メールマガジン 新聞拡張員ゲンさんの裏話

第91回 新聞拡張員ゲンさんの裏話
     

発行日 2006.5. 5


■誹謗中傷はメジャーの証し?


「ハカセどないや?」

ハカセが緊急入院したというので、某大学付属病院に見舞いに行った。

「心配……かけて……すみません……。大丈夫……」

そう言うてる声が、しわがれとる。普段の、生き生きとした若々しい声やない。辛そうや。

「話辛いんやったら、ええから」

入院したという知らせを聞いたのは、4月19日のことやった。知らせてくれたのは、シン君やった。シン君というのは、ハカセの長男や。

「お父さん、ちょっと、無理してたみたい」

なぜかシン君が責任を感じとるようや。

話は先月まで遡る。

シン君は受験勉強を頑張った結果、県立普通科高校への進学が決まった。3月17日にその合格発表があった。

それから、3月20日の学校説明会。3月31日までに各種書類の提出。4月5日に制服、教科書、その他の必需品の購買。そして、4月10日が入学式。

普段になく忙しい日々が続いた。その間、合格した安堵感からか、シン君が、最初に、インフルエンザに罹った。次に弟のコウ君、奥さんと順番に伝染していった。

ハカセは家族を病院に連れて行くのと、シン君の入学のことで気が張ってたのか、そのときはそのインフルエンザには罹らなんだという。

ただ、風邪気味やなというのは自覚してたようやが、この程度ならと思うたようや。

入学式が済んで2日後、39.5度の高熱が出た。おそらく、インフルエンザやろうというのは自覚してたから、しばらく寝てたら治る。そのくらいにしか思うてなかった。

実際、その次の朝は37.5度まで熱は下がった。それで、安心したらその夜、また39度の高熱が出た。

それが、3日続き、せき込むのも酷くなり仕方なく担当医に連絡した。

4月17日に診察に行くと、担当医からかなり叱られた。

「肺炎です。もっと、早く来ないと命取りですよ」

見せられたレントゲン写真は、両方の肺の半分くらいが真っ白に映っとった。

2日後の4月19日からの緊急入院となった。

心臓病で風邪をひくのは注意せなあかんというのは聞いてた。しかし、ハカセには、その重大性がまだ認識できてなかった。

心臓病を発生してからも、何度か風邪はひいたが、その都度、寝てたら治ったということがあるからよけいにそう思うてしまう。

まさか、それを拗らせて肺炎になるとは夢にも考えんかったという。当然、今回のようなことも初めてとのことや。

入院は1週間ほどで、4月27日に退院した。

医者の話やと、まだ若いから、この程度で済んどるが、60歳以上の高齢になって、心臓病の人間が肺炎に罹れば死亡率がかなり高くなるということやった。

退院しても、当分は通院せなあかんらしい。

声は、まだ出にくそうやが、見た感じは元気そうや。

ワシは、サイトやメルマガもしばらく休んだらどうやと言うたが、ハカセは頑として続けるという。

ハカセにとって今やメルマガやサイトは生き甲斐になっとる。それを奪うわけにもいかん。

ただ、このメルマガの89回と90回は本来なら、1回の話のつもりやったんやが、急な入院ということもあり2回に分けたということがある。

読者の方には事後報告になって申し訳ないが、常のメルマガやないと感じておられる方がいたら、そういうことやから、分かってほしいと思う。

病室では、パソコンの持ち込みは許可されなんだ。

ハカセにはメールが気にかかってた。サイトやメルマガへのメールは日々、多いときは10通以上、寄せられる。中には、急を要する相談もある。

奥さんが、毎日、そのメールをプリントアウトして、病室に持って行ったという。

その中に、中傷メールが幾つか含まれていた。中傷メール自体は今に始まったことやない。以前からあった。

ただ、今までは、そういうのは極端に少なく、ここ最近、それが増えてきた。

「あなた、気持ちの悪いメールがあったけど、大丈夫なの?」

そのメールも中傷メールやった。ただ、奥さんが気持ち悪いというのは、ハカセが入院した日、4月19日にその同じ文面が8通も送られて来たからや。

さすがに、そういうのは今までになかった。


三流張員がなに講釈垂れてんだよ。アホか。1面的な見方しかできねえバタが。世ん中のなんもしらねえ、客のこと、店のこと、自分の事もいい歳ぶっこいてしらねえバタ拡がカード揚がるわけねえだろ。

中略

せいぜい、ものしらねえ管理人とやらのガキにこびうってな。なあ、駆け出しくん?いつでもカカッテコイ。


とまあ、こんな感じやった。文面から関東方面の拡張員のようやとは思うが、こういうのはコメントする気にもなれん。どこかの掲示板にありがちな低俗なやつやからな。

同じ中傷メールでも、もうちょっと、洒落かウイットに富んだものにしてほしいと思うが、この手の人間にそれを期待するのは無理かな。

ワシやハカセが見ただけなら、笑い飛ばして終いやが、タイミングの悪いことに、ハカセが入院したときにこれが送られて来た。

そら、奥さんが見たら、びっくりするやろと思う。その後もしばらく、まったく同じ文面のメールが送られ続けたというからな。

多分に偏執傾向のある人間か、もしくは、サイトに対して相当な恨みを持っとる者という気がする。

全国の拡張員、販売店関係者の方々から、一般読者もこのメルマガやサイトで知識を得ているケースもあるので、扱いにくい客も中にはいとるという報告は多い。

無法な拡張員、販売店に対してそれなりの対処法も数多く言うてるから、実際にそれを実行する人もいとるという。

その出所が、ここやと知って恨みに思うとる人間もおるということや。

彼らにとっては、今までやってきた自分たちの仕事のやり方を妨害されとると考えるやろから、我慢ならんというのは想像できる。

中傷メールの一つも送ってやろうという気持ちも分からんでもない。

今回のメールもおそらく、そういう人間の一人なのやろと思う。単なる嫌がらせだけでは、これほどしつこく変質的になれるもんでもないやろからな。

今回は、特別に、こういうメールの一部を公開したが、これからは、こういうのには関わることはないやろと思う。反論しても、関わっても何も得るものも生むものもないやろしな。

ただ、送られてきたすべてのメールは記録しとるので、それが、あまりにも度をすぎて常軌を逸脱しとると思われるような内容のものは、そのケースにより、当局に通報することもあるかも知れん。

もっとも、今の所、そこまでする必要のあるものはないようやがな。

現在、警察関係者の方から、ネット上で犯罪に関係しとると思われるものには、かなり神経を尖らせ警戒しとるという話を聞いとる。

そういう通報があれば、発信者に辿り着くのも早いというからな。

最近の傾向として、携帯電話のメールを利用しとるケースが多い。手頃なのやろが、どうせ発信者は分からんという軽い気持ちがあるのなら、止めといた方が無難や。確実に分かる。

ちょっとした、いたずらのつもりやろが、それでは済まん場合も多いさかいな。

何でこんなことを言うのかと言えば、他サイトの運営者の方からも、そういった中傷メール、いたずらメールで困っているという話を良く聞くからや。

特に掲示板を設置しとる所の書き込みが酷いという。俗に言う掲示板荒らしというやつや。これで、閉鎖に追い込まれたHPもある。

それをする者は、安易な気持ちからそうしとるのやと思うが、その行きすぎた内容の書き込みで逮捕されとるという現実があるのも知っておいた方がええ。

例え、中傷メールを送るにしても、それをわきまえた上ですることやと思う。

ただ、中には中傷メールと呼べんようなものもある。

拡張員に被害を受けたと思われる人から「お前らはくずだ」というのは、まだ分かるが「こんな拡張員はどうにかしてくれ」と言われるのは困る。

ワシらは、そういう苦情に対してアドバイスはするが、実際にその連中を取り締まるようなことはできん。当然やが、そんな力もないしな。

「断っても何度もやってきて勧誘するのはやめてほしいです。そちらも仕事かもしれませんが、こちらも生活を脅かされるのは迷惑です」

これなんかも、切実な訴えやというのは分かる。せやけど、これは大変な勘違いをしとるわけや。ワシらにそれを言うても何の解決にもならん。

しかし、頭にきとる人間は、取り敢えず、どこでもええから文句を言う場所がほしいということなんやろと思う。そういう気持ちは分からんでもない。

世の中、こういう勘違いをしとる人というのは結構多い。

ある新聞販売店の方から「たまに、お客さんから新聞記事の内容について『あんたの所は何であんな記事を載せるのか』と怒られることがありますが、ああいうのは、困りますね。販売店に言われても困りますと言っても分かって貰えません」という話を聞くことがある。

また、サイトに情報を寄せて頂いてる元新聞記者の方からも「地方の支局に勤務していると、泊まり明けの朝には必ず読者から、不配・遅配の苦情が届きます」という笑うに笑えん話があると教えて頂いた。

ワシらにも似たようなことが多い。勧誘で客の所に行くと「お前の所の配達員は態度が悪い」「お前所の新聞社のドンが気に入らん」「昨日、お前所の球団に負けた」等々、およそ、ワシらに関係ないような文句を言われることが結構ある。

これらは、新聞社、販売店は一体という認識から起きとることやろと思う。

そこで、仕事しとる者は、それぞれの持ち場というものがあり、自分の守備範囲外のことに関しては、関係ないという思いが強い。

しかし、苦情を言う側にしたら、同じ新聞社の人間やないかとなる。黙って聞いて、謝れという態度や。

それに、対して、納得はいかんでも、たいていの人間はそれを聞き、仕方なく謝る。それに、逆らっても、話が拗れるだけやというのを良う知っとるからな。

その手の苦情は仕方ないということや。

話を元に戻すが、すべての人が、このメルマガやサイトに好印象を抱いとるとは思わん。数多くの人に読んで貰っている反面、気に入って貰えず去られとるという現実もある。

これからも、その傾向は続くやろ。しかし、それは、仕方のないことやと思う。

世の中には、いろいろな価値観の人がおり、主義、思想、好みも多様に存在する。万人向きのものというのは世の中に存在せんと思うしな。

特にワシらのそれは、スタイル的にも他とは違って異質のものやからよけいや。

関西弁というのも、人により暖かみがあると言う人もおれば、話し方が傲慢で鼻持ちならんと指摘する人もいとる。

せやから、このメルマガやサイトに好感を持って貰える人もいれば、反感を買う人がいてても当然やと思う。

中傷メールも、そういう意味では仕方のないことや。

そして、最近、それが増えたということは、このメルマガやサイトもやっと、広く認知されてきた証しと考えられんこともない。

アンチファンが増えるのはメジャーになってきた証し?ということかも知れんからな。

そう思うて前向きに捉えることにする。というても、中傷メールを歓迎しとるわけやないけどな。


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