メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第190回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日  2008.3.28


■『中国義歯から鉛』報道に見るネット報道の危険について


去る、3月14日、Yahoo!Japan ニュースにおいて『中国義歯から鉛「安全に問題」』と報じられた記事が掲載された。

しかし、この記事は、肝心な部分の情報が著しく欠落した内容になっている。

インターネットの情報発信と新聞報道の信頼性の違い、是非については断片的ではあるが、幾度となく、このメルマガ誌上でも言及したことがある。

ワシの個人的な意見として、インターネットの情報には不確かなもの方が多く、それに比べて新聞報道は極めて信頼性の高い情報が多いと言うてたのがそうや。

新聞を売る立場の人間としての擁護が加わっての言というのは否定せんが、こういったネット情報を目にする都度、その思いをさらに強くする。

はっきり言うが、このままこういうのが続けば、真実が覆い隠され大変な方向に行きかねんことになると危惧する。

危惧する理由として、大手ポータルサイト上でその手の報道があると、無条件に右倣(みぎなら)えの論調に終始した内容のブログを発信するブロガーたちが、あまりにも多すぎると思うからや。

しかも、それらの報道をすべて真実と信じ込んでそうしとるという善意の怖さというものがある。

悪意がない分、ある意味、よけいにたちが悪いとも言えるわけや。

今回取り上げることにした『中国義歯から鉛』報道というのが、その典型やと思う。

結論から先に言うと、この報道は、まったくの嘘や誤報の類というのとは少し違うが、説明不足の面や情報の出し惜しみが多いため、それを目にする読者に、ことさら危機感を煽るだけの結果にしかなってないということがある。

しかも、それを多数のブロガーたちが、こぞってその一面的な報道に乗せられ、同じような論調に終始しとるという現実がある。

Yahoo!Japanで『中国義歯から鉛』で検索すると、3月27日現在、64100件ヒット、Google やと74200件もヒットする。

そのほぼすべてが、その記事を無条件に信じて中国を批判する内容のもので占められている。

僅かでも疑念を示す内容のブログは、ワシの見る限り皆無やった。

しかも、それらは現在、日を追う毎に増殖しとる。

考えれば、これは、非常に怖いことやと言える。

危機感さえ煽れば簡単にそれに乗り流される人間が多いということを証明しとるようなものやさかいな。

もっとも、その多くのブロガーたち同様、ワシやハカセも危うく、その報道の論調に引き込まれ乗りそうになったから、あまり、えらそうに言えた立場でもないのやけどな。

因みに、この報道は、かなり衝撃的な内容を有しているにも関わらず、新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアでは未だに取り上げられず、報道されていないということがある。

ただ、マスメディアは広く数多いから、どこかにはその報道記事があるのかも知れんが、少なくともワシらには見つけることはできんかった。

情報では、一部の新聞社がその情報発信元に対して取材をしたようやが、結局、現在(3月27日)までのところ、その新聞記事にはなってないようや。

新聞やテレビ、ラジオでの報道というのは必ず、裏付け調査や取材をしてから載せる、あるいは放送するというのが基本、モラルとしてある。

もっとも、中には、新聞やテレビ、ラジオなどの報道において、誤報やねつ造があるのも確かやが、それでも全体の割合からすればごく僅かやと思う。

裏付けのない報道というのはあり得んし、あってはならんと考える報道機関の記者、ジャーナリストの方々が圧倒的に多い。

それが彼らのプロとしての誇りでもある。

つまり、その事実だけで、今回のネット報道は、記事にするには弱い内容やったということを裏付けとることになるのやが、結果として多くのブロガーたちは、その報道に追随して記事にしてしもうとるわけや。

もちろん、それを軽率やと非難するつもりも中傷するつもりもない。また、この報道が、まったくの誤報でガセやと言うつもりもない。

その報道には正しい部分もかなり多く含まれとるのも事実なようやさかいな。

但し、報道する側が意図した上でそうしたのかどうかはワシには分からんが、結果として、説明不足の面が多く、ことさら危機感を煽る論調に終始した格好になってしもうとるというのは否めん事実やと思う。

ワシが、このメルマガでここまで言うには、当然やが、それなりの根拠があってのことや。

それをこれから説明する。

ただ、その前に、肝心のその報道内容を先に紹介しとく。その記事自体を知らないという読者の方もおられるかも知れんしな。

その記事の全文や。


中国義歯から鉛「安全に問題」
3月14日13時3分配信 医療介護情報CBニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080314-00000002-cbn-soci


 中国製の食品や玩具から毒性が検出されて内外で問題となる中、米国歯科技工所協会(NADL)が中国で製作された義歯修復物から「危険なレベルの鉛が発見された」と報告している。日本の歯科医療でも安価を売り物にした中国など海外の技工物が広がる状況にあり、歯科医に緊急アンケートを行った青森県保険医協会歯科部は「海外技工物に関しては、法律上の制約も行政上のチェックもないままに行われており、安全性の面から大きな問題がある」と警告している。

 同協会などによると、中国製の義歯修復物に関しては、米国オハイオ州の患者からNADLに連絡があり、修復物を専門機関で分析したところ「危険なレベルの鉛が材料に使用されている」ことが分かった。米国議会が中国製玩具の回収の目安とした90ppmを上回る210ppmの検出もあったという。さらに、ボストン大学歯学部が追加調査した結果、鉛に加えて「放射性アイソトープ・トレース」が含まれていることも明らかになった。米国歯科医師会(ADA)は「非常に深刻な事態」としている。

 こうした中、日本の歯科医療でも中国など海外の技工物が広がっていると懸念した同協会が、その実態や問題点を把握して対策を立てるため、海外技工物に関する緊急アンケートを実施。調査票を送付した歯科医445人のうち112人から回答があった。

 海外技工物の案内やチラシについては、「見たことがある」が44人と約4割を占め、その時期に関しては「平成17年」が7人、「平成18年」が13人、「平成19年」が16人と増えており、海外技工物の宣伝が2〜3年の間に急速に広まっていることが分かった。技工物の内容(複数回答)では、「義歯」が過半数を超える35人、次いで「冠」が19人で、この2つが全体の8割を占めていた。
 
 また、海外技工物が下請けで海外に出されているケースに関しては、「知っている」が48人と4割強に上った。知った時期については、海外技工物の案内やチラシの認識と同様、「平成17年」が7人、「平成18年」が10人、「平成19年」が12人と、ここ数年で増加傾向を示した。
 
 一方、技工物の依頼では、「ない」が圧倒的多数の106人、「ある」は5人にとどまった。今後の利用に関しては、「ない」が101人。ほかは「条件が合えば利用する」が10人、「ある」は1人だった。

 海外技工については、「日本は国家資格のない者が作った技工物を日本人の口に入れることは大問題。全面禁止を国に訴えるべき」・「安価であるというだけで、品質管理の意味で海外技工をオーダーすべきではないと思う」などの否定的な意見が続出。
 
 さらに「安全性の点で問題あり。技工料が安いという理由だと思うが、医療費抑制の影響?」・「保険医療の点数アップを図り、技工士がきちんと給料をもらえるようになれば海外技工は減ると思う」・「今の診療報酬では安い技工所へ出さざるを得ない」といった歯科関係職が置かれている厳しい実態の改善を求める声も少なくなかった。
 
 このほか、「問題が起きる前に厚生労働省は何らかの手を打つべき」・「材料の面で不安がある。厚労省の対応や患者さんとのトラブル対応等不安」という国に対する要望もあった。

 海外技工物の広がりについて、同協会は「低医療費政策のもとで、経営を守るために、より安価な技工物に傾斜せざるを得ず、コスト面で海外技工が広がる土壌がある」と指摘する。また、安全性や影響に関しては「使用例からは原材料・技工士の資格などの情報が明示されておらず、情報開示を求める声が多い」などとしたうえで、「経済的・資格としても日本での技工体制崩壊の危険がある」と危惧。国には「安全性の確保や国内技工体制を維持できる医療費政策」などを求めている。


以上やが、確かにこれやと説得力も信憑性も高そうな報道に思える。

多くのブロガーたちが無条件に乗って、この報道を後押ししたというのも良う分かるし、頷ける内容や。

正直、この報道がYahoo!Japan ニュースに掲載されたのを見たとき、ワシらも「また中国か」という思いに囚われたのも確かや。

「ええ加減にしてくれよ」という気にもなった。

そのときは、その真偽のほどを疑うことすらなかったから、さもありなんとも考えた。

今や、このYahoo!Japan ニュースのように大手ポータルサイトで配信される記事は、新聞やテレビと同等、もしくはそれ以上の信用度を見る人に与えとると思う。

せやからこそ、多くのブロガーたちが、何の疑いもなく、それをネタにしてブログで流したんやろうしな。

しかし、その記事は、その大手のポータルサイトが発信したものやなく、あくまでも、その場を提供しただけにすぎんということを理解してなあかん。

そこにどんな誤報が流されようと、その大手ポータルサイトは、その記事の真偽を一々、検閲するわけやないから何の責任もないのやと。

これは、新聞やテレビ、ラジオ報道と同じく、その記事を報道した報道機関が責任を問われることになる。

せやから、その信用度は、あくまでもその情報の発信元で判断するしかないわけや。

このメルマガ、サイトに古くから協力して、いろいろ情報を提供してくれているT氏という読者の方から、この記事の内容について『お二方のご意見をお聞かせ頂ければ幸いです』という質問があった。

当初、それはサイトのQ&Aで取り上げるつもりにしていたが、その後のT氏からの情報で、急遽、このメルマガで取り上げることにしたという経緯がある。

それには、この報道自体の問題というより、ネット報道そのもののあり方というものに疑問が湧いてきたからや。

それを論じる前に、取りあえず、その際のワシとハカセの回答を先に続けて知らせる。


回答者 ゲン


あんたは確か、アメリカのロスアンゼルスで歯科医療の仕事をされておられるということで、その道の専門家やったな。

当メルマガの『第40回 ■コーヒーブレイクは歯医者で』の中で、あんたから教えて頂いた『歯科医師の見分け方』というのを紹介したことがある。

そのとき、ワシは、虫歯の痛みに耐えきれず歯医者に行った話をした。

ワシは、その痛みがなくなったらもう歯医者には行くつもりにならん。自慢やないが、今まで3回続けて同じ歯医者に通ったことがない。

一度行くのを止めたら同じ所には行きにくい。そうしてるうちに、近所で行ける歯医者がいつの間にかなくなっていた。

このままやと、本当に行く歯医者がのうなる畏れがあるから、本当にええと思える所で腰を落ち着けて? 治療に専念しようかなと考えて、あんたに聞いたわけや。

結局、その後、虫歯でどうしようもなくなった奥歯2本と下の犬歯1本を抜くことになり、今はそこに義歯、つまり入れ歯を入れとる。

ワシは、そのときの経験から、その入れ歯を作るまでに相当な手間暇がかかるもんやというのを実感していた。

歯を抜いた後、しばらくして印象剤というガム状の型取り剤を口の中で噛んで、その型を取るんやが、これは、あまり気持ちのええもんやなかったな。

ちょっと、嘔吐(えず)きそうやった。

それから、あんたの説明にあったとおり、出来上がった型の模型を歯科技工所に送って、入れ歯が作られるのやと思う。

その完成した入れ歯が歯科医院に納品される。それに合わせて患者が再度来院し、装着する。

ワシの場合は、最初に装着したとき、痛うて違和感があったから、その歯科技工所に送り返して作り直すということを二度ほど繰り返して、やっと完成したということがあった。

その間、約4ヶ月ほどかかったと記憶しとる。

そんなワシにしたら、その『中国義歯から鉛』の報道記事は「えっ?」という感じで驚くと同時に信じられん思いやった。

入れ歯というのは、その近くの専属の歯科技工所が作ると、あんたから聞いていた。

当然、その材料も歯科技工所が厳選し、また医療に関係するものやから、そのチェックも厳重なものがあると考えてた。

しかし、この記事によると、中国製の安い材料が使われ、その中に「危険なレベルの鉛が発見された」という。

しかも、日本において『海外技工物に関しては、法律上の制約も行政上のチェックもないままに行われており、安全性の面から大きな問題がある』と現場の歯科医が警告しとるという。

「何やねん、それは?」というのが、正直な感想や。そんなアホなことがあるのかと。

先の中国ギヨーザ事件の場合は、結局、その中国側は一切責任はないとして、日本側のクレームをはねつけた結果になった。

その事の是非や真偽は、ワシには分からんが、信用できず危ないと思えば、その商品を買わんことで、その危険を避けることはできる。

中国がどうのこうのと言うより、消費者がそれを買うか買わんか、自分で判断すればええのやさかいな。

少なくとも消費者にはその選択の余地がある。

危なくても安い方がええというのであれば買う人は買うやろうし、高くても安全な物を求める人は信頼のできる商品を探して買うはずやしな。

自由にしたらええと思う。その上で、必要なものや支持されるものは残るやろうし、いらんものは市場から消える。それだけのことや。

ただ、去年あたりから続発しとる食品偽装全般について言えることやけど、お上のチェック機能は、あまりアテにならんというのが印象としてある。

最近のギョーザ騒ぎでも、それはより明らかになったと思う。報道を見る限り、ほぼフリーパスに近い状態で入り込んどるさかいな。

どう考えても、お上のチェックは性善説の上になされているとしか思えん。業者がそんなことはせんろうという考えのもとでな。

まあ、これはお役所仕事全般に言えることやが、面倒な仕事には首を突っ込みたがらんという体質がある限り、厳重なチェックを期待するのは難しいのかも知れんがな。

もちろん、お上だけやなく、それを扱うた業者にも同じようなことが言える。

危険と利益を計りにかけた結果、利益を優先させるという企業がなくならん限り、こういうことは続くはずや。

極論すれば、人命より金儲けということやな。

まあ、それらを含めてワシら消費者とすれば、自らの身を守るのなら自分でどうするか判断するしかないということになる。

しかし、この入れ歯材に関しては、どこの歯科医でその危険と目される材料を使うとるのか、一般にはその判断のしようすらないのが現状やと思う。

唯一の選択肢としては、その危険を承知で入れ歯や歯の詰め物をするかどうかを決めることくらいやが、それを言うのは、あまりにも乱暴すぎるわな。

その入れ歯をするしか術のない人にとっては選択の余地なんかはなく、ただ信用するしかないのやさかいな。

ワシは、現在、幸か不幸か、その入れ歯は普段はあまりしとらん。するのは、歯医者に定期的に診察に行くときくらいなものや。

慣れんということもあるのやろうが、その入れ歯をしとると上手く喋れん。

上手く喋れんというのは営業にも影響するから、ワシにとっては大問題なわけや。

何度か入れ歯をしたまま喋りの練習をしたが、これが結構、疲れる。

よほど、口を大きく開けん限り目立つこともないということで普段はしてない。

いつもは、薬剤の浸かった水の中や。

それは、ワシの単なる横着からしとることやが、こういう報道を知ると正直、それで良かったと、つい安心してしまう。

結論として、利益優先の考え方を改めん限り、この手の問題はなくならんやろうと思う。

そういうことがなくなる可能性があるとしたら、消費者が断固、その手のものを拒否する以外にない。

安全なもの健康にいい物でないと売れんという世の中にならな、こういう問題の解決は難しいのやないかな。


回答者 ハカセ


大変な報道ですね。

私は、サイトではその必要も少ないため広言していませんが、これでも化学技術系の一級技能士(国家資格)ですので、今回報道されているような鉛害の怖さは良く知っているつもりです。

それを扱う仕事を長年していましたし、私が心筋梗塞を発症したのも、その仕事が一因だと医師にも言われていましたので、今回の報道は、とても他人事とは思えません。

鉛は長期間摂取を続けると体内に蓄積されて毒性を持ちます。その毒性の半減期は10年とも言われているくらい厄介なものです。

毒性としては、体表や消化器官に対する曝露(接触・定着)により腹痛・嘔吐・伸筋麻痺・感覚異常症などの中毒症状のほか、血液に作用すると溶血性貧血・ヘム合成系障害・免疫系の抑制・腎臓などへ影響し、実に様々な疾患を引き起こします。

鉛は、有機鉛化合物として呼吸器系からの吸引するものと、水溶性の鉛化合物として消化器系から吸収することによって体内に入るものとがあります。

呼吸器からの吸引は、鉛を含む塗料や顔料を扱う作業などに多く、職業病としての側面があります。私のケースはこれです。

鉛の怖さを引用する話として、古代ローマの滅亡説というのが有名です。

古代ローマでは膨大な量の鉛が生産され、加工しやすいという利点のため、陶磁器の上薬や料理器具、配管など実に様々な生活用品に使われていたという記録があります。

加えて、貴族たちが鉛製のコップでワインを飲むのを好んだため、鉛中毒患者が続出したとも言われています。

そのローマ人には死産、奇形、脳障害といった明らかに鉛中毒が原因と思われる症状が蔓延していたと考えられています。

その結果、ローマが滅亡したと信じられているわけです。

近年、先進国では鉛への規制が強くなり利用される事が少なくなりましたが、安価な輸入玩具や装飾品はいまだ利用されている場合があり、これらを子供が口に含むことで健康被害が起こる可能性が指摘されています。

米国議会が中国製玩具の回収を決めたというのも、そのためです。

去年の5月、日本でも鉛の含まれた中国製の土鍋が2万個出回り回収されるという騒ぎがありましたが、私の印象では、中国での鉛使用には根が深いものがありそうに思えます。

このとき、中国政府は、鉛の含有量は中国の国家基準以下だから問題ないとしました。

また、先頃のギョーザへの農薬混入については、中国側には一切責任なしと早々に発表もされました。

これについては、私もゲンさん同様、その真偽のほどは分かりませんが、日本国内では現在使用されていない農薬が、中国ではまだ使用されているという事実がある以上、早急に結論を下すべきではなかったかと感じています。

それと同じく、土鍋の件でも、鉛の含有そのものに問題があるという認識があってしかるべきかとも思います。

個人的な見解ですが、とても納得できる発表ではありません。逆に、怖さすら感じます。

すべての中国製品が危険というわけではないと信じたいのですが、残念ながら、私の中では現状は難しいと言わざるを得ません。

否定や打ち消しをするだけでは却って事態を悪化させるだけだと思います。

認めるべきところは認め、その上で対策を発表すれば、また違った結果になると考えるのですがね。

そのことに早く気がついてほしいと願うばかりです。

因みに、私もゲンさん同様、入れ歯をしていますが、この報道を見て思わず外しました。

もっとも、それに鉛が含まれているとしたら、時すでに遅きに逸した感は否めませんけどね。


以上が、そのときのワシとハカセの正直な感想、意見として、T氏に回答したわけや。

そのT氏から、早速、返信があった。


実は、この記事には、間違いがあります。

単に記事を書いた人が無知だったのか、あるいは意図的に曲げたのか、わかりませんが、原文では内容が微妙に異なっております。

もちろん、鉛が検出されたことは事実ですが、義歯ではないので、まずはご安心ください。

ハカセさん、ゲンさんのご使用されている義歯は、保険で作られたものでしょうか?

それであれば、100%日本製です。

自由診療の場合でも、高品質な物は中国で作成というケースが多く、アメリカのように「安いから中国へ」ということは非常にまれです。

そのため、今お使いの義歯は安心してご使用ください。

尚、中国義歯から鉛「安全に問題」の報道の原文とそのまま翻訳したのが『海外輸入歯科技工物から鉛検出?!』のページ(参考資料参照)になります。

ここには、いろいろと専門用語が続くので非常に分かりにくいのですが、鉛が含まれていたのは、義歯ではなく、クラウンやブリッジということになります。

実は、ここがこのニュースの大きな誤報のポイントとなり、いたずらに不安にさせているのではないかと思います。

繰り返しになるのですが、保険による治療は100%日本製です。日本国内で作成しないと保険請求ができないためです。

多くの日本人は保険治療をされておられると思いますので、この報道のようなケースはまれです。

用語の解説ですが、義歯はその名の通り、入れ歯を意味します。

クラウンとは、虫歯ができたとき、削り、その歯にかぶせる金属製のキャップのことです。

ブリッジは、歯が完全に抜けてしまった後、その前後の歯を加工して、抜けた部分も含めて金属にしてしまう方法です。

今回検出された鉛はポーセレンとありますが、ポーセレンは、陶器の意味で、金属のキャップのままでは、見た目に美しくないので、金属キャップの上に陶器を焼きつけ、白い歯のように見せる方法です。

今回の鉛騒動ですが、ポーセレンと金属から発見されたというのが真意のようです。

問題は、日本国内で中国製のクラウン、ポーセレンはほとんど流通していないという事実があります。

一方、中国製の義歯は比較的多く流通しております。ただし、自由診療の高級な義歯のみです。

故意にこのような誤報をしたとは思いませんが、昨今の中国の農薬混入事件のなか、このような報道があると多くの方が信じ込みますし、間違いであると知りながらも中国製の義歯は危ないと風潮する日本の歯科技工所があるのも事実かと思います。

私自身、日本の歯科技工所には頑張ってもらいたいと思う反面、このような誤報に乗じて、中国歯科技工所の足を引っ張るのは、日本人として恥ずかしい行為だと思っております。

技術と営業力できちんと患者さんに還元するべきだと考えております。

『海外輸入歯科技工物から鉛検出?!』のサイトに、「中国で35ドルでクラウンを作らせて、歯科医師には120ドルそこそこを請求したとすれば、何も言わずにそれをしたということは、何が大事なことだったのでしょうかね・・」とありますが、日本でクラウンを作るとわずか2000円ほどです。

作成に熟練者でも1〜2時間かかります(待ち時間などを除外した、実質作業時間です)。

これに材料代、光熱費等を差し引くと1個作る技工士の手間賃は1時間当たり、500円〜1000円程度といわれております。

中国で作成するよりも、ずっと安い値段で作ることができます。

もっとも保険の歯科治療は、日本国内で作成しないと保険請求ができないので、中国製ということは絶対にあり得ません。

ただし、上記のような状況で作られているので、サービス残業は当たり前、ボーナスなし、時給はコンビニ以下です。

すべて手作りですので、この状況が品質にどのような影響を与えるかはお察しの通りです。

もちろん、頑張っている方も多数おられますが、予算がかけられないということは、必然的にどこかでコストダウンをせざるを得ません。

機会がございましたら、日本の歯科技工所の見学されるとその意味がはっきり分かると思います。

大半の技工所は、お世辞にも綺麗な作業所とは言えません。

常に石膏や金属、プラスチックを削るので粉が舞っています。場所がないので食事もそのなかで取っているところがほとんどです。

正直、こんなところで作っているの? というのが一般の方の印象ではないかと思います。

自由診療の入れ歯がなぜ中国で作っているかといいますと、一つにはやはりコストです。

矛盾しているようですが、日本の技工所は保険で儲からない分、自由診療で高い代金をとろうとしています。

結果、自由診療の仕事に関しては、医療費の高いアメリカよりもずっと高くなっています。

もう一つは、品質です。

嘘のような話で信じられない人が多いかも知れませんが、中国製の入れ歯は概して品質が高いです。

少なくとも日本の歯科医院が発注している中国歯科技工所の品質は高いです。

品質の低いものを患者に渡し、トラブルになれば、その歯科医師が作成していないにもかかわらず、入れ歯だけの判断で「あの歯医者はヤブ医者」と患者さんに言われかねません。

特に自由診療では患者さんの要求も高いので、歯科医師も良いものを選びたがる傾向にあります。

日本の技工所の大半は、保険医療であり、コストも時間もかけられない状態の中、深夜までのサービス残業で作成されております。

手作りの商品なので、時間とお金がかけられない以上、品質はいまひとつにならざるを得ない現状があります。

そのような状況下で急に「良い物を作って」といわれても、高品質な商品を作れない歯科技工所も多いです。

それと労働者の意欲も違います。

中国でも産業が発展しているのはごく一部の主要都市に限られ、地方では現金収入が少ないという現状があります。

引越しも自由にはできないので、中国の地方の人が、北京や上海の歯科技工所で雇われるというのは、家族にとって期待の現金収入源となります。

家族の期待を背負って田舎から出てきていますから、技術を学ぶという姿勢は日本の技工士とは比べ物になりません。

また、日本と異なり、新興産業として歯科技工所が作られていますので、最新鋭の設備が揃っております。

食事はカフェテリアが完備というところがほとんどです。

もちろん例外もありますし、実際、鉛が含有していたというのも事実としてあります。

ただ、これも以前、ゲンさんがおっしゃられていたように、「拡張員だから悪い」というロジックは間違っていることと同じように「中国製だから悪い」という論法にも通ずると思います。

一方で私は日本の保健を使用した歯科医療はかなり危機的な状況ではないかと危惧しております。

歯科医療というと堅いイメージですが、実際の歯科業界は火の車で、経済的に貧窮しております。

歯科医師が金持ちというのは、もう20年ぐらい前の話で、現在では、貧富の差がはっきりと出ています。

熟練を要するにもかかわらず、上手くなっても所得が上がらず、それどころか、現在の保険制度上、手間をかければかけるほど、赤字は拡大します。

結果、若い人材も確保できないという状況にあります。

そのため、「日本製だから良い品」というロジックも残念ながら疑わざるを得ない状況となってきております。

実際、1円玉を溶かしてコアと呼ばれるクラウンの心棒を作成しているところがあるとも聞きます。

もちろん、違法ですが、歯科医師から「コアは無料で作れ」と言われて、仕方なく無料で1円玉を溶かして作っているそうです。

以上のような背景を考え、再度、先にお伝えしたYahooニュースをもう一度読みますと、ここぞとばかりに、中国製の締め出しを図り、自分たちの利益を確保し、保険点数も上げようという悪意にも近い意図がはっきりと読み取れます。

このケースに関して、保険点数は一切関係がないことは専門家である歯科医師、歯科技工士は十分承知であるにもかかわらず、利権を守るために動いているとしか考えられません。

専門家と呼ばれる人に任せておけば良かった時代から全てに関して疑い調べないといけなくなってしまったのは、本当にさびしい時代だと感じます。

今回のニュースにしても、たまたま間違いに気づくことができましたが、ニュースも活字になりますとつい鵜呑みにしてしまいますので、気をつけなければいけないと思いました。

最初のメールで、詳細を何も伝えないで試すようなことをして申し訳ございませんでした。

一般の方がYahooニュースの記事を読み、どのようなご意見を持つか興味がありましたので、私的な意見を書かずお伺いいたしました。

結果、お二方が義歯を使用されているとはつゆ知らず、ご不安を感じさせましたこと改めてお詫び申し上げます。


このT氏の話を聞けば、冒頭でのワシの発言の真意が分かって貰えるものと思う。

インターネットは、その膨大な情報量において今や完全に新聞を凌駕しとるというのは間違いのない事実として認める。

しかし、その反面、今回のような一般では絶対に看破できんような怪しげな情報も流れる。

もっとも、それを発信する側は、純粋に自らの立場を主張することを主眼に置くから、都合の悪い情報は隠す、出さないということになるのやろうがな。

報道機関以外からの情報というのは、えてして、そういうものが多いと思う。

そういう意味で言えば、この情報が特別、非難されるものではないのかも知れん。

すべてを言わんというのは、歪曲でもなければ誤報でないとも受け取れるさかいな。

これを、一つの意見、見解として見る分には問題は少ないと思うが、それがYahooニュースのような大手のポータルサイトで掲載されると、その記事が真実無二の情報として飛び交う危険が生じることになる。

例え、その場を提供しとるというだけにすぎんとしてもな。

新聞やテレビの報道と同等、もしくはそれ以上のニュースバリューを持つわけや。

そして、その情報を何の疑いもなくブログで流すブロガーたちの存在が、それと知らずその輪を拡げてしまう結果になる。

彼らは彼らなりに真実の報道に手を貸したという正義があってのことやとは思うがな。

インターネット上で情報を発信するのなら、その真偽を確かめた上で何事も記事にしてほしいが、この件については難しい面もあったというのは認める。

ワシらにしても、この事実を知り得たのは、たまたま、サイトに古くから協力して頂いているT氏が、アメリカの歯科医療の専門家として、その報道におかしいと気づかれ、それを検証されて知らせてくれたおかげやさかいな。

ワシらも、この報道の意見をと聞かれた際には、やはり、その多くのブローガーたちに似た感情を持って、それに近いことを、T氏への回答の中で言うてたさかいな。

それには、去年からの土鍋に鉛が混入されいた事件や、つい最近の中国製の冷凍ギョーザ事件で、その中国への悪いイメージがすり込まれとった後やったからよけいやと思う。

正直、ワシらも含めて多くの人が「またか」と思うたはずや。それが下地としてあったことは確かや。

しかし、それは間違いやった。

非難するのなら、やはりそれだけの根拠をもとにしてからするべきやと考える。

それを一般のブロガーに求めるのは酷やないかという声も聞こえてきそうやが、その判別は意外と簡単にできるもんなんや。

それは、その報道が、新聞やテレビでなされていたかどうかという単純なことでええ。

今回の報道で言えば、その記事のような内容のものは、新聞、テレビで報道してないはずや。

去年の土鍋の鉛混入にしても、ギョーザ事件にしても、新聞、テレビでは大々的に報じられていた。

今回の義歯に鉛が混入されとったというのが事実なら、それらに匹敵するほどの大事件やと思う。

本来なら、その報道があって当然や。しかし、なかった。

新聞やテレビでその報道がなかったというのは、その裏付けが取れんかったと考えてええと思う。

おそらく、T氏のような専門家に聞くなりして、その記事の信憑性は確かめたはずや。その上で、これは記事にならんと判断したと考えられる。

ブログで記事にするのなら、せめて新聞やテレビで報道されていたかどうかという程度の調べくらいはしてほしいものやと思う。

それなら、それほど難しいことでもないはずや。

せやないと、結果としてその見識まで疑われることになりかねんさかいな。

結論として、ワシが言いたいのは、インターネットというのはメディアとしては、まだまだ発展途上の媒体であり、現時点においては、新聞、テレビの報道の正確さには遠く及ばないということや。

そのインターネット上で信頼できる情報の多くが、新聞などの報道機関から発信されたものやさかいな。

以前、新聞が消滅したら、インターネット上の情報も大いに混乱し、錯綜すると言うたことがあるが、今回のこの報道が、それを暗示するええ例やと思う。

最後に、一言。

インターネットを見るだけやなく、できたらたまには新聞も読んどいてや。

無読を通すだけやと世の中を見誤ることになりかねんさかいな。

「何や、結局、最後は新聞の売り込みかい」と言わんといて、それがワシの仕事やねんから。


参考資料

海外輸入歯科技工物から鉛検出?!……報道の原文と翻訳データサイト


原文(3月13日分)

Some Dentists Don't Know Where Lead Contamination Is Coming From

Thursday,March 13, 2008 6:23 PM

Print StoryE-mail StoryCOLUMBUS, Ohio ? 10 Investigates took a deeper look into the reasons behind outsourcing dental work from overseas and the lack of disclosure that sometimes occurs between the lab, dentist and patient.~

When Dr. Brenda Roman places a crown in a patient's mouth, the dental work has a paper trail.
"We're very confident saying we know exactly where our lab work is coming from," Roman said.

SLIDESHOW: Images From The Report | VIDEO: Watch 10 Investigates' Original Report~

Every patient file has a sticker that lists materials and origin of the work. Her Columbus dental lab includes it with the crown.
As 10 Investigates' Lindsey Seavert discovered, the same procedure is not always occurring.

An estimated 15 percent of dental work in the U.S. is outsourced but the information does not always travel from the foreign lab to the patient.

"I think part of the problem is the dentists are too trusting and the labs are not being very honest ? trying to cut corners," Roman said.

A lab technician, who requested anonymity, claims to know that all too well.

"I couldn't say anything because I knew I would lose my job," said the former lab technician.

The former employee said their former dental lab forces technicians to pass off Chinese crowns as its own work.

"If there (were) adjustments that need to be made, they would make those adjustments and package it back up in a lab box," the ex-technician said. "It would not have China on it, or any bill from China or anything."

The technician said dentists never knew the lab ordered work from China.

"If they could get a crown for $35 made in China and charge the doctor $120 some dollars, what is the point in saying anything?" the former employee said.

The lab where the former employee worked told 10TV that it outsources only about 15 percent of its work. It extensively researched Chinese labs to balance quality with low prices. The lab told 10TV News that the percentage will likely increase but did not outline how or if it discloses to dentists.

Dave Kiser, who runs one of Columbus' largest labs, said that he constantly turns down offers to outsource because he cannot replace the quality at his own fingertips.

"I think it boils down to money ? boils down to how much a laboratory then can send it offshore ? get it done for a lot less money, bring it back and send it to a dentist," Kiser said.

The anonymous employee believes money is the driving force and said the lab's outsourcing increased.

"They were going to close the crown and bridge department -- that is what I was told," the ex-technician said.

The employee was laid off but worries the dentist and patient could lose much more.

According to the National Association of Dental Laboratories and American Dental Association surveys, the average cost of a foreign crown is $30 to $50. Labs in the United States charge dentists $150 for a crown and the dentist may charge someone as much as $875.

Stay with 10TV News and 10TV.com for continuing coverage.


翻訳・・・みんなの歯科ネットワーク


鉛汚染がどこから来るかをを知らない歯科医師たちも

2008年3月13日(木)午後6時23分

オハイオ州コロンバス発−

10TV調査班は歯科技工物の海外からの外部委託の背後にある理由と、患者と歯科医と歯科技工所の間で情報開示不足が生じることについてより深く調査をしました。

歯科医師であるBrenda Roman先生が患者の口腔内にクラウンをセットしていますが、その技工物にはペーパー・トレール(技工物の来歴を追跡できる追跡書類)が添付されています。

「自信を持って、正確に技工物が何処から来てるかは確実に解っています。」とRoman先生は言います。

スライドショー:レポートからの画像|ビデオ:10調査班のオリジナルレポートを見る

各患者のカルテには技工物の原料と製造地が記載されたステッカーが貼付されています。外注先のColumbusの歯科技工所がクラウンとともに同封してきたものです。

10調査班のLindsey Seavertが見つけ出したように、同じ手続きはいつも行われているわけではありません。

15%にものぼると思われるアメリカにおける歯科技工物が外部委託をされていますが、情報はいつも海外技工所から患者に伝えられているわけではありません。

「歯科医師が技工所を信用しすぎているということと、技工所が経費を節約しようとして真っ正直でいられないことが一つの問題ですね」とRoman先生。

全容をよく知っていると断言する匿名希望の歯科技工士がいました。

「私は仕事を失うことを恐れて何も言えませんでした。」と元技工所職員。

元いた技工所では中国製のクラウンを自分自身の技工物であるとの偽装をするようにと強いられたとその元職員は語りました。

「必要な調整があればその調整だけ済ませて技工物の箱に梱包しなおすんですよ。」と元技工所職員。「『中国』とも書かれていませんし、中国からの明細書等も添付しません」

その技工士によれば、技工所が中国に外注したことは歯科医師には決してわからないと言います。

「中国で35ドルでクラウンを作らせて、歯科医師には120ドルそこそこを請求したとすれば、何も言わずにそれをしたということは、何が大事なことだったのでしょうかね・・」と元職員は言いました。

その元職員がいた技工所は10TVに対して、そこでの技工物の15%しか外注していないと語りました。低価格でも品質の見合う中国の技工所を徹底的に調査したということです。

技工所は10TV Newsに、外注比率は増加傾向にあると言いましたが、歯科医師に情報開示をどのように行なうか、あるいは行なっているかについての説明はありませんでした。

コロンバスで最も大きい歯科技工所を経営するDave Kiserは外部委託することを絶えず断り続けていたといっていました。何故ならば、自分たちの手先の品質をそれに置き換えることができないからです。

「早い話がお金なんでしょう。海外に発注して低コストで作らせて、輸入して歯科医師のもとへ届ける。そのようなことを技工所が行なって費用はいくらかということなんでしょう」とKiser。

匿名の歯科技工士もお金が推進力だろうと言い、技工所の外注量は増加していると言いました。

「彼らはクラウンやブリッジを自分の会社で作る部門を閉鎖しようとしています。

それが私が指図を受けた内容です。」と元技工所従業員。

従業員は一時解雇となりましたが、歯科医師や患者はより多くのものを失うのではないかと懸念しています。

全国歯科技工所協会とアメリカ歯科医師会によれば、海外製のクラウンのコストの平均は30ドルから50ドルです。アメリカの技工所はクラウン一つにつき150ドルを歯科医師に請求し、歯科医師は患者には875ドル程度を請求しているということのようです。


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