メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第184回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
     

発行日 2008.2.15


■ゲンさんのトラブル対処法 Part 6 クレーマー対策について


イケダ新聞店でのことやった。

早朝当番をしていたマサルがその電話をとった。

「おい、どないなっとねん!! 今日から新聞を入れるのと違うんかい!! まだ、入っとらんで!!」

いきなり、受話器の向こうから、ソネと名乗る男の怒鳴り声が聞こえてきた。

午前7時をいくらか過ぎていた。

店では、配達員には配達終了時間を午前6時としていた。

多少のアクシデントがあったにしても、遅くとも午前6時30分までには終了するよう厳命もしていた。

それが、午前7時過ぎにこういう電話が入るということは、配達員のミスによる不配の確率が高いから、早朝の電話番としては、ただ謝るしかなかった。

「どうも、すみません。今からすぐお持ちしますので……」

マサルは、電話の受話器を握りしめ、頭を何度か下げながらそう答えた。

この手の苦情は、新聞販売店ならどこにでもあることや。

新聞配達員には間違いは許されんとは言うものの、そこは人間のすることやから、どうしてもミスは起きる。

「5区の配達区域と言えば、カワタニさんやな。珍しいこともあるもんやな……」

カワタニは、アルバイトの配達員やが、この店にはもう7年ほどいてるベテランや。

今年35歳になるという。本業はどこかの会社の事務員をしとるらしい。几帳面で滅多に不配や遅配がないことで有名な人やった。

配達指示書も、ちゃんと出ていた。そのソネという客は、今日が初日と書かれていた。

普通、不配というのは慣れてからうっかりというのが多い。

その指示書は配達員なら誰でも最初に確認する。

また、それを間違えんように気を張るのが普通で、初日から忘れるというケースは少ない。

もっとも、皆無というわけやないがな。

配達人も人間やから、他に考え事をしていて、ついうっかり忘れるということもある。

マサルはいつものように、ゴミ袋を持って行って謝れば終いやというくらいの軽い気持ちで、留守番電話に切り替えてから販売店を出た。

指定されたそのアパートの部屋の前に着いたとき、マサルは一年前のある苦い経験を思い出した。

一年前、マサルは、その部屋の主から契約を貰った。

そのときも確か新聞が配達されていないというクレームが入り、たまたま当番やったマサルが新聞とゴミ袋を持って謝りに行ったことを覚えている。

その主は血相を変えて「初日から遅れる新聞なんかいらん」と怒鳴り散らし、結局、契約をキャンセルされたということがあった。

こういうケースで「解約や」と客に言われたら、それに抗することのできる新聞販売店は少ない。

厳密に言えば、新聞の不配行為は契約不履行に当たる。

新聞購読契約には、契約者はその期間、代金を支払う義務が生じ、販売店は遅滞なく新聞を配達するという責務を負うという大原則がある。

それが守られん場合は、契約不履行となる。そして、契約不履行は契約解除の有効な理由となり得る。

しかし、そうは言うても、たいていの場合、平身低頭に謝れば、一度だけのことでそう宣言されることはほとんどない。それが、度重なれば別やけどな。

せやから、その一年前の件は、店では特異なケースということになる。

「まさかな……」

同じ部屋の同じ住人やないのかという思いが脳裏をかすめた。

しかし、その当時の契約者は、確かハットリという男やった。今回がソネやから、別人のはずや。

おそらく、一年前のハットリという男は引っ越ししたのやろうと思う。

電話で「今日から新聞を入れるのと違うんかい!!」と言うてるところをみると、そう考えるのが妥当や。

因みに、そのハットリは、あの後、店の方でも「拡禁(拡張禁止)」に指定しとる。店の従業員はむろん、拡張員もそんな契約を上げるはずがないしな。

マサルは、そのアパートの部屋の扉を遠慮がちにノックした。

「ごめんください。イケダ新聞店の者です。新聞をお持ちしました」

扉が開いて、中年のいかつい感じの男が出てきた。

その顔を見て驚いたマサルは、小さく「あっ!!」という声を洩らした。

電話でソネと名乗った男は、一年前のハットリという男やったからや。

「もう、新聞なんかいらん。とっとと、帰れ!!」

男は不機嫌そうに、そう言い放った。

普段なら、それでも低姿勢に徹するマサルやが、固まってしもうて言葉が出て来んかった。

「なんじゃ、ワレ? ボケっとしくさって……」

「あの……、お宅、確かハットリさんですよね、ボクを覚えてませんか?」

「何やて? ハットリて誰やねん。変なこと抜かすな、ボケ!! 帰って店の責任者にもう新聞はいらんからとそう伝えとけ!!」

男は、それだけを言うと不機嫌そうに一方的に扉を閉めた。

とりつく島がない。

それが今朝のことやった。

「ゲンさん、どう思います?」

所長のイケダが、ワシにそう聞いてきた。

「どうも、タチの悪いクレーマーのようやな」

そう見て、まず間違いないやろうと思う。

このまま放っておけば、商品券などの拡材をタダ取りされることになるし、関わり合いになれば難癖をつけて何かサービス品でも寄越せと言うてくるはずや。

そして、いずれは、契約を解除させるためにありもせん不配の苦情を言うてくるのも見え見えや。

もちろん、新聞代など払う気はさらさらないと考えてええやろうと思う。

一般の人には、そういう人間が実在しとるというのは考え辛いかも知れんが、この仕事を長く続けとると、客の中にも、とんでもないのが存在するというのは嫌でも知ることになる。

人間には、どこで何をしていようが、ええ人間もおれば悪い人間もいとるというのは普遍の真理やさかいな。

それに例外はない。

因みに、今回の件を、配達員のカワタニに確かめると「私は間違いなく、そのアパートのその部屋に新聞を配達しましたよ」ということやった。

これが、ええ加減な人間の言うことなら、まだしも、カワタニのような信用できる男の言葉なら、まず間違いないやろうと思う。

「一年前も、まったく同じでした」

同席していたマサルが、そうつけ加えた。

マサルも、その件では少なからず被害を受けた一人や。多少の恨みも湧いてくる。

そのハットリという男から契約を取ったのはマサルや。それが破棄されたわけやから、その成績も当然、取り消されることになった。

典型的な不良カードということになる。と言うても、マサルに責任のある話でもないが、結果として勧誘の成績上はマイナス査定になる。

加えて、配達人としての評価も下げた。

それが、今回のことを含めて考え併せれば、あのときは最初から意図的に嵌められたということになるわけやから、よけい腹立たしい気分になる。

バカにするなという気にもなる。

「今回、その契約を上げたのは誰や?」

「オオミヤさんです」

マサルが、ワシに台帳を見ながらそう答えた。

「オキモトの所の人間か……」

「ゲンさん……」

イケダが、不安げに身を乗り出してそう聞いてきた。

オキモトというのは、ワシとは昔から何かと因縁のある男やった。

もうかれこれ10年以上にはなる。

オキモトとワシは、大阪のある拡張団で同僚やった。その当時、お互いその団の班長をしてた。

ライバル関係と言えば聞こえはええが、要するに常に敵対していたわけや。

そのオキモトとは良う揉めた。ウマが合わんというレベルやなく、生き方そのものが根本的に違う男や。

オキモトは仕事に関しては非凡なものを持っていた。成績もええ。それは認める。

オキモトは、典型的な昔気質の拡張員やった。カードさえ上げれば、何をやってもええというタイプや。

喝勧、てんぷら、置き勧、ヒッカケと、およそ拡張の手口と名の付くやり方はすべてやっとると豪語もしとった。

ただ、その頃は、それが拡張の主流で、ワシのやり方の方がむしろ異端やったわけやがな。

そのオキモトと何度か衝突を繰り返して、結局、ワシはその団を辞め、東海に流れることになった。

そのオキモトとの関係は8年前に一旦、途切れたのやが、去年、ひょんなことから今も続くことになった。

それについてはメルマガの『第153回 ■ゲンさんの決断 前編』と『第154回 ■ゲンさんの決断 後編』で話しとる。

それを読んで貰うたら分かるが、現在、ワシは、このイケダ新聞店で専拡として雇われとるわけや。肩書きは営業部長としてやがな。

そのイケダが、ワシを専拡に誘った理由というのが、そのオキモトから助けてくれということやった。

今や、オキモトは独立して拡張団の団長になっとる。

そして、このイケダ新聞店にも出入りしとるということや。

出入りしとるだけやなく、そのオキモトの団の拡張員が何かと問題を起こすことも多いという。

それをイケダは、オキモトの嫌がらせやと思うてた。

今回、そのソネやらハットリやら良う分からん男から契約を上げたというオオミヤという拡張員も、その内の一人というわけや。

「今回のことは、おそらくオキモトは何も知らんやろうと思う。あの男もアホやないから、こんなしょうもない仕掛けはせんやろ」

オキモトも、ワシとは因縁が深いだけに何かを仕掛けるにしても慎重になるはずや。簡単に尻尾をつかまれるような真似はせんと思う。

そのオオミヤという拡張員を煽っとるということがバレれば、オキモトの団を入店拒否する絶好の口実を与えることになる。

イケダだけなら、あるいは、そういうこともするかも知れんが、ワシがいとる。

あのオキモトが、それを考えんはずはないさかいな。

おそらく、今回のことはオオミヤという拡張員とその客が結託した単純な事案やと思う。

そういうケースなら、この世界にはいくらでもある。

ストーリーは単純や。

オオミヤは、その日、カード(契約)が上がらず、拡禁と知りながら、その男のアパートに行った。

その男のことを以前から知っていたか、あるいは、敢えてそうそそのかすつもりで行ったのかは分からんがな。

拡禁は、当然やがカード(契約)にはならん。しかし、同じ部屋であっても別人なら契約は可能や。

アパートというのは入居者の入れ替えが結構ある。1年も経っていれば引っ越して別の人間が住んでいるというのは良くあることや。

そういうこともあり、たいていの販売店では、アパートなどの賃貸住宅に住む独身者の契約は1年までとしているところが多い。

先付け契約というのも、1年以内でないと認める所は少ない。少なくとも、この店ではそうや。

せやから、拡禁の部屋の住人の名前が違うてても、それほど不自然やないわけや。

そこで、オオミヤは別人での契約を持ちかける。

その部屋の男は男で、拡材、この場合は1万円の商品券やったが、それさえ貰えれば、後は以前したように難癖をつけて解約すればええと考える。

また、オオミヤもそれを煽ったとも考えられる。

それで、めでたく両方の利が一致することになるから契約となった。

そんなところや。

もちろん、それについては、今のところ、ただの憶測にすぎんがな。

今回、ソネと名乗ったその男の言う、配達員が不配したというのも、強制的に解約させるための口実やったということは明白やと思う。

しかし、その確証がない。

「この件は、ワシに任せてくれ」

ワシは、そう言い残すと、ある確認のため他へ立ち寄ってから、その男のアパートに向かった。

この手のことは慣れとるということもあるが、営業部長という肩書きがある以上、仕事の内でもあるさかいな。

その男には、電話で詫びたいので来訪するという趣旨のことを伝えていた。

その男の部屋には、予想どおり表札はなかった。

ドン、ドン。

「ソネさん、イケダ新聞店の者ですが」

すぐドアが開いた。

「何や、そんな大きな声を出さんでも聞こえるわい。ま、中に入れ」

男は、少し不機嫌そうやった。

この声が大きいというのは普段の営業の癖ということもあるが、このときは、敢えてその普段よりも大きめに声をかけた。

中に入れさせるのが目的やったさかいな。声の小さな人間やと玄関口で済まそうとするやろうしな。それでは確認できんことがある。

そうしたのも、この時点で、すでにそのソネというのは偽名やという確証をつかんでいたからや。

どんな人間でも、大声で他人の名前を玄関先で呼ばれるのを好む者はおらん。近所の人間は本名を知っているやろうから、体裁も悪い。

しかし、今回は、その名で呼ぶワシを怒ることもできん。その偽名を使うたのは、その本人やさかいな。

周りに知られたくないと思えば部屋の中に引き入れるしかないわけや。

そこは、6畳一間と狭い台所があるだけの部屋やった。ドアを開けるとそのすべてが見渡せる。

その6畳間には、敷きっぱなしと思える万年布団があり、小さなテーブル兼電気コタツと古いテレビだけが目立つ、狭く殺風景な部屋や。

それでも、それなりに片付いておればまだええが、男やもめにウジが湧くというのをそのまま地でいっとるような散らかし放題で、臭いも相当なもんや。

まあ、拡張員もそうやが、男がひとりで暮らしていればこうなるのが多いけどな。別に珍しいことでもない。

ワシは、こう見えても綺麗好きやから、こういう部屋の中に長時間おるのは耐えられん。正直、きつい。

「で、どんな詫びをしようちゅうんや?」

男は、自分の絶対優位に微塵も疑いの余地がないかのように、余裕の笑みを浮かべながら、そう言う。

口調だけは、ちょっとしたヤクザのものや。

「その前に、ちょっと確認したいことがあるんですが、カンザキさん」

「な、なんやと!! どこでそれを……」

さすがに、この男、カンザキは狼狽(うろた)えた様子を見せた。

「別に難しいことやないですよ。ここのアパートの大家さんに聞きましたんで」

「そ、それが何や!!」

カンザキは、必死に虚勢を張ろうとしていた。

「偽名を使われての契約は無効になるんですよ」

こんな事は、わざわざ言うまでもなく誰でも分かることやけどな。

「加えて、あなたの場合は詐欺罪に該当するおそれもあります」

「変なことを言うな。そうしろと持ちかけてきたのは、そっちの勧誘員やないか。誘っておいて、詐欺罪はないやろ」

カンザキの話やと、勧誘に来たオオミヤが「あんたの所は、店から拡禁になっとるから、ハットリやなく他の名前で契約して貰えんか」と誘われたという。

予想どおりの返答やった。

「なるほど。しかし、あんたは、1年前に、そのハットリという名前で契約されたときも偽名でっしゃろ。そのときも同じでしたか?」

そのときの相手は、マサルやから違うのは分かっている。

「……」

「そのときも確か、今回と同じように、不配ということで解約されていますよね?」

「ああ、新聞を配達してなかったのは事実やで」

「そうですか……、ところで、それは何です?」

ワシは、そう言うて、電気コタツの上に無造作に置いてある新聞を指さした。

「あ、あれは、今朝来た奴が置いて行ったものや」

よほど、カンザキは狼狽えとったのやろうと思う。語るに落ちるとは、まさにこれや。

マサルが持ってきた新聞を受け取らず追い返したことを覚えとらんようや。

もっとも、このカンザキの狙いは、新聞を購読することなく解除することにあったわけやから、その新聞を受け取るはずもないのやがな。

受け取れば、その不配を許したことになると考えるやろうからな。

つまり、その新聞が今日の新聞やと認めとるのは、間違いなく今朝配達された新聞やということになる。

ワシが部屋に入るように仕向けさせたのは、それを確認したかったからや。

総体的に、こういう真似をする人間には計画性というものに欠ける。少々のことは威勢でもって押し切ろうとするさかいな。

せやから、ないはずの新聞が、そこに平然と置いてあるという間の抜けたことがあるわけや。

以前にも、これと似たようなことをする男と対峙したことがあったから良く分かる。

「カンザキさんよ!! あんたも往生際の悪い人やな。事を大きくして警察沙汰にしたいわけでもないやろ」

せやから、これは、ワシにとっては定番の決め台詞ということになる。

「……」

「確かに今回のことは、まだ決着の着いてないことやさかい、それで詐欺罪になるかどうかは難しいと思うが、1年前なら違うで。あんたは、今回と同じ手口で解約して、店から貰った1万円の商品券を返してないわけやからな。それは、詐欺とは違うのかな?」

もっとも、この論理には多少、強引な部分もあるがな。

民法第545条の原状回復義務に、契約が解除された場合、互いがその契約以前の状態に戻す義務を負うというのがある。

どんな理由があろうと、契約が解除されたら、その契約の条件として貰うた商品券は返さなあかんのは確かや。

例え、非が100%、販売店側にあろうともな。せやないと、契約以前の状態とはならんさかいな。

しかし、この『互いがその契約以前の状態に戻す義務を負う』というのがミソで、販売店が、それを根拠に契約者に請求せずにいたら、その権利を放棄したことになる可能性がある。

その場合、カンザキがその商品券を騙し取ったということで詐欺罪を立件するのは無理があるということになる。

強引な部分もあると言うたのには、それがある。

もちろん、その程度のことは百も承知やが、こう言うことで、このカンザキの動揺を誘うのが狙いやったから、これで十分なわけや。

法律の解釈は別にして、このカンザキが、その商品券のタダ取りを狙って仕掛けたことには間違いないさかいな。

カンザキも、それがバレたら拙いということくらいは分かっとるはずや。動揺はそこから生まれる。

「そ、それで、どないせぇ、ちゅうねん」

あっさりとカンザキはそう言うて観念したようや。これ以上、ワシと揉めても損やと思うたのやろうな。

「あんたも新聞を取る気はないようやから、契約は解除しよう。解約違約金もいらん。しかし、1万円の商品券は返してや。それで、終いや。今回のことは、うちの勧誘員にも責任のあることでっさかいな」

「分かった……」

ワシは、1万円の商品券をカンザキから受け取り部屋を後にした。

その間、10分足らずやった。

えらく簡単に片付いたという印象を持たれるかも知れんが、たいていはこんなものや。少なくとも、ワシの場合は、それほどややこしくなるケースの方が少ない。

こういう揉め事の解決には、ワシなりのある一定の法則がある。

1.初めに最良と思われる結果を推測、または設定しとく。

今回の場合は、商品券の1万円を回収して、契約を解除すること。そして、カンザキに二度とこんな真似をさせんようにすることで、ワシは「良し」とした。

心得として、欲を出さず多くを望まんということやな。

2.相手を不必要に追い込まないこと。

こういう揉め事の交渉で冒しやすい間違いに、こちらが圧倒的に有利になった場合、調子に乗って相手を追い込むというのがある。

相手に「これは、拙いな」と思わせられることができたら、それ以上は責め立てたらあかん。

引け目を感じとる人間は必ず逃げ道を探すもんや。そのとおりに逃がしてやれば、たいていは、こちらの有利な条件で折り合うことができるさかいな。

それを調子に乗って追い込むと、とんでもない反撃をくらうことになる。

追い込む側の人間はどうしても、自分の言動に行きすぎることが多くなる。その揚げ足を取られる。「何や、その口の利き方は」となるわけや。

そうなると収拾がつかんようになる。たいていの揉め事でややこしくなるケースがそれやさかいな。

3.相手に不利な条件となるものは、事前に揃えておく。

今回の場合は、カンザキのウィークポイントは偽名を使うてたということやさかい、その裏付けを取っておく。

ワシが、ここの大家に先に、カンザキの本名を確かめ、表札に名前がないのを確認しといたのもそのためや。

4.有利やと思うたら一歩退く。

今回のケースやと「うちの勧誘員にも責任のあることでっさかいな」と言うたところにある。

これは、そういう一面も否定できんことやからな。

良く、販売店の中には、拡張員のしたことは関係ないという立場に立って話す者がおるが、それは間違うとる。

特に今は、拡張員も、その販売店の社員証を携帯しとるわけやからな。

それに、販売店と拡張団が別組織の会社やというのは業界内だけに通用する論理で、客には預かり知らんことなわけや。

そもそも、新聞社、販売店、勧誘員は一体のものやと思うとる一般人の方が圧倒的に多いさかいな。

せやから、客に対する場合は、すべて身内として対処するくらいの気持ちの方がええ。

それに、これは、こちらにも落ち度があると言うことで、相手に「この人間は話が分かる」と思い込ませられるという利点もあるしな。

5.必ず、善後策を講じておく。

今回の場合は、それを明かす必要はなかったが、揉め事が大きくなったときのために、その会話を録音しとくのがそれや。

最近では、ボイスレコーダーという小型で高性能な録音機があるから便利や。

会話を録音するというのを知っていれば言動に気をつけるが、知らん場合は、不用意な発言をするケースが多いさかいな。それだけでも、かなり有利になる。

今回、ワシは、極力、言葉を押さえ、やさしく丁寧に言うてたのもそれが一因としてあったからや。

余談やが、業者は語気を荒げるとそれだけで威嚇、脅しと受け取られることがあるさかい要注意やで。

また、言うた言わんという水掛け論になった場合に、その証拠としても使える。

さらに、頃合いをみて、相手がとぼけたとき、おもむろに取り出して「そんなことは言うてないというのは通らんで」と言えば、それで、たいてい、こちらのペースに引き込める。

これは、その録音したことを証拠として係争の具として使うより効果があるとワシは考えとる。

6.こちらに非が大きいというケースでは、客の言い分を徹底して聞くというのも大事なことや。苦情であれば、たいていは、それだけで収まることが多い。

このカンザキのようなクレーマーの場合は、その言うてることの穴を見つけるためにも、ただ黙って聞いとった方がええ。

反論は勝てると思うたときでも遅くはないさかいな。

他にも、そのケース毎に対応策というのがあるが、この程度のことを心がけとれば、たいていの揉め事には対処できると思う。

その後、オオミヤを入店禁止にすると、オキモトに通告した。

さすがに、オキモトは、それを素直に受け入れ謝罪しとった。

やっこさんも、それなりの男やから、勝てん争いをして墓穴を掘るような真似をするはずもないがな。

オキモトとの戦いは、ほんの前哨戦が始まったばかりで、まだまだ先は長いやろうと思う。


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