メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第101回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日 2006.7.14


■他業種に学べ Part1 ある製菓会社のケース


今年は梅雨が長い。毎日、あきもせず良う降る雨や。

あんまり、梅雨が長引くと、ワシらにとっては、ただうっとうしいだけや済まんことになる。

『拡張員、殺すにゃ刃物はいらぬ。雨の3日も降ればこと足りる』という格言がどこかにあったが、このままやとほんまに洒落にならん。

訪問販売の仕事は、天候に左右されることが多い。たいていの団では、あまり雨がきついとその日は休みにすることがある。

週末の日曜日、その日も大雨で休みになったから、ハカセの家に行くことにした。

その連絡をハカセに入れると、今日はラーメンを作るから是非、食いに来てくれと誘われた。

ラーメンはハカセが作る。即席というのとは違う。スープから作る本格的なものや。

以前、一度、食ったことがあるけど、これが、お世辞やなく旨い。プロになっても十分、やっていける味や。

ハカセは若い頃、大阪の製麺会社で働いていたことがある。そこで、主任技術者として、ラーメン店主に麺の湯で加減を指導していたという。そのときに、本格的なラーメンの作り方を覚えたらしい。

ハカセは、台所でそのスープの仕込みをしとった。

寸胴鍋(ずんどうなべ)に、鶏ガラ、煮干、厚削り、豚バラ、タマネギなんかの具が入っとるのが見えた。

因みに寸胴鍋とは、直径と深さがほぼ同じ大きさの深鍋のことや。たいていのラーメン屋もこれでスープを作る。専用鍋というてもええものや。

ハカセの手つきも堂に入っとる。とても、素人のそれやない。

「ハカセ、ラーメン屋でもするか。せや『ゲンさんラーメン』というのはどうや?」

「あっ、それは、いいですね。何となく語呂の響きもいいし、流行りそうな感じですね」

「流行らんかったら、ワシが個別訪問で売りに行ったる」

「個別訪問ですか?確かに食い物商売は、広告なんかで宣伝するだけで、個別に積極的に売り込むということはあまりしませんね」

「食い物商売は基本的には、待ちの営業や。発想の転換としては面白いかも知れんで」

「しかし、どこの誰とも分からない人間がいきなり『ラーメンいりまへんか』と玄関口に現れて、ほんとに売れますかね」

「売り先次第では、売れんこともないやろ。一般家庭の個別訪問は難しいやろけど、スナックやパブなんかの飲み屋に売り込むという手がある」

「出前ですか?」

「そんなんやったら、どこでもやってることや。せやなく、スープと具を売るんや。それを暖めて出せば、その店で調理したように客には見えるから、その店のオリジナルラーメンということになるやろ」

「なるほど。それが、旨いとその店も評判になるということですか」

「そういうことや」

「私、いつも、ふと不思議に思うんですけど、ゲンさんは常にいろんなアイデアを出される人やのに、何でやってはった会社があかんようになったんです?」

「まあ、それは……いろいろあるわな」

ワシは、ハカセには、たいていのことは言うてるが、それでもまだ話してないことも多い。

以前やってた住宅リフォームの会社が倒産したわけというのも、その一つや。そのうち、話すことがあるかも知れんがな。

そんな話をしている所へ、奥さんが慌てた素振りでやってきた。

「あなた、ちょっと、コ、コウが……」

小5になる息子さんのコウ君に何かあったようや。ハカセとワシは、コウ君がいとるという子供部屋に急いだ。

そこには、両手で口を押さえ蹲っとったコウ君がいた。その小さな指の隙間から血がしたたり落ちていた。

「どうしたコウ!!」

「こ……れ……」

言葉にならん声でそう言いながら、コウ君がハカセに渡したのは、折れた奥歯やった。

ハカセは取り敢えず、すぐ洗面所に連れていって、うがいをさせ血を吐き出させた。何度か、それを続けて、やっとその血の出が収まった。

「何で、こんなことになったんや」

「お菓子、食べてたら、ガリッて、なって……」

「原因は、どうもこれらしいな」

そう言いながら棒状の小さな物体をつまみ上げ、ハカセに見せた。

そのとき、コウ君はテレビゲームに熱中しとったようや。モニターがつけ放しになって、そのゲームの画面がそのままやった。

コウ君が手にしていたと見られるコントローラーの横に、血に染まったスナック菓子の箱が転がっていた。

そのすぐ近くを見ると、コウ君が囓ったと思われる棒状のスナック菓子に黒く変色したものが見つかった。触ってみると、どうも石状のようなものらしい。

かなり硬い物や。これを噛んで、奥歯が折れたようや。

大きさは、長さ約2センチ、直径0.5センチほどの棒状で、そのスナック菓子に溶け込むように入っているように見えた。

ハカセは、いつも通っている近所の美人歯科医まで、コウ君を連れて行った。

ワシは、そこへは、一度、歯を抜いてそれっきりになっていたから、一緒には行きにくいということもあり、ハカセの家で待つことにした。

どうも、ワシの歯医者恐怖症は、我ながら、かなり重症やと思う。3度と同じ歯医者に通ったことは生まれてこの方、一度もない。

痛みさえとれたら歯医者には寄り付かんさかいな。わざわざ痛い思いまでして通う気になれん。ワシの心と体は、注射と歯の痛みには耐えられんようになっとる。

その点、コウ君はえらい子や。

あれだけ血だらけになって相当、痛かったはずやが、泣くでも喚くでもなく、気丈に振る舞っていたからな。

ワシなら、おそらく気絶しとる。

「先生、どうでしょうか」

「心配しなくても大丈夫ですよ。折れた奥歯は乳歯ですから、すぐ大人の歯が生えてきますよ」

弱っていた乳歯で硬い物を噛んだことにより、簡単に折れたという。何もなくそのまま放っておいたとしても、1ヶ月以内には抜け落ちていたとのことや。

ただ、奥歯やったから、その部分がそれなりに出血したというだけのことらしい。

「そうか、それは一応、やれやれやな。せやけど、これどうする?」

ワシは、先ほどの石状らしきものを見せながら言った。

「その食品メーカーに言うしかないでしょう。それは、明らかに製造過程で混入されたものだと思います。うちのコウは、その程度で済んだけど、他にもあったら大変ですからね」

そのスナック菓子は、子供に人気のあるものや。その異物次第では、他にも被害が拡がる畏れがある。

ハカセも製麺屋におったとき、異物の混入事故というのは、何度か経験しとるという。

今回のような、石状というのはさすがになかったが、製麺屋では作業者のしてた軍手がときたま麺生地に混ざることがあったという。

麺生地は、材料を入れた大型の攪拌機で攪拌しながら作る。そのとき、生地の硬さや粘りを見るため、慣れた作業者はその機械を止めずに、攪拌されとる状態で手を入れ確認する者がおる。

もちろん、安全のため、ちゃんと止めてからするのがセオリーや。まあ、何でも慣れると、こういう横着な真似をするというのは、どの職場でもあることやがな。

しかし、事故というのは、そういうときに限って起こりやすい。そのとき、攪拌機の歯羽に、間違って軍手がからみつくことがある。

そのままにすると、その歯車に引き込まれて手が麺生地にされかねんから、たいていは必死で引き抜く。

そういう場合、軍手だけが引き抜かれる。あるいは、引きちぎられる。それは、見事なくらいバラバラになるということや。

その製麺屋のマニュアルやと、そういうときの麺生地はすべて廃棄処分にすることになっとる。

しかし、担当の作業者の中には、それを報告せず自分で処理しようとする者がいとる。その軍手がバラバラになった麺生地の部分だけを除去したらええと思う。

分からんかったらええやろということや。せやけど、攪拌機でバラバラになった軍手の糸くずを完全に除去するというのはかなり難しい。

目視で分かることも、確かに多い。8割以上は、その事故直後やったら、それほど攪拌で拡がってないから見つかる場合がある。

また、その軍手が汚れてでもいたら、それでも分かり易いが、こういう所で使われるものは、たいていは真新しいて綺麗なものや。

その軍手は白いから、ラーメン生地の黄色いものやソバ生地の茶色やったら、まだ救われるが、うどんなんかの白いものやと分かりにくい。

そのうどん麺の中から、その軍手の糸くずが入っとるのが見つかり、それが、僅かやったが、商品として実際に出回ったことがあった。

そのときは、厳重注意とちょっとしたペナルティ程度で済んだらしいが、下手したら、その製麺屋は致命的なことになる。

そいうこともあり、その麺生地は勿体ないかも知れんが、すべてを廃棄した方が却って救われるわけや。それがマニュアルとしてある。

ただ、そこで作業しとる者は、責任を回避することをまず考える人間が、少なからずおるということや。

そういう人間がおる限り、事故はなくならん。そして、事故が起こるのは、その人間だけやなく、仕事場にも少なからず問題を抱えとるケースが多いという。

突き詰めれば、そこのトップが、その問題にどう取り組んどるかということにかかってくる。トップの考え方次第やというのはどの業界にも共通して言えることやからな。

ハカセは、その大手食品会社のHPから、そのクレームの連絡をメールで入れた。


○○株式会社御中
 
 御社の製品、△△を小学5年生の私の子供が、いつも好んで食べています。
 
本日、午後4時頃、いつものように、子供が、△△を食べていた際、異物があり、良く見たところ、長さ約1センチ、直径0.5センチセンチほどの石状のものがありました。
 
そこで、お願いなのですが、この物体が何であるか調べて頂けないでしょうか。
 
私も以前、食品会社に勤めていた関係から、製造過程による異物混入ではないかと推測します。その石状の物体に付着したものは、あきらかに、製品のものであり、人為的に店舗内で混入できるものとは、到底、思えません。
 
子供には、これだけだから大丈夫とは言ってますが、これから、その製品を買い与えるのは、やはり不安です。
 
その混入物は、こちらで保管していますので、連絡を頂けないでしょうか。
 
おそらく、これは何かの破片だと思われますので、他にもこういった混入物がいくつかあるのではないでしょうか。
 
もし、そうなら、至急、調べられて対処されることをお勧めます。
 
因みに、この商品は、近所の□□店で、○月○日に購入したものです。
 
それでは連絡を、お待ちしています。


クレームのメールとか、電話をする場合、いくら頭に来ていても最初から高圧的な態度や口調にはならん方がええ。

このクレームの出し方次第で対応が変わるというのは往々にしてあることやからな。

その意味では、ハカセのメール文はほぼ完璧に近い。

まず、どんなに怒りたいことがあっても押さえる。そして、初めの書き出し、言い出しは必ず相手に対して敬意を払う言葉、もしくは好意的なものにすることや。

ハカセの『御社の製品、△△を小学5年生の私の子供が、いつも好んで食べています』というのがそれや。

これは、新聞社などへのクレームを伝えるときにも同じことが言える。

その新聞社の新聞を購読しているのなら『いつも、貴新聞を楽しく拝見しています』でええし、取ってなかっても『貴新聞は、大変すばらしいといつも思っています』というくらいの感じにすることや。

これは、一つのテクニックくらいに思うて貰うたらええ。

この後『残念ながらお宅の新聞勧誘では……』あるいは『そちらの新聞販売店さんは、このような……』と本題に入ることで、その対比が際立ち、そのクレームが重く受け止められることになりやすい。

全体の口調も、大人しく冷静さを醸し出す方が、それを受ける方も真剣になる場合が多い。この相手には、下手な対応はできんと思うわけや。

実際、クレーム処理の専門家やった者として言わせて貰えば、強い口調で文句を言う人間の方が扱いやすいのは確かやからな。

そういう相手には、たいてい黙って話しを聞くくらいで解決つく場合が多い。どんな人間も、言いたいことを吐き出した後は、それだけで納得するからな。

それに反して、冷静な相手は、専門家と言えども、怖いものなんや。迂闊なことを言えば、それを逆手に取られかねんからな。腹が読めんということや。

『長さ約1センチ、直径0.5センチほどの石状』という部分に奇異なものを感じた方がおられるかも知れんが、これには、それなりの狙いがあってのことや。

実際の異物は、前述した通り、長さ約2センチ、直径0.5センチあった。つまり、万が一のことを考え、その半分を保管するために過小申告したわけや。

対応が悪ければ、それなりの対処をせなあかんからな。そのときになって、おかしいやないかと言っても、その証拠の品物をすべて渡してたら、苦情も言いにくいことになる。

この証拠保持という考え方も、法治国家では重要なことや。文句やクレームを言う場合、客観的な違法性を問える証拠を持ってた方が、有利やというのは説明するまでもないやろと思う。

コウ君の歯がそれで折れたという直接的な被害も、担当者が、それを受け取りに来たときにでも、それとなく話せばええ。

最初から、ことさら、それを強調する必要はない。もっとも、重大な被害を受けとるのなら別やがな。この程度ではということや。

子供の歯が折れたというのは、それだけで相手を用心させるということになる。つまり、なんとか逃げられるものならそうしようと、必死にその方法を模索すると考えられるからな。

そうなると、真実が分かりにくいことになる。今回のハカセの目的は、その大手食品会社の対応を知ることにある。

こういう場合の企業の対処方法、出方が分かるというのは、ある意味、貴重や。こういう機会は、そう滅多にあることやないからな。

そのためには『そこで、お願いなのですが、この物体が何であるか調べて頂けないでしょうか』と、クレームをつけることが主体やないと思わせる必要がある。

ハカセの場合は、実際に食品製造の専門家やったわけやから、それと知らせるのも、相手がええ加減な返答ができんというプレッシャーを与えることにもなる。

このメールを出した翌日の朝、早速、担当者という人間から電話が入り、その日のうちに、その異物を引き取りたいと言ってきた。

聞けば、ハカセの家から車で優に4時間はかかかろうかという所から来るという。

ええ加減な対応はせんやろうとは思うてたけど、これだけ素早い行動に出るとは予想外やった。

そして、実際、その約4時間後、その担当者という人間が来た。

「この度は、大変、ご迷惑をおかけしまして」

そう言いながら、子供にと、その商品の詰め合わせを持ってきた。ハカセは、これについては、気持ちよく貰っておくことにした。

これは、その担当者を安心させるためにもそうしといた方がええ。その受け取り方で、暗に賠償金なんかの請求をするつもりやないと分からせる効果もある。

事実、ハカセにその気は、さらさらなかったからな。

ハカセにとっては、僅かな賠償金を貰うことより、こうしたクレームについてメーカーの対応を知ることの方が、はるかに値打ちのあることやと思うてたからな。書物では知ることのできん情報となる場合が多い。

ハカセは常に、そういう考えに徹しとる。物を書くには、やはり生きた情報というのは不可欠や。それを聞き出す術に長けとる。また、そういう機会を大事にしとるということや。

「いえ、大したことがなければ、それでいいんですが、子供が『お父さん、もう○○は食べられへんの?』と言うので、ちゃんと調べてくれるから大丈夫やと答えた手前、私としては、それが知りたいだけでして……」

「それで、お子さんは?」

まず、子供の心配をするのは、なかなかええ対応や。

「噛んだ拍子に、歯が折れてしまいまして」

「えっ?それは、大変じゃあないですか。あの、失礼ですが、その治療費とかは、こちらで負担させて頂きますので……」

「それは、大した問題ではないですから、気を遣って頂かなくてもいいですよ。それよりも、私の方としては、その原因を知りたいので、結果が分かり次第、どんな形でもいいですから、是非教えてください。お願いします」

「分かりました、早速、これを持ち帰り、良く調べて、ご報告致します」

その担当者は、何度も頭を下げながら帰って行ったという。

数日後、郵便でその報告書が届いた。


白塚博士 様

拝啓
平素は弊社商品に対し、格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、この都度お買い上げ頂きました弊社商品に付きまして、白塚様とご家族の皆様にご不快を与えましたこと、誠に申し訳なくお詫び申し上げます。

その後、お子様の歯の具合はいかがでしょうか、お見舞い申し上げます。

早速、ご指摘品の調査を実施いたしましたので、その結果を以下のとおりご報告させて頂きます。

1.ご指摘品の状況

@.商品名 :△△
A.製造日 :2006年○月○日 13:00〜13:59
B.ご指摘日:2006年○月○日
【ご指摘品写真】(商品と対比させた異物の寸法写真あり)

2.調査結果及び発生原因

ご指摘頂きました検体を拡大顕微鏡で確認いたしましたところ、セメントの中に細かな砂利があることから『コンクリートの破片』と判断いたしました。

まず、弊社での異物混入防止対策をご説明いたします。

中略(かなり詳細な内容で、写真で分かりやすく解説してあった)

次に、製造工程を説明します。

中略(これも、かなり詳細に説明されとる。これをそのまま説明すると、その商品が特定され、会社名も特定されると思われるので省く)

ご指摘品をもとに製造現場を調査いたしましたところ、通路にありますコンクリート製の階段の角が、ほんの少し欠けておりました。

この部分を削ってご指摘品と比較しましたところ、ほぼ同じ物質と判断いたしました。

商品の直径より、ご指摘品のサイズが大きいことから、成型工程だと生地が詰まってしまうため、製造過程で欠けらが脱落し混入したものではないと判断しました。

考えられる原因といたしまして、作業者に欠けらが付着し、別の工程ラインに近づいた際、欠けらが落下し製品に混入してしまったことが考えられますが、混入場所の特定にまでは至りませんでした。

3.再発防止対策

再発防止対策としまして下記事項に着手及び徹底をいたしました。

@ご指摘頂きましたことを現場担当者に認識させ、異物混入の重要性を認識させました。

A欠けた階段の補修を実施し、他の部分についても点検を実施いたしました。

白塚様のご指摘により、上記のように防止対策を実施いたします。今後、安心して召し上がって頂けますよう一層良品づくりに徹する所存でございますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
                                          敬具


という内容のものやった。

ワシもハカセも、まさかここまでのものを送ってくるとは思わんかった。その商品の製造日時、製造時間まで報告されてたからな。

ハカセは、買った店と時間帯を言うてたから、その担当者は、ハカセの家に寄った後、そこに行って商品の入荷状況を調べたのやろな。それを辿ることで、製造日時、製造時間が分かったということのようや。

これは、最初から、徹底して調べようという意図があったからできたことやと思う。

それにしても、もう少し、ごまかすというか、不可抗力を強調する内容になるやろうと予想しとっが、あっさりと自らの落ち度を認めた内容やった。

ある意味、この姿勢は、賞賛に値する。こういうものを文書で残すということは、最悪の場合、公表、公開されかねんということを覚悟してなできんことやからな。

もっとも、この内容やったら、実名で公開されても、さほど企業イメージとしてはマイナスにならんやろけどな。

しかし、理由はどうあれ、商品にそういう異物が入ってたという事実だけで問題にする輩がおるやろうから、やはり、このメルマガでは匿名にしとくことにした。

それには、その食品会社から渡された文書の掲載許可を取ってなかったというのもある。

さらに言えば、その許可を取るためには、ハカセも先方に、このメルマガを発行していることを伝えなあかん。

今回のケースはそこまでする必要はないと判断した。当メルマガ、サイトは企業名、人名などの公開は原則、しとらんということもあるからな。

今回、この件をメルマガで取り上げたのは、この食品会社の姿勢に見習うべきものがあると判断したからや。それには、内容だけ分かって貰えたらええ。

食品販売と新聞販売とは、根本的に違うという意見があるかも知れんが、どちらも商売ということにかけては同じはずや。

ただ、食品関係の方が、評判や実質的な顧客の被害が明るみに出ることでダメージが大きくなる畏れがあるから、より慎重な姿勢があるのは確かやろとは思う。

しかし、起きたことを隠さず、真摯な態度で一個人に対しても、ここまで誠意を尽くすというのは立派や。

昨今の企業の不祥事を見ると特にそれを感じる。隠し事をする企業の方がやはり多いようやから、よけいにその姿勢が際立つ。

新聞販売の現場でも、そういう真摯な姿勢で顧客に対応して貰いたいと思う。昔から良く言われとる「お客様は神様」的な考え方やな。

この考え方ができるのと、できないのとでは大変な違いになる。できてる所は評判も良うて確実に伸びとるが、そうでない所は青息吐息というのが現状のようや。

残念ながら、そうでない新聞販売店、関係者の中には、顧客に対して、タカが客の一人や二人と軽く考えとる人間がいとるのも事実や。

特に、学生さんたちには、文句を言わせず取らせてやると無茶で恥知らずな勧誘をする勧誘員がいとるというのを良く耳にする。サイトのQ&Aの相談にも、幾つかそういうのが寄せられとる。

言うておくが、その学生さんたちは、いつまでも学生さんやないわけや。

後生、畏るべし。という論語の教えにもある通り、彼らも将来、どんな大人物に育つかも知れん存在や。

新聞業界に多大な影響力を持つ人物が、その中から現れることも十分、考えられる。

その人が、若いとき、新聞勧誘で脅かされて、また無理矢理、購読を余儀なくされたという苦い経験を持っていたらどうやろ。

逆に、その人が、新聞販売店の人に親切にされ、好意を持ってた人物やったと考えたらどうやろ。

そんなことは解説するまでもないわな。

そういうことが、将来に渡って重大な結果につながるということは、歴史をひもとくまでもなく、あらゆる現場で、歴然とした事実としてある。

商売をするのなら、人とのつながり、信頼を得ることを常に考えることや。それが、結局、商売を成功させることになるし、身を救けることになる。

例えとして、今回の食品会社が、何かの事件でやり玉に挙げられることがあったとする。

そういう場合、その食品会社は新聞やテレビのマスコミに叩かれる。あることないこと書き立てられ報道されるというのは珍しいことやない。言えば、袋叩きに遭うわけや。

そうなった場合、ワシらは、必ずその食品会社を擁護すると思う。場合によれば、その食品会社のために、こういう事実があったと公表するかも知れん。

この食品会社の姿勢やと、他にもそういう擁護をする気持ちの人間もいとる可能性が十分にあると思われる。どこかで、そういう声が上がれば、同調する人は必ず現れるはずや。

つまり、誠意を尽してさえおれば、自然にそういう味方ができるということやな。それが、自らの身を救けることにつながる。

そして、その反対のことをすれば、当然のように敵を作ることになる。どちらがええかは自明の理やと思うがな。


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