メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話
第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
発行日 2005.8.26
■共謀罪について
Part3
「共謀罪について」は過去2回、このメルマガの第48回と第49回で取り上げた。希に見る悪法やと思うたから、そう訴えた。
ワシら営業員は仕事柄、客に合わせてトークすることが多く、同調するのが普通や。
客が冗談半分に「泥棒でもして金ができたら新聞取るから」と言えば、こちらも冗談で「そのときは教えて下さい。手伝いますよ」と極、普通に返す。それだけで、窃盗の共謀罪が成立する可能性がある。堪ったもんやない。
この共謀罪について、この回から読まれ、また、どんな法律なんやと言う方もおられると思うから簡単に説明する。
共謀罪とは、その名の通り、ある犯罪を計画、話し合ったというだけで処罰される法律や。その犯罪の実行の有無は関係ない。
組織犯罪対策のために設けられるものやと言う。その犯罪行為を未然に防ぐという目的があるとされる。
それはええ。危険な犯罪を防ぐというのは悪いことやない。例えば、それがテロ行為や犯罪組織などの限定された範囲だけやと言うのならな。
しかし、法律の常として、一度、それが制定されると必ずその解釈が拡大する。それを行使できる権力が絶大なものになる。つまり、警察権力というものが確実に強固なものになるのは間違いないということや。
誰でも、警察に睨まれたり、目を付けられるだけで、その法律を便宜的に適用され逮捕されることも十分考えられる。この法律が制定されたら、どんな些細なことでも、それが適用されかねん。
警察を批判できんようになる。しいては、国家権力にもということになる。権力を批判できん社会を暗黒社会と言う。そのことは、歴史が証明しとる。
一般市民には適用はしないとこの法律を推進する現与党は言う。しかし、その明確な条項はどこにもない。法律の条文の多くがそうであるように、どうとでも解釈可能なものにしかなっとらん。
百歩譲って、この法律が国民の安全確保に必要なものであったとしても、やはり、テロ行為、犯罪組織内でのことやと実証された場合のみの適用という項目を法律の条文に謳うべきやと思う。
少なくとも、飲み屋で上司の悪口を言い合うサラリーマンたちが調子に乗って「あの課長、いっぺん、どついたろと思うてんねん」「オレもや」「よしやったるか」と言う程度のことで、暴力行為の「共謀罪」なんかで、逮捕されんようにしてほしい。冗談の可能性が高いんやからな。
マンションの建設反対運動や労働争議でも『組織的威力業務妨害』の共謀罪が適用される可能性がある。何かの反対デモすらできんようになるかも知れん。思想や言論の自由すら脅かされかねん。民主主義の根幹に関わることになる。
つまり、現時点での法案には、あまりにも不備がありすぎるとしか思えんということや。ワシはそのことを知り、悪法やと言うたわけや。
本来なら、この法案は今年の8月中にも成立してたかも知れんかった。もしくは、継続審議が確実やった。それが、幸か不幸か、第162通常国会が「解散」ということになり、審議中やった共謀罪法案は、審議未了のため廃案となった。
これは郵政民営化の賛否で、与党内が揉めた末の解散や。その民意を問うためやというのが理由やとされとる。
衆議院の解散となった経緯は別にして、共謀罪法案の廃案は、反対の立場のワシらからすれば、良かったなということになる。
しかし、これですべてが終ったわけやない。今の政権が続けば、選挙後の国会で共謀罪法案が再び出されるやろ。そして、数の論理が勝れば、強行にでも可決される可能性が大や。法律の制定とは、大抵がそうやからな。
現状で共謀罪法案を阻止するには政権交代しかない。この法律に否定的な人間の共通した意見がそれやと思う。
ワシはと言えば、この法律に関してだけ言えば、それしかないと思う。ただ、政権交代自体がええのかどうかというのは、正直言うて良う分からん。