メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第192回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日  2008.4.11


■電子内容証明郵便でのクーリング・オフについて


ある読者から「クーリング・オフの内容証明をネットで送信したのですが、相手側と揉めて困っています」という相談がサイトのQ&Aに届いた。

その内容については、相談者の希望もあり、揉め事の解決がつくまでサイトのQ&Aでの公開は保留扱いにしとる。

そういう、保留や非公開というのが、いつの間にか100件を越えた。

現在、サイトのQ&Aに公開しているのが、550件やから、約18%という計算になる。

それが多いのか少ないのかというのは意見の分かれるところやとは思うが、ワシらとすれば公開したいというのが本音や。

それを公開すると、その相談者が特定されるかも知れんという内容のものも確かにあるが、そういうのは、ごく僅かしかないと思う。

たいていは、匿名性を高めるだけで、誰からの相談なのかは分からんようになることの方が圧倒的に多い。

この新聞購読時の揉め事、トラブルというのは、ある程度、パターンというものが決まっている。

契約時、勧誘員の言葉に錯覚、および騙されたというケース。

例えば「いつでも契約解除できる」「これは仮契約だから」「こちらで新聞代を払うので」などと言うのを信じた結果、裏切られたというようなもの。

あるいは、勧誘員に脅かされて契約したというケース。

「ごちゃごちゃ言わずに、ここに名前を書け」「契約せんかったら、毎日でも来るで」などと言われ怖くなって仕方なく契約したというようなもの。

続いて、販売店の対応の拙さが原因というケースもある。

不配や遅配が多い。言葉づかいが悪い。集金人の態度が横柄などという理由で揉めたというのがそれや。

ただ、販売店、勧誘側だけの責任やなく、契約者の甘い判断、認識というケースも目立つ。

「生活が苦しくなったので解約したい」「他の新聞が読みたくなった」と言うて途中解約をしようとする人も多い。

これなんかは、「新聞の購読契約などいつでも断ることができる」という思い込みが契約者にあるためやと考える。

それらとは別に、数は少ないが、拡材(ビール券や商品券、景品)を騙し取るために契約して解約するというケースもある。

それには、契約解除すれば、そのために貰うた拡材を返さんでもええという考え違いをするからやと思う。

大雑把に別ければこんなところや。

総じて、客と問題を起こし、よく揉める販売店と、ほとんど揉め事を起こさん販売店とに色分けされる。

サイトでは、一切公開していないし、相談者にも教えていないが、同じ新聞販売店での揉め事というのも実際にあるさかいな。

つまり、問題を起こす販売店というのは、そういうトラブルを数多く抱えとるのが普通なわけや。それも、同じような揉め事というのが多い。

せやから、例え、そういう相談を公開し、よしんばそこの販売店の人間がそれを見たとしても、その相談をサイトに持ち込んだのが誰なのかは、同じようなケースが多すぎてほとんど分からんはずやと思う。

それは、新聞販売店だけやなく、拡張員にしても同じようなことが言える。

その相談内容をサイトで公開されると、「その拡張員に仕返しされるおそれがあるから」という理由で非公開を希望する人が多いわけやが、それも同じように可能性としては限りなく少ない。

毎日、同じようなトーク、同じような勧誘をする拡張員が圧倒的に多いというのが、その理由や。

客と揉めたり、客を脅かしたりするような者は、それこそ、同じようなことを日に数件から十数件繰り返し言うて廻っとるのが普通や。

そのときのパターンも、先に挙げたとおり、ほぼ同じや。その人間に合わせた特別な脅し方、トークというのもまずない。

また、口裏合わせにしても同じで、見ず知らずの初めての客に「販売店には内緒にしてほしい」と言って、おいしい話を持ちかけるような勧誘員は、他でも同等のことをやっていると考えるのが自然や。

そのやりとりが公開され、その拡張員がそれを見たとしても、その相談をこのサイトに持ちかけたのが誰なのか特定することは、まず無理やろうと思う。

「似たようなことをする奴もおるもんやな」と考えるくらいが関の山や。

しかし、非公開を希望する相談者には、それが理解できん。自分の相談事が唯一無二やと思うわけや。数多くの中の一つとは考えられんのやな。

ワシらとすれば、それを見る他の多くの人の参考になればという思いで公開して貰いたいのやが、そう希望されるとそうもいかん。

ここまでは、ちょっと愚痴っぽい話になったが、それにしても「クーリング・オフの内容証明をネットで送信できる」というのは、恥ずかしながら、ワシもハカセも今まで知らんかった。

このメルマガはおろか、サイトのQ&Aでも、それについて言及したことがない。

新聞購読契約の解除について、クーリング・オフというのは、重要な意味を持つから、その方法の一つについて知らなんだというのは、サイトのQ&Aでそういう相談を受けとる者として恥ずべきことやと考える。

その選択肢を今まで相談者の方々に与えられんかったわけやさかいな。それも、4年近くもや。

その点については、この場を借りて、謝りたいと思う。まことに申し訳ない。

ワシもハカセもどちらかと言うと昔人間のためか、内容証明書は手書きで署名捺印せなあかんもんやという思い込みが強くあった。

それには、電子内容証明書というのが、あまり認知されてなかったというのもある。

実際、ワシも、その電子内容証明書でクーリング・オフの通知を受け取ったという販売店は知らんさかいな。

サイトへの情報にも、今までにそういうのはなかった。

もっとも、ワシが実際に出入りして知ってる販売店というても100店舗余りやし、サイトへの投稿や情報を寄せて頂いたのは、この4年間で150店舗ほどの関係者の方からやから、全国22000店舗あると言われとる新聞販売店からすれば、ごく一部ということになる。

数にして全体の1%強や。ただ、見ている人となるとその数はもう少し多いやろうがな。

例え、そうであるにしても、総数で250店舗というのは少ない数やないとは思う。

それらの販売店の関係者からは、そういう話はおろか噂すら聞いたこともなかったわけや。

幾つかの大手ポータルサイトで「クーリング・オフ」のキーワードで検索すると、そのほとんどで100万件以上もの関連サイトがヒットするが、ワシの見た限り、その中のどれにも、電子内容証明書の記述とかその方法を示したものはなかった。

もっとも、そうやからと言うて、何の言い訳にもならんがな。

現実としてそれがあるわけやから、単に認識不足やったというだけのことにすぎんと思う。

役所などでよく使う電子証明書というものがあるというのは知っていたわけやから、電子内容証明書もあるもんやと気づいてなあかんかった。

電子内容証明書があれば、それでクーリング・オフの書面も当然、可能になると。

電子内容証明書は、旧郵便局が2001年からサービスを開始しとるという。

結構、歴史がある。

ただ、電子内容証明とは言うても電子メールでのそれが相手に送付されるわけやなく、今までどおりの内容証明と同じく受取人にはその元本の文書が届き、差出人にはその謄本が送られるわけや。

せやから、受け取った方は、普通の内容証明書と勘違いするかも知れんな。

ワシらが知らんだけで、全国の販売店では、その電子内容証明郵便でクーリング・オフの書面が届いたというケースも結構多いのやないかと思う。

もっとも、それが電子内容証明書としてクーリング・オフの文書が送られたと気づくかどうかは何とも言えんがな。

その謄本やが、電子内容証明書では、通常の内容証明のような縦書きで1行20字以内、1枚26行以内という制限はない。

電子内容証明書を利用するには利用者登録や内容証明ソフトウェアのダウンロードが必要とされとるのやが、その様式内に収まるのなら1枚にいくら字数を書いても構わんということのようや。

但し、その用紙は最大5枚までと決められとる。

もっとも、クーリング・オフの通知文書程度のものは、ハガキの裏面でも十分やから、その字数や枚数オーバーの心配もあまりせんでもええやろうけどな。

実際、配達証明付きハガキ、簡易書留郵便ハガキでクーリング・オフの書面を出すというケースも多いさかいな。

この場合も、縦書き横書き、および字数の制限はない。書けるだけ書けばええわけや。

それ以外の内容証明を出す際の参考ということなら、その制限内容というのは知っておいた方がええやろうがな。

この電子内容証明書を出す最大のメリットとして、インターネットのできる環境と条件さえ合えば、全国どこからでも24時間、その発信が可能やということが挙げられる。

ワシらが、知らんかったという最大の悔いが、そこにあるわけや。

新聞購読契約の場合、クーリング・オフのできる期間は、契約日から8日間以内とされとる。

この8日間以内というのは、相手に届くまでと違うて、郵便局にその手続きをする日まででええわけや。とはいえ、実際には、その余裕、実行日が8日間もないケースがある。

例えば、金曜日の午後5時に、拡張員に勧誘され契約したとする。それで、やはり考え直してクーリング・オフの手続きをしたいと考える。

金曜日の午後5時には、郵便局の窓口が閉まるから、その日はできず、土日も郵便局の窓口業務はしていない。

可能なのは、次の週の月曜日から金曜日までの実質5日間ということになる。これに、連休でも絡むと、その日数はさらに減る。

因みに、その最たるケースとして、今年のゴールデンウィークにかかる4月28日の午後5時に契約した場合、郵便局の窓口でクーリング・オフの手続きをするには、4月30日、5月1日、2日の3日間しか、その余裕がないということがある。

加えて、独身者の多くは平日に仕事をしていて、その郵便局に行って手続きをするというのが難しいというケースも多いと思う。

しかし、24時間受付可能な電子内容証明サービスなら、それらの心配がなくなる。

そのときの状況により、受け付けてから発送までに日数のかかることもあるようやが、これも通常の内容証明郵便と同じく、受け付けた日までが8日間以内やったらええから問題はない。

しかも、24時間受付可能やから、極端な話、その8日めの午前0時までならOKということになる。

もちろん、何でもそうやが、メリットばかりがあるわけやない。デメリットも当然ある。

メールで文書を日本郵便に送る際、文字化けや空白などの不具合が発生する場合もあるという。

まあ、これについては、日本郵便の「電子内容サービス」にご利用方法(参考資料参照)というのがあるので、そこで確認できるようになっているから、それさえしとけば問題は少ないとは思うがな。

また、手書きの文章には少ないのやが、パソコンで打ち込んで文章を作成していると、誤字、脱字が結構多くなるということがある。

実は、ハカセもこれに結構、悩まされているという。そういうのが多いと。

それを書いている本人は、頭の中では問題のない文章を打ち込んどるつもりなのやが、その思い込みが働いて、変換による誤字や脱字などの間違いに気づかんということが往々にして起こる。

これは、新聞紙面やテレビ報道のテロップ、書籍や週刊誌、インターネット上の記事など、ありとあらゆる書き物の現場で起きとることでもある。

特に、パソコンで入力するのが一般的になってから、そういうのが増えたと指摘する専門家の人も多い。

ハカセの場合は、メルマガやサイトを始めた初期の頃から、それを指摘して頂ける読者の方に恵まれとるので、結果としてそういうミスが少なくて済んどるようやけどな。

もっとも、それでも完璧になくなったとは言えんと思う。探せば、まだまだその手のミスが見つかるのやないかな。

それくらい、パソコンの入力というのは間違いの多いものやと認識しとく必要があるということや。

もちろん、それは人によりけりということもあるやろうがな。

それでも、手直し可能なサイト上の記述なら、まだ直せば救われるが、クーリング・オフの文書にそれがあると、その法的効力そのものに疑問符がつきかねんから、事は重大や。

ハカセによると、その打ち間違い、変換の見逃しとして「記者」と「貴社」、「契約」と「解約」、「本書」と「本所」などが考えられると言うが、そういうのが多いと意味不明のクーリング・オフの文面になる可能性があるさかいな。

正しい書面の文言は、

『私は、平成○年○月○日に貴社のセールスマンと新聞購読契約を結びましたが、特定商取引に関する法律第九条の規定に基づき本書面をもって上記契約を解除致します』

と、なるわけやけど、それが、

『私は、平成○年○月○日に記者のセールスマンと新聞購読解約を結びましたが、特定商取引に関する法律第九条の規定に基づき本所面をもって上記解約を解除致します』

と、なったんでは、何のこっちゃ分からんとなるさかいな。

極端かも知れんが、パソコンやとそういう間違いもあるということや。

そして、さすがに日本郵便の「電子内容サービス」のご利用方法でも、それを修正することはできんというしな。

普通の内容証明郵便よりも、その点では、より慎重に文書を作る必要があると思う。

パソコンの環境条件というのもある。

ほとんどのパソコンのOSに対応しとるようやが、一部使用不可のものもあるという。

また、インストールされとるワープロソフトなどの利用制限もあるとのことや。

料金の支払い方法は、クレジットカード払いと料金後納払いの二種類しかない。

クレジットカードを持っていれば、それでええが、料金後納払いを選択した場合、後納審査というのがあり、利用可能になるまでに数日かかるということや。

せやから、クーリング・オフなどの急ぎの場合は、クレジットカードを持ってなあかんということになる。

もしくは、クレジット・カード機能の付いた銀行のキャッシュカード(デビットカード)やな。

そして、従来の内容証明郵便より、郵送手数料が250円程度高いというのもある。従来の内容証明郵便が1220円やから、1470円ということになる。

現在、簡易書留郵便ハガキだけで済ませとる人も多いということやけど、それやと400円程度で済むさかい、1000円以上違うということや。

但し、これはそれを出す条件によって多少違いがあるようやから、正しくは日本郵便で確かめてほしい。

いずれにしても、通常の内容証明郵便より割高なのは確かや。 

その面倒な手続きと費用の問題で、この電子内容証明サービスというのが広く認知されてなかったのやないかと思う。

高くても、いつでもどこからでも発送可能な利便性をとるか、窓口は限られてはいても安さをとるかという選択になると、多くの人は安さの方を選ぶということなのやろうな。

しかし、例え、その認知度、必要性は低いとしても、その選択肢の一つには加えとくべきやと思う。

それが、できんかったというのは、何度も言うが、ワシらの落ち度や。

せやから、これから以降のQ&Aなどのアドバイスには、この電子内容証明郵便によるクーリング・オフの説明も加えるつもりや。

それを利用するかどうかは、相談者自身に任せばええことやさかいな。


参考資料

日本郵便 電子内容証明サービス
http://enaiyo.post.japanpost.jp/mpt/


追記

情報提供者 H.Oさん  投稿日時 2008.4.13 PM 11:58


いつも楽しくホームページを拝見させていただいています。

メルマガで気になった点がありましたので、このたびメールさせていただきました。

>金曜日の午後5時には、郵便局の窓口が閉まるから、その日はできず、土日も郵便局の窓口業務はしていない。

と、メルマガにありますが直営店では平日は17時以降、また土曜日や日曜日も開いているところがあります。(私の勤務している地域だと3箇所あり平日は19時まで土曜日は15時まで開いています)

また、上記のような支店ではゆうゆう窓口が併設されており、日曜や祝日・窓口が閉まった後でも保管郵便物等の受け取り、各種申請・届出の受付、郵便物等の引受け、切手・はがき類の販売などを行っています。(私の勤務している支店では24時間開いています)

ただ地域によって、営業時間や取り扱い業務が異なりますので、詳しくはお近くの支店に問い合わせすると良いと思います。

なお、下記のページにおいてお住まいの地域の直営店が検索できます。
http://www.post.japanpost.jp/shiten_search/index.html

それでは失礼いたします。


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