度かあった。

そもそも、『6・8ルール』が作られるまでは、業界としては景品付与は原則禁止やったわけやさかいな。形の上では、それが規制されたというより、緩和されたわけや。

もっとも、その頃は、サイトの『拡張の歴史』でも言うてるとおり、かなり行き過ぎた状態になっていたから、その法律を作ることにやっきになった新聞社各社からの販売店への通達が、その規制と受け取った者は多いやろうけどな。

しかし、その手のものは、たいてい、その時々のかけ声倒れであまり効果があったとは言えんかったものはかりや。多少、効果があったと考えられるのは、その当初だけと違うかな。

今回もそうなるかどうかというのは何とも言えんが、あんたの言われる『6・8ルールに乗っ取ってやっていくということでしょうが、今までにない社側の本気の姿勢を感じています』というのは、ワシとしては、もう一つ信用できんという思いにはなる。

『9/17の新聞に、関西地区新聞を発刊する7社が、サービスとして新聞公正競争規約で上限とされている約2000円を違反しているところに対して、早急に是正する必要があり、ルールの遵守状況を地区ごとに毎月点検する旨の共同声明が出されました』

ということやが、その広報がなぜ9月17日やったのかというのに疑問を感じる。

知ってのとおり、前日は歴史的な政権交代の起こった日で、その9月17日は、各新聞が一斉に新政権の内閣の閣僚人事を報じていた日や。むろん、国民の大半の関心は、それに向けられていたと考えられる。

穿った見方かも知れんが、もし、新聞社が本気でそうしたくてその事を世に知らしめたいのなら、何もそんな日に合わせて、その発表をすることはなかったのやないかと思う。

そんな事は、早くに決定しとるはずやから、もっと早い日に大きく掲載すればええ話やし、その騒ぎが落ち着いた後でも良かったわけや。

どの程度の一般購読者がその記事を見て、その事を知っているのかと考えた場合、甚だ疑問やと言うしかない。しかも、その記事の文言をどこまで理解しとるかとなると、限りなく怪しいわな。

はっきり言うとくが、その一般購読者たちはそんな記事を見ても「えらいこっちゃ、これから貰える景品が少なくなるんやな」とは誰も考えへんで。

次の契約時にも「前と同じだけのサービスをしてくれ」というのが購読者の心理やし、「それが貰えんのなら、新聞なんかいらんわ」と言う者も出てくる懸念は大きい。

部数が落ち込んでもええと考えるのなら、それはそれで一つの方針ということにもなるのかも知れんが、今まで部数至上主義に奔走していた新聞社が、いきなりその考えを変える事は、まずあり得んわな。

しかも、それは今のところ関西地区だけということやから、その事も新聞社がどこまで本気なのかを疑う要素でもある。こういう事を本気でやるのなら、全国展開せな意味がない。

ワシの率直な印象で言えば、単なるデモンストレーション(示威運動)という趣の方が強いように思う。

『新聞社の姿勢はそうですよ』というアリバイ作りと、その新聞記事を掲載したことで、「購読者に景品を渡すのを押さえる口実にしなさい」と言うてるとしか考えられんがな。

あんたが『拡材頼みの営業でやってきていた現地班はどの組織も軒並み業績が悪化し、所属する拡張員も人数が激減しているらしいです』と危惧されるとおり、そんな状況では本当に拡張員たちも嫌気が差して辞めていくのは目に見えとる。

そうなれば、その関西地区の新聞社に未来はないと断言できる。

これも、普段からワシが自信を持って言うてる事やが、新聞は売り込まん限り絶対に売れん。待ちに徹していても売れるもんやない。

黙っていても売れる要素というのは、新聞社のWEBサイトを見てか、販売店に直接、購読を申込みに来る場合くらいなものやが、そんなもので申込みに来るような奇特な人は、ほんの僅か、微々たる程度しかおらん。

大半の新聞購読客は営業することで確保されとるわけや。

そのエキスパートがワシら拡張員ということになる。ワシらなくして過去においても未来においても新聞の繁栄と維持はあり得んと言い切れる。その仕事に嫌気を差すような真似をしてどないすんねんと思う。

以前のように、企業からの紙面掲載広告費を稼げたら、それでもええという時代なら、まだいざ知らず、その営業利益は軒並み大幅にダウンしとるわけや。企業からの広告収入は激減、壊滅状態やと言うてもええほどやと関係者から聞くこともある。

今こそ、新聞社は「新聞を売る」という原点に立ち戻る必要があると思う。

確かにも、行き過ぎた景品付与やそれに伴う勧誘のトラブルも多い。悪質な拡張員を閉め出したいという気持ちも分からんではない。ワシも、そんな拡張員は不要やと思うとるさかいな。

しかし、そのために規制することしか考えつかんようでは、救いがない。あまりにも芸がなさすぎる。

人は規制したからというて動くもんでも、良くなるもんでもない。

営業員である拡張員はその新聞という商品を売る事で生計を立てとるわけや。それを理解していたら、如何にその営業員たちに新聞を売りやすくしてやるかということを真剣に考えた方がええと思うのやがな。

具体的にはどうしたらええか。

それは法律を作り直せばええということや。早い話が「改正」やな。

「法律なんかそんなに簡単に変えられるわけがない」というのは常識やが、事、「6・8ルール」に関しては、あながちそうでもない。

簡単とまでは言わんが、新聞社がその気になれば変えて変えられん性質のものでもないと思う。

多くの人は、この「6・8ルール」が制定されとる「景品表示法」というのは、「お上(国)」が強制的に決めとる法律やと思うとるようやけど、それは少し違う。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)というのは、独占禁止法の補完法ということになっている。この法律を運用する機関が公正取引委員会や。国の行政機関で内閣府の外局という位置づけになる。

新聞を勧誘する場合、景品の上限は業界の自主規制によるものとされとる。新聞業界の自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になっとるわけや。

ちなみに、現在の新聞業界の自主規制は、景品の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲ということになっとる。

これが業界で俗に言われとる「6・8ルール」というものや。

この法律で言えば、6ヶ月契約以上はすべて同じ金額相当の景品以内ということになる。つまり、6ヶ月契約も1年契約も渡す景品は同じやないとあかんということになる。

その法律が制定された当時、公正取引委員会が規制する一般的な業種の景品の上限は、取引価格の10%やった。

新聞業界の自主規制8%というのは、単に「新聞社はここまで厳しく規制してますよ」ということを世間に知らしめたかっただけのことやと思う。そうすれば体裁が保てると考えてな。

その後、その公正取引委員会自体が一般的な業種の景品の上限を20%にまで緩和することになったんやが、新聞業界はその後も以前とその「6・8ルール」に拘(こだわ)り続けとるわけや。

現在施行されとる正規の景品表示法に照らせば、取引価格の20%までは認められとるわけやから、例えば1年契約、朝夕セット版地域の場合、

月購読料3925円×12ヶ月分×20%=9420円までの景品サービスが可能。

という計算式が成り立つ。

これやと、たいていの地域の販売店や拡張員たちが渡している拡材の範囲内やないかと思う。

これをそのまま、正規の景品表示法に「6・8ルール」を改正すれば、今までどおり多くの販売店のサービスで問題ないと思われる。新聞社さえその気になって、そう提言すれば、公正取引委員会も否とは言わんはずやから、そうなる公算が大きい。

もともと、公正取引委員会も新聞の景品付与の渡し過ぎ問題については、それほど大きな違反とまでは考えてないやろうという気がするしな。

その証拠に、平成14年以降、その「6・8ルール」に違反したからという理由で、新聞販売店が摘発された例はないさかいな。容認とまではワシも言い切れんが、それに近い状態やないのかと思う。

まあ、普通に考えて、公正取引委員会全体が20%までの景品付与を認めとるのに、それを8%の違反をしとるからと言うて摘発するというのも変な話やさかいな。

但し、現行では、その「6・8ルール」が、その公正取引委員会の承認を得て法律になっとるから、新聞社がそれを変える気がなければ『関西地区新聞を発刊する7社が、サービスとして新聞公正競争規約で上限とされている約2000円を違反しているところに対して、早急に是正する必要があり、ルールの遵守状況を地区ごとに毎月点検する』というのは、法律に照らせば間違ってないとなる。

そうすると言うてる以上は、それが「かけ声倒れ」になるか「ポーズで終わるか」は別にして、それがあるものとして従うしかないわな。

ただ、その新聞社があくまでも「6・8ルール」に拘って、あんたらが「それでは仕事はしづらい」と言うのであれば、そう声を上げることも大事やと思う。

どんな悪法も法やから、確かに従わなあかんが、悪法はみんなの声で変えることはできる。また、変えた方がええ。

今回の事に関しては、拡張員だけやなく販売店の従業員たちも同じように困ることも多いと思われる。

ただ、闇雲に「反対する」と言うだけではあかんが、先にワシが言うたような理由を示せば「なるほど」と同調してくれる人が増えることは十分考えられる。その声が大きくなれば、新聞社の方針をも変えられる可能性が出てくるわけや。

このまま、単に嘆くよりかはそういう運動をするのも一つの方法や。もっとも、その気がなければどうしようもないがな。

『また、これからこの業界の向かう方向についてご意見・お考えをお聞かせいただけませんか??』というのことやが、今の新聞各社は、かつてない苦境に立たされたこと慌てふためいて迷走しとるようにしか、ワシには見えん。

向かう方向そのものを見失うとると。上がそれでは下は救われんわな。

「長いものに巻かれろ」という気持ちなら、逆らわず「その状況に合わせた行動」をする必要があるし、「おかしなことは変えるべきや」と考えるのなら、その仲間と理解者を増やして、徐々にその声を大きくすることや。

最後に『これからこの業界の向かう方向についてご意見・お考え』というのは、言えばいくらでもあって語り尽くせんほど多い。

その参考になるのやないかと考えられるページを幾つか示しとくので、それを見て貰えれば、ワシの意見や考えというものが見えてくるのやないかと思う。

発行日2006年7月7日『第100回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の未来

発行日2007年11月9日『第170回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞社への苦言 Part1 ネット記事について

発行日2008年1月18日『第180回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正への動きについて

発行日2008年7月4日『第4回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■消えゆく夕刊……その知られざる裏事情

発行日2008年8月15日『第10回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の近未来予想
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発行日2008年12月26日『第29回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞業界大激変の予感

発行日2009年4月17日『第45回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞への批判について

発行日2009年5月29日『第51回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞折り込みチラシ減少の裏側とその打開策を探る

発行日2009年9月4日『第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ


回答者 ハカセ


私の意見もということですので答えさせて頂きます。

私と新聞との関わり合いは、このサイトの運営を別にすれば一般購読者と同じ立場になります。

その一般購読者の立場で言わせて貰えれば、サービスの低下は歓迎できることではありませんね。

もちろん、業界として、そうするまでに至ったという事情は想像できます。そうでもしないと、過当競争に歯止めがかからなかった故のやむを得ない仕儀だったと。

しかし、それを承知の上で敢えて言わせて頂きますが、今回の『関西地区新聞を発刊する7社』の方針には新聞各社の都合しか見えず、消費者の側に立った見方については何も触れられていないというのは、如何なものかと思います。

『新聞公正競争規約で上限とされている約2000円を違反しているところに対して、早急に是正する』ということのようですが、それですとサイトに寄せられてくる情報から推察すると関西方面の読者へのサービスは半減以下ということになります。

これでは『軒並み業績が悪化』するのは無理もないと思います。消費者側とすれば、今まで行ってきたサービスがいきなり中止では「何でやねん」となりますからね。「それなら新聞なんかいらんわ」と言う人も現れるでしょうしね。

特に私を含めて関西人は損得には敏感ですから。

サイトに『ゲンさんのお役立ち情報 その7 新聞の適正価格アンケート情報』 というのがあります。

これは、2年前の2007年6月にサイトでアンケートを実施したものですが、これによると『新聞の価格について』の項目では『高い』が47.1%いて、『今のままで妥当』が39.2%存在するという結果になっています。

今回の新聞社のサービスを抑えるという報道は、消費者側とすれば実質的な値上げということになります。少なくとも、そう受け取る人が大半ではないでしょうか。

つまり、『高い』の47.1%と『今のままで妥当』が39.2%を合わせた86.3%もの人が実質的な値上げには容認しないだろうというのは容易に想像できます。

幸い、私が現在、住んでいる東海地区にはそういう兆しはまだなく、1年契約で5000円の商品券を貰っていますので、いくらか助かっていますが、それが突然「なくなります」と言われるのは困りますからね。

新聞のサービスというのは、私も含めて多くの人が値引きという感覚ではないかと思います。

定価どおりの購読には抵抗があっても、そのサービス次第で「それなら契約するか」となるのは、その新聞代が実質的に安くなって、いくらか得をしたと考える人が大半だからではないでしょうか。

それがなくなれば、当然、それに対して面白くない人たちが現れ、「新聞を止める」と言い出すのは十分考えられることです。

今回の報道は、そういう類のものだと思うのです。本来、新聞社が真っ先に考えるべき購読者の利益をないがしろにするのは、あまり賢いやり方とは思えませんね。

やはり、ゲンさんの言われる、現行の「6・8ルール」の見直しをまず公正取引委員会に進言して、サービスのできる範囲の拡大を図り適法性を確保する方が、結果的には法律違反を減らし、消費者の利益を守るということにつながって、新聞のさらなる購読者の減少を回避できるのではないかと考えます。

このままでは、新聞社サイドの一方的な自主規制による、いびつな法律を死守するために肝心な読者を失う結果になるだけだと思うのですがね。

何でもそうですが、例え実質的なサービスの低下がやむを得ないとしても、それはいきなり「明日からします」というのではなく、段階的に徐々に見直していくという方が懸命ではないでしょうか。

もっとも、そのアンケートには現行の新聞代が『安い』と回答された5.9%の一般購読者もおられますので、そういった人たちだけに納得して貰えたらいいと考えているのでしたら仕方ありませんがね。

また、私のように例え、そのサービスがなくなったとしても、その仕事柄、新聞の情報に頼らざる得ない人はそれでも購読し続けるとは思いますけどね。

ただ、新聞社がそう考えてのことだったとしても、私もゲンさんと同じく、そちらには購読者の意志を上に伝えられる努力はして頂きたいと考えます。

「このままでは、購読者が離れてどうしようもない状態になりますよ」と。

ゲンさんは、過去の経緯から、一時的なことで長続きするとは考えてないようですけどね。

私も新聞社が購読者を減らしてまで、それを強行するというのは同じく懐疑的な見方をしています。それが果たして、どこまで本気なのかどうかは、もう少し様子を見るしかないのでないかと。

それが、この件に関する私の意見ということになります。


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