メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話
第12回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
発行日 2004.11.5
■喝勧拡張員も命がけ?
良う喝勧なんかやってる人間が「俺らも体張ってんのや」と言う。 ほとんどは自分たちのやっとることを正当化しようと粋がっとる奴の言い訳み たいなもんやが、中には、実際にそういう、体張らなあかんような目に遭うのもおる。
もっとも、今はこういう連中もめっきり減った。他は知らんが、少なくともワシの周りにはそれを広言しとる奴もおらん。時代やな。
昔は、というか、5,6年前までは、そういう連中は当たり前のようにどこの団にもおった。もちろん、今も地域によりそういう輩もまだ根強く生息しとるのも確かなようや。サイトの相談にもそういうのが後を絶たんしな。
奴らのターゲットは若くて気弱でおとなしそうな人間を狙うわけやが、当然や
けど、世の中にはいろんな奴がおる。
ワシのように、喝勧とは縁のない人間でも、拡張員というだけで、問答無用と
ばかり襲うてくる者もおる。実際にワシもそういうことがあった。
あるマンションを叩いた時や、拡張員と告げたとたんに、その男は奥の部屋か
ら木刀を取り出しいきなり襲うて来た。
もちろん、ワシは逃げた。兵法三十六計、走為上、と言う奴や。走(にぐ)る
をもって上とす。つまり、逃げるが勝ちちゅうやつや。
ワシも、その相手が極道なんかやと大抵は一目で分かるが、この時の男はどこにでもおるような若い奴やった。一見、おとなしそうな感じに見えた。
営業の仕事を長く続けとるといろんな奴に出会す。頭がいかれとるとしか思えん人間はざらにおる。普通の人間は話せば大抵分かる。しかし、こういう病的な人間は何を言うてもあかん。逃げるしかない。
普通に営業しててもこれや。喝勧のように相手を脅しとるような連中がどうな
るか容易に想像出来る。
せやから、ワシはこういうことをする連中には、こんなことばっかりしてたら、
ろくなことにはならんで、といつも言うてるんやが、それが分かる奴は少ない。
実際にそういう目に遭わん限りな。
この喝勧のようなことを何でするのかと言うと、一つには本当の営業というも
のを知らんということがある。
新聞の拡張は、脅して取るもんやと思うてるわけや。 それと、人を脅かすことによって自分が強くなったと錯覚するということもある。相手が怖がって契約することが度重なれば、よけいにそうなり、その道か
ら抜けられんようになる。
一種の麻薬のようなもんや。そんな人間にとって事の善悪は考えられんようになっとる。周りにその手の人間が多ければ、尚のことそうなり易い。
しかし、喝勧はリスクが伴う。トラブルを前提にしとる行為やから、当然と言
えば当然や。さすがにヤクザを脅す拡張員はおらんと思うが、脅した相手の親か身内がヤクザやった言う話は腐るほどある。
そんなのは並のトラブルでは済まんわな。 相手がヤクザだけとは限らん。脅した身内に警官もおれば、弁護士もおる。トラブルの挙げ句、警察に捕まる奴もおる。
昔は、そんなことになっても、懲りずに何度も同じことをする奴がおったもんやが、最近では、一度そんな目に遭うとすぐおとなしくなる連中が増えた。
余談やが、あるヤクザの親分がぼやいとった。最近では、若いヤクザも、警察
に捕まって懲役食らうくらいなら、さっさとヤクザの足を洗う連中が増えた言
うてな。
それは、この拡張員の世界にも言えることや。ここ数年、喝勧のような荒っぽ
い拡張をする人間が目立って減ったからな。今の若い人間は、極端にリスクを嫌がる。
もちろん、それは悪いことやない。それで、喝勧のようなことが減るのはええことや。
ただ、頭を打たんと分からんというのは、どうかと思うがな。痛い目に遭うか
ら止めるだけで、心底悪いと思うとるわけやないからな。