新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.880 労働基準監督署に相談すべきでしょうか?
投稿者 k-555 さん 投稿日時 2010.4. 5 PM 11:53
はじめまして。今の現状、我慢の限界で質問させていただきます。
m新聞販売店に勤務して一年、色々我慢してきました。ここの所長は自分の気分で色々決めます。
一、休日は突然なくなります。例えば今月はみんなの拡張の成果を見てから決めると言われ休日がなくなりました。
二、カード料についてですが、これも何の予告もなく変更されます。提示してあるカード料を基にカードを挙げてきます。しかし、その時、機嫌が悪ければ、半額になったり新勧が縛り扱いになったりと機嫌や気分でカード料が変わります。
三、社員それぞれガソリンカードを渡されてるのですが、自分だけマイカーを所持しているので、毎月毎月、会社の車や所長の車に自分のガソリンカードで入れた分を疑われます。
マイカーに入れたんじゃないかと。もちろん横領はしてません。長文になるのでこのぐらいにしておきますが、まだまだ理不尽な事ばかりです。
最後にもう一つ。一人の社員は所長に気に入られているので拡張免除や給料アップ、休日も取って良しとの事です。
労働基準監督署に相談すべきでしょうか?
ぜひ、アドバイスしてください。お願い致します。
回答者 ゲン
『労働基準監督署に相談すべきでしょうか?』ということやが、労働基準監督署という所は、経営者に違法性があると考えられる場合に訴えるのは、それなりに効果がある。
それについて、今回のあんたの質問が、それに該当するものかどうかを検証してみようと思う。
『一、休日は突然なくなります。例えば今月はみんなの拡張の成果を見てから決めると言われ休日がなくなりました』ということやが、これは労働基準法に触れそうや。
使用者は労働従事者に対して1週間に1日、または4週間に4回の休日を与えなければならないと決められている。これを「法定休日」という。
法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わんとあかんとされとるが、そういう販売店の経営者がそんなことをしとるはずはないやろうから、かなりの確率で違法行為になると認定されるはずや。
その際、『例えば今月はみんなの拡張の成果を見てから決める』と言うとるのもポイントの一つで、これは業務として強制的に仕事をさせとるという風に認められるから、それを就業時間として加算計算することは可能やと思う。
一般的に、この業界では「拡張料」を支払っているということで、その勧誘業務に対しては、それが例え時間外勤務になったとしても残業手当が支払われることはない。
それが、この業界の常識とされ、それに対してあまり異論を唱えられることはなかったが、これも法的に言うと違法性が高いと判断される。
これについては、当サイトの法律顧問をして頂いている法律家の今村英治先生の見解が、サイトの『ゲンさんのお役立ち情報 その1 労災についての情報』にあるので、その部分を抜粋して知らせる。
集金は業務外という理屈は、私には納得しかねます。100%歩合制だから労働じゃない・・・ここまでの理屈は分かります。
では労働じゃないんだから断る自由もなきゃおかしいです。私は労働である配達はしますが、請負の集金はしません。そんな自由が認められるとは到底思いません。
集金は業務に付随するどころか、業務そのものです。従業員の承諾なしにそれをやっているとしたら36協定違反や、残業代の未払いなども含め経営者サイドの責任は重いです。
中略。
拡張が請負なのは100歩譲ってまだ納得できます。「オレはこれだけ稼げばいいから もうやらないよ」って主張ができるでしょ。
中略。
労働者としての業務か否かは「販売店のため」「避けられず」というところにありそうです。
と言われているとおり、拡張業務が自由であれば、ぎりぎり、その部分だけの請負業務と考えられんこともないが、休日を与えるかどうかを『みんなの拡張の成果を見てから決める』と経営者が言うとるというのは、どう聞いても「業務として責任持ってやれ」としか聞こえんわな。
この点を『労働基準監督署』に訴えれば、その販売店の経営者にとっては打撃になりそうや。改善指導が入ることも考えられる。
但し、「そんなことを言った覚えはない」とシラを切られる可能性も高いから、携帯電話の録音機能やボイスレコーダーのような、それと発覚しにくいもので、その言質を録(と)っておくか、あんたのようにそれに不満のある同僚の従業員複数と一緒に訴えに行くという方法も考えといた方がええと思う。
また、その休日出勤をさせたという証拠、例えばタイムカードのような物があれば、そのコピーなどを、なければ業務日誌、あるいはあんた自身がその勤務を克明に記録したものでも証拠に使えるさかい、それを作るなどして、証拠を揃えてから『労働基準監督署』に訴え出ることや。
『二、カード料についてですが、これも何の予告もなく変更されます。提示してあるカード料を基にカードを挙げてきます。しかし、その時、機嫌が悪ければ、半額になったり新勧が縛り扱いになったりと機嫌や気分でカード料が変わります』というのは、どうなんやろう。
確かに、そんなことをやられたらアホらしいて仕事する気にならんし、普通は苦情が出るもんや。やってられんと。常識外れも甚(はなは)だしいというしかないさかいな。
しかし、せやからと言うて、それが、『労働基準監督署』に訴え出ることのできるほどのものかと言われると疑問符がつく。
『カード料』というのは、一般的には請負業務に対する対価として支払われるもので、それはお互いの了解事項ということになる。
それに対して、不利益を被った方は異議を申し立て、その撤回を要求できる。『提示してあるカード料』で支払えと。当たり前のことやわな。
まあ、そうは言うても、使われる身からすれば、そう言われると、その経営者に直接、抗弁することなど普通は難しいと思う。
たいていは仕方ないとあきらめる。
その場合、『カード料』の取り決め事項を書面にしてなければ、流動的な契約の変更として認められることがある。
どんなに理不尽と思える決定事項でも、それを認めてしまうと、それが正規の新しい決まり事になる場合が多いということや。
それに対して違法性を問うには、その決定事項が一般社会通念上、著しく不合理である場合か、良俗公序に違反、抵触していない限り難しいと言うしかないということや。
『三、社員それぞれガソリンカードを渡されてるのですが、自分だけマイカーを所持しているので、毎月毎月、会社の車や所長の車に自分のガソリンカードで入れた分を疑われます』というのは、実際に身に覚えのない罪で明らかに「泥棒」扱いでもされん限りは、ほっとくしかない。「私はそんなことはしてません」と。
猜疑心(さいぎしん)の強い人間はどこにでもいとるさかい、単に「疑う」というだけで現実的な被害が何もないのでは、それを言うたところで、第三者からは単に「悪口」、「不満」を言うとるとしか受け取られんのやないかな。
『長文になるのでこのぐらいにしておきますが、まだまだ理不尽な事ばかりです』というのが、先に言うたように不法行為と断定できるものなら、それを摘発できるが、不満の域を出んものは言うだけ無駄になる可能性が高いと思う。
『最後にもう一つ。一人の社員は所長に気に入られているので拡張免除や給料アップ、休日も取って良しとの事です』というのも、聞き方によれば、妬(ねた)み、僻(ひが)みと受けられかねんから、これも言わん方が無難や。
そういう、えこひいきをすること自体は違法性が問われるものやないさかいな。単に経営者の資質が問われるという程度のことで終わる。
あんたの話を聞く限り、労働基準監督署に相談できそうなことは『一、休日は突然なくなります。例えば今月はみんなの拡張の成果を見てから決めると言われ休日がなくなりました』ということに伴う、違法性の高いと思われる労働条件に対してやな。
しかし、経営者を訴えるには、あんたの方もそれなりの覚悟。つまり、辞めてもええくらいの覚悟が必要になるということは考えに入れといた方がええ。
それを訴えても、そういう経営者の場合、それで改心することなどまずないと思うから、その覚悟がなれければ泣くのは、あんたになる。
おそらく十中八九、その経営者なら、それを労働基準監督署に訴え出た、あんたに対して「解雇」という手段に出るやろうからな。
もちろん、それに対して事案によれば「裁判」で対抗することはできる。実際、あまり表には出てないが、この業界での労働争議というのは結構多いということもあるしな。
その先についてどうされるかは、あんた次第やが、ワシのアドバイスということなら『労働基準監督署に相談すべきでしょうか?』というのは、それら諸々(もろもろ)のことを熟慮した上でされた方がええとしか言えん。
少なくとも『すべきでしょうか?』という点に関してだけで言えば、『するべき』とは言えんということになる。
単に労働基準監督署に相談するというのはええ。その販売店の経営者について違法性の有無を確認するという意味においてはな。
ただ、初期のうちは、あんたの素姓がその経営者に知られるということは避けた方が無難やと思う。特に、辞めてもええという腹が決まってないうちはな。
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