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NO.862 他人の新聞代金をどうして払わないといけないんですか?


投稿者 daiski さん  投稿日時 2010.3.10 AM 6:16


以前私の母親が再婚していた旦那の名前で、契約をして母親が離婚しまして、契約名義の人が家から出て行き、新聞の契約名義の人が居ないから、入れるのを止めて下さいと、電話しました。

販売店の責任者が来て、言い分は、母親が元旦那の名前で、契約したら、母親が契約したのと同じだと言われて、粗品の事も言われました。

契約名義が元旦那の名前で、当日妻が旦那の名前で、契約したら、妻に責任が有るんですか?

販売店の言い分は、夫婦間の問題で新聞の契約名義の人が居なくても母親が居るから入れる。

契約は、有効だ粗品を出してるからと言われました。

変じゃないんですか? 他人の新聞代金をどうして払わないといけないんですか?


回答者 ゲン


『以前私の母親が再婚していた旦那の名前で、契約をして母親が離婚しまして』ということやが、お母さんが婚姻中に契約されたのなら、その契約は成立しているものと考えられる。

その場合、契約書の名義人である前のご主人、つまりあんたのお義父さんだった方とお母さんの両方が、その契約の内容を守る義務を法的にも負うことになる。

民法第761条に夫婦の「日常の家事に関する債務の連帯責任」というのがある。

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責に任ずる。 

というものや。

夫婦は日常の生活に関する契約をした場合、その両方が同等の責任を負うものと法律で定められとるわけや。

この法律に照らせば名義がどちらであろうと、どちらが契約しようとそれは大きな問題ではないということになる。その夫婦ともに責任が生じる。

ただ、そのすべての契約、行為が無制限に認められるということではない。贅沢品や不動産、アクセサリー類、高級外出服などのあきらかに日常の生活を逸脱しているような売買に伴う行為や契約事は、その範疇(はんちゅう)にないという最高裁の判例もあるさかいな。

それ以外の共同で使用する、または共有するような生活用品に関する物、契約事は、たいていはその法律の範疇に含まれると考えられている。

それからすると、新聞の購読代金が、日常の家事に関する債務になるというのは、ほぼ間違いないと思われるから、『契約書の名義人である前のご主人、つまりあんたのお義父さんだった方とお母さんの両方が、その契約を守る義務を法的にも負うことになる可能性が高い』と言うたわけや。

つまり、その販売店が『母親が元旦那の名前で、契約したら、母親が契約したのと同じだ』と言うたことには、それなりの正当性があるということや。

『契約名義が元旦那の名前で、当日妻が旦那の名前で、契約したら、妻に責任が有るんですか?』という質問には、「妻にも責任がある」としか答えようがない。

但し、『新聞の購読代金が、日常の家事に関する債務になる』というのは、今のところ、その判例がないので確定的な事が言えんというのはあるがな。

ワシが『ほぼ間違いないと思われる』という表現で断定的に言わんかったのは、それがあるからや。

まあ、それでも多くの法律家の方々の意見でも『新聞の購読代金が、日常の家事に関する債務になる』ということで一致しとるから、その判例がないという理由で例え裁判に持ち込んだとしても、かなりの高確率で、あんたの方の主張が退けられ、否定されるのやないかとは思うがな。

そうするのを止めはせんが、するだけ無駄やと思う。法廷での争いに勝ち目は薄いさかいな。

あんたには気の毒やが、このケースでは、ほぼ、その販売店の主張が通るはずやと言うしかないということや。

あんたは、それでは気に入らんかも知れんが、よく考えてみてほしい。

『母親が離婚しまして、契約名義の人が家から出て行き、新聞の契約名義の人が居ないから』という理由は、あんた方の家庭の事情ということになる。

それを理由に、何の落ち度もないと思われる、責任のまったくない新聞販売店が『一方的に契約解除を通告される』という不利益を受けるいわれはないのと違うやろうか。

『変じゃないんですか? 他人の新聞代金をどうして払わないといけないんですか?』というのは、すでに離婚が成立して他人になっているからということやとは思うが、それを言い出せば、お母さんは、その他人名義で勝手に契約したということになる。

それを他人事やから関係ないと言うておられるわけや。

その方が、よっぽどおかしなことで、違法性が高いということになるのやないかな。

もちろん、夫婦として契約したお母さんには何の落ち度もないから、それに関して違法性が問われることはないがな。

あんたの方の事情は良く分かるが、契約というものはお互いの合意でするものやさかい、変更、解除する際には、お互いの理解が必要になる。自分の立場だけやなく、その契約相手の立場も考える必要があるということや。それを分かってほしい。

つまり、このケースではあんたの側が、その販売店に対して「止めてくれ」と一方的に申し入れるのは難しいのやと理解せなあかんということや。

それなら、方法がないのかと言えば、そうでもない。手はある。

まず、民法第761条に「日常の家事に関する債務の連帯責任」に照らせば、当然ながら、『母親が再婚していた旦那』にも、その責任の半分があると考えられるから、その人にその契約に対しての負担をして貰うことや。

その新聞の購読料金の半分を支払って貰うのでもええし、解約するのならその際発生する可能性のある「解約違約金」などの半額分を負担して貰うという方法もある。

今回のような事情で新聞販売店に契約の解除を申し入れるというのは、あんたの側の「自己事由」ということになる。

それについては、その販売店と契約者との話し合いで解決する必要があると法律にも明記されている。

その販売店次第やが、多くの場合、こういうケースでは「解約違約金」を支払ってという場合が多い。もちろん、その額には決まったものはないから、その時々の話し合いで合意した金額でええ。要は納得できる額やな。

その半分を支払って、残りをお母さんが負担するという形や。

あるいは、その元のご主人に「引っ越ししたとその販売店に連絡を入れてほしい」と頼むという方法もある。

その引っ越し先で、その新聞を購読すると言えば、「契約者の引っ越し」という形で処理できるから、その販売店も特に何も言うことはないと思う。

もっとも、それが可能かどうかは、そちらの家庭の事情も絡むことやから、そこまで踏み込むつもりはないが、それらの方法もあると承知して貰えたらええ。

『契約は、有効だ粗品を出してるからと言われました』というのは、厳密に言えば、『粗品を出してる』から『契約が有効になる』ということにはならんがな。

まあ、その販売店の言い分は「粗品を受け取っているのやから、その契約は守ってくれ」という意味やろうと思う。

ちなみに、解約の合意が成立すれば、その貰った粗品を返せば、それですべて終わる。

契約時に貰った粗品というのは、その契約を守ることを条件に渡されたものやと理解しておいてほしい。その契約が守れない場合は、いかなる状況であろうと返還する義務を負うものやということも。

あんたにとっては、ええアドバイスにはならんかったかかも知れんが、この件に関してはワシが示した以外の解決方法では難しいのやないかと思う。

いずれの方法を選択されるかは、後はあんたとお母さん、そして元のご主人次第やと思う。良う考えて、あるいは話し合われてどうされるか決められたらええ。


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