新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
NO.930 家族とは言え、無断で名前を使われた契約書は法律的に有効なのでしょうか?
投稿者 new さん 投稿日時 2010.7.31 PM 5:01
初めまして。
母が無断で、私の名前で新聞の購読を契約していたのを最近知りました。
契約日は平成21年3月28日。購読期間は平成23年1月から一年間らしいです。
今までは新聞代は私が支払っておりましたが、今後は新聞の必要性が感じられない為、購読する気はありません。
家族とは言え、無断で名前を使われた契約書は法律的に有効なのでしょうか?
解約したいので、アドバイスをお願いします。
回答者 ゲン
『母が無断で、私の名前で新聞の購読を契約していた』というのであれば、あんたがそれを認められないとその販売店に通告すれば、その契約を解除することができる。
お母さんには、あんたの代理権は認められとらんから、その販売店は契約者である、あんたに直接、事後であっても、その確認と了承を得る必要がある。
それを怠っていたというのであれば、そう主張しても法律的には通る。
ただ、表見代理(民法110条)というのがある。
表見代理とは、無権代理人に代理権が存在するかのような外観を呈していると認められる場合に、その外観を信頼した相手方を保護するため、有権代理と同様の法律上の効果を認める制度ということになっている。
つまり、本来は無権代理人であるお母さんが子供である、あんたの代理人の如く振る舞ったことで、それを信用した者に有権代理者と契約したのと同様の法律上の保護をするべきというものや。
お母さんが「子供にすべて任されているから大丈夫」と言うたということを信用しただけやから仕方ないというのが、それに当たる。
過去に、それと同じ状況で契約して、その契約が遂行していた、つまり購読したという実績があれば、そのお母さんが、事、新聞購読契約に関しては「表見代理(民法110条)」を認められていたと解される可能性は高い。
普通に考えて、「以前と同じようにしていただけやのに、何で今回に限って、そんなことを言われなあかんねん」ということになるさかいな。
この場合、「表見代理(民法110条)」というのが認められるかどうかは何とも言えんが、争いの具になる可能性はある。
それでも、契約にサインした者が、本人とは違うというのは、その販売店の人間も分かっとるはずやから、その都度、契約者本人にその確認をせなあかんかったと考えるさかい、その確認が何もない状態なら、あんたの言い分の方が通る可能性の方が高いと思う。
このケースは、その販売店の勧誘員が、何で、子供さんである、あんたの名前で契約することにしたのか、または容認、見逃したのかは知らんが、何もそんなことはせずとも、そのお母さんの名前で契約をして貰うたら良かっただけの話や。
それなら、こういう問題は起きてない。
余談やが、ワシの場合は、例え、過去にその家のご主人、または身内の方が、契約の名義人になっていたとしても、契約に応対した人がお母さんなら、「お母さんの名前でよろしいので」、または、「契約は基本的には、ご本人と交わすことに決められていますので、お母さんの名前でお願いします」とお願いしとる。
それで異を唱えられることは、ほとんどない。
その家の戸籍筆頭者、代表者の名前やないとあかん、つまり、そうでないと販売店が困るからと勝手に考えて、そうするという人も多く、「あなたの名前で結構ですので」と言えば、「あら、そうなの」と、却って気軽に、そう応じて貰えることの方が多い。
中には、「いや、うちは○○の名前でなかったらあかんねん」という客もいとるが、その場合は仕方ないから、その人の名前で契約して、後日、必ずその本人に確認と了承を得るようにはしとる。
それを怠った責任は大きいと個人的には考える。
もっとも、過去にそういったことがなく、その販売店とは今回が初めての契約やと言うのなら、「そんな契約は知らん」 と、突っぱねればええがな。
基本的には、契約名義人のあんたが知らん契約が認められることは、まずないと考えて差し支えない。
結論として、それらをよく踏まえた上で、その新聞販売店に、「母が勝手に私の名前で契約したようですが、私はそれを認めませんので、その契約の無効を主張します」と、通告すればええ。
それで、「分かりました」と、その販売店が折れればええし、「それは認められません」と、その販売店が争う姿勢を示すようなら、あんたの意志を明確に示すためにも、内容証明郵便などの文書で通達しておくことを勧める。
『平成21年3月28日。貴社との契約を、私の母、○○が、私に無断で私名義の契約したものですので、私としては認めるわけにはいきません。よって、貴社と私との間での契約は成立していませんので、その契約は無効であるということをお知らせします。また、そちらが、当方の意志を無視して新聞の配達をされても、当方は受け取りを拒否しますし、代金のお支払いにも応じられません』といった感じやな。
こういった内容証明郵便の文言は、できるだけ簡素に、言いたいことだけをはっきり伝えとくことや。
よく、それに至った経緯とか、こちらにも落ち度があったなど、くどくどとその理由や経緯を書き連ねる人がおられるが、そういうのはあまり書かかん方がええ。
特に法律的に争うつもりなら、その揚げ足を取られんように注意する必要がある。いらんことを書けば、それだけその揚げ足を取られる確率が高くなるさかいな。
その販売店が、その契約の正当性を主張して新聞の投函を続け、その代金を請求した場合、あんたがその支払いを拒否すれば、その販売店は、その損害賠償訴訟を起こすしか、その支払いを請求することはできんわけや。
まあ、こういうケースで、新聞販売店が、その損害賠償訴訟を起こす確率はきわめて少ないとは思うが、ゼロではない。
内容証明郵便を出すのなら、その事案が裁判沙汰にまで発展する可能性を考えとく必要があるということや。
ちなみに、この事案で、契約無効は主張できても、あんたの方から、裁判所に解約をするための訴訟は起こせんというのは言うとく。理由は簡単。この件で、あんたに被害と呼べるものが何もないからや。
民事裁判を起こせるのは、何らかの被害があって、それを金銭で贖(あがな)えと要求できる事案やないとあかんわけやが、今のところ、その契約の無効を伝えるだけでは、あんたに被害があるとは言えんさかいな。
もっとも、その販売店の今後の出方次第では法に触れた行為をする可能性も考えられるから、その通告をした後は、それを考えに入れて、その販売店と対処しといた方がええと言うとく。
具体的には、それから以降の応対は、すべて録音しておくくらいの用心をすることやな。
最後に、お母さんが、その契約をされた際に何かサービス品を受け取っておられるのなら、それを返した方がええと言うとく。
その契約を無効とするのなら、その契約の約束としてサービス品を受け取ったままというのは拙い。こういう争いになると、相手の販売店も「サービス品を受け取ったやないか」と主張することが多い。それを防ぐためにも返しておいた方がええ。
その返還の意志は口頭でも、内容証明郵便に付記して伝えるのでも構わん。
その販売店が、それを受け取りに来たら、この件はそれで終わる。その際、その契約書の控え、もしくは、そのサービス品を返還したという証拠の受領書を貰っておくことや。
普通は、それで決着することが多い。
ただ、すべてがそうやとは言えんさかい、多少、用心にすぎるきらいはあったが、その対応についてアドバイスしたわけや。
もちろん、それらが面倒くさい、トラブルになるのがうっとうしいということなら、その契約をそのまま全うするというのも選択肢としてはあるがな。
どうされるかは、あんた次第やから、よく考えらて決められたらええ。
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