新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.888 この町は協定が好きみたいでなんとも恐ろしい町みたいです
投稿者 きつつきさん 投稿日時 2010.4.14 PM 10:28
新聞のことで悩んでいたのでちらっと見たら、すごいアドバイザーの方が居るんだな・・・とびっくりしました。
皆さんは、新聞勧誘の悩みが多いみたいですが、うちは新聞を取りたい悩みです。
3年前に千葉から九州地方へ越してきました。千葉は皆さんが言われるように勧誘が多い街でした。でも私はそういう競争は大好きで好みの景品をくれるようなところと上手に契約をしてきました。
さて、九州のある町に越してきたところ、勧誘が殆どありません。勿論景品もなし。競争もなし。拡張員がサービスをしてくれるというのでとりあえず3年我慢して取りました。
我慢というのは、新聞が入ったり入らなかったり。苦情を言おうとしても連絡が全く取れなかったりしました。
今年4年目はいつもの勧誘と違う人が来たのでついに断りました。
そして、別のところからとろうと他の販売所に連絡したら・・・エリアが違うので配達できない・・と言われました。
何軒かかけてみてもかたくなにエリアを乱すことは出来ないと断られました。
遠方ならともかく、すぐ下まで来ているのに。
福岡支社に相談したところ、近くから配達出来ると連絡をもらいました。
しかし、前の店の勧誘に来た人と同じ人が来て、のめないような条件を出してきました。
こちらから断るように仕向けている感じでした。結局締め出しをくらったってことですよね。
この町は協定が好きみたいでなんとも恐ろしい町みたいです。
回答者 ゲン
『こちらから断るように仕向けている感じでした。結局締め出しをくらったってことですよね』と考えられる気持ちは良く分かるが、新聞販売店が顧客になりうる人を除外するようなことは基本的にはない。
ただ、この業界のサービスには地域的な格差というのがあり、同じ新聞銘柄であっても、ある地域では過分なサービスがあり、別の地域ではそれほどのサービスがないということは普通にあるがな。
画一されたものが、ほとんどないわけや。たいていは、その地域毎の販売店の自主的な判断に任されることが多い。
もっとも、最近は『正常化の流れ』とやらで、業界全体が極力サービスするのを抑えようという動きが活発やさかい、それも若干、怪しくはなってきとるがな。
その『正常化の流れ』というのは、一般の人には何のことを言うとるのやら分かりにくいと思う。
これについては、当メルマガ『第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その4 工夫は拡材に勝る』で詳しく説明しとる。
その部分を抜粋する。
この『正常化の流れ』というのは、今までやり過ぎていた契約者への拡材(景品、サービス)を抑えることが大半の目的とされとる。
中略。
それには、幾つかの理由が考えられる。
一つめは、やはり販売各店の経営が苦しくなったというのが大きい。
たいていの新聞販売店ではここ数年、年を追う毎に部数減に陥っているのが実状で、今後もその流れが進行しこそすれ、好転する望みは持てそうにない。
加えて、その収入の大きな部分を担っていた折り込みチラシが軒並み激減し、その収入が大きく落ち込んで経営難に陥っている販売店が多いという事情がある。
二つめは、法律を守るためという大義名分がある。
新聞業界における「景品表示法」の「6・8ルール」というのは、業界関係者なら誰でも知っとるはずや。
それを新聞社が守るように指導し、強く希望しとる。
新聞社の立場からすれば、各販売店に「新聞業における特定の不公平な取引方法」俗に「新聞特殊指定」と呼ばれとるものに違反したくないという思惑がある。
少なくとも新聞社の姿勢は「新聞特殊指定」の厳守にあるとアピールしたいと。
これの禁止事項の第2項に、『新聞の個別配達をする販売業者(新聞販売店)が、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること』というのがある。
つまり、勝手にサービスする行為は「値引き行為」に当たり、その「新聞特殊指定」違反に抵触する可能性があると考えられるわけや。
その違反の先には新聞の「再販制度」廃止がある。現在の状態で、そうなれば完全に新聞は息の根を止められる。
日本以外の諸外国がそうであるように、新聞の著しい衰退は避けられそうもない。
それを懸念する新聞社にとっては、その行為を放置することはできんとなるわけや。
そもそも、この新聞業界における「景品表示法」の「6・8ルール」というのは、新聞各社の要望、あるいは体裁として生まれた法律という側面、事情がある。
新聞勧誘の場合、客に渡せる景品の上限は業界の自主規制によるものとされとる。
新聞業界の自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になったということや。
それで、景品の上限の最高額を取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲と決められた。
ただ、どんな経緯で決められたにせよ、法律であることには違いない。
その法律を守るというのは正当な主張になる。それに異を唱える方がおかしいと。
三つめは、拡張員、勧誘員による行き過ぎたサービスを制限、監視するためというのが、それや。
サイトのQ&Aにもよくあるが、極端な例では「タダにするから」と、その新聞代と同等の金額を払ってまで契約しようとする拡張員、勧誘員がいとるという。
そこまでいかんでも販売店の指示、希望する拡材を大幅に超えたサービスを勝手に渡すケースが後を絶たんという現実がある。
拡張員、勧誘員は、その場の1本の契約が取れたらええと考えるが、販売店はそれではあかんわけや。
当然やが、そんな条件で契約した客は、次回もそれを望む。
「タダにする」とか「利益を無視したサービス」をするというようなことができるわけがないから、その希望は断るしかない。
それによりトラブルに発展し、揉めた末、客離れという現象が起きることも珍しくない。
事実、そういうケースは相当数あるものと思われる。
一度でも、その条件で契約した客は、タダ、あるいはそのサービスが貰えんのなら新聞を講読したくはないという気になる。
そんな客ばかりを、せっせと製造されたら堪らんと考えるのは無理もないわな。
百害あって一利なしと。
そうであるなら、それができん仕組みを作るしかないと考えるのが必然ということになる。
それらの理由が、今回の『正常化の流れ』とやらを徹底させようということに、つながったのやろうと思う。
というものや。
あんたは、『千葉は皆さんが言われるように勧誘が多い街でした。でも私はそういう競争は大好きで好みの景品をくれるようなところと上手に契約をしてきました』と言われ、それが普通のように考えておられるようやが、実はこの業界においては、あんたが以前住んでいた関東方面というのは、その勧誘競争が激しく、突出してサービスの多い地域なわけや。
ワシらの関西方面もそうやが、関東ほど景品のサービスする地域の方が圧倒的に少ないというのも知っておいてほしいと思う。
もっとも、その関東方面も今では、その『正常化の流れ』とやらで、あんたが記憶していた頃の状況とは大きく変わってきとるという話やがな。
現在、日本全国の相当数の新聞販売店では、サービスの自粛が普通になっとるということや。
中でも、九州という地域は昔から全国的に見てもサービスの質と量が落ちるということがあったから、よけいそれが際立つのやろうと思う。
ワシ個人は、その流れには批判的な見解を持っとるが、それについて話すと長くなるので、先に示したメルマガの内容を時間のあるときでもええから、見て貰えれば分かって頂けるものと思う。
『さて、九州のある町に越してきたところ、勧誘が殆どありません。勿論景品もなし。競争もなし』というのは、あんたのように関東方面に住んでおられた人にとっては信じられんことやったろうと思う。
しかし、この業界としては珍しいというほどでもないわけや。
ただ、『我慢というのは、新聞が入ったり入らなかったり。苦情を言おうとしても連絡が全く取れなかったりしました』ということについては頂けん話やがな。
こういうことは、地域性とは別の問題で新聞販売店としては、あってはならんことや。ほんま、同業者として情けないと言うしかない。
『そして、別のところからとろうと他の販売所に連絡したら・・・エリアが違うので配達できない・・と言われました』ということやが、これについては「宅配制度」というものがあり、やむを得ないことでもある。
同一の新聞の配達は、その地域では一つの販売店にしかできん仕組みになっとるさかいな。
新聞販売店には、それぞれ固有の営業エリア、つまり配達区域というのが決められていて、それを超えて配達することは許されてない。
せやから、『何軒かかけてみてもかたくなにエリアを乱すことは出来ないと断られました』というのが、この業界としては当然の決まり事なわけや。
『遠方ならともかく、すぐ下まで来ているのに』ということも、普通にある。
極端な話、道を挟んだ向かい側に、その新聞の販売店があっても、そこがその配達エリアを有してなければ配達できず、同一の新聞が遠く離れた販売店から配達されるということになるんや。
それが、当然とされとる業界やと理解してほしい。ええ悪いに関係なくな。
それが嫌なら、新聞の銘柄そのものを変えるしか購読者に選択の余地は残されてないわけや。
したがって、『こちらから断るように仕向けている感じでした。結局締め出しをくらったってことですよね』ということやなく、単にそういう仕組みになっとるだけやと。
『この町は協定が好きみたいでなんとも恐ろしい町みたいです』というのは、何も協定してそうしとるわけやなく、日本全国共通の仕組みなのやと。
あんたには気の毒で救いのない言い方やが、そこで、その新聞の購読をする限りは、それを承知するしかないということなわけや。「宅配制度」というものがある限りはな。
あんたにとって、その販売店がそこにあったことが不幸やったと。
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