新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.846 契約は無効なのでしょうか?
投稿者 S.Tさん 某新聞販売店勤務 投稿日時 2010.2.11 AM 11:25
こんにちは、いつもHPを読ませていただいております。
新聞販売店に勤めています。
不景気・デフレと叫ばれている時代だからなのでしょうか、お客様からの要望もだんだんと理不尽な事が多くなってきました。
インターネットで調べてもわからなかった事なのですが、お時間がありましたら、どうかご教授下さい。
公正取引委員会で決められている景品提供の上限額が「新聞購読料の8%又は新聞購読料6カ月分の8%のいずれか低い金額の範囲内」とされている通称6・8ルールですが、恥ずかしながら、このルール以上に景品を渡しているお客様がけっこういます。
お客様の中にもインターネットで、このルールを知っているお客様もいるのですが、その中でも悪質なお客様がいます。(お客様に対して失礼ですね。すみません)
「うちの契約の時に貰った景品は、6・8ルールに違反しているでしょう。あれは景品表示法で法律よね? そもそも違法の契約は無効にできるのよね。」
ビックリしてなにも言えませんでした。契約の時には景品が少ないと要求してくるのに、理不尽極まりないです。
ゲンさん、博士さん、お客様の言うとおり、契約は無効なのでしょうか?
無知な僕に教えてください。
回答者 ゲン
『お客様の言うとおり、契約は無効なのでしょうか?』というようなことはないから、心配されることはない。
その契約が、勧誘時の不法行為とか良俗公序に抵触するというのなら、そういうケースも考えられるが、景品表示法がそれに該当するという判例はない。というか、そんな判例が出ることはあり得んと言うとく。
なぜか。それは同じ法律とは言うても、景品表示法は、警察や裁判所で扱える法律やないからや。例え、その違反行為が認定されたとしても、それに違反した契約は無効などという判例が出るはずがない。
景品表示法を運用するのは公正取引委員会のみと決まっている。摘発するとしたら、そこしかない。しかも、それは業者のみを取り締まるための法律で、個人間の契約事にまで適用されることはないとされとるものや。
個人の不法行為にならないものが、良俗公序に抵触するということもない。したがって、その景品表示法に触れるというだけでは、その契約を無効にはできんという理屈になる。
この程度のことは、少し法律をかじっていれば誰にでも分かりそうなものやが、ネット上では法律に詳しいという触れ込みのサイトやブログの一部には公然と『契約の時に貰った景品は、6・8ルールに違反していて景品表示法に触れる。それに違反した契約は無効』などというバカげた論調を展開しとる者がおるのは、ワシも知っている。どこの誰とは言わんが。
おそらく、その客はその手のものを読んで鵜呑みにしたのやろうと思う。
まあ、「違法な契約は無効や」と聞かされれば、それと知らん人はそうかなと受け取りやすいから、その客を責めるつもりはないが、他でそんなことは言わん方がええと教えてあげとくことや。
恥をかくだけやと。
そもそも、その景品表示法に違反したという多めの景品を受け取ったからと言うて、その客はどんな不利益を被ると言うのやろうか。
普通に考えて、得をすることはあって損をすることはないわな。
反対に販売店側は損を覚悟でそうするわけや。しかもその裏には『契約の時には景品が少ないと要求してくる』と、あんたが言うように顧客の要望もあってのことやさかい、そこには何の悪質性もない。
そうせな契約が取れんということを知った上で、その弱みにつけ込み、挙げ句の果てに、その景品表示法に違反しとるからという理由で、「契約は無効やから解約や」と言い出す。
そう言うことで、解約した上に、その景品を返す必要などない、タダ貰いにしとけと考える者すらいとるという。
それのどこに正義があると言うのやろうか。
あんたは『お客様に対して失礼ですね。すみません』と言うておられるが、『悪質なお客様がいます』というのは、ワシがこのサイトで嫌というほど話しとるし、『理不尽極まりないです』という意見には、ワシも同感や。
そんな単純な道理は誰にでも分かることで、多くの一般購読者の方々の中にも、そんなことを言い出す人は、ほとんどおらん。そう言える神経を疑う。
正義のない者に与(くみ)する法律などない。また、そんなものがあってはならん。
もっとも、どう言うても、その道理の分からん者がおるのも確かやがな。分かっても分かろうとせんと言うた方がええかな。
その人間が、どうしても「違法な契約は解約できる」と言い張るのなら、構わんから「どうぞ、どこにでもいいですから訴えてください。こちらは、その契約を解除するつもりはありませんので」と強気で言えばええ。
その客が、同じようなこと言うて消費者センターに相談しても一笑に付されるだけやし、警察に至っては管轄外で門前払いされるのがオチや。
その客が唯一訴えることができるのは、公正取引委員会ということになる。もっとも、それにしても、単に聞くというだけのことで、その客のために動くことなど絶対にない。
公正取引委員会というところは、そういうことのできる、また関わる機関やないさかいな。
あんたのところの景品の渡しすぎというのがどの程度のものかは分からんが、新聞の景品付与事案ではその「景品表示法」で摘発されるケースは、現在、ほとんどないと言うてもええと思う。
例え、その客が公正取引委員会にそう訴え出たとしてもな。
現在、平成14年以降、公正取引委員会が新聞販売店をその景品表示法違反で摘発したという事案がないというのが、それを裏付けとる。
すでにその気がないのやないかとさえ、ワシには思える。
言うとくが、公正取引委員会が新聞販売店の景品の渡しすぎによる景品表示法の違反行為を知らんということは絶対にないさかいな。
なぜなら、公正取引委員会は毎年、約900人もの監視モニターを募集して、その情報を全国から拾い上げとるからや。その中にはその景品表示法違反行為の事案も相当数報告されとる。
それがありながら、半ば放置された格好になっているのが現状なわけや。
その『景品提供の上限額が「新聞購読料の8%又は新聞購読料6カ月分の8%のいずれか低い金額の範囲内」とされている通称6・8ルール』というのは、新聞業界自らがそう申し出たことで、公正取引委員会がそれを追認した形で法制化したにすぎんわけや。
その当時、公正取引委員会の他業種への景品表示法の上限は、その取引額の10%やったから、いかに厳しい条件を申し出て、傘下の販売店に課したかが分かる。
ちなみに、新聞業界でこの景品表示法が適用されるのは、新聞販売店のみやさかいな。新聞社が、この法律で摘発されることはない。
せやから、新聞業界自らが、そう申し出たと言うのは正確には違うかも知れんがな。
しかも、現在、他業種への景品表示法の上限を取引額の20%に引き上げて緩和したにも関わらず、新聞業界は、依然とその法律を変えようとはしてない。
公正取引委員会とすれば、他を大幅に緩和しといて新聞業界だけを以前のままの法律で摘発できん、しにくいというのが正直なところやないかと思う。
その気になれば摘発は可能やろうが、その気にはなれんのやないかと。
もっとも、そうは言うても違反行為には違いがないから、安心するのは早いとは思う。万が一ということがないとも限らんさかいな。
その意味では、法律として決められたものは守る必要があると考える。法は法やさかいな。
この景品表示法については新聞社サイドが、それを理由に販売店の過剰な景品付与を押さえたいという意向が働いているようにしか、ワシには思えん。
それが故に、公正取引委員会の他業種への景品表示法の上限を緩和したにも関わらず、そのままにしとるのやないかと。そう考えれば、すべてが納得できる。
結論として、そう言う客には、自信を持って「契約が無効になることはありませんよ」と言えばええということや。
それに間違いはない。
そして、その契約を解約することになった際、「貰った景品も返す必要がない」などと言う客が、もし、いたとしたら、「それは違いますよ」と言えばええ。
契約解除が成立すれば、民法545条により、双方が元の状態に戻す義務、原状回復義務というのが生じる。
それに照らせば、契約時に貰ったものはすべて返還する義務があるということになるわけや。
ちなみに、この原状回復義務に関しては、勧誘時に不法行為や良俗公序に抵触する行為があったとしても適用されるから、例えそうであっても、貰った物は返さなあかんことになる。
勧誘時に不法行為や良俗公序に抵触する行為そのものは、単に契約を解除できる理由になるだけで、貰った物は返さんということになると、その客は不当に利益を得たということになるさかいな。法律がそれを認めることはない。
相手が悪いのやからというだけで、何の被害も被ってないのに得をするようなことは絶対にない。世の中、それほど甘くはできてないということや。
まあ、そうは言うても相手も一応、お客やから、事を荒立てず、なるべく懇切丁寧に説明して説得する方がええ。
もっとも、それでも分からん人間には、仕方ないから、あんたの販売店の方針に従って対処するしかないやろうがな。
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