新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.795 10年以上前の契約は解除できるのでしょうか


投稿者 E.K さん  投稿日時 2009.10.29 PM 1:06


10年以上前に5年の契約を二社とだぶって契約をしてるみたいで、どちらかを解除したいのですが出来るでしょうか?


回答者 ゲン


『10年以上前に5年の契約を二社とだぶって契約をしてるみたいで、どちらかを解除したいのですが出来るでしょうか?』というのが一方的に、どちらかと契約解除をしたいという意味なら、あんたには不本意やろうが極めて難しいと言うしかない。

そんな10年以上も前の契約書が有効になるのかと言われれば、法律的にはそうなると答えるしかないさかいな。

契約法上に消滅時効というのはあるが、これは、一定期間行使されない場合の権利(=債権)を消滅させるという制度で、契約そのものを消滅させることを認めとるわけやない。

そもそも時効というのは、債権者が権利を行使できる時点からカウントダウンが始まるとされとるものや。行使できる時が明確でない場合は債権が発生した時ということになる。

それを新聞購読契約に置き換えると、購読者が新聞代金を滞納したときから、その時効のカウントダウンが発生すると考えてくれたらええ。新聞代金の場合、2年間その支払いを販売店が放置して回収せずにいとると時効となって、その権利を失うことになる。

それからすると、例え10年以上前の先付けの契約であっても、その契約の効力が発生するのは実際に新聞の配達が始まってからということになる。

したがって、例え10年前であろうと、20年前であろうと、ちゃんとした形式に則った契約は法律で保護されるということになるわけや。

契約そのものに時効はないと。

ただ、契約の解除理由が、その販売店の営業範囲外への引っ越し、独居契約者の死亡、もしくは明らかな勧誘などによる販売店側の違法行為が立証されれば問題なく解除できるが、それ以外では、その契約は法的にも保護されると考えられている。

契約が有効ということになり、その理由もあんたの側の自己事由ということになると、当然の事ながら、それを解除するには、その販売店の承諾、納得を得られない限り難しいということになる。

一般的には、話し合いでの解決となる。こういったケースで多いのは、その契約解除をするための「解約違約金」を支払ってということになると思う。

もっとも、その揉め事を嫌うという販売店もあり、すんなりと契約解除に応じるケースもあるから、その契約解除に応じるかどうかは、その販売店の対応次第で大きく違うとは思うがな。

まずは、そのどちらかの販売店に「解約したい」と言うて、その出方を見るというのも手や。

すんなり「分かりました」と言えば、その10年以上前にその販売店から渡されたサービス品を返還したら、それで終わるということもある。

ただ、普通は、それに加えて「解約違約金」というのが必要になるケースが多いというのは考えに入れといた方がええと思う。

良くその「解約違約金」の額について問われることが多いが、業界で統一された相場のようなものは何もない。その販売店と契約者の話し合い次第、ケース・バイ・ケースや。

それも、そのどちらかの販売店に聞くしかない。あんたが、それで納得できれば、その額を支払って契約解除をすればええし、納得できん場合は、納得いくまで話し合うしかないと思う。

あんたのようなケースは、一般の商品の売買契約ではほとんどないやろうが、事、新聞の購読契約に関しては、まれにそれがある。

サイトの『拡張の歴史』 の中で、2000年頃の奈良では4年契約というのが多かったという話をしたことがある。

そして、『ほとんどの客が4年契約なんやが、その後の4年先、8年先の契約でもOKという状態やった。場合によれば、12年先の契約まで認めとった』という事実も話した。

新聞の勧誘というのは「即入」と言うて、契約してすぐ購読を開始して貰えることの方が少ないのが普通や。

勧誘に行った時点で、たいていは、どこかの新聞を購読しとるもんやさかいな。

それにも関わらず、そこから契約を貰おうと思えば、勢い、その新聞の購読期間が終わった後というケースしかない。その購読が1年後に終了するのなら、1年後の日付の契約やな。これを「先付け契約」という。

一般的な地域では、全国紙4紙とその地方紙1紙による熾烈な勧誘競争が繰り広げられとるのが普通や。そのため中には、「その次の次」さらに「その後」というケースでも止む得ないと考える販売店も現れ、結果として10年以上先の契約が存在するということになるわけや。

ワシの知る限り、その奈良でのケースが顕著やったということや。それには、その頃の異常な拡材サービスというのが大きく影響してたということもあったがな。

4年契約すれば、その場で5万円の商品券を渡すということが普通に行われていた。それは「その次の次」さらに「その後」の12年先の客にさえ、その5万円の商品券を契約したときに渡してたほどや。

その話の中でも『1,2日で4社ほどの拡張員から契約した客で、20万円分もの商品券を手にしていたという話まである』と言うてたが、それが現実にあったわけや。

その頃は、まだインターネットというのも、それほど普及してなくて、今よりも新聞を購読するのが当たり前と思われていた時代やから、新聞の銘柄に拘(こだわ)らん客にとっても、美味しい話やったわけや。

「どうせ、この先ずっと新聞を取り続けるのやから得するのなら、どこの新聞でもええ」と。

商品券は言わば現金と一緒やから、あれよあれよという間に10万円、20万円が貰えるとなれば、例え10年以上先の契約であっても、それに乗る人間が現れても不思議やないわな。

今やと、そんなケースは、まずないやろうから、ほとんどの人間が「そんなアホなことがあるもんか」と言うかも知れん。

どこかのブログで、その『拡張の歴史』を見られて「話半分にしても面白い」と言っておられた方がいてたくらいやが、これは、ワシ自身が経験したことで話100パーセントの紛れもない事実やったわけや。

もっとも、その経験のない業界人、一般購読者、いずれの立場の人にとっても信じ難いことかも知れんがな。

あんたのケースもそれに類似したものやったのやないかな。あんたの場合は『5年の契約』と言うてるから、もしかすると、それ以上の状況があったとも考えられる。

何で、こんな話をしたのかというと契約解除を希望するのなら、例え10年以上前に貰った物でも返還の義務が生じるからや。

大した物を貰ってなければ、それを返せばええが、高額なサービスを貰っていれば、それも大きな負担になる。その上に、解約金の支払いをせなあかんということも考えられる。

しかも、それはすんなりいった場合で、「解約は認められない」と言うケースも十分あり得るから、話はよけい難しくなる。

その販売店の立場に立って考えられたら、すぐ分かると思うが、彼らは、その10年後をただひたすら楽しみに待ち焦がれてきたわけや。そのときになれば新聞を取って貰えるはずやと。

その当時も今も、それらの販売店には何の落ち度もないと思う。単に今までその契約内容、約束事を守ってきただけにすぎんさかいな。

それが、今になって「解約や」と言われたら「そらないで」となる気持ちにもなろうと言うもんや。

一般の人にとっては、そんな10年以上も前の契約に、何で縛られなあかんのかという気持ちになるやろうが、事、契約に関しては、契約者側に「期間の利益」というのが付随するさかい、却ってそれが有利に働くことの方が多いもんなんや。

金銭の貸し借りが、その典型的なもので分かりやすいと思うから、それで説明する。

例えば、1万円の現金を10日後に返すという約束をしたとする。

貸し手にとっては10日経ったら返金を請求できるという権利を得られるわけやが、反対に、借り手にとっては10日間は返さんでもええという「期間の利益」が生じとるということになる。

これを新聞の契約に置き換えれば、10年後に購読するという契約は、裏を返せば、その10年間は「勧誘に来ませんよ、購読しなくてもいいですよ」ということを意味するわけや。

実際、それらの新聞の勧誘は、その間、なかったやろうと思う。例えあっても「契約してますよ」と言えば、素直に引き下がるしかないさかいな。

そのために、法律は契約そのものが開始されるまでの期間の長短によって無効とはしてないわけや。契約者にとっても有利な状況があるものとしてな。

もっとも、あんたが、その10年以上の間を「期間の利益」と考えていたとは思えんが、法律の解釈としてはそうなるということや。

少なくとも、その販売店にとっては、いつその契約者が「営業範囲外への引っ越し、独居契約者の死亡」という理由で契約が消失するかも知れんというリスクを背負いながら、サービス品を渡してたわけやから、あんたにとってはそれと分からんうちに「期間の利益」を得ていたと考えられるということや。

もし、その解約金と返還分を含めて高額な請求をされてそれが支払えんとか、そのいずれの販売店も「解約しない」と言われたら、どうしようもないのかと言えば、それでも、まだ交渉の余地は残されているとは思う。

解約ということになると、確かに今まで説明してきたような煩わしいことになる可能性と負担が大きいが、契約期間の変更ということなら応じる販売店は多い。

その交渉をするという手がある。

確かにこのまま、『5年の契約を二社とだぶって契約をしてる』ということになると、その期間は2紙分の新聞代を払うことになり、しんどいわな。

こういう場合は、どちらか一方をその契約の後にして貰うか、それとも、その両方の販売店と話し合って、その期間内、1年毎の交互に新聞を配達して貰うという手もある。

これなら、話し合い次第では折り合いがつくのやないかと思う。

まずは、いずれかの販売店に解約の打診をしてみて、契約解除が難しければ、期間の変更について交渉したらどうかな、

あんたにとっては希望したような回答やなかったと思うが、ワシとしてはこう言うしかないわけや。

ただ、ワシの言うてること以上に、ややこしいことになったら、また遠慮なく相談してくれたらええ。どんな問題でも解決不可能というのは、よほどでない限りないと思うさかいな。


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