新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

NO.989 『NO.983 引っ越しの解約は可能でしょうか?』での解釈について


投稿者 Aさん 新聞販売店主任 関西在住  投稿日時 2011.3. 5 AM 4:53


はじめまして。関西の新聞販売店で10代の頃から勤めており、今は主任として店を任されている者です。

昔は新聞契約も短期の契約が主流で、3ヶ月の4社交代読者や6ヶ月の交代、または固定読者が多かったと思います。

しかし、時代が変わり今では契約も長期化になり、短くて1年、長くて5年以上となってきています。

長期契約になれば必然的に景品類も(TV・電動自転車)を景品として渡す所もあれば(商品券年数×1万〜1.5千円)や(1年S・値引き)。

中にはスポーツベタ契約まであり、他県では最近正常化が進んでいるようですが、私の周りでは(エリア外も含め)まだまだ正常化には程遠い話だなと思います。

話はそれましたが、長期化が進み高額な景品となり何処の新聞銘柄もかなりのサービスでお客さんを獲得しようとハイリスクも覚悟してはいるのですが、ゲンさんのサイトのQ&Aでもよく見られる、契約を解除したいが違約金は払いたくない・もしくは払わなければいけないのか? 等の投稿を見てやるせない気持ちです。

たしかに契約が長期化になるにつれて、数年先、経済的に苦しくなり新聞代を節約しないといけなくなった、もしくは新聞を読んでる主の目が悪くなり新聞が見れなくなった。さまざまな理由が数年先には予想もしない出来事が起こりえます。

ただし、契約を解除するなら、貰った景品は返さなくてはいけないのが道徳上・一般常識だと考えます。

また、契約書の記入ミスに揚げ足をとる、1年の約束が2年になっていた等、それでも貰うものは貰っているのに・・・販売店側の主観に囚われすぎているのかもしれませんが。

ここ最近【貰い得】を考えるお客さんが増えているのと、一部モラルのないお客さんの背中を押すような助言がゲンさんの回答に含まれているような感じもしており、同じ新聞業界で働くものとしては残念な気持ちにもなります。

ゲンさんは消費者の味方であり販売店の味方だと思っていますが、唐突ですが上記の文を読んで、どう思いますか?

誹謗・中傷しているわけでもありません。ほんとんどがすごく為になる事を書かれていると思います。本当に参考書のようなサイトだと思っております。

私も消費者の気持ちになってもっと物事を考えていかなくてはいけないのですが、なんか世知辛い世の中になってきたような気がします。

愚痴のようになってしまった事、お許しください

最後に質問ですが、NO・983のゲンさんの回答にある、


新聞販売店には宅配制度というものがあり、その新聞販売店の配達と営業は地域で1店舗と決められている。経営の違う他の地域まで新聞を配達することがシステム上、できんわけや。


という上記の意味はわかりますが↓


つまり、その販売店の営業エリア外に引っ越しすると実質上、配達不能ということになり、「契約不履行」になるので、その契約を解除できるということや。


これは契約書に「転宅する場合は転宅先にて購読して頂きます」というような言葉が書いてあっても契約不履行となり、販売店と本社間に転宅通報システムが各社あると思うのですが、エリア外に転宅する場合はそれで契約を他エリアの販売店に移譲するのは駄目なことなので、渡した景品もあきらめるしかないという事ですか?

販売店側は引越し先で販売店が変われど、新聞を入れる体勢を整えていれば契約不履行にはならないと思っておりました。仮に販売店側が引越し先でこのままの条件では入れれない、もしくは海外などでこちらが入れない場合は不履行になると思っていました。

長文で申し訳ないです。


回答者 ゲン


『ゲンさんは消費者の味方であり販売店の味方だと思っています』というのは、正しくは「善良な消費者の味方」であり、「真面目な販売店の味方」でありたいと考えとるだけやと言うとく。

すべての『消費者の味方』でもなければ、『販売店の味方』でもないと。

その両者の中には、ええ人間もおれば、えげつない者もおる。いろいろや。

消費者である客の中には、それはそれは、えげつないのがおるというのはワシもこの世界で17年メシを食ってきとるさかい、嫌っちゅうぼど分かっとるつもりや。

一方、新聞販売店の中にも、客を客とも考えとらん非常識な者がいとるというのは、あんたも良う分かっておられると思う。拡張員についても同じことが言える。

このQ&Aでは、そういった、あこぎな連中に泣かされて困ったという人たちからの相談が届けば、相手が消費者であろうと、業界の人間であろうと、その人たちの側に立って、その対処法のアドバイスをする。

また、いずれの側の相談者であっても、心得違いや勘違いをされていると感じれば、それを指摘し苦言を呈することも多い。それが取りも直さず、その人のためになると信じてな。

新聞社についても、ええところはええ、悪いところは悪いと言うてるつもりや。一方的な見方はしない。それが、ここでのワシのポリシー(信念)であり立ち位置や。

ただ、ワシはこの業界の人間やから、どうしてもその立場でものを考えることが多いのは確かや。しかし、このサイトの管理人であるハカセは一般人やから、客側の気持ちが良く分かるということで、その視点がある。

このQ&Aで回答する場合は必ずお互いで話合ってから決めることにしとる。

ハカセもたいていはワシの意見を尊重してくれとるが、すべてを是とすることはない。ワシが間違っていると思えば、何の遠慮もなく、ずけずけと言うてそれを指摘する。それで気づかされることも多い。

もちろん、そのハカセにしても言うてることが、すべて理に適った正論ばかりとは限らんがな。当然、ワシもそう感じれば、そう言う。

また、ワシらの判断だけでは心許ない事案やと思えば、当サイトの法律顧問をして頂いている法律家の今村英治氏や元大手新聞記者をされていたBEGINさんなどの専門家の助言を仰ぐようにもしとる。

その他にも、あらゆる専門家の人たちと懇意にさせて頂いとるので、必要に応じてその方々のご意見を拝聴することもある。

せやから、このQ&Aでの回答は、ある意味、ワシとハカセ、およびそれらの方々との合作とも言えるわけや。

そして、そのワシらの回答も、それがすべて正しいと考えとるわけやない。当たり前やが、ワシらも欠点の多い人間やから、間違いも言うし、勘違いすることも多い。言葉足らずなケースもあり、気が回らんことも多々ある。

そのため読者の方から、その間違いや勘違いを指摘されることもあれば、回答に批判的な意見が寄せられることも多い。

あんたもその意味において若干の苦言を呈されておられるようや。言うとくが、ワシらは苦言を呈されたからと言うて気分を害するということはないから変に気を遣わんといてや。

むしろ、苦言は有り難いもんやと常々考えとるくらいやさかいな。それにより、いろいろな事を気づかせて貰えるし、勉強にもなるわけやしな。

そのあんたの苦言について、ここで少し検証してみようと思う。それが結果として、あんたの質問の回答になりそうやからな。

『ゲンさんのサイトのQ&Aでもよく見られる、契約を解除したいが違約金は払いたくない・もしくは払わなければいけないのか? 等の投稿を見てやるせない気持ちです』というあんたの気持ちは良く分かる。何と自分勝手なことを言うのかと。

しかし、こういったQ&Aに相談されて来られる方というのは、ご自身の立場、思いを中心に置き、事を少しでも有利に持っていきたいと思うのが当たり前であって、その対極に位置する販売店や勧誘員の事情までは分からん人が多いということもあるが、それに理解を示すということもほとんどない。

人に相談するというのは、そういうもんやとワシらは考えとるし、あんたもできれば、そう理解してほしいと思う。

『やるせない気持ち』になる前に、そういう購読者もいとるのやと。

そう考えることで、顧客に接するためには何が必要なのか、どういうことに配慮すればええのかということが見えてくるはずやさかいな。

『ただし、契約を解除するなら、貰った景品は返さなくてはいけないのが道徳上・一般常識だと考えます』というのは、そのとおりや。加えて、法律上もその義務がある。

ワシは回答する際、常にそのことに言及してきた。

あんたが、引き合いに出した『NO・983』の中にも、


その場合、『勧誘の方に頂いた品物も使ってしまったのですが、これに関しては弁償すべきでしょうか?』ということについては、同じ商品を買って返すか、金銭での弁償が必要になる。

引っ越しでの契約解除自体は問題ないが、契約を解除するのなら、契約時にその契約を全うする条件で貰ったものは、すべて返還する義務が生じると法律の規定にもあるさかいな。

民法第545条の(原状回復義務)というのが、それや。

もっとも、そんな法律を持ち出すまでもなく、その契約が守られんと言うのやから、道義的にもそうするべきやわな。


という部分がある。これなんかは、あんたの意図することを、そのまま回答にしとると思うのやがな。

その他の過去のQ&Aを見て頂ければ分かって貰えると思うが、引っ越しに限らず、客側から解約を希望する場合は、いかなるケースであっても契約時に購読の条件として貰ったサービス品は返還すべきやと、ずっと言い続けてきとる。

回答後の返礼メールでも、多くの人がそのアドバイスに沿って、そうしておられるという報告も数多く届けられてもいる。

少なくとも、ここに相談された方の多くは、あんたの言うておられることについて皆さん理解を示されているということや。

人は、ちゃんと説明すれば分かって貰える場合が多い。つまり、あんたの気持ちをお客に伝えたいのなら、それを心掛けることやと思う。嘆くだけではあかん。

『ここ最近【貰い得】を考えるお客さんが増えているのと、一部モラルのないお客さんの背中を押すような助言がゲンさんの回答に含まれているような感じもしており、同じ新聞業界で働くものとしては残念な気持ちにもなります』というのは、具体的には、どんな相談のことを指して言うておられるのやろうか。

あんたの言うておられることに該当しそうな最近の相談と言えば『NO.987 今後、私はどの様に対応すれば宜しいでしょうか?』くらいやと思うが、その中で、『現金で5000円渡すので、3ヶ月だけ新聞を取って欲しいと言いました』ということについて、


『結局今手持ちが無いので明日23日に現金書留で郵送すると言うので3ヶ月契約を了承しました』ということなら、その拡張員は約束を守ったわけやから、あんたさえ良ければそのまま契約どおり3ヶ月間、その新聞を購読すればええ。

その現金を受け取ることで、あんたの方には、法律を含め何ら咎め立てされることはない。

少なくとも、その拡張員とあんたの間では正当な商取引が成立したということになるさかいな。

もっとも、業界としては、その拡張員の行為は許されんが、それは業界の問題で、あんたには関係のない話や。


と回答したことについて言うておられるのやろうか。

ワシは、その是非について言及する場合、多くはそれが法律的に問題があるかどうかを基準にすることが多い。問題がなければ、「それはあかん」とも言えんしな。

ただ、そうすることの弊害として、


結論として、今回の場合、あんたに不服がなければ、約束どおり、3ヶ月間、その新聞を購読すればええと思う。

但し、今後は、例え同じ人間から同じことを言われようと、約束が守られん場合もあると用心して、そういう話にはうかつに乗らん方がええと言うとく。

当たり前やけど、どんなに信用の置ける人間やったとしても、そんな損ばかりしとると、いつかは必ずパンクする。そうなったら、例えその本人が約束を守るつもりがあっても守ることができんようになるさかいな。

律儀な人間が借金の返済に行き詰まるのと同じ理屈や。そうなってから慌てても遅い。


と、釘を刺しとる。

それが、『一部モラルのないお客さんの背中を押すような助言がゲンさんの回答に含まれている』ということなのやろうか。

ワシは回答する場合、たいていは考えられる限りの幾つかの解決策を示すことを心掛けとる。そのための情報を与えるということやな。

その回答例の中から、どれを選ぶかは相談者の意志に任せるようにしとるわけや。それについてのメリットとデメリットの両方を提示してな。

人にアドバイスをするというのは、そういうことやと思うとる。押しつけるものやないと。

『契約書に転宅する場合は転宅先にて購読して頂きます。というような言葉が書いてあっても契約不履行となり、販売店と本社間に転宅通報システムが各社あると思うのですが』というのは、それを一方的に押しつけてしまえば、消費者契約法の「消費者に著しく不利益な記載は無効」ということに抵触する可能性が高いから、そう言うてるわけや。

新聞の購読契約というのは、あくまでも個別の新聞販売店と顧客の間のみに有効な契約で、これ自体は新聞社自身が公式に認めとることや。一般読者との契約事には一切タッチせんと。

そうである限りは、顧客が引っ越しすることにより、宅配制度によって、その新聞販売店から宅配して貰うことが実質的に不可能になる場合は、契約不履行になり契約の続行ができんさかい、その時点で形式上は、契約解除ということになる。

ただ、『販売店と本社間に転宅通報システムが各社ある』というのは確かで、それがあるために『転宅する場合は転宅先にて購読して頂きます』という文言になっとるのやと思う。

しかし、これは公式的にはあくまでも新聞社サイドのサービスとして行っているにしかすぎず、客側に強制できる、また強制力を生む種類のものやないわけや。

それを決まり事として強制すれば、消費者契約法に抵触することになるさかいな。

せやから、ワシはその『NO・983』でも、


但し、契約者が望めば、同一新聞の他販売店での継続契約が可能になり、その場合は、現在の契約内容が引き継がれるということになる。

それについては、引っ越し先で、同じ新聞を購読するのなら、現在の契約条件の方が、引っ越し先の販売店よりええということもあるから、良う考えた方がええとは思う。

契約を解除することで、得をすることもあれば、損をすることもあるさかいな。


と、言うて、引っ越し先での新聞を継続することのメリットについても言及しとるわけや。その記述は、この手の相談のほぼすべてで言うてるはずや。

どうするかの判断は相談者に委ねることにしてな。

『エリア外に転宅する場合はそれで契約を他エリアの販売店に移譲するのは駄目なことなので』というのは、その顧客に転居先の販売店で継続して頂けるように説得すれば問題はないから、必ずしも『駄目なこと』やない。

こういったことで疑問に感じられる販売店関係者が多いようやが、それはそれが決まり事と勘違いされておられるから、そういった発想になるのやと思う。

決まり事やと考えれば、どうしても顧客に対しても高飛車な姿勢になりトラブルになることも多い。それが、この手の相談が後を絶たん最大の要因やと考える。

何度も言うが、こういった場合は決まり事とは考えずに「お客のために」という視点で引っ越し先での継続をして貰えるよう説得すべきや。

『渡した景品もあきらめるしかないという事ですか?』というのは、先にも言うたように、顧客がどうしても引っ越し先での継続を希望しないというのなら、契約解除になるさかい、契約時に渡した景品は返して貰えばええことや。当然のこととしてな。

ただ、客を説得する際には、「引っ越し先で継続しないのなら契約解除になり、その景品分の返還をして貰わないといけませんが、継続されるのなら、その必要はありません」と言うて、その損得について詳しく説明すれば、「それなら継続した方が得やな」となるのやないかと思う。

少なくともワシの店では、そうして引っ越しされる多くのお客に納得して貰うとるがな。

『販売店側は引越し先で販売店が変われど、新聞を入れる体勢を整えていれば契約不履行にはならないと思っておりました』というのは説明が重複するから省くが、考えを改めといた方がええと言うとく。

『仮に販売店側が引越し先でこのままの条件では入れれない、もしくは海外などでこちらが入れない場合は不履行になると思っていました』については、そのとおりや。

いくら顧客を説得しても、肝心の受け手である引っ越し先の販売店がその条件を断れば、契約は成立せんさかいな。海外に引っ越すというのは言うまでもないわな。

それらの場合は契約解除ということで、契約時のサービス品を返して貰って終わりということになる。

今回、ワシが言うたようなことは過去のQ&Aでも繰り返し言及しとるので、それらをもう一度良く見て頂きたいと思う。

それでも疑問に感じる、いやそれは違うというものがあれば、その相談ナンバーと一緒に知らせてほしい。

良く「ゲンさんは、こういうことを言われている」という質問が寄せられることがあるが、どこの部分のことなのかを教えて貰わんことには分かりにくいからな。

いくら自分で言うたことやとはいうても、何せもうすぐ1000件にも達しようとしとる膨大な相談文の中から、それを探し出すのは至難のワザやさかいな。

以上が、ワシの回答やが、何かあればいつでも気軽に質問してくれたらええ。


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