新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.797 拡材の返却にのみ応じるつもりなのですが間違っているのでしょうか?


投稿者 Wさん  投稿日時 2009.10.30 PM 1:53


白塚博士様、ゲンさんご無沙汰しております。

NO.733NO.776で以前相談させていただいたWと申します。

又進展がありましたので、ご報告に加えご相談させていただきたく連絡いたしました。

ゲンさんの回答どおり、販売店からの連絡があり、解約へ向け手続きしたいとの書面が届きました。

一度連絡が欲しいとの事で店長に連絡しますと、以下のとおりでした。

販売員との間の会話記録についてCDをいただいたが、聞くことができなかった。

しかし、お宅からのクレームがあったという事で、販売員に事実確認していく中で、うちとしてはその販売員との契約を打ち切りました。

ただし、契約としては正当なものと判断しているので、現在までの新聞代金を戴きたい。

そちらの理由による途中解除という扱いで、サービス月分は考慮されません。

契約時にお渡しした、拡材についても返却をしてください。

との事でした。

当方としては、契約の解除には応じるつもりでいましたので、拡材の返却には同意しています。

拡材については、洗剤1ケースと商品券2万円分で、洗剤は使わないままにしておいたため、そのまま返却し、商品券については使ってしまったため、額面で2万円分商品券か現金で返却という事を確認しました。

しかし、それまでの新聞購読代について納得がいきません。

販売員との契約を解除するという事は、向こうとしても説明に不適切な部分があった事を認めていると思われます。

それならば、契約の正当性はないのではないでしょうか?

店長の話では、「新聞代について不満があるのであれば、販売員と交渉してください」と言われました。

その点についても納得がいきません。

雇用関係にあった販売員の言った事が不適切であったにも関わらず、契約とは関係ないという部分についてです。契約は販売員としている訳ではなく、販売店としている訳で契約と販売員との関係を向こうの勝手な言い分で言い通そうとしているようにしか聞こえないのです。

こちらとしては、契約は無効と考えており、拡材の返却にのみ応じるつもりなのですが間違っているのでしょうか?

長文・乱文で申し訳ありませんが、ご回答いただけますと幸いです。

何卒よろしくお願いします。


回答者 ゲン


『こちらとしては、契約は無効と考えており、拡材の返却にのみ応じるつもりなのですが間違っているのでしょうか?』というのは、あんたはそうすることが当然と考えておられるようやが、法律的にどうかとなると、これは法律家の間でも意見の分かれる問題やろうと思う。

テレビの法律番組やないが、その弁護士の考え方、捉え方の違いで二分される事案やという気がする。

ただ、どちらかと言えば、あんたの方が不利になる可能性の方が高そうやがな。

一般論として、契約解除が成立すれば新聞の配達はなくなる。そうなれば、当然やが、それ以降の新聞代金というのは発生せんことになる。

しかし、契約解除までの期間に関しては、返還の義務が生じる場合が多いとされとる。なぜなら、新聞を受け取っていたという事実事態が利益供与分と受け取られるからや。それを黙って受け取り続けたという正当な理由がないとしてな。

支払うつもりのない物を持って来られたら、速やかにそれを返還しとくべきというのが、一般常識ということになる。返還してない、またそのアクションを起こしてない品物の代金を返さん場合、それは不当利益供与と判断される可能性がある。

それからいくと、拡材の返却に応じるのは当然として、実際に配達された未払い分の新聞代金も払わなあかんという考え方が成立するわけや。

反面、あんたの主張するように、その勧誘員の「不実の告知」による契約が証明された場合、契約そのものが無効となり、その新聞は契約者の意思に反して勝手に配達されたものやという判断から、支払い義務は発生せんとも考えられる。

但し、これを正当化するためには、それが違法やとアピールした後ということになるがな。

あんたの場合は、それをここに初めて相談されたのが今年の5月27日ということからすると、そのアピールをその販売店にしたのは、その少し前くらいやと思う。

その契約によると、今年の平成21年4月からの講読で、少なくとも4月、5月分はアピールせず、その新聞を購読していたわけやから、その新聞代は支払う必要があると考えられる。

本来なら、その契約では4、5月分は無料サービス期間やったということになるが、契約を解除する場合、それも拡材と同等のサービスということになるから、返還の義務が生じるということや。

最低でもそれは支払うと言うてた方がええ。せやないと、そのサービス期間がすぎて新聞代を支払うのが嫌になったから、そんな理由をこじつけたということにされ、法律的な争いになった場合、それであんたの方が不利にならんとも限らんさかいな。

なぜなら、あんたは、最初の相談で『両紙を比べられる状況にあり広告の差に呆れました』と言うておられるさかい、早い段階でそれと知っていたことになる。知ってそれをアピールせんかったということは、その時点で、その契約を認めたと解される可能性があるわけや。

それを様子見の期間に充てたとする意味で、敢えてアピールせんかったとした方が説得力を持つ。そのためにも、契約解除のアピールをするまでの新聞代は自発的に支払うと言うてた方がええということや。

問題は、そのアピール以降、6月から10月までの5ヶ月分の新聞代金の扱いやが、それを違法性のあるものと、その販売店に認識させることができれば、「仕方ない」とあきらめるケースは考えられる。

ただ、『契約としては正当なものと判断しているので、現在までの新聞代金を戴きたい』とその販売店が言うとる現状では、それも難しいという気はするがな。

確かに、あんたが『販売員との契約を解除するという事は、向こうとしても説明に不適切な部分があった事を認めていると思われます』と言われるとおり、その勧誘員の不適切な言動があったと、その販売店が認めたからこそ、『販売員との契約を解除』したのやとワシも思う。

『店長の話では、「新聞代について不満があるのであれば、販売員と交渉してください」と言われました』というのも論外な話で、こんなアホな論理はどこに出ても通用することはない。

当たり前や。自社の従業員の落ち度は関係ないから、その当人と交渉してくれやなんて言う会社や企業はまずない。使用者責任というものがあるさかいな。販売店もれっきとした会社なんやから、口が裂けてもそんなことを公言すべきやない。その程度が知れる。

『契約は販売員としている訳ではなく、販売店としている訳で』というのも、そのとおりで『販売員との関係を向こうの勝手な言い分で言い通そうとしているようにしか聞こえないのです』との指摘もそれに間違いないと思う。

まったく話にならん。

しかし、それやからこそ、やっかいやとも言える。

話して分かる相手なら、まだ説得のしようもあるが、話しても理解できん相手、理解しようとせん相手には、はっきり言うて何を言うても説明しても無駄や。これだけ長期間に渡って交渉した結果が、それではな。

このままやと、どこまでいっても平行線になるだけや。

事、ここに至っては、その方法は三つくらいしかないと思う。

一つは、先に言うたように4、5月分の支払いだけを認めて、貰った拡材と合わせて返還するから、それで契約解除してほしいと言うことや。

二つ目は、それは認められんと、その販売店が拒否するのなら、「こちらは、そちらの勧誘員の不始末は販売店の責任だと思っていますので、こちらの言い分が認められないのでしたら、交渉は決裂したということで、今後、一切の支払いには応じかねます。当然、その話し合いがつかないうちは拡材の返還にも応じません。もし、それに不服があるのでしたら、裁判でも何でもしてください」と、突っぱねるという手もある。

裁判になった場合、その勧誘員の「不実の告知」を証明せなあかんことになるが、それについては、前回あんたから寄せられた『NO.776 解約後、販売員ともめても新聞販売店は責任を回避できるのですか』の中で、


平成21年7月5日に契約をした担当者と話をする事ができました。40分強の会話の中で得られた事について、以下にまとめます。

担当者は、嘱託員であったとの事です。新聞広告について、他紙と差があるかどうかが論点となりました。

販売員「若干の差があるという事を(契約時に)言っていると思う。」

私「差があるという話は聞いていない。」

販売員「聞いてない?じゃあ、忘れてるんですよ。私は全部言ってますんで。」

論点と出来る部分がここにしか見付けられませんでした。

この会話を録音し、販売店社長へ連絡をとって送りました。


という報告を頂いたが、これではあんたが契約の条件としていた同じ程度の広告量やなかったら契約解除するということに、その勧誘員が同意、もしくはその条件を呑んだからこそ契約したと言うには難しいのやないかという気がする。

会話を録音する狙いは、確かにそれを言ったという言質を取ることにあるわけやが、今回、実際に録音された勧誘員の言い分は、あんたの主張を全面的に否定しとる内容になっとるさかいな。

それでは意味がない。

その販売店が、裁判するかどうかは未定やが、もし、そうなった場合、裁判の場で言うた言わんというその手の争いになると難しいというしかない。

あんたの言う「不実の告知」については、状況的にそのトークがあったというのは拡張員のワシには想像つくが、第三者の素人さんにその会話の録音だけで、それと納得させるのは難しいと思う。

もっとも、裁判というのは、裁判官の心証というのも大きく作用するので、どちらの言い分に信憑性があり信用するかという点も重要になるから、あんたの言い分の方が支持されるケースもあり、勝ち負けについてはやってみな何とも言えん部分があるのは確かやけどな。

裁判で決着をつけて貰うた方が納得できると言うのなら、全面的に争うと言えばええ。それも手や。もしかすると、それならと折れてくる可能性も僅かながらあるかも知れんしな。

ただ、最初の相談『NO.733 3年契約の新聞購読解約について』での回答でも、


実際、ワシは過去にその地域のその新聞銘柄の販売店と揉めたことがあるが、建設的な物の考え方はまったくと言うてええほどしてなかったさかいな。所詮は弱小新聞やという変な僻(ひが)み根性だけは旺盛やったと記憶しとる。

もっとも、そうは言うても、その販売店の店主の性格次第では穏便に片付くかも知れんが、今回のケースでは、確率的に揉めることも考えに入れとく必要があると思い、老婆心ながら言うてることや。


と言うてたとおり、個人的には望み薄いと思う。

裁判にならん場合は、その販売店が新聞の配達を止めることはないやろうから、今後も長期間に渡って揉めることが予想される。

そうなった場合、根気の勝負ということになる。一般論で言えば、金を払う方と、払って貰う方やと、払う側が有利な立場になるもんやが、それはお互いの性格や気持ちの持ち方次第でも違うてくる。

三つ目は、そんな揉め事をいつまでも引きずるのは嫌やということなら、その販売店の言い分を呑むか、交渉していくらか値引きした額で折り合いをつけるという方法もある。

相手の販売店が解約に応じる姿勢を見せとるから解決を優先するのなら、それが一番実務的やとは思う。

いずれを選択するかは、あんた次第や。良う考えて決められたらええ。

今回のトラブルについての総括やが、契約時の口約束というのは意味をなさん場合が多いから、どうしてもその条件が必要なら、契約書に最初の段階でそう明記しとくことや。

それが、こういった契約の揉め事を回避できる最良の方法ということになる。まあ、それについては次回からの教訓にするしかないことやけどな。


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