メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第81回 新聞拡張員ゲンさんの裏話     

発行日 2006.2.24


■個人情報保護法のその後


個人情報保護法が、2005年4月1日より全面施行されて、11ヶ月近くになった。

この法律は、当初から、いろんな面で問題視されとった。実際、施行されてからも混乱が目立つ。

実際、受け取り方、捉え方の違いにより、混乱が起きとる。その混乱は、新聞の勧誘、販売業界でも例外やない。

そのネーミングから、個人情報は絶対守らなあかんという風に考える者も出てくるわけや。個人情報がすべてに優先するという考え方になる。

せやから、HPのQ&A『NO.82  個人情報保護法に関して!』でも、相談者から『実際のところ住宅地図やマンション資料などお客様情報を利用する場合どの様な影響が有りますか?』という質問が出る。因みにこの質問者は拡張員の人や。

これに対しては『既存の住宅地図やマンション資料などを利用する場合、それが違法に入手されたものでない限り、何も心配することはないと思う』と、答えた。

また、ある読者からのQ&A『NO.165 引っ越し時の解約について相談があります』の中で、移転先での購読を強要する販売店から「転居先の住所を教えてくれ」と言われ、困惑しているという内容の相談があった。

こについても『移転先の住所に関しては個人情報に属することやから、あんた次第や。嫌なら答える必要はない』と、回答した。

元来、新聞販売店には、購読中、または契約後の急な引っ越しの契約解除は仕方ないという不文律のようなものがある。

ほとんどの販売店は、こういうことを言い出さんが、中にはそう言う所もあるようや。

新聞の購読契約は、あくまでも契約者とその新聞販売店だけで有効なものや。

配達できん地域への引っ越しは、実質、その新聞を届けることが不可能となり、契約の継続不能ということになる。履行不能ということや。

同じ新聞やから、その継続は当然という販売店の考えやろが、新聞社は、この件に関して、と言うより、新聞購読契約自体に関しても、一切タッチせんという姿勢がある。

契約は販売店固有のものということになる。引っ越し先で、その新聞を購読するには、当然のことながら、その販売店との契約を新たに結ぶ必要がある。

それに、応じるかどうかは、顧客次第ということになる。したがって「転居先の住所を教えてくれ」という強要はできんということになる。それも、現在は個人情報保護法に抵触すると考えられる。

今までは、それを半強制的に聞き出したとしても、何かの罪に問われるということがなかった。脅迫行為のようなものがあれば別やがな。

また、当メルマガ『第70回 新聞拡張員ゲンさんの裏話  ■くり返される悲劇!!広島小1女児殺害事件の現場では……。』の中でも触れたが、この中でも個人情報を巡っての話がある。

事件直後、警察はすぐさま、地域の各新聞販売店の聞き込みを行ったという。これには、その前年に起きた、奈良での同様の事件の影響のようや。

そのとき刑事は、顧客リストの提出を迫ったが、ほとんどの販売店がそれを拒否したという話やった。

これについては、一応マニュアルのようなものがある。このような場合、捜査協力を促す書類(令状等)か、オーナーか責任者の許可がなかったら、顧客リストは出すなという指示がある。ということのようや。

せやから、どうしても、その提出が必要なら、その手続きを踏んでくれという対応になったという。

これなんかも、この個人情報保護法の影響がかなり強いと思う。この法律が施行される以前やったら、たいていの販売店は、警察の要請にはその場で応じとったはずや。

しかし、現場の販売店にとって、捜査に協力するより、個人情報の保護を優先する方が重要やったことになる。
 
つまり、いかなる事情があれ、それを教えるのは拙いという認識になっとるわけや。そして、この考えは、これからも拡大するのやないかと思う。

ワシにも、このことの是非は分からんから、コメントもできん。

この個人情報保護法に対しては、どうしても、おっかなびっくりの対応になる。と言うても、これは、ワシら拡張員や販売店の人間に限らず世間一般でも同じやと思う。

この個人情報保護法の導入により、新聞社、販売店、及び多くの拡張団が、不良拡張員の駆逐にやっきになっているということがある。

これは、社会正義というようなことよりも、保身のためと考えた方がええやろと思う。
 
この法律の施行により、この個人情報保護法に関する訴訟、裁判沙汰が各分野で急激に増えており、これからもその傾向は続くものと思われる。

その判決も、圧倒的に、個人情報を不正に扱われたとして訴えた方が有利となり、勝訴しとるということもある。

但し、その損害賠償額というのは少ないようやがな。もっとも、これは事案次第ということがある。参考になるかどうかは分からんが、一例を言うとく。

ある情報漏洩に関して訴えた事案の最高裁での判決があったが、それによると、一人当たりの損害賠償額は、15000円ということや。

この内、訴訟費用は、一人につき5000円程度かかっとるから、実質、10000円ということになる。

但し、いくら個人的には知れてる額やというても、集団となれば馬鹿にできん事案も考えられる。

加えて、それで訴えられるということ自体が、企業としての信用失墜を招くおそれがある。損害賠償額より、そっちの方が、よっぽど怖い結果になるというわけや。

今までは、新聞社も販売店も別組織の営業委託業者である拡張員がした不始末やから関係ないと言い逃れができた。と言うよりしてきた。
 
しかし、それができんようになった。それで、訴訟問題ということにでもなったら、いくら新聞社と言えども、どうにも隠し切れんからな。

公然の秘密とされてきた勧誘の不正が公になることは十分、考えられる。

それには『第十七条の個人情報取り扱い事業者は、偽りその他不正な手段により個人情報を取得してはならない』と、あるのが大きいと思う。
 
不正というのは、法律に触れることを意味する。脅迫主体の喝勧、騙しなどの手口を多発する不良拡張員は、正にそれに該当し要注意ということになる。

その連中は、そういう方法で長年に渡り契約を取ってきたんやからな。
 
この業界は、その契約を取ること自体が、個人情報の収集に繋がる。

新聞購読の契約書は、契約者自身に氏名、年齢、住所を書かせるのが一般的や。一部の契約書には、勤め先の情報まで記入する欄がある。個人情報以外の何物でもないわけや。
 
不正に慣れ、それが勧誘の仕事と思い込んどる連中に、それを急に止めろと言うても効果のないことも、新聞社や販売店は良う知っとる。

指をくわえて放置したままやと、いつ何時、新聞社、販売店の責任を問われるような事件を起こされかねんからな。

現段階での、この法律は、業者だけを対象としたもんやから、戦々恐々となっとるわけや。

そして、それを防ぐには、そういう連中の放逐、追放が一番やと考えとる。表向きは、教育、指導とは謳っとるが、誰もそんなものに期待はしとらん。

そして、現実に、その動きは、日増しに激しさを増しつつある。
 
せやけど、追放するだけやと、先細りするから、雇用の方にも、力を入れ始めとる。それも、イメージを良うしようという意図からか、女性の雇用が目立つ。

さらに、最近の拡張団では、経験者を雇わんような姿勢の所が多い。もちろん、表向きはそれを広言しとらんが、経験者イコール不良拡張員というレッテルで見とるところが多いようや。

それも、方法の一つで、業界のことを何も知らずに飛び込んでくれば、自分の目にしたものが、こんなものかと思う。

業界の御法度も教えれば、比較的、素直に聞くし、従う。教育、指導はこの時点からの方が望ましいと考える。
但し、営業力は落ちる。

このサイトによく協力して頂いている九州のある販売店オーナーの方が「ほとんどの営業は飼いならされていて、不良セールスとよばれる方は、おおむね、すでに淘汰されていきました。その中で、拡さんと呼ばれるような、強い方は減り、弱い人が増えています、残念です!」と言うておられたのが印象的やった。

しかし、これが、正直な気持ちやないやろうかと思う。今まで、確かに、そういった拡張員の強引な営業に支えられてきたという側面は否めんからな。

その人間が業界から追放されれば、結果として、この人のように営業力の弱いセールスを使わざるを得んという思いに囚われる。

せやから、この法律により、拡張員の顧客への対応が制限されたら、一時的にかも知れんが販売部数は落ち込むやろと思う。

ひいては、新聞社、販売店、拡張団の業績や売上面でダメージを受けることになるのは容易に想像がつくことや。
 
それについては、各新聞社もある程度、覚悟はしとるようや。

不良拡張員を放逐することでの新聞社の部数減を覚悟でという姿勢は、各販売店、各拡張団に伝わっとる。その本気度は計りかねるがな。

ただ、現実には、法律の施行以降、部数的にはかなり落ち込んどるのは確かなようや。どことも、軒並み成績が悪いと聞く。

各地域の拡張員さんから寄せられる話は、この法律以降、業績が落ち込んだというのが多い。
 
ただ、それと平行して、インターネットの急速な普及、とりわけ携帯電話で気軽にインターネットにアクセスできるようになった影響も大きいと考える。

それによって、新聞自体を読まんようになった層が、去年1年間でもかなりな数、増えているとの報告もあるしな。

したがって、現在の部数減と思われる状態が、個人情報保護法によるものだけかというのは、分からんというのが正直なところや。影響があるのは確かやが、どの程度かということや。

販売部数に関しては新聞社発表に頼るしかない。去年、つまり、法律が施行された2005年の発行部数がどうなるかというのは分からんけど、注目はしたいなと思う。

ただ、新聞業界には、押し紙という影の部分もあり、実際には部数減であっても、それとして扱わんかったということが昔からあると聞く。

せやから、どこまで、信用したらええかという問題は残るがな。

新聞社を中心とする、そういう不良拡張員への締め付けが厳しくなって、連中の行き場が限定されつつあるということが分かってきた。

現在、全国からそういう行き場のない不良拡張員が関東及びその周辺に集まり、一部の地域では、かなりの無法地帯と思えるような所もあるようや。
 
当サイトへの苦情相談の9割くらいは、その地域からということでもそれを証明しとると思う。

それとは対照的に、先ほど一例を出して話した九州や、四国、中国地方などからは、ただの1件も不良拡張員についての苦情相談が届いとらんということがある。

そういう地域では、不良拡張員の入り込む余地すらないのやろと思う。もっとも、人間のおる場所やから、不心得者が皆無やないやろけど、表面には現れてとらんということや。そういう空気やないのやろな。

そういう所では、逆に、横暴な購読客に苦しめられてる販売店さんからの相談があったくらいやからな。

この法律の問題点は、これだけやない。真面目に営業しとる販売店にも、少なからず影響が考えられることがある。

各販売店では、どこでも拡域地図というのを作製しとると思う。
 
その拡域地図には2種類ある。
 
@単に、その販売店の販売エリアを示した地図で、これには、個人情報は記されとらん。

これは、拡張員に情報を与えんと、鉄砲、白叩きという無差別に勧誘させることに主眼を置いた販売店がそうしとる。割合的には、人口密集地ほどこういう傾向にあるようや。
 
A住宅詳細地図に、現在購読しとる顧客(現読)の家を任意のマーカーで着色するというのがある。たいていは赤が多いようや。

他には、約入りというて、現在は他の新聞を購読しとるが、ある時期が来ると顧客となる契約済みの予約客を別色で塗るというのもある。
 
何で、こんなものを勧誘員に持たすのかと言えば、現読や約入り客への訪問を避ける狙いからや。

現読は、取っている販売店から勧誘に来るというのも奇異に思う人もおるし、約入りに至っては、何で契約しているのに、何度も勧誘に来るのかということで怒り出す場合があるからや。

中には、それで解約すると言うて揉めることさえあると聞く。それを避けるために色分けしている。その着色した客以外を勧誘しろという意味でな。
 
この@A以外にも個人情報を持たせるケースがある。
 
B過去読といって、過去にそこの新聞を購読したことのある顧客を別色で塗ってある場合がある。

もしくは、それだけの単独地図、及び住所と氏名、過去に購読していたときの情報を記したプリントを持たせる場合がある。
 
これは、起こしといって再度、購読客になって貰うために、分かりやすくするためにそうする。

データ拡張と呼ばれとるものや。多くの勧誘員は、これがあれば、その客を狙う。やはり、一度、購読したことがあるというのは、勧誘する側としたら、簡単に思い、やりやすいわけや。
 
C拡張禁止と言って、販売店からの指示で、個人客や特定の住居の勧誘を禁じた情報を持たせる場合がある。

そこで、契約を上げても無効となり、販売店がその契約を買い上げることはない。
 
これには、いろいろ事情があり、個人の場合だと、客と勧誘員が揉めた結果、そうなったというのもあるし、支払いの悪い顧客を排除する目的もある。
 
特定の住居は、ウイクリーマンションのように短期間だけの入居者や期間従業員が多く入居しているアパート、マンションも拡張禁止となる場合がある。
 
他には、外国人をそうすることもある。独自の考えで特定の地域全体を拡張禁止にしている販売店も存在しとると聞く。
 
多くは、販売店が気に入らん、あるいは金にならんと判断した所がそうなる。
 
@とCは、ほぼ、どこの販売店にもあることや。これに関しては、それを準備するにあたり、それほど手間がかからんということがある。
 
AとBは、かなりの手間暇がかかる。かなり、几帳面な販売店やないと難しい。顧客変動は常にあるから、最低でも1ヶ月程度で作成し直す必要があるからな。
 
@に関しては、情報というほどのものは何もない。そこの販売店の営業エリアということだけやからな。

しかし、AとBに関しては、かなり、詳細な個人情報がある。氏名、住所、年齢、電話番号は当然のこと、勤め先の記入のあるものも珍しいない。加えて、契約内容、渡した景品、サービスの内容まで記載したものもあるからな。
 
さらに、Cに至っては、拡張禁止というある意味、その人格否定とも言えるような情報なわけや。

ただ、これについては、多くの販売店が仕方ないという判断のようや。これを拡張員に知らせずに、再度、同じ人間からの契約を取ってきたら拙いということがあるからな。
 
そして、ここで、意外な現象が起きる可能性がある。

@だけの比較的この業界ではルーズと思われる販売店では、情報の漏洩は少ないということや。その情報の作成に手を抜いているわけやからな。
 
ところが、A、Bといった情報を多く扱って、業界では、几帳面と評価される所に、その情報漏れの危険があるということになる。

しかも、その理由の多くは、顧客に迷惑をかけない、トラブルを起こしたくないということから、そうしとる。その善意が、仇となる可能性が、この法律の登場で考えられるようになったいうことになる。

なぜかと言えば、その情報を手渡す拡張員に対して性善説を前提に信用していることになるからや。また、それがなければ、そんものは作れんし、託せん。

しかし、拡張員の中には、他紙の拡張員と情報交換や結託に近いことをする者もおる。
 
例えば、Xという顧客がA新聞を取っていたとする。その契約を取ったのはA紙の拡張員や。そのA紙の拡張員は、当然、契約期限を知っとる。それを、Y紙の拡張員に教える。
 
Y紙の拡張員は、その情報をもとにXという顧客を勧誘する。A紙の拡張員からの情報、この場合は、その人物の性格、好みまで知らされとるから、比較的簡単にその後の契約が取れることになる。また、そういう客を紹介するわけや。
 
今度は、顧客XがY紙を購読するようになると、また、A紙の拡張員が勧誘することになり、延々とそれが繰り返されるということになる。この顧客Xのような人を、俗に交代読者と言う。
 
なぜ、こういうことをするのかというと、拡張員は、現読拡張禁止といって、同じ新聞読者の勧誘を禁止、又は制限されているからや。これが、許されるのは、その販売店の人間だけということになる。
 
そこで、一旦、他の新聞を購読することになれば、理屈的には、その客の勧誘ができることになる。それを狙うわけや。
 
それには、その拡張員同士だけではなく、顧客Xも、それと知っている場合がほとんどや。なぜなら、通常、この交代読者は、他の顧客よりサービスがええからな。
 
本来、これは昔から、業界では禁じられている行為や。

しかし、その実態を暴くのは非常に難しいことやというのがある。その当事者である拡張員が口を閉ざせば、まず分からん。

しかも、この関係の中で、誰も損をしないということがあるから、その発覚もしにくい。当事者間でトラブルにはなりにくいわけや。
 
それに、販売店、拡張団も表向き発覚しなければ、それほど追及せんということも、今まではあった。

長い目で見れば、安定固定客にもなるわけやからな。ただ、立場上、推奨はできんかったということや。
 
そして、これは、それをする拡張員同士では、相当数そういった顧客を確保しているというのが普通やし、考えられることや。当然、そこに情報交換の必要性が生じてくることになる。

その漏洩が心配になる。拡域地図、顧客データという確実な証拠を持たせての勧誘なわけやからな。

この個人情報保護法には、その使用目的というのがある。新聞販売店の場合、客と契約すること自体が個人情報の収集につながる。

そして、その情報を知る目的は、顧客への配達のサービスのためや。他紙の営業に役立てるためのものやない。当然、販売店もそのつもりは毛頭ない。

せやけど、結果として、一部の拡張員のそういう軽率な行為で、その責任を問われかねんということになる。

そのことに悩んどる販売店で、それを渡すのは、拡張団、拡張員次第としとるようや。また、その廃止も検討しとる販売店もあるという。

現在の、この法律は事業者を対象としたものやが、意図的に不正に個人情報を漏洩した従業員を処罰するための法律「個人情報漏洩罪」というのを、政府与党が改正案として、今国会に提出するという。

理由は、情報の漏洩事件の大半が、従業員の「不注意」から起きとるからということらしい。

ワシの感想やが、これも新たな混乱を招くことになる予感がするけどな。

もっとも、他紙他団と情報交換しとる拡張員への牽制、抑制にはなるやろけどな。

当サイトの法律顧問をして頂いている、今村英治先生は「個人情報保護法自体はいいと思うのですが、その取り扱い、運用を誤解されていることが問題なのです」と言われておられたが、まったく同感や。
 
それには、法律全般にも言えることやが、一般の人間にとって非常に理解しずらい文言が多くあることがその原因やと思う。

受け取る人間次第で解釈が違うということになりかねんからな。また、そうなるような表現があまりにも多い。

一つの法律で、その専門家により、意見の分かれることなんか日常茶飯事で、そのことが当然と考えられとる。裁判官ですら、裁判の度毎に判決が違うということも珍しいことやない。

しかし、良う考えたら、これは異常なことやで。
 
こんなんやと、例え、どんなにええ法律ができようと、曲解されて、それによる混乱が生じるということは避けられんと思う。

それが、是正されん限り、これからも同じようなことが続くのやないかな。


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