メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第180回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
     

発行日  2008.1.18


■『特定商取引に関する法律』の改正への動きについて


以前から懸念されていた、ワシらに関係の深い『特定商取引に関する法律』の法改正が、いよいよ現実味を帯びてきた。

『特定商取引に関する法律』て何やねん、と言う人もおられるかも知れんが、これは、旧訪問販売法のことで、2004年6月1日から施行されとる、法律名称や。

この法律の第9条に、この新聞業界の人間なら誰でも知っている『訪問販売における契約の申込みの撤回等』、つまり、クーリング・オフの規定がある。

契約日を含む8日間以内に文書による通知を出せば、その理由を告げる必要もなく消費者側から一方的に契約を解除できる法律のことや。

ワシは、それを訪問販売業者は無条件に従い、ひれ伏せなあかんから、水戸黄門の印籠みたいなもんやと言うてるがな。

ただ、その法律の条文のどこにも「クーリング・オフ」という言葉は使われておらんがな。

これは、英語のCooling−off(頭を冷やす)からきとる俗語や。頭を冷やして考え直すことのできる法律という意味になる。

それが一般に広く認知され、法律家も使うことが多いから、法律用語と思われとる人もおられるようやがな。

訪問販売従事者にとって、このクーリング・オフを含む『特定商取引に関する法律』というのは、今のままでも結構きつい足かせとなっている法律や。

それが、さらに強化されようとしている。

去年、2007年3月12日に経済産業省の産業構造審議会特定商取引小委員会の第1回目の会議が行われ、同年、12月6日の第12回会議までに、その改正に向けての報告書(案)がまとめられた。

この改正案の目的は『訪問販売に対する規律の強化』にあるとされとる。

つまり、現在よりも訪問販売による勧誘のハードルを上げようというものや。

ここで、その改正案の全文を表記すればええのやが、そうすると文書量も多くなりすぎて、このメルマガの許容範囲を超えてしまいそうやから、それは控える。

また、決定した法律というのやったら、そうするのもそれなりに意味があるかも知れんが、所詮はまだ「案」の段階のものでもある。

せやから、これからワシが重要やと思える部分だけを抜粋して知らせることにする。

ただ、どうしても、その全文を知りたいという方は、末尾に【参考資料】を付記しとくので、それで確かめてほしいと思う。

まず、その目玉として『勧誘の意志を受ける確認義務』というものがある。

早い話が、新聞勧誘の場合、「あなたは、新聞の勧誘を受けるつもりがありますか」と、最初に断ってからでないと勧誘したらあかんということになるわけや。

こういう改正案が出るには、それなりの理由がある。

多くの訪問販売業者が、その目的を隠して勧誘しとるという実態があるからや。

それで迷惑、被害にあったという苦情や相談が相当数、消費者センターなどに報告されとる。

新聞勧誘の場合でも「宅配便です」「引っ越しのあいさつに来ました」「古紙回収に来ました」というような、嘘やええ加減なことを言うてドアを開けさせ勧誘するという事例は多い。

HPの『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』への相談にも、そういうのがかなりあるさかいな。

ワシが、事ある毎に言うてることがある。

客に嫌がられ、迷惑やと思われるようなことを続けとると、必ず法律の規制という形になって跳ね返ってきて、結局は自分で自分の首を絞める結果になりかねんと。

これが、そのええ例やと思う。

一見、これは、そういう、ええ加減なことを言うてドアを開けさせるようなことをしてない、まじめな拡張員には関係なさそうやが、そうも言うてられんやろうと思う。

今までやったら「こんばんは。○○新聞の○○と言う者ですが」と、普通に告げてあいさつすれば、相手の客も「勧誘に来たな」とすぐ分かるから、あえて「新聞の勧誘に来ました」とまでは言う必要はなかった。

また、「これから勧誘しますが、よろしいですか」とわざわざ断ることもなかった。

ワシにしても、最初の段階では、なるべく勧誘の話題に直接触れるようなことは避け、世間話や雑談などで客の心を解きほぐして、頃合いを見てから勧誘するというケースがほとんどや。

それが「新聞の勧誘に来ました」と最初にストレートに告げ、その承諾が貰えないと勧誘ができんというのでは相当きついことになる。

今でさえ、1日中叩いて(訪問)も、ほとんど話も聞いて貰えず、例え聞いてくれても断られることの方が圧倒的に多い。

100軒中、ええとこ10軒〜20軒程度の人しか、その話を聞いて貰えることはない。

それに、勧誘の承諾が最初に必要ということにでもなれば、その数はさらに激減するのは目に見えとる。

客にしても、その承諾イコール、契約の承認という風に受け取るやろうから、話くらい聞いてもええかという人間ですら構えてしまうことになりかねん。

そうなると、本当に新聞を購読したい、または違う新聞に変更したいと待ち構えている人にしか話もできんということになる。

はっきり言うて、この業界で、そういう人間と遭遇する確率は、「砂漠の中で米粒を探す」というほどやないにしても、かなり低いことには違いないと思う。

さらに『再勧誘の禁止』というのがある。

改正案には『契約を締結しない旨の意志を表示した者への勧誘の禁止を導入することが適当である』と記されている。

その意志表示には、住宅に張り出すステッカー、シールなどもその対象として検討されたようや。

よくある「セールスお断り」「赤ちゃんが寝ています」「夜勤明けにつき只今就寝中」という類のものやな。

これについては、文書による意志表示が必要ということで、これが張り出してあるだけでは、その意志の表示には当たらないという考えがその委員会の中でも優勢を占めたようや。

これを法規制する場合、クーリング・オフと同じく文書での通告ということが必要条件として考えられている。

意思表示の文書には、『意志の表示者と相手側が特定されているものとすべき』ともされている。

要するに、断った者と相手業者が明確でないとあかんということやな。それには、文書での送付を義務付けるしか方法はないという結論になる。

これについては、現状のクーリング・オフがそうであるように、受け取った受け取ってないという水掛け論のトラブルを避けるためにも、内容証明郵便の類で送付するようになるはずや。

金は多少かかるが、それを希望するのならその方法ということになる。

但し、この『契約を締結しない旨の意思表示』は、『基本的には勧誘を受けた契約に対してなされるものであり、当該意思表示によって訪問販売が禁止される範囲もこれを基に判断されることになる』とある。

つまり、「あんたのところの新聞とは契約する意志がないから断る」ためにその文書を送るには、その勧誘を受けてからという風に解せる。

これなんかは、しつこい勧誘をする者が後を絶たんがために、その特定の業者から消費者を守るための規定やと思う。

普通の勧誘員なら、一度断られた所には何度も行くことはないが、しつこい者はそうする場合があり、それでトラブルになることも多い。

新聞勧誘の場合は、「過去読」と言うて、一度、その新聞販売店から購読すると、契約が終了しても、その記録を残しとるのが普通や。

もちろん、再度の勧誘をするためのデータとしてな。

これは、一からの勧誘よりも、一度はそこから取っていたという実績があるために、同じ断られるにしても門前払いが少ないという理由からでもある。

このケースでは、何度も再訪するというのは普通に考えられる。

それが、嫌がれるような勧誘やなかったらええのやが、この過去読データ主体に廻る拡張員の中には度を超えたことをする者もおるわけや。

そういう連中の中には、過去読を落とせんかったら沽券(こけん)に関わるという者もおるし、話は聞いて貰えるのやから契約できんと恥ずかしいと考える者もいとる。

それが、強引な勧誘につながりトラブルとなることが多い。

ひどいケースになると、いくら断っていても日に同じ勧誘員が数回訪れることもあるというさかいな。

この改正案が通れば、法律でそれが規制されるということになる。

この『勧誘の意志を受ける確認義務』と『再勧誘の禁止』がその法律で決まれば、新聞業界としては、かなりの打撃になると予想される。

当然のように、新聞業界も、この委員会の成り行きを黙って見守ってきたわけやない。

新聞業界の代表がその委員会に出席して意見を述べたものがあるので、その主なものを以下に抜粋する。(詳しくは参考資料参照)


特定商取引法改正に関する日本新聞協会販売委員会の意見


1.法改正の趣旨は、悪質事業者から高齢者などを保護することであるはずだが、勧誘を拒絶する消費者に対する勧誘の禁止及び勧誘意思の確認義務が、すべての訪問販売に導入されることになれば、営業活動の自由が侵害される恐れがある。

規制強化は本来の趣旨に限定し、悪質事業者の違法な行為自体を取り締まれば足りるものであり、通常の営業行為は規制すべきではない。入り口の段階で、幅広く営業行為に規制の網をかけることは、過剰な規制につながる。

2.新聞は、極めて公共性の高い商品であり、広く読まれ普及することによってその公共的役割を果たすことができる。その普及の方法については、これまで訪問販売を主体にし、94%という世界的に見ても最高水準の戸別配達率を達成して
きた。

こうした新聞の公共的役割を妨げるような過度な規制はすべきではない。一方、消費者からの苦情については、各社ごとに苦情・相談窓口を設置し、解決している。

また、特定商取引法の指定商品として、新聞セールス近代化センターを設立し、悪質セールスの排除に努めるなど、自主的な改善努力を積み重ねてきた経緯があることも、ぜひ御理解いただきたい。


(別紙)
規制は本来の趣旨に限定すべきで、正常な営業行為まで規制すべきではない


○悪質商法の被害に対応するため消費者契約法を改正するとの報道があった。消費者契約法を改正するのであれば、特商法をあえて改正する必要はないのではないか。

○飲酒運転の場合、すべての飲酒運転を取り締まることはできないが、発覚者には罰則を厳しくしている。罰則を厳しくし、会社が実害を受けるように取り締まれば、一罰百戒で悪質な訪問販売が減るのではないか。

○玄関に「セールスお断り」「赤ちゃんが寝ています」などのステッカーを張る家庭が増えている。ステッカーを意思表示としては認めないとのことだが、再勧誘禁止の規定が導入されれば、事実上こうした世帯への訪問ができなくなる。禁止される勧誘の概念が拡大され、セールス自体ができなくなってしまうことを懸念する。

○新聞は公益的な商品であり、商品自体に欠陥はない。このような商品と、布団やリフォームなどの悪質業者が販売する商品を同一視するのか。

再勧誘の禁止と拒絶意思の確認という二つの入り口規制を、すべての商品に一律に適用するのか。

○新聞界にとっては急激かつ過剰な入り口規制であり、新聞を含む健全な商品を一律に規制するのは好ましくない。


拒絶の意思表示について


○消費者が勧誘を拒絶する旨の意思表示をした場合、勧誘が禁止されるということだが、新聞の場合、「今、○○新聞を取っていますので、△△新聞はいりません」「新聞は読んでいません」と、断られるところから勧誘が始まる。

こうした規定が導入されれば、本来自由な営業活動まで規制されることになり、過剰規制にならないか。

○消費者の拒絶の意思表示をどのように確認するのか。「だめ」と言っても、今、忙しいので「だめ」という場合もあるし、本当にいやだと思っている場合もあるだろう。セールスの実態を考えないで、一律に規制を導入するのは、過剰規制で
はないか。


再勧誘が禁止される期間について


○いったん消費者から勧誘を拒絶されたら、未来永劫にわたり勧誘ができないということなのか。

○全国で5千万部を超える新聞が発行されており、極端に言えば、その数だけ訪問活動が行われている。

例えば、1月から3月まで3か月の新聞購読契約がある場合、新聞購読が始まって1か月が経過した2月には、契約期間が切れた後の4月以降の購読継続の勧誘が行われている。

消費者からのクレームは多いかもしれないが、新聞の勧誘は分母が大きい。東京都の消費生活センターに寄せられる新聞勧誘の苦情件数は、絶対数でいえばまだ大きいが、4パーセント減少している。


業界が実施している自主規制について


○新聞は業界内で様々な努力を続けてきており、新聞セール近代化センターの設置や、自主ルールである公正競争規約を運用している。

また、社の取り組みとして読者センターを設置し、読者からの苦情・トラブルなどについて365日24時間体制で受け付け、解決している。

問題とされている悪質業者と違い、すべての新聞社が一切問題から逃げない姿勢をとっている。そのことを評価してほしい。

○業界の自浄努力として新聞セールス近代化センターがある。

そこでは事件を起こした者に対して厳重注意、除名などの厳格な措置を取っている。

法改正により訪問活動が萎縮の方向に向かうと、全国で月間数千万回の訪問活動により維持されている現在の発行部数が維持されなくなる。

さらに、活字離れの状況下、発行部数は急激に減少し、新聞業界の疲弊につながるのではないかと危惧している。


これについての特定商取引小委員会の意見がある。そのほとんどが反論という形になっとる。

その主なものや。


・いただいたご意見は新聞の公共性を疑うものである。かつて新聞については、公共性が高いからという言葉でいろいろな規制を排除してきており、特商法で指定されるのも他の商品と比べて遅かった。

・消費者の新聞の勧誘が怖いという印象は消えていない。

・また、今回の法改正は、通常の営業活動に支障をきたすようなものではない。通常の営業活動まで規制することを求めているのではなく、過剰な営業活動は困るというもの。

・何年も再勧誘してはいけないと言っているわけではなく、そういうところは法の運用として一般的な考え方と歩調を合わせて決めていくべきもの。

・「新聞は公益的な商品であり、商品自体に欠陥はない」と主張しているが、商品に欠陥がないのは、布団や浄水器であっても同様である。

・問題は勧誘行為、勧誘方法にあり、それを規制しようというもの。公共性の論理で、特商法の規制を除外せよということを認めては、各業界が同様のことを訴え、今回の法改正の趣旨が損なわれる。

・新聞の公共性が高いことには賛同するが、その新聞を不当・強引な勧誘で維持しているのであれば見直さなければいけない。

訪問販売自体も、高齢者にとっては必要性が高い場合もあるが、悪質な勧誘行為については規制するということを議論しているのと同様である。

今回の見直しでは、営業活動と消費者の主体的意思の尊重のバランスを考え、消費者の主体的意思を尊重するため再勧誘を禁止するというところに落ち着いたもの。

契約を締結しない旨の意思の表示についても永久に勧誘を禁止するものでもない。その点を踏まえつつ、訪問販売の有用性を阻害しないよう、きめ細かな議論を進めていく必要がある。

・新聞協会には、今回の改正には、生活平穏権の保護という意識が浸透してきたことが背景にあることを理解し、ビジネス展開を再構築していくことが求められる時代になってきていることを理解してもらいたい。

・新聞協会の要望を、法律からの適用除外という形で実現するのは困難。通達、ガイドライン等を規定する際、中身を精査し詳細な詰めを行うべきものだろう。

・新聞が公益的で重要なものであることに誰も異論はない。であるからこそ迷惑に思う売り方はやめていただき、特定の販売方法に固執せず、魅力ある紙面を作ることで、読者を獲得してはどうか。

・ 断られてから勧誘が始まると考えているのならばそれは驚くべき認識である。そもそも、法律の規制かどうこう以前に、人の迷惑にならないような売り方を考えることが必要ではないか。

・特定商取引法は、商品、サービスとは関係なく、問題が生じやすい販売形態を規制するものなので新聞に公共的役割があることが対象から除外することの理由にはならない。

また、個人の生活にとって訪問販売というものが大きな権利侵害の危険をはらんでいることを理解いただきたい。知人であっても他人の家を訪ねる時は、事前に連絡を取り、同意を取ってから行うものである。売り方についてはもっと工夫し
て考えるべきではないか。


両方の意見を見比べてどう感じられたやろうか。

ワシは新聞の勧誘を生業にしとるから、それに不利と思える法律には反対したいし、新聞業界の代表の意見に賛同したいのやが、これでは、どう贔屓(ひいき)めに見ても弱いとしか言いようがない。

新聞業界の意見陳述の趣旨は、改正に反対ということなのやが、なぜ反対なのかという説得力に欠けるし、引き合いに出す喩えも悪すぎる。

『○飲酒運転の場合、すべての飲酒運転を取り締まることはできないが』という箇所があったが、この表現は少し思慮が足らなすぎると思う。

『すべての飲酒運転を取り締まることはできない』というのは『勧誘の不法行為もすべて取り締まれない』と言うてるに等しいことや。

罰則の強化は、飲酒運転であっても勧誘の不法行為であっても、それなりに実行されとることでもある。

そうやとすれば、現行の法律では限界があるからこそ、その改正をする方が正当性があるのやないかということになる。

新聞業界の代表の言うてることは、ある意味、真理を突いとるが、反対のための意見陳述にはなってないと思う。

『罰則を厳しくし』というのも、法改正を促す言葉のようにも受け取れるし、『会社が実害を受けるように取り締まれば、一罰百戒で悪質な訪問販売が減るのではないか』と言うに至っては、現在はそれができていないと自ら言うてるようなもんやないやろか。

それよりも、「過去にこれだけあった新聞勧誘の不法行為は、現在、業界努力でこれだけ少なくすることができました」と具体的に示すべきやなかったかと思う。

確かに『消費者からのクレームは多いかもしれないが、新聞の勧誘は分母が大きい。東京都の消費生活センターに寄せられる新聞勧誘の苦情件数は、絶対数でいえばまだ大きいが、4パーセント減少している』という記述が、それに当たると
いう見方もできるが、これなんかは却ってマイナス要因にしかならんと思う。

『消費者からのクレームは多いかもしれないが、新聞の勧誘は分母が大きい』というのは、それやから、少々のクレームや苦情があっても仕方ないという風に聞こえる。

本来、勧誘の不正行為は例え1件でもあってはならんことや。それを勧誘させる立場の人間が、少々は仕方ないと言うてどうすんねんと思う。

例え、実状はそのとおりやとしても、代表であるからには、そんな言葉は吐くべきやないと考えるがな。

『東京都の消費生活センターに寄せられる新聞勧誘の苦情件数は、絶対数でいえばまだ大きいが、4パーセント減少している』というのも、数字を挙げたまではええが、あまりにもお粗末な意見やと思える。

『絶対数でいえばまだ大きいが』と言うのでは話にならんのやないやろうか。

後に続く『 4パーセント減少している』というのが、何かむなしく響く。

もっとも、業界としてそういうデータ自体を持ち合わせとらんのかも知れんから、それに頼らざるを得んかったのやろうけどな。

まあ、長年に渡り、勧誘の不法行為を新聞で扱うこともなかったのやから無理もないがな。

そういう勧誘の不法行為自体、なかったことにしてきたわけや。隠蔽体質の弊害と言うしかない。

ワシら、業界の人間は、ここ数年、新聞各社が勧誘の不法行為撲滅に対して、それなりに取り締まりを強化しとるというのは良く知っとるが、こういう場では、具体的にそれをアピールできんかったら何の説得力も生まれんやろうと思う。

『○新聞は公益的な商品であり、商品自体に欠陥はない。このような商品と、布団やリフォームなどの悪質業者が販売する商品を同一視するのか』というのも、業界の代表として吐く言葉やないと思うがな。

これは、委員の反対意見に『・「新聞は公益的な商品であり、商品自体に欠陥はない」と主張しているが、商品に欠陥がないのは、布団や浄水器であっても同様である』とあるとおりやと思う。

本来、布団や浄水器自体は、ちゃんとした商品として認知され市販されとるものや。住宅リフォームにしても、きちんとした業者は多いし、確かな施工法も確立されとる。

この新聞業界の代表者の弁やと、そのすべてが、いかがわしいもののように聞こえる。こんなことが、それぞれの業界に知れたらクレームが殺到して大変やで。

悪質業者というのは、売っている物自体が悪いというケースより、その勧誘の方法、その後の対応により、そう呼ばれとることが多いわけや。

そういう意味で言えば、悪質な拡張団、販売店による勧誘というのも、その悪質業者の範疇に入るのやないかと思う。

目くそが鼻くそを詰っとるようなもんや。それが分かっとれば、こういう発言はできんと思うのやがな。

さらに『・問題は勧誘行為、勧誘方法にあり、それを規制しようというもの。公共性の論理で、特商法の規制を除外せよということを認めては、各業界が同様のことを訴え、今回の法改正の趣旨が損なわれる』というのも、もっともなことや。

『・新聞の公共性が高いことには賛同するが、その新聞を不当・強引な勧誘で維持しているのであれば見直さなければいけない』というのも核心を突いとると思う。

これなんかも、新聞業界のトップ自ら、新聞勧誘の実態を把握していないか、臭い物には蓋をしてそれを見ようとしない体質があると語っとるようなものやないかと思う。

さらに続く。

『○消費者が勧誘を拒絶する旨の意思表示をした場合、勧誘が禁止されるということだが、新聞の場合、「今、○○新聞を取っていますので、△△新聞はいりません」「新聞は読んでいません」と、断られるところから勧誘が始まる』というのも頂けん。

『断られるところから勧誘が始まる』というのは、業界内だけで通用する論理で、一般社会にそれを納得しろというのは無理があるとしか言えんで。

確かに、営業というのはご用聞きとは違うから、断られましたからだめでしたでは勤まらん仕事なのは確かや。断りが入ってからが勝負と考える営業員も多い。

しかし、それは、しつこい勧誘につながり迷惑やと考えとる消費者の立場に立って今回の法改正しようとしとる場で言うべきことやないと思う。

独りよがりの論理にしか聞こえんさかいな。

委員の中から『・ 断られてから勧誘が始まると考えているのならばそれは驚くべき認識である。そもそも、法律の規制かどうこう以前に、人の迷惑にならないような売り方を考えることが必要ではないか』と指摘されるのも当然やし、正論やと思う。

まだ他にもあるけど、この辺でやめとく。キリがなさそうや。

言えば言うほど、ワシにそのつもりはなくとも読者には、揚げ足取りだけに終始しとるという印象しか与えんやろうしな。

本来、その勧誘をする立場のワシとしては、その代表をけなすようなことは言いたくはない。

けなせばけなすほど、自分の立場も悪くするだけやさかいな。

それでも、黙っておられんかったくらい、この意見陳述はひどいと思うたわけや。

そら、ないでと。

どうも、この代表の弁は「火に油を注ぐ」とまでは言わんが、改正案をより強固なものにする口実を与えただけやないのかとさえ思える。

どう見ても旗色が悪いとしか言えん。

もっとも、当の代表もそれを感じられたのか『貴重な意見をいただき、ありがたい。別紙の意見は新聞界にも様々な意見があることを紹介したもので、総意ではない』と、一応の逃げを打っておられるがな。

現段階では、まだ案やが、おそらく、この改正案は近い将来、ほぼこのまま法制化され、施行されることになるはずや。

一般消費者を悪質な勧誘から守るという大義名分がある限り、これが法案となって国会に提出されたら、与野党とも反対することなく可決されるのは間違いないやろうと思う。

今までの類似の法律がすべてそうやったようにな。

残念やが、現状ではこの法律を阻止することは不可能やと認識するしかない。

勧誘のハードルが高くなれば、それを越える方法を考え出すしか、この道で生き残るすべはない。

少なくとも、旧態依然とした勧誘方法では、今回の改正案で生き残るのは難しいやろうと思う。

それを無理に続ければ、また新たな法規制を呼び罰則が強化されるだけになる。

現時点では、この改正による罰則の程度が、まだ判ってないから何とも言えんけど、目的が悪質業者の摘発、駆逐にあるとすれば、相当のものやないかと予想される。

現状のままやと、かなりの影響が出るのは間違いないやろな。

ワシもこれから、真剣にそうなったときの対策や営業法を考えるつもりやが、読者の方の中にも何かええ意見があれば教えてほしいと思う。


【参考資料】

産業構造審議会 消費経済部会 特定商取引小委員会 報告書(案)
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/sankoshin/main.html#

特定商取引法改正に関する日本新聞協会販売委員会の意見
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/sankoshin/sk_bukai/071127/siryo3.shinbunkyoukai.pdf


早速、読者から意見が寄せられたので紹介しとく。


追記 感想と意見

投稿者 Jさん アルバイト配達員  投稿日時 2008.1.20  PM 2:46


今回のメルマガは、いよいよ、訪問営業で新聞の顧客を得るというビジネスモデルが曲がり角に来たのかなと思わせる内容で、かなり考えさせられました。

もし、あの法改正が国会を通って施行されれば、その後の新聞の営業方法は一変するのではないでしょうか。

たとえば住宅の郵便受けに、次のような文面の予告チラシを投函するような販売店でしか、まともにとりあってくれない時代になるのかもしれないと、ふと思いました。

「○月×日午後に、当店の販売員が訪問いたします。ご説明させいいただく内容は、○○についてです。お手間は取らせませんが、もしご都合がよろしくないようでしたら、お手数ですが、次の電話番号へご一報くださいますようお願い申し上げます」

これは思い過ごしかもしれませんが...

私が新聞配達員であること、また、ゲンさんやハカセさんらからの情報の蓄積を私の頭の中から取り除き、できるだけ客観的に、この問題を考えてみました。

それでふと思いましたのは、「なぜ新聞購読の営業方法が、21世紀になった今でも、訪問形式だけしか選択肢がないのか?」という疑問です。

地域に密着する商売を営んでいながら、上記のように、他の地域商店やサービス業者が普通にやっているようなPRとは全く違う方法(拡張団に訪問営業を依頼するスタイル)に固執しているのが、どうにも奇妙に思えてくるのです。

たとえば、新聞販売店が、ダイレクトメールやポストへの投げ込み、地域広報紙や回覧板への広告掲載などを活用している例が、あまり見あたりません。

おそらく、ダイレクトメールを使って、商品の内容(他の新聞との違い)を明確にアピールできたからといって、成約にまで至らせるには説得力が欠ける方法であると思われているからだと思います。

しかし、ダイレクトメールでしかPR方法のない業界もあるわけですから、要は、何でもそうですが、希望通りの成果を上げる鍵は、当事者の「テクニック次第」ということになると思います。

とにかく一度も試してみないで、昔からのやり方に固執しているだけでは、これからも売上のジリ貧が止らないでしょう。

そういう意味では、こういった法改正は、業界にとってのカンフル剤と受け止めるべき段階に来ているのかもしれませんね。

つまり、新聞社は今後、新聞を「より魅力的な商品」に仕上げることに注力し、そしてまた、販売の「主人公」である販売店は、自分たちで知恵を絞り、新しい販売戦略を研究して、試行錯誤でいいから実行していくという取り組みが必要ではないかと思いました。

私が販売店経営者だったらば、まずは、地域のイベントに参加するなどして、地域に溶け込むところから始めるといった、気の長い営業戦略を柱にしていくことをまず考えるでしょうか。

もちろん、インターネットやDMでの広報も試してみるでしょう。

最近は「売り込みをしないレター」というテクニックが存在するなど、通販向けのマーケティング理論もレベルアップしています。

そうやって、あらゆる販売方法を研究していき、なるべく拡張員だけに頼らない、いわば営業の多チャンネル化を図っていくことを考えます。

(そうして、営業圏に住む人達を"自分の店のファン"にしていくことが、業種に関係なく、これからの地域密着型のサービス業者が生き残るためにやっていく道だと思うからです。)

もちろん、こういった取り組みが増えても、ゲンさんら拡張員が新聞業界から排除されるわけではないと考えます。

むしろ、レベルの高い訪問営業員が重宝がられる時代となるでしょう。たとえば、先の紙媒体を使ったPRが増えれば、それと並行して、やはりまだまだ、クローザーとしての訪問活動が必要とされるでしょう。

要は、「いきなり訪問」ではなくて、他の努力で、消費者に近づく下地を整えてから訪問するというスタイルになっていくのではないかと思います。


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