メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第118回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日 2006.11.10


■四国、新聞配達員、殺害事件について


もうすでにご存じの方も多いと思うが、去る11月1日の早朝、一人の新聞配達員が襲われ一方的に暴行を受けた挙げ句、金を奪われ殺害されるという痛ましい事件が起きた。

事件発生当初、新聞各紙で報道された内容をまとめて話す。但し、当メルマガ、サイトの方針により、個人名、新聞社名、販売店名などの実名記載は避けさせて頂くことにする。


新聞配達員、雑居ビルで血を流し死亡

11月1日午前7時10分ごろ、香川県丸亀市内にある4階建ての雑居ビルの外階段3階付近で男性が倒れていたところをビルの管理人が見つけ、110番通報した。

丸亀署の調べでは、男性は会社員Aさん(64歳)で、すでに死亡していた。

Aさんはアルバイトの新聞配達中で、頭部や顔に殴られたような跡があり、後頭部から大量に出血した状態で階段に横向きに倒れていた。

司法解剖により死因は外傷性くも膜下出血で、死亡推定時刻は同日午前5時から6時の間と判明した。

Aさんは新聞配達のアルバイトをしており、この日は新聞販売店から1ヶ月分の給与として42000円が入った封筒を受け取った後、午前4時10分ごろに自転車で配達に出発した。

その後、午前5時すぎまで配達した形跡が残っており、同ビルの上階にも配達していたという。

この日渡されたバイト料42000円が入った茶封筒がなくなっていたことから、丸亀署は同日夕、強盗殺人容疑事件として捜査本部を設置した。120人体制で捜査を進めている。

午前5時すぎ、ビル周辺の公園で植木鉢などが壊れる音がした後、男性同士がもめるような声や怒鳴り声を近所の人が聞いており、同署は事件との関連を調べている。

ビルの前には、新聞を積んだAさんの自転車が置いてあったという。

同捜査本部は、Aさんが何らかのトラブルに巻き込まれて殺害された上、金銭を奪われた可能性もあるとみて、現場周辺や関係者の聞き込みを中心に捜査している。

Aさんは4年ほど前から「健康のため」と新聞配達を始めた。Aさんは、その後も鉄道の清掃関係の仕事に精を出していた。体の続く限り働きたいと言って頑張っていたという。

遺族、知人はもとより、新聞販売店の同僚たち、及びその一帯の新聞配達員の受けたショックは計り知れないほど大きかったと話す。

Aさんは町内のマラソン大会に出場するほど健康な人で『超』がつくほどまじめで、酒も飲まずたばこも吸わなかったという。

Aさんを知る人は「本当に穏やかな性格で、誰かを注意してトラブルになることも考えられない」「ショックとしか言いようがない」「勤勉でまじめな人柄。誰かに嫌われるタイプでもなかった」と、異口同音に話している。

また、販売所でも「勤務態度は極めてまじめで、欠勤は一度もない。おとなしい性格で、恨まれるような人ではない」と同僚が口を揃えていたという。

市街地で突然起きた惨事に付近住民や関係者らにはショックや不安が広がっている。

事件のあったビルは繁華街の狭い路地に面していて、夜は酒に酔った客同士のけんかも良く目撃され「路地に入ると怖いイメージがある」と話す人もいるという。


以上が、事件発生時の概要や。この事件の発生直後から、その近くに居住されておられる読者により、ハカセの所に様々な情報が寄せられた。

ただ、情報が錯綜気味やったのは確かなようや。その読者にしても、日頃、そういう事件に度々遭遇しとるわけでもないやろし、飛び込む話の信憑性まで精査することは取材の素人では不可能に近いことや。

憶測や噂が飛び交うてた中でのことやから、それは致し方ないことやと思う。

中には、どう考えても真実としか思えん情報もあるが、それを、ここで話すわけにはいかん。また、話す必要もなくなったことでもあるしな。

それは、翌日、急転直下で犯人が逮捕されたからや。

それにより、寄せられていた情報のほとんどが公開しても意味のないものになった。また、別の展開、結末やったら触れなあかんかったかも知れんがな。

その逮捕の報道もあったので、これも新聞各紙の報道内容をまとめて話す。


香川県丸亀市の新聞配達員殺害事件 18歳少年を強盗殺人容疑で逮捕 

香川県丸亀市の雑居ビルで1日、新聞配達のアルバイト中だった会社員Aさん(64歳)が殺害され、給料袋が奪われていた事件で、県警丸亀署の捜査本部が2日未明に逮捕状を取って行方を追っていたところ、午前4時40分ごろ、「(自分が)やりました」と、同署に出頭してきた飲食店店員の少年(18歳)を強盗殺人容疑で逮捕した。

調べでは、少年は1日午前5時ごろ、丸亀市の雑居ビルの階段で、新聞配達中のAさんの顔や頭を蹴るなどして殺害、4万2000円を奪った疑い。スボンのポケットに残された小銭はそのままだった。

少年は「Aさんの自転車とぶつかったが謝らず無視されたので腹が立ち、追いかけて頭を踏みつけた」などと供述しているという。少年は現場近くの店で働いていた帰りで酔っていたという。

現場付近での目撃情報などから少年の行方を捜していたところ「逃げられないと感じた」と同署に出頭してきた。

少年は「顔面を数回踏みつけたり足げりにしたりした」と暴行したことは認めているが「金のことは知らない。取る気もなかった」と話して容疑を一部否認しているという。


以上が、事件後、3日間の報道のすべてや。これ以降、しばらく報道、情報は途絶えた。

そして、11月9日の昼、つまり、昨日、加害者の18歳少年が否認していた現金を奪った件について、容疑を認める供述を始めたという一報が入ってきた。

どうやら、四国のローカルニュースでそのことが流れたということらしい。

それによると、加害者少年は、Aさんのしていた腕時計と一緒に現金の入った茶封筒を持ち去ったということや。

やはりそうやったかという思いが強い。

加害少年は動かなくなったAさんから、腕時計を奪い、身体検査をした上で現金の入った茶封筒だけを抜き取ったことになる。

しかし、それやと、スボンのポケットに残っていた小銭の説明がつかん。普通、身体検査までして金を持ち去ったのなら、それもついでに持って行くのやないやろか。

また、身体検査までしたというのは、Aさんが金を持っていると、その加害少年は考えたのやろかということや。

ワシには、その加害少年が最初から金目当てにAさんを襲うたというのは、考えにくいと思える。

常識として、早朝の新聞配達員は、小銭くらいは持っとるかも知れんが、たいていは大金なんか持ち歩かんもんや。傍目からも新聞配達員が金を持っていそうには見えんと思う。

まさか、この日、たまたま、Aさんがアルバイト料を貰うてたのを知っていたということはないやろと思うからな。

届けられた情報の中にも、この加害少年と新聞販売店及び配達員との接点は、ほとんどないという報告やった。

その疑問は、その後に寄せられた情報で解けた。

加害少年が暴行を加えていたとき「これを渡すから、こらえて(許して)」とAさん自身が、その茶封筒を差し出して必死に懇願していたということが分かったからや。

その状況を近所の住人が知っているという。当然、警察もそれは把握しとるはずや。

少年は、その差し出された茶封筒の金と腕時計を奪って一旦は逃げたが、暴行の現場を目撃されとったので、逃げ切れんと観念して出頭した。

どうやら、それが真相のようや。

さらに、素手による犯行を加害者は強調しとったようやが、殴る蹴るの暴行を加えた上で、鈍器のようなもので殴り倒したとの情報もある。

無惨としか言いようがない。18歳の少年からすれば、64歳のAさんとは、祖父と孫ほどの歳の差がある。

いくら、腹が立ってキレたにせよ、年輩の人間に向かってそこまで暴力を加えられる精神構造が、ワシには到底理解できん。

しかも、一切の抵抗もしとらんし、金まで差し出して許しまで乞うとる相手にや。その上、金や腕時計まで取っていく残忍さがある。

おそらく、そこまでするからには、殺意を持ってことに及んだはずや。Aさんが生きていたら、当然やが、犯人が自分やというのがすぐバレるからな。やったことは、結果として強盗や。それが分からんかったはずはない。

もっとも、加害少年はその殺意は否定するやろうがな。

当初、金を奪ってないと言うてたのも、素手による暴行を強調したのも、被害者に落ち度があると主張していたのも、すべて自己防衛のためやと考えれば納得もいく。

何を言おうが、所詮、死人に口なしや、という計算が働いたという気がする。

腹立たしさよりもおぞましさすら感じる。

そして、この手の人間が今やそれほど珍しくもない世の中になったと思う。

些細な理由で簡単に凶悪事件が起きる。その手のニュースを挙げればキリがないくらい多いからな。

これが、紛れもない現在の日本の状況やと認識するしかない。

ただ、このことについては、四国のローカルニュースに流れたとは言え、新聞報道されるかどうかまでは分からん。

このメルマガを発行する直前になっても、まだ、その確認は取れとらんからな。

ただでさえ、この報道自体は、全国的なテレビニュースにもなっておらず、新聞各社の扱いも比較的小さいから、18歳の加害少年が自供したという記事が果たして載るかどうかというのは微妙やと思う。

全国には約47万人もの新聞配達員の方々が毎日、新聞を配達されておられる。

朝早く起きて配るというのは、ワシ自身も経験があるが、口で言うほど簡単なものやない。

雨の日も雪の日もある。人間やから、体調の悪い時も気分のすぐれんときもある。

しかし、多くの配達員は、それにもめげず歯を食いしばって、毎日まじめに配達をして頑張っておられる。

新聞販売店は当然やが、新聞社やワシら拡張員も、彼らがいてて初めて成り立っている仕事や。それを考えると、たまらん思いになる。

この逮捕報道には近くの飲食店店員としか記されてなかったが、犯人の18歳の少年は、あるホストクラブの従業員やったということや。

せやから、どうやということやない。職業で判断する気は毛頭ないからな。それを言い出せば、ワシは拡張員やからな。人にえらそうに言える立場でもない。

また、それを責めれば、このメルマガ、サイトのスローガンの一つでもある「職業に、貴賤なし、悪者なしや。悪者が職業を選ぶんや」と自ら言うてることと矛盾するからな。

ただ、このメルマガの読者の中には、そのホスト関係者の方もおられるから、是非ともその事実を知って貰いたかったということもあり、敢えて言うてるわけや。

できれば、それを自戒の一つとして頂きたいというのがある。

もちろん、ホストの方々の多くは、犯罪とは縁もなく、まじめに仕事に取り組んでおられるというのは承知の上で言うてることや。

しかし、一部にでも不心得者がおれば、業界全体がそういうイメージを持たれて見られる。ワシらのようにな。

特に、こういう若い従業員を抱えることの多い職業では、どうしても、こういった暴力事件はついて廻りやすい。

何かを教訓とする場合、やはりその具体的な事案に遭遇せんことには、注意、指導というのは難しいやろと思う。

新聞業界の体質を棚に上げて話すようで心苦しい面もあるが、我れ関せず、事なかれ、隠蔽ということに心を向けとったら、所詮、そこまでや。

今回、報道されんかったことやとしても、当然のことながら、その地域住民の大半がどこの店かまで知ってしもうとる。

そして、被害者が、新聞配達員ということで、その地域一帯の新聞関係者にまで広く知られとる。そして、ワシら拡張員までな。

このメルマガでも、過去に何度か言及したことがあるが、拡張員の噂話の伝播力は並やない。驚異的というてもええ。

ひょっとしたら、インターネットに匹敵するのやないかと思えるほどや。

少なくとも、その地域及びその沿革地域の拡張員は、それを吹聴して歩いとるというのは十分考えられる。

あるいはすでに全国的に、その輪が広まっとるかも知れん。

一人の拡張員が営業で見知らぬ人間に話す相手は少なくも日に十数人はおる。拡張員が全国に10万人おるとして、単純計算で100万人の人間に話しとるということになる。

もっとも、それは机上の計算やから、そこまで多いかどうかというのは分からんが、それでも、中には、18歳の加害少年が努めていた店の名前を知っておれば、当然のようにそれを話題にする人間もいとるはずや。

世間話に持ち込む拡張員には格好の話題となる。また、それを好んで聞く客もおるやろうからな。

この先、その店がどうなるかは、ワシの預かり知らんことやけど、店の経営もかなりしんどいことになるのやないかと想像はつく。

加えて、この少年が酔っていたということで、当然、店でも仕事絡みとは言え、未成年者に飲酒させていたということになる。

このこと自体は、何も起きてなかったら、簡単な注意程度で済むことかも知れんが、こういう凶悪事件を引き起こした誘因として見られれば、相当の行政処分が、その店に科せられる可能性は高いと思う。

さらに、一度、そういう信用を落としてしもうたら、そこで、その商売を続けるのは至難の業やと理解しとった方がええ。これは、あらゆる業界、特に客商売に共通して言えることやけどな。

たった、一人の不心得者がいとるだけでそうなるわけや。理屈では分かっていることやとは思うが、実際にそうならな実感できんのが人の常や。

そうならんためにも、手の打てるときに対処しといた方がええ。何事も起きてしもうてからでは遅いということもあるしな。

広く世間に知られるということでは、その18歳の加害少年にも言えることやと思う。

18歳の少年は、少年法でもって、その顔や容姿、氏名、住所などは一切報道されることはない。また、警察もその発表をすることもない。

しかし、その関係者、周辺の住民にはそれは分かる。ただ、普通は、そこまでや。世間一般にまで広まることは希やし、少ない。

ところが、それが今回のように新聞販売店関係者やとなったら話は別や。

先ほどのホスト店の話やないが、同じように、加害少年の名前や住所が世間に広まる確率は、同様の少年犯罪に比べてかなり高いと思う。

当たり前やが、それを知る人間が多いほど比例して世間にも知られるということやさかいな。

人の口に戸は立てられぬ。というが、いくら報道規制をしようが、少年法でその公開が制限されていようが、これを押さえることはまず無理やろうからな。

別に、脅かすわけやないが、新聞関係者のように、日々多くの客と接する機会の多い人間を襲うて殺傷沙汰を起こすのなら、そういう面があるのを覚悟しとかなあかんということや。

報道規制とか、無報道というだけで世間に知られんという時代はもうすでに過ぎた。

それは、ちょうど、いくら新聞やテレビでその実態を報道されんでも、悪質な新聞勧誘が世間に広く知られとるということでも分かるはずや。

何でもそうやが、悪いことは悪いと自ら認めんことには良うなることは絶対にないと断言できる。隠し事からは何も生まれることはない。

もっとも、これは、新聞業界だけやなく、現在の日本の社会全体に蔓延しとることでもあるがな。未だに隠蔽体質が根強い所が多いからな。

社会保険庁や市役所、教育委員会、学校、病院など最近、話題になっとる事案では、必ずと言うてええほど、この隠蔽体質というのがある。

そうは言うても、ワシらでは、そういうところまでは、どうしようもないから、せめて新聞の勧誘業界だけでも良うしたいと願うとるのやがな。

今回の事件について、ワシらは、新聞の扱いがこれだけでは、あまりにも少な過ぎるのやないかという疑念を抱いた。

テレビ報道に至っては、四国のローカル局では一部流れとったようやが、全国ネットでは皆無やったからな。少なくとも、ワシらの方ではなかったと思う。

正直、ワシもハカセも、何かしらの報道規制でもあったのやないかと勘ぐったくらいやったからな。

新聞配達員と言えば、新聞社の屋台骨、業界の根幹を担う重要な存在や。その安全を図る意味でも、もっと大きな扱いにしても良かったのやないか。

そう思うた。

そのことを確かめたくて、このメルマガやサイトのAQ&Aでの回答を時折、お願いしている元新聞記者をされていたBEGIN さんに、報道の立場からの意見を伺うことにした。

以下が、ハカセからBEGINさんに宛てたその質問や。


今回の事件報道についてですが、教えて頂けないでしょうか。

@何らかの報道規制はあったのでしょうか。

A記事の扱いが小さすぎるのではないでしょうか。テレビ報道がなかったのは、新聞社の意向でも働いたのでしょうか。

B配達員の安全を考え、新聞各紙は、この問題を大きく取り上げるべきではなかったでしょうか。

以上のようなことが、どうしても気になり分からないところですので、どうか、ご意見をお聞かせ願えればと思います。


すぐ、BEGIN さんからその回答が寄せられた。


ご質問の件ですが、おそらく疑問に感じておられるであろうところを、私なりに以下説明したいと思います。

@何らかの報道規制はあったのでしょうか。

【回答】ないでしょう。あったらそれはそれで大ニュースです。

報道規制というと、各社の支局長(または本社の編集幹部)が集まって、当該事件についての扱いについて取り決めをするというイメージですが、新聞の販売店の関係者が被害者であるというだけで(販売店側の要請があるにしても)ライバル企業同士が即座に集まって「談合」するというのは、ほとんど考えられません。

各社が取り決めをするのは、誘拐事件やメディアスクラムなどに限られたことですから、 一新聞の一関係者が当事者であることをもって「談合」したとなると、強い批判は避けられないことでしょう。

今回も当該事件をどう扱うかは各社ごとの判断で行われているはずです。

A記事の扱いが小さすぎるのではないでしょうか。テレビ報道がなかったのは、新聞社の意向でも働いたのでしょうか。

【回答】記事の扱いについては、その日のニュース量との兼ね合いがありますので一概にはいえませんが、今回の事件の場合、だいたい相場の範囲内ではないでしょうか。

被害者が1人であること、幼児や児童ではないこと、強取金額が多いとはいえないこと、 手口に特異性や著しい残忍性がみられないこと、逮捕が早く犯人が出頭していること、 事件の背後に社会的問題が控えているとはいえないことなど諸要素を考えると、記事を大きく扱うニュース性が見つからないからです。

捜査一課がらみの捜査本部事件といっても全国を見渡せば結構な量があります。その全てが全国一斉に大々的に報じられているかといえば、そんなことはありません。

何かしらのニュース性がない限り、発生原稿はそこそこ大きく扱われても、逮捕原稿は(当事者から見れば)予想外に小さいということは普通に行われています。

前にも書いたことがあると思いますが、新聞記事は当事者から見れば非常に冷淡です。

仮に今回の事件で、少年が殺害現場に居合わせすぐに逮捕されたとすると、記事はもっと小さく扱われていたはずです。

捜査本部が立つか立たないかは、犯人が逃げているかどうかに過ぎないわけですが、1人の人間が殺されたという事実は同じなのに、こうも扱いが違うのかというくらい、小さいものです。

社会面に載らず、地方版でお茶を濁すことすらままあります。

特にテレビ局の場合は、新聞に比べて扱えるニュース量そのものが極端に少ないですし、 東京のキー局が全国ニュースをつくりますから、東京近辺で起きた事件ならともかく、 すべての地方の捜査本部事件を扱うとは限らない、というより扱い切れないことがままあります。

どちらかというと地方ニュース枠で厚くカバーすることが多いように思われます。

したがって「テレビ報道がなかったのは、新聞社の意向」ではないでしょう。新聞社の意向でテレビ報道が止まるほど甘くはありません。

今回の事件も、ニュースフラッシュのような形で逮捕を伝えた可能性は十分にあると思いますし、少なくとも香川のローカル各局は絶対に報道していると思うのですが…。

ちなみに、全国紙も各本社(東京・大阪・中部・西部…)で紙面構成は違いますから、 四国(大阪管内)の事件が大阪発行紙面に載っても、東京発行紙面に載らないことはよくあります。

ここから先はさらにテクニカルな話です。

今回の逮捕は大阪発行の夕刊掲載と想定されますが、四国は夕刊が届かないと思いますので、翌日の朝刊に夕刊記事を織り交ぜる形になります。

本社で新聞を編集する人間にとっては、古い情報を載せるという意識が働くためか、夕刊記事をそのまま朝刊記事に載せる際には、少し扱いを小さめにすることがままあります。

ですので、香川に配達された全国紙社会面を見ると、予想以上に小さい記事になってしまい、目を凝らさなくては見落としてしまうようなものになっている可能性もあります。

発生原稿を社会面で載せているでしょうから、逮捕もどんな形であろうと社会面に載せるのが普通です。

あまりに小さくなりすぎると、落ちた部分を地方版で拾うという手法も時々とられます。

B配達員の安全を考え、新聞各紙は、この問題を大きく取り上げるべきではなかったでしょうか。

【回答】これは企業経営の問題であって、新聞記事の問題ではないと言わざるを得ません。

配達員を狙う事件が頻発し社会問題化しているというのなら別ですが、そうでない限りは記事で安全を守るのではなく、企業の労務管理をいかに行うべきかの問題です。

記事において身内を特別扱いできないのは前述の通りです。

要するに、新聞記者が「事件は身内という感覚」を持ってはならないと思います。他の事件と同様にニュース性を見極め、事実を正確に中立に伝えるのが職務だからです。

新聞記事に対する信頼は、こういうものの積み重ねだと思うのです。

ただ、これはあくまで「新聞記事」=「編集部門」においてはの話です。

「販売部門」を有する企業体としては当然に「身内の事件」として対応すべき問題とは思いますが、実際問題、販売部門がどう認識しているのかは、よく分からないところです。

おそらく、単発の事件であれば各販売店でうまいこと対応してくれればいいが、同様事件が頻発すれば「重い腰」をあげる−といったレベルのような気もします。

「新聞配達員に対する新聞社の認識」というのも、新聞記者が新聞記事を書く上では、「牛乳配達員と同じ」であるべきですが、本社販売の人間はどう考えてるんでしょうか。部数を伸ばすのに精一杯かもしれません。


以上、長文になりましたが、とにかく私が言いたいのは、社会が納得するような正当な理由がないのに、すでに明らかになっている事実を「隠蔽」することはまずあり得ないということです。

事実が明白である以上、新聞各社が談合して掲載を止めたところで、テレビ・雑誌・フリージャーナリストは止まりません。

ましてやネットで流れます。談合して止める利益よりも、談合したことがバレる不利益の方がはるかに大きいわけです。

さらに新聞記事においては身内かどうかは関係がないということ。配達員であろうが、新聞記者であろうが、扱いは同じです。

新聞記者という職業によって、配達員よりもニュース性が広がる可能性はありますが、 新聞記者が帰宅中に路上強盗にあって殺害されても、原則として記事の扱いは同じはずです。

逆に加害者になった場合は職業上、大きく扱われるという不利益は受けます。

「新聞社が配達員をどう守るべきか」という問題と、「新聞記事でどう扱うべきか」という問題は切り離して考えてほしい−というのが新聞記者側の主張です。


ワシらは、BEGINさんからの回答を見て、正直、恥ずかしい思いがした。

身内意識が強くなりすぎていたなと思い知らされたからな。公平さという観点からは明らかにはずれていた。

ワシは、拡張員で新聞配達の経験もあるから、今回の事件は身内感覚になりやすいが、一般人であるはずのハカセも、サイトを開設して以来、全国の販売店関係者と親密になるにつれ、いつの間にか、偏った思考になっていたようや。

今回の事件を我が事のように憤っていたからな。

当サイトに掲げたスローガンの一つ、一方通行の見方をしたらあかんというのを、自ら破っていたことになる。

今回の事件は、冷静になって考えれば、年間1400件前後起きとる殺人事件の一つにしかすぎんということになるのかも知れん。

確かに、身内意識を捨てれば、取り立てて特筆する事件やないというのも理解できる。その報道を特別に扱えと新聞に求めるというのも酷なようや。

しかし、それでもこの事件を、このまま、うやむやにしたらあかんという思いに揺らぎはない。

せめて、これを教訓として生かさな、犠牲になられた被害者が浮かばれん。

この被害者の身に起きたことは、いつ他の新聞配達員の災難として降りかからんとも限らんからな。

強盗やひったくりという事件は大都市に集中して多いという傾向にあるが、こと、殺人事件に至っては、各都道府県間の発生率の増減格差が小さいというデータがある。

しかも、夜間から早朝を中心とした時間帯に65%前後が集中しとるということや。ちょうど、新聞配達の配達時間がその範疇に入る。

背景には,深夜営業店舗等の増加や就業の困難化、少年の罪意識の欠如などがあると分析する向きもある。それらに地域格差が見られんようになっとるということや。

つまり、全国どこにでも、これと同じ事件が起きる可能性があるということになる。

その危険に対しては、基本的には各自で警戒して注意するしかない。しかし、それだけでは限界もあるし、難しい面も多い。

次回のメルマガでは『新聞配達は危険がいっぱい……その安全対策への考え方』と題して、この問題を掘り下げて話すつもりにしとる。

基本的には、以前、このメルマガ『第51回 ■ 危険予知についての話』で取り上げたようなものになると思う。その中から、一部抜粋する。

KYTというのがある。危険(K)予知(Y)訓練(T)のことをそう呼ぶ。これは、かなり前から多くの企業が取り入れとる事故防止の考え方や。

たいていの事故原因は、人為的なものが多い。

その主な要因として、危険を危険と気付かない(感受性の欠如)、つい、うっかり、ぼんやり(注意力の欠如)というのが大半を占める。加えて、危険を避けることへの意欲に欠けるということもな。

逆に言えば、それらに注意すれば、危険を避けられる確率が高くなる。そのためには、そういう考え方の訓練(トレーニング)をせなあかんということになる。

危険を危険と気付かない(感受性の欠如)と言うても、実際にそういう危険と遭遇せんかったら、なかなか注意するのも難しいと思う。

今回の事件で言うたら、被害者のAさんは、早朝、酔って近づいて来る18歳の加害少年が、まさかそういう凶暴な人間やとは考えも及ばんかったやろと思う。

しかし、この事件を知った配達員は、少なくとも、そういう人間が近づいて来れば、何らかの警戒や注意をし、身構えることができるはずや。場合によれば、いち早く逃げることも可能になる。

ただ、その危険を知らんかったら、果たしてそれができるかとなると疑問やと言うしかない。Aさんと同じ被害に遭遇せんとも限らんからな。

そういう意味で、現役、元を問わず、新聞配達中に、こういう危険なめに遭ったという情報があればどんどん知らせてほしいと思う。

できる限り多く、取り上げたいと思う。また、こうすればええのやないかという意見もお願いしたい。

最後に、今回、犠牲になられたAさんのご冥福を心よりお祈りしたいと思う。そして、あなたの死は、決して無駄にはしないと改めてここに誓わせて頂く。


追記 事件のその後 2006.12. 8


この事件に関しては、これ以上の報道はもうないやろと思うてたが、12月5日にこういう報道があった。


新聞配達員殺害:送致の少年、観護措置2週間延長

丸亀市の雑居ビルで、同市内の新聞販売店従業員の男性(64歳)が殺害されて現金を奪われた事件で、高松家裁丸亀支部は4日、強盗殺人の非行事実で先月22日に送致された飲食店従業員の少年(18歳)の観護措置を2週間延長した。また、私選で付添人(弁護人)が決定したことも明らかにした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061205-00000194-mailo-l37


実は、これに先立ち、ある情報がサイトに寄せられていた。


例の殺人事件ですが・・・新たな事実が発覚しました。

殺される前から、被害者は犯人から何かといちゃもんをつけられていたとの事実が露呈。店の責任者には伝わっていなかったということですが、アルバイト間では周知の事実だったそうです。


これらのことから推測するに、どうもこれは、その場の偶発的な事件やなかったようや。計画的犯罪の可能性が色濃くなったと思われる。

どうやら、一般刑事事件扱いとしての裁判になりそうや。今になって弁護士が選定されたということは、それを意味するはずやからな。

犯した罪は償わなあかん。それが、18歳の少年というだけで考慮され、罪が軽くなるというのは、どう考えても不条理やとしか、ワシには思えんかったから、それなりに評価はしたい。

もっとも、世の中は、その18歳も、大人として扱おうという動きにはなりつつあるがな。

現在、18歳から選挙権が持てるように法律が改正される方向にある。そうなれば、現行の20歳が成人というのも、いずれ、すべて18歳に引き下げられることになるはずや。

本当に、世の中から犯罪を減らそうと考えるのやったら、被害者の人権、尊厳というものを加害者の人権以上に重要視せなあかんと考える。少年やからという特例を与え続ける限りは、この手の犯罪はなくならんと思う。

例えそれで、加害者が厳罰に付されたとしても、死刑以外の刑なら、まだ生きてるわけや。一方は無慈悲な殺され方をして人生をそこで終えとる。それだけでも、まだ加害者の方が遇されとることになるのやからな。

本来なら、命には命で償えと言いたいが、そこまではワシには言う資格も権利もない。そこは、法治国家らしく、法律で裁くしかないわな。

今後、この事件がどのような動きを見せるか分からんが、また分かることがあれば、ここに掲載していこうと思う。

おそらく、世間でこの事件が大きく扱われることは、これからもないと思われるしな。


その後の事件経過。


四国新聞社 SHIKOKU NEWS より引用

無期判決の少年が控訴−丸亀新聞配達員強殺
2008/03/26 11:16


 香川県丸亀市大手町の雑居ビルで2006年11月、同市土居町、新聞配達員で会社員の秋山正三さん=当時(64)=が殺害され、金品を奪われた事件で、強盗殺人などの罪に問われた坂出市内の元飲食店店員の少年(19)は25日までに、求刑通り無期懲役を言い渡した高松地裁判決を不服として控訴した。

 公判で少年は殺意を否認し、「当時はめいてい状態だった」などと述べていたが、11日の地裁判決は少年の主張を退け、殺意と責任能力を認定した。

 控訴を受け、秋山さんの妻幸代さん(65)は「夫や遺族のことを思うなら控訴しないでほしかった。刑の軽減を考えているのは残念で悔しい」と話した。


msnニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080811/trl0808111333002-n1.htm より引用

香川の新聞配達員強殺、二審も無期 高松高裁、地裁判決を支持2008.8.11 13:35

 香川県丸亀新聞配達秋山正三さん=当時(64)=を殺害し現金などを奪ったとして、強盗殺人罪などに問われた元飲食店店員(20)の控訴審判決で、高松高は11日、無期懲役の一審高松地判決を支持、被告の控訴を棄却した。

 判決理由で柴田秀樹裁判長は「被害者に因縁をつけて金品を奪う目的で犯行に及んだ。身勝手で短絡的な動機、経緯に酌むべきものはない」と指摘。一審判決の量刑が相当とした。

 判決によると、当時18歳だった元店員は平成18年11月1日、丸亀市大手のビル3階の階段の踊り場で、秋山さんの顔をけるなどして殺害。



http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090226/trl0902260015000-n1.htm より引用

香川県の新聞配達員強殺事件、元少年の無期確定へ

2009.2.26 00:15

 香川県丸亀市で平成18年11月、新聞配達員の秋山正三さん=当時(64)=を殺害し現金を奪ったなどとして、強盗殺人などの罪に問われた当時18歳の飲食店店員だった元少年(20)の上告審で、最高裁第2小法廷古田佑紀裁判長)は、被告の上告を棄却する決定をした。被告を無期懲役とした1、2審判決が確定する。決定は23日付。

 1、2審判決などによると元少年は18年11月1日早朝、丸亀市内のビルの踊り場で男性をけって転倒させ、頭などを踏みつけるなどして殺害。現金4万2000円と腕時計を奪うなどした。

 元少年側は「酒によって判断能力が低下していた。殺すつもりはなく、傷害致死窃盗罪にあたる」と主張、無期懲役は重すぎるとしていた。


この判決が妥当かどうかは、それぞれで考えてほしい。

「覆水盆に返らず」ということわざがある。冒してしまったことは悔やんでも元には戻らないという戒めや。

若い人で、これを見る機会があれば、このことを心に刻んでほしいと思う。若気の至りは通用しないと。


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


メールマガジン・バックナンバー 目次                       ホーム