メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話
第4回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
発行日 2004.9.10
■拡張員の見分け方?
拡張員もいろいろおる。せやけど、生まれながらの拡張員なんかはおらん。 ほとんどが、ある日、突然、そういう状況になり、仕方なくそうなる。
早い奴は、その日、数秒、一行の広告を見ただけで衝動的になる者もいてる。
拡張員になろうと計画を立てて猛烈に勉強する馬鹿はおらん。
誰でも、その気 さえあればなれる。なれるが、誰でも通用する世界やない。それを知らんから、それこそ、いろんな人間が飛び込んで来る。お手軽なわけや。
良く、サイトで拡張員の見分け方を教えてくれという質問が来るが、ワシはそれには答えられん。
ワシでも、分からんからや。
こんな奴が、拡張員してるのかと思う者はざらにおる。 普通の会社員だけやなしに、公務員、銀行員、会社の社長や重役やったという人間も、そう珍しいことやない。
特に、今はこういう連中が増えとる。 こういう連中は、自分に染み込んだ習性をすぐには消すことは出来んから、以前
のスタイルのまま拡張の仕事をしてる者が多い。
普通にスーツを着込んでカバンを持つ。人との対応も、それほど変わっておらんから、客も話し始めて、やっと拡張員と気づくことがある。
何ぼ、ワシでも昨日、今日、拡張の仕事を始めた、こんな連中を見抜くことは出来ん。以前の臭いが強すぎるからや。仕事中なら別やけどな。
せやけど、仕事中なら、ワシでのうても素人でも普通に分かる。今は、胸に登録カードをつけとる者も多いから、それでも分かる。他のセールスマンと勘違いすることはあるやろうけど。
ベテランなら、一目でわかる。せやけど、これもワシには分かるとしか説明のしよ
うがない。雰囲気や臭いというものを口で説明するのは難しすぎるからや。 そいつが、目の前に現れたら、ほぼ確実に分かるがな。
何ぼ装うても、染みついた 臭いは消せん。ワシから見れば顔に拡張員と書いとる。それも、個人を特定して分析するのなら、この人間はこうだと言えるかも知れんが、
それでは意味がない。別に、凶悪犯を捜しとるわけやないんやからな。
以上のことを踏まえた上で、ワシの知っとる拡張員像というのを教える。
まず、車やが、映画の「社葬」であったような、新聞社の旗をなびかせた車に乗っ
とるようなのは少ない。
ワンボックスカーか、ライトバン、乗用車が多い。車自体に特徴と呼べるものはない。車体には社名も団名もないのが普通や。
総体的に、多人数で乗っている。
統一された服装の集団やない。団のユニフォーム を、全員で着込んどるというのは知らん。新聞社製のウインドブレーカーなら着込
んでる場合もある。
広範囲な地域で活動しとる団の車は、他府県ナンバーが多い。しかし、これは、団
所有の場合で、個人のマイカーで仕事するケースは何も当て嵌まらん。
それでも、車内やトランクルームを見ることが出来れば、すぐそれと分かる。拡材
の洗剤やら景品が山積みで載っとる場合が多いからや。
街中で良く見かける場所は、喫茶店、パチンコ屋が圧倒的に多い。さぼるのに一番
ええところやからな。
こういう所は、拡張員以外にも、他のセールスマンやタクシーの運転手なんかも多いな。たむろ時間は、昼の12時から4時くらいの間やな。その間、長時間粘っとること
が多い。
ワシの知る限りは、大抵、4、5人のグループやな。 どうしても、拡張員を探したければ、こういう場所に行って、それらしい集団に出会ったら「新聞拡張員の方いませんか」と聞けば教えてくれる。
せやけど、同時に あちこちから手が上がっても知らんで。
昔は、独特のスタイルというのがあって割合簡単に分かった。拡張スタイルという
んや。街中歩いとっても分かる。
秋冬なら、ジャンパーにニットのズボン。拡張カードをスボンの後ろに差し込んどる。
それが、頭の黒い部分だけ覗いとる。春夏はジャンパーがなくなるくらいや。
手荷物 は何もない。手ぶらや。カードが上がれば、停めてある車に戻り持っていくからな。
分かり易いもんや。
今も、そのスタイルに固執しとる者もいてるが、この頃は一概に そうも言えんようになった。
せやけど、街中で、拡張員と分かっても、何も危険はない。別に噛みついたりはせんからな。
もっとも、ワシの知っとる奴で、犬と本気で喧嘩して噛みついた奴がおった けどな。そいつは、暫くの間、スターやった。アホの見本としてな。
最後に、ワシから一言、言いたい。拡張員も普通の人間と一緒や。街で見かけたから
というて、くれぐれも石なんか投げんといて欲しい。