白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
第5話 新聞大逆転の法則
初回発行日 2014. 7.26 全29回
作品紹介
これは、ある新聞社と新聞販売店、新聞販売店と新聞拡張団、隣合わせ同士の新聞販売店の争いを描いたものです。
逆転につぐ逆転で、最後の勝者が誰になるのか。どういった結末を迎えるのか。笑いと涙とサスペンスを交え毎回のように見せ場を作っていますので、ご期待ください。
第1回配信分
新聞大逆転の法則
第1章 追いつめられた男 その1 割腹自殺
2007年10月3日。水曜日。その電話がかかってきたのは午後1時すぎ頃だった。
「何? 親父が割腹自殺を図った?」
宿毛(すくも)元樹(げんき)は耳を疑った。父親の宿毛元太郎は間違っても自殺するような男ではない。
そんな柔な人間ではなかった。少なくとも元樹の知る限りでは……。
宿毛元太郎は 岡山市中区赤田にある内海(ないかい)新聞宿毛販売店の経営者だった。元太郎の父親、元信が昭和30年に始めた老舗の新聞販売店である。
元太郎は長男ということもあり、当たり前のように家業を継いだ。
一人息子の元樹も当然三代目を継ぐはずだと思っていたが、元樹はそれを嫌って地元の大学を卒業すると、元太郎の反対を押し切って大阪大阪市淀川区西中島にある大手建設会社、西中島建設に入社した。
元樹は小学生の頃から新聞配達をやらされていた。そのため同級生からの徒名は「新聞屋」だった。
「新聞屋」というのが尊敬のこもった言い方だったら、また違ったかも知れないが、明らかに侮蔑を含んだ徒名だった。
ある時、小学生だった元樹は、「新聞屋」と囃して馬鹿にした同級生と喧嘩になったことがあった。
その同級生に怪我を負わせたということもあり、父親の元太郎は元樹を連れて、その同級生の家に謝りに行った。
父親はその同級生の家で新聞を購読してもらっていたということもあり、卑屈なまでに謝り続け、元樹にも頭を下げるようその場で強制した。
その時、父親は子供のことより仕事の方が大事なのだと元樹は痛感した。
それ以来、元樹は父親の元太郎が嫌いになり、新聞販売店の仕事が嫌になった。
ただ元樹は上辺では従順さを装っていた。それが子供なりの処世術と心得ていたからだ。
しかし、心の中では大人になったら絶対に新聞屋なんかにはならないと誓っていた。
そうとは知らない元太郎は元樹が跡を継ぐのは当然と考えていて、新聞販売店の仕事のイロハを一から叩き込んだ。
そして、大学を卒業すると同時に、それを実行に移した。当初、元太郎は激怒した。元樹もそれに反発し、家に帰らなくなった。
元太郎は頑固な性格の男だった。典型的なワンマン経営者で販売店の従業員にも厳しかった。
仕事をサボっている従業員を見つけると、いきなり殴りつけるのは日常茶飯事だったし、解雇を宣告することも珍しくはなかった。
元樹はそれを子供の頃から見ていて元太郎が怖かったということも家に帰りにくい理由になっていた。
そんな元太郎が自殺を図ったと聞かされ、俄には信じられず耳を疑ったのである。
「それで親父は?」
「今、集中治療室にいるわ。お父さんが死んでしまったら、きっと私のせいだわ……」
そう言って母親の静恵は泣きじゃくるだけだった。
「大丈夫だよ。親父が死んだりなんかするもんか。取り敢えず、俺はすぐに帰るから、お母さんは病院にいて」
本当は母親から詳しい事情を聞き出したかったが、とてもそんな状態ではなかった。
元樹は、会社の上司に父親が事故で危篤だと伝え、会社を早退して、その足ですぐ近くにある新大阪駅に向かった。
新幹線で岡山駅に降りた。新幹線に乗れば1時間程度の距離だが、今まではそれがとてつもなく遠く感じていた。
岡山を離れて3年くらいしか経っていないが、元樹にとっては、見るものすべてが懐かしく新鮮に映った。
駅前の犬、猿、雉を従えた桃太郎像も、岡山にいる時は気にも留めない何ということもない風景だったが、改めて見ると、やはり帰ってきたのだなと実感できた。
駅前でタクシーに乗り、元太郎が入院しているという岡山中央病院に向かった。15分ほどで着いた。
岡山中央病院のロビーで母親の静恵が待っていた。あれほど明るく陽気だった母が憔悴しきっていた。
「何で、こんなことになったんじゃ」
「担当の大関に騙されたんよ」
「誰じゃ、その大関と言う者は?」
大関洋一郎。30歳。3年前から内海新聞社岡山本社管轄の販売部の担当員として赴任してきた男である。
元は全国紙の大洋新聞社にいた男で、内海新聞社の社長、内海裕之助にその手腕を買われヘッドハンティングにより引き抜かれた。
歳が若いということと、入社してまだ日が浅く実績も上げていないため平の担当員ということになっているが、行く行くは販売局長になるはずの幹部候補生だという。
大関が担当員になってから内海新聞社の系列販売店に対する方針が大きく変わった。
その最たるものは部数のノルマがきつくなったことだった。
具体的には取り扱い部数の1%をノルマとするというものだった。
宿毛販売店の取り扱い部数は3500部前後だったから、毎月35部増がノルマということになる。
全国レベルでは、それほどきついノルマではないかも知れないが、岡山のような地方で僅かでも部数を伸ばすというのは容易なことではない。
特に岡山という土地柄はいろいろな意味で横のつながりが強い地域である。それぞれの新聞販売店と客とのつながりが強固に保たれているケースが多い。
殆どの客は同じ新聞を継続するから購読している新聞を簡単に変える者が少ない。
加えて内海新聞は岡山県内では購読率7割を誇る人気の新聞だということもある。地方紙でそういうケースは多い。
つまり、これ以上部数を増やしにくい新聞でもあるわけだ。
そのため今までは現状維持で優良店とされていた。
しかし、大関が来たことによってノルマが達成されない販売店の経営者は能力がないと断じられるようになった。
そして、能力のない経営者のいる販売店とは業務委託契約の更新をしないと通達してきた。
業務委託契約というのは、新聞社と販売店が結んでいる契約のことで、その更新をしないということは実質上の廃業を意味する。
業務委託契約があることで販売店は新聞社から新聞を卸してもらえる。その契約が更新されないということは必然的に新聞が、その販売店には届かなくなるということだ。
新聞がないと当たり前だが新聞の配達はできない。
宿毛販売店でも必死になって部数を増やそうとしたが、なかなか上手くいかない。
普段から現状維持で良いと思ってやってきているから、他紙への顧客流失を防ぐことには長けているが、積極的な勧誘はあまりしてこなかったということもあり、どうしても今以上の部数増が望めないのが実情だった。
新聞販売店には宅配制度というものがあり、限られた範囲の中でしか営業できず、客を増やすことができないという特殊な事情もある。
ノルマの達成がゼロという月もあった。それが3ヶ月ほど続いた時、大関は宿毛販売店の店主、宿毛元太郎に「このままでは業務委託契約の更新はできなくなります」と通告してきた。
「ただし、それを防ぐ手立てはあります。ノルマ分の新聞を買い取ってくだされば、ノルマが達成したということで私が社に報告しますので」と甘い言葉を投げかけてきた。
元太郎は、それに飛びついた。それで済むのなら、そうすると。改廃を逃れることができるのならと。
ノルマを強制的に押しつけた本当の狙いは、それだった。こういうのを俗に「押し紙」と業界では呼ばれている。
内海新聞は、今までそういうことはあまりして来なかった。現状維持でシェアを7割も確保することができていたから、それで十分だと、それまでの経営陣は考えていた。
しかし、内海裕之助が社長に就いてから、その方針が変わった。内海裕之助は野心家だった。
新聞社を今以上に大きくしたかった。今までの新聞社の形態では先細りするだけで、それは望めそうもないと考えた。
先代の父親、内海格之信の取り巻きの重役は頭の固い者が多く使えないという思いが強かった。彼らがいたのでは思いどおりにはならない。
もっとも、それを広言するわけにはいかないので、裕之助は積極的に他紙の有望な人材をヘッドハンティングして、自分のブレーンを増やすことに腐心するようになった。
普通、それをするのなら自社の有望な社員を引き上げれば良いと考えるものだが、内海新聞社では、その事情が少し違った。
内海新聞社に入社してくる者は縁故関係者が多かった。特に重役連中の縁故関係者が多い。それではいつまで経っても変わらない。
そう考えた結果のヘッドハンティングだった。
そのブレーンに実績を積ませることで行く行くは自分の手足となる重役に育てることが狙いだった。大関は、その子飼いの一人だった。
元太郎も初めの頃は、数十部程度の部数を買い取るだけで済むのならどうということはないと考えていたが、2年がすぎる頃には、それが月500部にまで膨れあがり経営を圧迫するようになった。
内海新聞の場合、新聞の仕入れ価格は販売価格の約6割、2300円ほどだった。
これについては、それぞれの新聞社と新聞販売店との間の事情でも違うから一概には言えないが、業界としては多い方だった。
押し紙が500部あるということは、毎月115万円ほどの利益が消える計算になる。それが、ローブローのように利いた。
しかも、その押し紙が減ることは状況から考えにくく、徐々に増えていっているのが実状だった。この先、どこまで増えるのかが、わからない。
加えて、押し紙による利点とされている折り込みチラシの収益も、販売店にはまともに入らないシステムになっているという点も大きい。
昔は、折り込みチラシの取引は業者と直接できた。新聞社は折り込みチラシについてはタッチしないという姿勢があったからだ。
宿毛販売店では折り込みチラシの入りは平日で15枚、金、土曜日で30枚程度だから、業界としては少ない方ではない。地方紙としては多い方の部類になる。
新聞販売店は公売部数といって、新聞社から卸される部数をもとにチラシ納入業者からチラシ代金を受け取る。
つまり、押し紙になっている500部についてもチラシ代金を受け取ることになるわけだ。
チラシ代金は平均して1枚につき3円。それが500部だから1500円。1日15枚だと22500円。1日30枚の場合は、45000円になる。
月にすると675000円から1350000円になる。その収益で押し紙分の負担もかなり軽減できる。場合によればプラスに転じることすらある。
しかし、現在の内海新聞社のシステムでは、業者が直接、販売店にチラシを持ち込むということができなくなっている。
内海折り込みセンターという新聞社の完全子会社に、すべての業者からのチラシが集まり、そこから系列の各販売店に配られる。
当然のように、かなりのマージンが、そこで差し引かれる。そのため、チラシがあっても、それで潤うということがないわけである。
ある時、元太郎は意を決して、大関に直談判した。
「押し紙がきついから、少し減らしてもらえませんか」と。
すると、その数日後、内海新聞本社に呼び出され叱責された。
さすがに、押し紙を断ったからということではなかった。表向きは増紙が満足にできてないことへの叱責である。
内海新聞社に言わせれば、成績不良者への指導、教育ということになる。
どこの新聞社でも大なり小なり販売店には増紙を要求する。
ただ販売店の経営者には、多くを稼げなくても安定した収入があって店が維持できたら、それで十分という考えの者が多い。
しかし、内海新聞社はそうではなかった。野心家の社長、内海裕之助は、それを認めなかった。
そのことがあった翌月から、宿毛販売店に対するノルマがさらに増え、それに伴って押し紙が増えた。
ただ、新聞社が販売店に対してノルマとして買い取りを押しつける行為は商法の「優越的地位の乱用」に当たり法律違反になる。
内海新聞社は、そのあたりの処理が狡猾だった。
新聞の納入要求は、販売店から自発的にするという仕組みになっている。
表向きは「無理な注文は控えるように」という通達を系列の各新聞販売店文書で出している。
この頃から、押し紙は社会問題として表面化しつつあったため、それを考慮してのことだった。
業界関係者にとって押し紙が存在するのは常識であっても、新聞社がそれを認めることは絶対にない。対外的には必ず否定する。
外部から、公売部数と実売部数の差は押し紙ではないかと指摘された場合「それは新聞社が強制したものではなく、販売店が独自に不正な注文をしているからだ」と言って逃げる。
あくまで販売店の虚偽報告が原因だと。
内海新聞社ではノルマを買い取らせているといった証拠は一切残していないから、例え裁判に訴え出ても勝訴する可能性は少ないと豪語する者さえいた。
事実、大半の押し紙裁判では訴えた販売店側の敗訴になっている。裁判では、押し紙の介在する余地はないと断じられている。
しかし、現実には押し紙は存在する。
ならば、どうやって新聞社の意向が販売店に伝わるのか。また、押し紙に相当する新聞が送付されるのかということになる。
新聞社と販売店とのやり取りはすべて電話、もしくは口頭で済まし、文書などの証拠を残すようなことは一切しない。
販売店から押し紙抜きの部数の注文があっても「これでは不十分だ」と言って、申告し直すように伝える。
その際、「お宅は、今月○○部、増紙の努力してくださいね」あるいは「○○部の増紙の協力、お願いしますね」と言われると、増紙できない販売店は、結果として、そのノルマ分を含めた納入依頼をせざるを得ない状況に追い込まれるのである。
新聞社と販売店の間に交わされている業務取引契約は対等のものではない。
新聞社の一方的な理由で、いつでも契約解除が可能になっている。つまり、販売店は常に新聞社に生殺与奪の権利を握られとるということになる。
新聞社のお願いは、販売店にとってみれば「命令」に等しいわけである。
宿毛新聞販売店では、その押し紙が増えただけではなく、その日を境に、嫌がらせのようなことが続いた。
その日、元太郎は、いつものように夕刊を受け取るため、近所のバス停まで行った。
内海新聞社では、夕刊の輸送手段に路線バスを使っていた。新聞社の経費削減のためということらしい。
業界では、新聞社の都合が優先されるから、毎日そうすることが面倒だとは言えない。何事であれ、販売店は新聞社の決定には従わざるを得ないのである。
路線バスを使うという背景には、夕刊はページ数も少なく嵩張らない上に、部数も朝刊の5分の1程度と極端に少ないということもあった。
昼間の乗客の少ない時間帯なら、少々の新聞が積み込まれてもさほど邪魔にならないということで、バス会社もそれを承諾していた。
もちろん、某かの運賃をもらってのことだが。
その日、いつも運ばれてくる時刻の路線バスに夕刊が積まれてなかった。
その地域では、その時間帯のバスは1時間に1本しかないから、次の便は1時間後ということになる。実際、その次の便に夕刊が積まれていた。
たまにはこういう手違いも仕方がないと、この時、元太郎はそう考えた。
ところが、同じことが断続的に続くようになった。
そして、遅れるだけではなく、予定の1便前に運ばれたこともあった。
当然、何も知らない元太郎が、それに間に合うわけもない。
バスは、新聞の運搬が仕事ではないから、そのバス停に誰も来なかったら、そのまま出発する。そういう決まりだった。
次のバスまで待っても夕刊が積まれてなかったため、不審に思った元太郎は、内海新聞の配送センターに問い合わせたことで、その事実がわかった。
元太郎は当然のように文句を言ったが、「こちらは、連絡しましたよ」と平然とした顔で大関が答えた。
悪いのは、そのバスに乗せられた夕刊を受け取りに行くのが遅れた元太郎ということにされた。
結局、その日は、バスの終点でもある操車場まで、その夕刊を引き取りに行かなくてはいけなくなり、その夕刊を配り終えたのは、午後7時をすぎていた。
いつもは遅くても午後5時には配り終えているから、客からは、当然のようにクレームの電話がひっきりなしに入った。
それらの家に謝りながら配るわけだから、よけい遅くなる。
他にも、嫌がらせに近いことが幾つかあった。
新聞社から送り込まれてくる拡張員も見知らぬ顔の男たちが多くなり、それによるトラブルも極端に増え始めたというのも、その一つだった。
宿毛販売店では、そのクレーム処理に追われ販売店の評判も落ちた。当然、それによる部数減という影響も出た。
元太郎も馬鹿ではないから、背後に内海新聞社、および大関が何らかの形で絡んでいて糸を引いているのではないか、というくらいの想像はできた。
もっとも、その証拠や確証がないから、文句を言うわけにはいかなかったが。
そんな時、同じ販売店の経営者仲間から、ある噂を耳にした。
「宿毛さん、上が販売店を増やそうとしているのは知ってるか」
「ああ、その噂なら聞いたことがある」
最近になって、新聞社に、そういう動きがあるというのは知っていた。
廃業した店舗を新聞社が、販売会社を介して直営化しようしているという噂だった。
表向きは独立した新聞の販売会社という体裁になっているが、資本の大半は新聞社から出ているという話だった。
廃業した店舗が販売会社の管轄になった途端、それまで少なかった部数が、
急激に増えたというのは聞かされていた。
内海新聞社は当然のように、そのトップの手腕を評価して褒めちぎった。他の各販売店にも見習えと言って。
もっとも、古くから販売店店主たちの間では、その増えた部数は、水増し分の押し紙だというのが定説だったが。
このご時世に、どんなに手腕の優れた人間でも、そう簡単に部数を急激に増やせるものではない。
それも、1営業所だけというのなら、そういうこともあるかも知れないが、販売会社の管轄になった店舗が軒並みそうなったというのは考えにくいから、よけいである。
そして、将来的には、すべての店舗を販売会社化しようと目論んでるのではないかという。
そうすれば、現在、社会問題化しつつある押し紙の存在を消すことができるというのが、その噂の根拠である。
押し紙が表面化するのは、その裁判が多発しているためである。訴えるのは、それに泣かされてきた個人経営者たちだ。
新聞社が販売店を直営化すれば部数を水増ししても、誰もそれをバラすことはないと考える。すべて身内だからだ。
そして、その部数の水増しは厳密に言えば押し紙ではなくなる。新聞販売店を完全子会社化すれば、最早押し紙自体をする必要がなくなるからだ。
ただ、部数減だけは避けなければならない。
内海新聞社にすれば部数減によって、広告主が逃げ出さないようにくい止めたいという思いが強い。
それを回避する手段が、内海新聞社直営による販売会社化だった。
そうすれば、実状はどうでも、表向きの部数などいくらでも調整可能だから、部数減にならないようにすることも可能で、外部にそれと知られる心配もないない。
それが、噂の背景としてあった。
そのために、すでに改廃を予定している店舗のリストまで出来上がっているという。
「宿毛さん、気をつけや、あんたのところも、そのリストに載っているらしいからな」
元太郎は長年、新聞販売店を経営して、新聞社の良いところも悪いところも熟知してるつもりだった。
内海新聞社から煙たがられているというのも、良く知っている。
近い将来、その仲間の言うようになる可能性が高いだろうと。いずれ、そのように追い込まれるだろうと。
いや、すでに追い込まれている。このままでは、どうしようもないところまで来ているという実感があった。
そして、決定的な事件が起きた。
元太郎が割腹自殺をしなければならなかったほどのことが……。
それには、母親の静恵も巻き込まれていた。
第1章 追いつめられた男 その2 反逆の決意 へ続く
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