メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話
第88回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
発行日 2006.4.14
■拡張員の給料とカード(契約)料についての話
「拡張員の給料はどのくらいなんでしょうか?」という質問が、サイトに時折くる。
そのつど、ハカセには「いろいろとしか答えられん」と言うてる。
質問をした人たちに、その聞きたい理由を尋ねとるのやが、今のところ返信はどこからもない。
せめて、質問者が拡張関係者か一般読者かでも分かれば、それに則した回答もできるのやがな。
まあ、返事がないというのは、たいていは、ただの好奇心からやと考える。そして、それが後を絶たん。
もっとも、このメルマガは好奇心で見て頂いておられる人が多いから、そういう質問も無理もないとは思う。
ただ、一見、単純な質問に思えるものが、答えるには難しい問題やという場合が多いということがある。これが、そのケースや。
ワシも、他のサイト、ブログなどで、拡張員の給料、収入に言及しとるものが数多くあるのは知っとる。
それについて、多額の給料を貰っていると記載しとる所もあれば、食うや食わずで悲惨なほど少ないというのもある。
その基になっとるガード(契約)料金についての記載も、まちまちや。
そのどれが正しいとか、間違うとるかということはない。おそらく、そのどれもが、その通りやろと思う。
発信者自身が経験しとることか、直接、その経験者に聞いたことやろからな。
ただ、残念なことは、その発信者の多くが、それがすべてのように主張しとることや。それは、一つの例にしかすぎんことなんやけどな。
こういう質問が続くというのは、やはり、それなりに興味の惹くことやと思うので、ここで、話すことにする。
それを知って貰えれば、ワシが何で「いろいろやとしか答えられん」と言うてるかという、その理由が分かって貰えるやろと思うからな。
拡張員の形態は、大きく二つに分かれる。
一つは、フルコミッション制というのがある。これは、上げた契約分しか収入にならんというやつや。
もう一つは、固定給制ということになる。これは、固定給プラス歩合制というやつや。
まず、フルコミッション制から説明する。
これは、拡張団という営業会社に所属するが、システム的にはそこの下請け業者的な形態の場合が多い。
ここでは、拡張員自身が独立した個人経営者ということになる。所属する拡張団とは、専属の業務委託契約書を交わしとるのが普通や。
個人経営者やから、保証は一切ない。保険、年金の類は自分でかけて、税金も各自で申告、納税せなあかん。
労災保険の適用も難しい。方法がないわけやないがな。これについては、HPの『ゲンさんのお役立ち情報 その1
労災についての情報』を見て貰えれば分かると思う。
一応、給料日と称する日はあるが、形式的には、外注業者支払い日となる。
営業の仕事自体が、たいていそうなんやが、このシステムに関して言えば、できる者とそうでない者との稼ぎに相当の開きが生じる。
各新聞社、地域、各所属拡張団次第で、その稼ぎが大きく変わるということも
珍しいことやない。
極、一般的な例で話す。
1契約についての支払い料金システム、俗に言うカード料で一番多いのが、3ヶ月契約4000円、6ヶ月契約600円、1年契約8000円というものや。
業界では、この頭の数字、4,6,8をとって通称「ヨーロッパ」と呼んどる。
ただ、この比率で、1年以上の契約の場合、2年契約で16000円というようなことにはまずならん。多くは、2年契約以上は一律、12000円程度で頭打ちや。
これにプレミヤというものが付く。即入と言うて、すぐか、もしくは翌月からの購読契約については、3ヶ月契約500円、6ヶ月以上1000円が別途貰えるのが普通や。
これは、たいていの場合、販売店から、その日に、拡張員各自に支払われる。給料日の計算には含まれん場合が多い。
「まとめ」というのがある。これは、販売店毎に拡張団との契約の取り決め数というのがある。これをクリアしたらプレミヤとなる。
例えば、その販売店と拡張団との間で月50本の契約を取り決めてた場合、それがクリアされると「まとめ」となり、1契約に付き、1000円程度、その販売店で契約を上げた拡張員すべてに追加して支払われることがある。
その他、各拡張団内で上げた契約本数により、プレミヤが設定されとる場合もある。
例えば月50本以上の契約を上げれば、1本に付き200円〜500円プラスで計算されるという具合や。
他にも、団内の上位者には、賞金が出て、歩合が増えることもある。このプレミヤについても、それぞれやし、全国で統一性というものがほとんどない。各拡張団毎に違うのが普通や。
そうは言うても、その新聞社専属、同一地域内のフルコミ専門拡張団なら、たいていは、その相場というものが決まっとるから、その範囲なら大きく違うことはないようやがな。
このシステムの特徴として、その日に上げた拡張料の半額を、翌日に現金で先払いする所が多いというのがある。名目上は、先払い金、前貸し金となる。
次は、固定給のある営業システムの場合や。
これは、総体的に大規模な営業会社というケースが比較的多い。内容的には、一般の営業会社と大差ない。
身分も、そこの社員ということになり、こちらは雇用契約が結ばれとるのが普通や。
福利厚生も充実しとるし、労災の心配もほぼない。税金も給料からの天引きとなる。
固定給の設定は、その拡張団でそれぞれやが、聞く限り、15万円〜20万円というのが多いようや。
固定給やから、契約ゼロでも、それは保証されるというものの、営業会社は、そんな甘いものやない。そういう人間は居づらいやろと思う。
もっとも、こういう所では、数週間から数ヶ月は研修期間を設けとる場合が多いから、その指示通りの仕事や研修をしとれば、一応、その間は保証はされるがな。
固定給の場合は、それにプラス歩合給というのがつく。そのシステムも拡張団により様々や。
1契約当たりの拡張料は、フルコミに比べれば低く設定されとるのが普通や。
1年契約を指示されることが多いようで、その拡張料も6000円程度が一般的なようや。プレミヤはつくケースが少ないという。
ただ、日々の行動費や交通費はそのつど、支払われると聞く。ここは、給料が銀行振り込みなっとる場合が多い。一般のサラリーマンと変わらん。
フルコミ同様、その新聞社専属、同一地域内ならその相場が設定されとると思うてたら間違いないやろ。
中には、全国展開しとる広域の拡張団もあるから、そういう所やと、すべてが同一条件ということになっとるようや。
フルコミ制と固定給制のどちらが、ええかというのは、その拡張員次第でも大きく違うから、何とも言えん。
稼げるかどうかというのも、あくまでもその拡張員の成績次第や。どちらで、あっても成績が良ければ稼げるという構図は変わらんと思う。
どちらが、より稼げるかというのは、同一地域での契約数による稼ぎを比較するとフルコミ制の方が上やとは思う。
フルコミ制の場合、上げる者ほど稼げる仕組みになっとるからな。システムが弱者救済やないわけや。
『働かざる者、食うべからず』という格言があるが、このフルコミ制で言う「働く」とは、契約を上げることを指す。
せやから、それをもじって『上げざる者、食うべからず』というのが、こういう所の一般的な考え方や。
坊主(契約ゼロ)で、1日中、歩き廻って叩い(営業)ても、それは、働いたことにはならん。収入も一銭もないしな。
因みに、このフルコミ制の拡張団でも、皆勤賞というのもあるのやが、それは、毎日、契約を上げた場合のみ、それが貰える。
1日でも、坊主の日があれば、皆勤賞の対象からは外される。
その点、固定給制は、その辺が緩やかや。坊主の人間にも、その固定給で救済されるからな。
ただ、いずれの拡張団にせよ、会社の収入は、配下の拡張員が上げた契約に応じたものしかないわけや。
フルコミ制は上げた契約分をその拡張員に還元したらええということになるが、固定給の場合は、成績の悪い人間に支払う給料もストックしとく必要がある。
そうするためには、良く上げる拡張員の収入をそちらに廻すことになるわけや。
それを考えれば必然的に、同じ契約数、例えば100本程度の契約を上げた者同士の比較すれば、フルコミ制の方が収入は上ということになる。
ただ、それは一般的な比較であって、その拡張団次第でも違うことは往々にしてある。多くは、そこの経営者の姿勢が大きく影響する。
つまり、拡張団によって還元率が違うということがあるからや。分かりやすく言えば、ピンハネの程度の差やな。
ピンハネが大きければ、実入りが少ないし、逆なら多い。
この業界は、典型的なピンハネ業界なんやが、その率の決まりというものは存在せん。あくまでも経営者次第ということになる。
この構図は、フルコミ制、固定給制のいずれにも言えることや。
せやから、一般的には、同じ数の契約を上げた場合、フルコミ制の方が稼ぎは多いはずなのやが、そのピンハネ率の違いでそれが逆転することもあるわけや。
それでも、サイトに報告されて来る高額所得者の多くは、フルコミ制の拡張団に所属しとる拡張員さんたちやけどな。
こういう所では、たいてい飛び抜けた成績の者が何人かおる。
この業界では、一応、月収100万円あれば、飛び抜けたと評価される。50人規模の拡張団やと、たいてい2,3人は、それに該当する者がおるはずや。
反対に、食うや食わずで、まったく稼げんという人間もこのシステムには目立つ。
できる人間にとって、1本の契約を上げることはさほどではないが、あかん者にとっては、その1本を上げるのは至難の技となる。
できる人間は1ヶ月にどのくらいの契約本数を上げとるのかという質問を寄せられる人も多い。
これも、実は、これくらい契約を上げとればできる人間やとは言えん部分がある。
ある地域の拡張団では、月に50本上げればトップクラスという所もあれば、200本は常時上げてな一流やとは評価されん所もあると聞く。
新聞社、地域、拡張団、販売店などの環境がそれぞれ違うから、単に数字だけでその拡張員の優劣についての比較はできん。
例えば、ある所では200本上げる人間が、50本上げられたらトップクラスやと言われとる所で拡張しても、その50本が上げられんケースは十分、考えられるわけや。
さらに、稼ぐということに関しては、拡張料の違いも影響してくる。
一般的に多いのは、ヨーロッパと呼ばれる、3月4000円、6が月6000円、1年8000円ということやが、ある地域では、とても信じられんような拡張料を支払う所もあるようや。
3ヶ月カードで15000円から18000円支払っとるという販売店が実際にあると聞く。これは、1軒や2軒の報告やないから、信憑性は高そうや。
しかし、普通に考えたらあり得んことに思う。購読客から徴収する3ヶ月の新聞代は高くても12000円までや。
それやのに、そんな金を支払うことがどうしてできるのやという話になる。
もちろん、これは、その販売店にしても、一部の新規客に対してだけや。全部にそれをして、やっていけるわけがないからな。
それなら、何でそんなことをするのかということになる。答えは単純。部数がどうしてもほしいからや。
改廃の瀬戸際にある販売店は、将来の展望とかを考える余裕がない。部数を上げんかったら潰されるという観念に囚われとるからな。
さらに、そういう所では、他の販売店も同じように必死になっとる場合が多い。その競争に勝つためにエスカレートする。本来ならできん無理もするわけや。
そいう地域であえいでおられる販売店関係者の方から「私たちの地域では過去5年間くらいで、3分の1位の販売店が成績不良を理由に取引停止に成っています」という報告がある。
取引停止というのは、新聞社との業務取引停止、つまり、改廃による廃業を意味する。潰されるというのはこのことや。
それと同じようなことは、拡張団にもある。成績の悪い所は、新聞社から業務取引停止を通告されることも珍しいことやない。
それをされると実質的に、その拡張団は営業できんことになる。
これは、営業会社の宿命とも言える。営業は、契約を上げることが最優先され、その実績でしか評価はされんからな。成績の悪い営業会社は必要ないわけや。
頑張ったけどだめでした。この次、頑張りますということが、通用せんことも多い。結果がすべての過酷な世界やと言える。
特に、拡張団や販売店のように、業務取引契約書一枚で新聞社と繋がっとる所は、その信頼を失えば、それまでとなる。
その信頼が危ういと感じとる、瀬戸際の新聞販売店にとっては部数を上げることが生き残る唯一の方法やとしか考えられんわけや。
こういう所では、不正をする不良拡張員もいて、またそれによるトラブルも多発しとるようや。サイトのQ&Aの相談もこの地域からのが多い。
その主流が置き勧ということらしい。別名、爆カードと呼ばれとるものや。
多量の金券や景品、あるいは現金まで渡して契約にするということが横行しとるという。
普通、拡張料が高いということは、そこでは契約が上げにくいため、拡張員の生活が成り立たんからそうなっとる場合が、ほとんどなんやが、ここでは、それを悪用しとることになる。
つまり、18000円も貰えるのであれば、3ヶ月分、12000円弱の新聞代を負担しても、尚、6000円の利益になる。
これは、他の地域での3ヶ月4000円の拡張料よりも実入りが多いことになる。
タダなら、断る人間も少ないやろという計算をする拡張員も出てくるわけや。
それなら、その地域の客が得をするだけやないかということになるが、そういうことを平気で持ちかける人間にまともな奴は少ない。
確かにその約束を守っとる者もおるようやが、タダにすると言うて客を騙しとる者も多い。それが、トラブルとなる。
もっとも、これは業界でも特殊なケースやから、考えに入れるのもどうかと思うたが、そういうこともあるということや。
また、稼げる条件として、その地域の新聞販売店のシェアが拮抗しとるということも重要な要素になる。
因みに、上記の高額な拡張料のある地域も、そういう所やと聞く。
ある一部の新聞だけが、圧倒的なシェアを誇る地域では、拡張員は契約を上げ辛い。
それは、圧倒的なシェアを誇る新聞の拡張団に所属していても、反対にシェアの低い新聞に所属する拡張団であっても、それはあまり変わらん。
圧倒的なシェアを誇る方は、拡張できる客が少ないし、シェアの低い新聞拡張団にとって見れば、人気のないのは相当に厳しい状況になる。
よほどのことがないと、人気の新聞を読んどる客が、不人気の新聞を選択することがないからな。
特に主婦層は、人気のない新聞には、折り込みチラシが極端に少ないということを良う知っとるから嫌う。これは、致命的と言うてええくらい厳しい。
先に『ある地域の拡張団では、月に50本上げればトップクラス』と言うたのは、正にそういう地域での話や。
因みに、200本上げるという拡張員の実在する地域は、各新聞販売店のシェアが拮抗しとる地域ということになる。
契約を良う上げて稼げる人間にとっては、フルコミ制はええやろが、そうでない人間にとっては、地獄のシステムということになる。
1ヶ月に30本以下の契約しか上げられん者が、どの団にも結構な数いとるもんや。しかし、それでは、フルコミ制の拡張団やと給料日には赤字になりかねん。
その仕組みを簡単に説明する。
30本の契約を上げる人間の総収入は、月収20万程度や。その内、約半額は、前借り金で先に貰うとるから、給料日の支払い残高は10万円になる。
団所有、もしくは賃貸物件を社宅として住む拡張員は、家賃、光熱費で、ほぼその同額分を団から差し引かれる。
他にも団費などの諸経費がある。30本では、ぎりぎりというのが多いということになる。
そういう拡張員の日々の生活は、半額分の前貸し金のみとなる。独身者なら、まだなんとかなるが、所帯持ちにはその生活はとても無理やと思う。
これが、固定給制ならいくらかましということになる。それでも、その程度の契約数やと厳しいことには変わりはないがな。
業界全体の流れとして、フルコミ制の拡張団は減少傾向にあるようや。
新聞社も昔は、フルコミ制の拡張団組織を多く作ることに力を注いどった時期もあったようやが、今は、固定給制を導入しとる比較的大規模な拡張団の支援をしとるようや。
ある地域では、何か事あれば、昔ながらの古い体質を脱却できん拡張団を廃団に持って行こうとしとると聞く。
新聞社と拡張団の取り交わす業務委託契約書には、そのための取り決め事項がかなりある。
新聞社がその気になれば、いつでも拡張団を潰せると言うてもええやろと思う。
もっとも、そうなるには、なるだけの理由も確かにあるようやがな。
例えば、ワシら拡張員は、稼いだ金は自主申告して税金を払わなあかんが、実際に払うとる人間は少ないと思う。
それは、その拡張団にも言えることで、税金を払うてない所もあるようや。
その業務取引契約書の条項の中に『納税義務を怠った場合、本契約は解除される』と確かに謳ってある。
昔は、それは、単なる飾りみたいなものやったが、今はそれを理由に廃団に追い込んどるのも少なくないと聞く。
サイトには掲載しとらん相談事のアドバイスをした人から送って来られたメールに、こういうのがあったから、一部抜粋して紹介しとく。
あの時は、本当に親身になって相談に乗ってもらってありがとうございました。無事、すべて、解決しました。
自分は新しい団で仕事をしています。
結局、あのときの団は無事やめることができました。
事の顛末は、結局、団は、今月の初めに、本社から、納税の義務を怠っていたということが、どういうわけか、もれて、本社から業務取引停止という処分を、くらい、廃団という結果になりました。
結局は、会社自体は、団員の給料から引いていたにもかかわらず、所得税も税務署に納めてもおらず、又、法人税も、同様で。。。。
ワシが、直接このことについてのアドバイスをしたわけやないけど、この人には、そういうことをしとる団は廃団の可能性があるとは言うてた。それが的中したわけや。
実際に、他でも、そういう話は聞いたことがあるからな。それも、そういうのは、最近になって増えとるようや。
心当たりのある拡張団の人は、悪いことは言わん。せめて税金の申告はしといた方がええと思う。
ワシ自身としては、どちらのシステムがええかというのは正直、分からんが、今までフルコミ制に慣れ親しんどるから、このままでもええんやが、これからどうなるのかなとは考える。
まあ、契約さえ上げとれば、システムはそれほど拘ることはないとは思うがな。
結論として言えるのは、拡張団のシステムの違い、新聞社、販売店のシェアの違い、拡張団の経営者の姿勢、各個人の能力の差、その他様々な環境、状況などによって、拡張員の収入は違うということや。
せやから、拡張員はいくら稼げる、あるいは稼いどるとは言い切れんということになる。
結局「いろいろとしか答えられん」となるわけや。それ以外に答えようが見つからんからな。