メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第161回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日 2007.9. 7


■勧誘批判合戦の果てにあるもの


「こんな折り込みチラシが入ってます」という類のメールがメルマガやサイト宛てに立て続けに2件届いた。

その折り込みチラシの内容というのは、2件とも競合相手の勧誘に対するものや。

販売店側の立場から見た他紙拡張員による勧誘に対しての読者への警告という趣旨になっとる。

これに類似した問題を、以前、サイトのQ&A『NO.311 新聞勧誘の警告チラシについて質問があります』で取り上げたことがあった。

その警告チラシの中で相手側を名指ししとるという業界でも異常なものやった。

その回答の中でワシは、『こんなことをするのは思慮の足らん販売店やと言うしかないな』と言い『これは、ある意味、営業妨害に相当することや』と断じた。

こんなことを続けとるとそのうちロクなことにはならんと思うてたけど、案の定、その危惧が的中しそうな雰囲気になってきた。

このときは、A紙の販売店がY紙の勧誘に対してのものやったが、今回送られたものは、Y紙の販売店がA紙の勧誘を批判するというものや。

しかも、その二つは偶然にも同じ地域からのものやった。

以前のQ&Aでは、その地域すら明かしてなかったから、今回、その情報を送られてきた人は、そのQ&Aを見ていたとしても、まさか同じ地域ということは知らなんだはずや。

しかし、これは偶然には違いないやろうが、単なる偶然とはとても思えん。

ワシの危惧するとおり最終段階に突入しようとしとるのかどうかは定かやないが、いずれにしても焦臭(きなくさ)い雰囲気が漂っとるように感じられる。

ここではその地域を関東方面とだけ言うておく。

これを送って頂いた読者は、そのチラシを写真に撮ってそれをメールに添付されいた。

取りあえず、それに書かれている全文を紹介する。

通常、ハカセは、寄せられたメール文を公開する際には、必要に応じて最低限度の添削、手直しをすることがある。

こういったメルマガや、サイト上で人に読んでもらうには、ある程度、分かりやすくなかったらあかんというハカセなりのこだわりがあるからや。

それ以外にそうする他意はないがな。

誤解せんといてほしいが、読者の方に分かりやすくきちんと書いたものを最初から寄越せと言うてるのやないで。

そら、中には舌を巻くほどの文章を書いて送ってこられる方もおられるが、そういうのは、やはり少ない。

文章談義になると、ハカセは長くなるから、そういう機会があれば別に話すつもりにしとると言うが、要するに日本の国語の教え方は、文章の書き方をことさら難しいものにしとるというのがハカセの持論や。

日本人で、ワシも含めてやけど、文章を書くことが得意な人間というのは少ないはずや。

極端なことを言えば、学校の教科書どおりの教えで文章を書けばヘタになって当然ということらしい。

せやから、文章を書くことを苦にする人が多いというのは、何もその人だけの責任というわけやないということになる。

つまり、ワシの言いたいのは、文章の善し悪しを自分で判断して気にすることはないということや。

どういうものでも思いさえこもっていたらそれでええ。たいていのものなら、ハカセは読み取れるさかいな。また、その努力をする男や。

そして、その思いと一緒に読者に正しく伝えるのがハカセの役目ということになる。そのための手直しや。

しかし、今回のこのチラシの文面に限っては、そういうのは一切なしで原文のまま紹介する。但し、新聞社名、販売店名は例によって伏せるがな。


毎週メルマガ楽しみにしている、○○と申します。
 
さて、本日の折り込み広告に面白いのが入っていたのでお知らせいたします。

この販売所では結構よくこの手のチラシが入ります。今回はわりと大人しいですが、普段はA紙と名指しています。

              
                緊急のご連絡


残暑お見舞い申し上げます

毎日暑いですね。皆様におかれましてはお身体大事にお過ごしください。

さて、最近他社のこころない悪質セールスからの被害が多発しているので緊急
告知とさせていただきます。

内容はY新聞と言って勧誘に来るのですが、契約したら控えが他社のものであ
ったり、契約を断ると暴言を吐いて帰っていき、しばらくするとタイミングよく優しそ
うな他社のセールスマンが契約にごぎつけていくというものです。
(もちろん二人とも他社のセールスです)

これは、我々○○スタッフが、汗と涙で培ってきたお客様との絆を壊す卑劣な
違反行為です。

昔からある姑息なイメージダウン作戦なのですが、こんにちではそのような悪
質セールス対策としてクーリングオフ制度があります。

“あれ!少しおかしいな”とお思いになったら、まず8日以内でしたら無条件
で解約が出来ます!

“だまされた自分が悪いんだ。少しの間我慢しよう”“解約したら後が怖いわ”
なんて思わないでください。お客様が一番偉いんですから・・・。

何か契約の件でありましたら、お気軽におでんわください!ご相談にのります!

8日を過ぎても悪質の場合は解約できるケースが多いので、“解約の電話なん
かしたら怒鳴られるんじゃないかしら。”と思わずしてみてください。

そのようなことでもどしどし相談に乗りますのでお気軽にお電話ください。宜
しくお願いいたします。

○○○○(新聞販売店名)
(住所)
(電話 フリーダイヤル)

というものや。

これを読まれて、一体、どれだけの人が、「こら大変や、気ぃつけなあかんな」と考えるやろうかはなはだ疑問やと言うしかない。

中には、そういう人もおられるかも知れんが、大半の人が「何やこれ」と胡散(うさん)臭いものを感じ、嫌悪感を抱いたのやないかと思う。

もしくは、これを送ってこられた読者のように「面白いのが入っていた」という程度のはずや。

もっとも、この読者にしても、サイトの情報になればという親切心があったために目について送ってくれただけの話で、何もなければ「変なものを入れるもんだな」くらいにしか思われてなかったはずや。

いずれにしても、間違っても、これを書いた販売店の評価が上がることは絶対にないと言い切れる。

ただ、単に新聞販売業界の質の悪さを宣伝しとるにすぎんものやさかいな。

これを書いた人間の言わんとしとることは読み取れる。相手の勧誘員がけしからんという思いも伝わる。

しかし、これを書いた人間、および、それを許したこの販売店の経営者は書くことの効果や結果について考えたことがあるのやろうかと思う。

今回は、はっきり相手を名指ししていないというが、これを送ってこられた読者は「普段はA紙と名指しています」というから、実際そうなのやろうと思う。

その行為は、単に、業界の評判を落とすということだけやなく、ヘタをすると刑法犯に該当するおそれのあるものや。

該当する罪に、刑法第230条の名誉毀損罪というのがある。

名誉毀損罪というのは、例えそれが事実であっても公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立するものとされとる。

3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑がある。考えとるほど軽い罪やない。

また、刑法第233条に信用毀損罪、偽計業務妨害罪というのもある。

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者も、同じく3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとある。

このチラシを書いた販売店にすれば、事実やから「虚偽の風説を流布」には当たらないと反論するかも知れんが、この文書ではその違反行為の証拠について実証がなされていない。

証拠について実証されるものがなければ、相手を陥れる目的をもった偽計と判断されても仕方ないということになる。

加えて、刑法第234条に威力業務妨害罪というのもある。

不特定多数が読む可能性のある折り込みチラシに、相手側の不利となる文言を書いて業務の妨害を目的としとるのは明らかやから、その罪に問われる可能性は高い。

威力とあると、暴力的なことを連想される人が多いかも知れんが、言葉や文書であってもそう判断された判例は過去にも多い。

新聞紙面は当然やが、好き勝手なことを書いとると思われとる週刊誌にしても、迂闊なことを書けば、たちまちそれらの罪に問われるし、民事で訴えられれば、高額の慰謝料を支払わされるということにもなる。

せやから、文章として載せる場合は、それなりに慎重になるし、載せると決めた以上は、腹を決めてそうするわけや。

ワシらのメルマガやサイトにしても、それは同じや。どれだけ好き勝手に書いとるように見えても、そういう神経は使うてるんやで。

俄(にわか)には信じてもらえんかも知れんが、メルマガやサイトには、ワシの言うてることの半分も書いてないのが実状なわけや。

どんな世界の話でもそうやが、書けることよりも、書けんことの方が圧倒的に多いさかいな。

それは、新聞や週刊誌にしても例外やない。

不特定多数の人に読まれる可能性のあるものは、常に書いたことへの結果責任というのを頭に入れて書く必要がある。

そういうのが一切ないのは、自分だけが見る日記くらいなものやと思うてたらええ。

つまり、今回のこの行為は、そういうリスクの中で行われとるということになるわけや。もっとも、それを承知で書いとるとはとても思えんがな。

それほどのリスクを負いながら、それに見合う効果はほとんどないに等しいと思う。

むしろ、逆効果にしかなっとらん。新聞販売業界の暗部、暗闘をあからさまに一般に見せつけとるだけやさかいな。

ただ、この業界の人間は裁判沙汰にするという発想が少なく、やられたらやり返せということになりやすいから、ここでいくら法律云々の話を持ち出しても、あまり抑止力にはならんがな。

事実、この地域でも相手側も同様のことをやっとるというからな。

正に泥仕合いというやつや。

それでも、「アホなことやっとんな」と笑うて見てられるうちはまだええが、こういうのは必ずと言うてええほど、エスカレートしやすいもんや。

エスカレートすれば、相手の販売店に殴り込みをかけるというのも、それほど珍しいことやない。

殴り込みというのが過激やったら、直談判という表現に変える。

舐められたらこの稼業はやっていけん。そう考える業界の人間は多い。

そういう現場は、何度かワシ自身、経験しとる。

そんな場合でも、このチラシにあるような抽象的なものやなく、誰がどこの客を脅して新聞を無理矢理変えさせたという証拠を掴んでから乗り込む。

そこで、相手がその事実を認めんかったら、軽く小競り合いが起きる。

それで、警察が介入したということもある。

しかし、その当時、その程度では当然のように新聞販売店関係の事件は新聞沙汰にもならなんだがな。

今は時代が違う。

ちょっとした暴力沙汰が大きく事件として報道されるようになった。

昔では考えられんようなことが、事件化しとるのが現実や。

つい、2日前の9月5日。販売店店主とその従業員5名が、売上金を持ち逃げしたとして、16歳の新聞配達員に暴行を加えて逮捕されたという事件が、新聞紙上で報道された。

容疑者たちは「落とし前をつけてやろうと思った」などと供述しているということや。

こういうのは、昔から結構あったことやが、それが新聞記事となったケースはほとんどない。少なくとも、ワシにはそういう記憶すらない。

もっと言えば、昔はワシらでさえ、それは拡張員の起こした事件やろうと思えるものでも、その職業を単に「会社員」とだけしとるケースが目立ったさかいな。

もっとも、拡張員といえども、れっきとした営業会社の社員の場合もあるから、そう記述しとっても間違いやないのやがな。

最近の流れとして、どうも、新聞社は、販売店関係者、拡張団関係者の関わった犯罪を積極的に新聞紙面で報道するように方針転換しとるように思えてならん。

これは、メルマガやサイトに良くメールをして頂く読者からも、そういう意見があった。


「販売店や拡張員の所属団体は、新聞を発行する新聞社とは直接関係ない会社です」ということを暗にアピールしたいからこそ、どこの新聞社も系列のテレビ局も、こぞって、自社ブランドの新聞販売店絡みの事件を積極的に報道しているのではないかという下心が透けて見えます。


ということや。確かに、一理ある気はする。

ワシらも、今は詳しく言及できんが、その流れの中で、新聞業界も大きく変わっていっとるというのが何となく分かる。

今回の話も、その危惧があったからこそ敢えてしたわけや。

正直言うて、この程度のことなら、それこそ「アホなことやめとけや」で今までやったら終わってしもうてたことや。

その危惧が確信になった時点で、このメルマガでもその話をするつもりやが、その前に、新聞販売店関係者の人には自重してもらいたいと切に願う。

話を戻す。

今回のこのチラシの中傷、批判合戦がエスカレートして、最終的に行き着くところは衝突しかないやろうと思う。

つまり、暴力事件に発展する可能性があるということや。

そうなれば、確実に新聞ネタにされる。バックボーンがバックボーンなだけに、テレビなんかでも面白おかしく取り上げられかねん。

はっきり言うが、新聞社にそのタガがなくなれば、テレビは容赦なくそうするし叩くはずやからな。

いつまでも新聞社に守ってもらえると勘違いしたらあかん。

それにしても、このチラシの文面やが、ワシのような文才のまったくない人間からみてもおかしな表現ばっかりやとしか言えんで、まったく。

「お身体大事にお過ごしください」て何やねん。こんな日本語はないやろ。

まあ、意味としては何とか分かるから良さそうなもんやが、人に読んでもらう文章としては最悪や。これは単に「身体に気をつけてください」でええやろ。

もっとも、ハカセに言わせたら「毎日暑いですね。皆様におかれましてはお身体大事にお過ごしください」のすべて不要とのことやがな。

最初に「残暑お見舞い申し上げます」としとるのやから、こういうチラシの切り出しにはそれで十分やという。誰かに手紙を書いとるのやないさかいな。

また「“あれ!少しおかしいな”とお思いになったら、まず8日以内でしたら無条件で解約が出来ます!」というのもないやろ。

ワシは、サイトで長いことQ&Aをやっとるけど、こんな乱暴なことは言うたことはないで。言い方こそやさしげやが、言うてることは無茶苦茶や。

この書き方やと、「少しおかしいな」と思えばすべてクーリング・オフしろという風にしか聞こえんさかいな。

どんなことでもそうやが、法律に頼るにはそれなりの理由がなかったらあかん。

これが、一般人やというのなら、そういうのも意見の一つということになるかも知れんけど、少なくとも契約をしてもらうことを生業としとる新聞販売店が吐く台詞やないで。

そんな簡単なことも分からんのかと言いたい。

その後も上げたらキリがないほどそういう箇所があちこちに多い。

まあ、あまりあげつらっても仕方ないからこれ以上は止めとくが、こんな調子で堂々と書かれると、業界全体のレベルが疑われることになるわけや。

こんなものが、その暴力事件のバックボーンにあったとして全国で流されたらどうなると思う?

単に、その販売店の恥だけでは済まんことになるで。ええ笑いもんや。

どんなものでも、人目に触れる文章が書きたいのなら、それなりの勉強をせなあかん。少なくとも恥をかかん程度にな。

また、その書いた結果も想像できんような人間にものを書く資格はない。まあ、これは少し言い過ぎかも知れんがな。

横で、ハカセが「まあ、まあ」という感じで静止しとる。

ハカセにすれば、あまり言いすぎると「天に向かって唾する」ことになり、我が身にも降りかかってくるかも知れんということでな。

今回は、ちょっと辛辣(しんらつ)すぎたきらいはあるが、要するに思いついた程度で簡単にこういうものを書いてほしいないということが言いたかったわけや。

それに、今の時代、こういうものは単にその地域だけに配ったらそれで終いやないさかいな。

現実に、その実物がワシらに届き、それがこのメルマガのネタとして使われとるわけや。

この地域で何が起こっとるのかはだいたい想像はつくが、こういう中傷合戦をする前に、何か方法はあったはずやと思うのやがな。

このままでは、共倒れになるだけやし、ヘタをすると業界全体の評価も著しく下げかねん。

その何かの方法が分からんのやったら、サイトのQ&Aにでもその詳しい経緯を説明して相談してくれれば、こんなチラシを配るよりましなアドバイスはできると思うよ。

最後に、この手の中傷チラシは何もこの関東の一部だけに限ったものやないというのをつけ加えとく。

冒頭で2通あると言うたが、もう一通は東海方面からや。

もっとも、こちらの方は、紹介したものとは違い、漫画やイラストで分かりやすく仕上げとる。センスとしてはなかなかのもんや。

これなら、それを見るだけで嫌悪感を抱くことは少ないやろと思う。このメルマガでそれを紹介できんのはちょっと残念やがな。

それでも、これを送って頂いた読者曰く、「販売店が、連日、何度も折り込んでいるチラシをここに添付いたします。ちなみに、こういったチラシを折り込むのは、過去(10年間)に記憶がありません」ということや。

その地域でも何かが起こっとるということになる。

いくらセンスのええもんでも、攻撃される側はええ気のするもんやないのは確かや。

こういうのが、度をすぎて出回るようやと同じような危険をはらむことになるわな。


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