出版本について Part1 長かった道程(みちのり)
メールマガジン 『149回 新聞拡張員ゲンさんの裏話』より 発行日 2007.6.15
「いよいよやな」
「ええ、やっとです」
サイトの書籍を出版することになった。
それについてのワシとハカセの短い会話や。
出版本の題名は『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘なんでもQ&A選集』に決まった。
その内容は、サイトのそれとは少し趣の違うものになっとる。
分かりやすく言えば、サイトのQ&Aは、個人的な相談に対する回答なのに対して、本は、広く一般的な疑問を解消できるようになっとる。
さらに言えば、投稿者の希望によってボツになったような相談も、幾つか一般的な質問に変えて挿入しとるというのもある。
ハカセは、この本の原稿を書き上げるために、ここ数ヶ月を要したという。
サイトのQ&Aを見慣れとる人でも、それなりに新たな発見もあり面白いものに仕上がると思う。
仕上がると思うと言うたのは、つい一週間前に初稿を出版社に渡したところやから、そう言うたわけや。
原文は見とるが、完成本はまだやさかいな。
これから、まだ幾度か打ち合わせと校正というて、手直しがあるということや。
「その校正ですが、担当者の方は苦労されると思いますよ」
ハカセが、変な自信を持ってそう言い切った。
理由は、ワシの話す関西弁にあるらしい。
「私は、ワードで下書きをし、一太郎で原稿を仕上げたのですが、両方の校正機能がまったく役に立ちませんでしたからね」
日本語ワープロソフトは、当然やが、正しい標準語を前提に作られたものや。
関西弁、それも河内弁に近い言語の校正ができるようにはなっとらんからな。
せやから、ハカセの下書きはいつも、訂正や間違いを示す下線の波線だらけやという。もちろん、ハカセは、それには慣れとるから、気にもしとらんがな。
校正担当者の経験にもよるが、そういう原稿はあまり見たこともないやろうから、かなり苦労するやろなというのも想像できる。
校正者泣かせの原稿なのは間違いない。
ハカセの変な自信はそこにあった。
いずれにしても、どんなものが出来上がるか、楽しみではあるがな。
サイトを立ち上げた直後のことを思い出す。
サイトの導入部分の一つでもある『拡張員の1日』の中で、こんなことを言うてた。
ワシは、今まで自分の営業テクニックを人に話したことはない。今回、ハカセが初めてや。
ハカセはワシの営業テクニックを評価してくれとる。
「ゲンさんの営業テクニックは素晴らしい。本にしたら、面白いと思うし、説得力があるから、絶対いけるよ」と言って、早速、本作りを始めとるようや。
しかし、ハカセは何か大きな勘違いをしとるような気がしてならん。
本を作って誰に売るんや。
拡張員が一番勉強になるかも知れんが、断言するけど、拡張員は絶対に買わんで。
本を読んでまで、真面目に仕事をしようちゅう拡張員がどこにおる。
当人のワシでさえ、他の誰かが書いた拡張のテクニックなんか買うてまで読まへんわ。
タイトルはどうするんや。「新聞拡張のテクニック教えます」か?
こんなん誰でも引くで。それに、こんな本が普通の人間の役に立つわけあらへんやろ。
営業の参考にするんなら、他に有名な作家の書いた営業指南書の類の本が何ぼでもある。一部のマニアックな連中なら面白がるかも知れんけど、それだけのことや。
ワシがこれだけ言うても、ハカセは聞いとらん。
「やはり、問題はタイトルかな。『拡張員撃退法』だと趣旨が違うし、どこかにありそうな感じだからなぁ……」
どうやら、ハカセは本気で悩んどるようや。あんたでもええわ。何かええアイデアがあったら教えたって。今のところ何も礼はないと思うけど、それで何かの拍子に間違ごうて売れたら、ビール券くらいやるで。
と、まあ、出版の構想だけはあったようやが、その後、ハカセも考え直したのか、話は立ち消えた。
もっとも、その話をサイトでした2日後に、Q&Aに初めて相談に来られた自称「苦労人さん」という拡張員の人から、その部分を見てこう言われてた。
「このサイトに本を出される予定だということでしたが、もしそうなら是非買って勉強したいと思います」と。
危うく? それを見て、また、勘違いしかけとったがな。その後も、時折、そういうメールも送って来られる人もおられた。
それにしても、今回のこの本を出すまでに至った経緯は、簡単なことやなかった。
ハカセには、若い頃、小説家になりたいという夢があった。
ある高名な小説家の先生について、文章修行をしたこともあるという。
その頃の生活は、半年働いて金を貯め、その金で、半年、働かず、書くことだけに没頭するというものやった。
その仕事も、書くための経験ということで同じものを選ばんという徹底ぶりや。
生活のすべてをそれに打ち込んだ。
ハカセはそれを5年に渡って繰り返し続けたという。
今で言うフリーターやな。
もっとも、その頃には、そんな言葉もなく、認知もされとらん時代や。
ハカセのような生き方をしとる人間は、当たり前のように誰からも評価されることはない。理解されるはずもなかった。
世間から白い目で見られ、親戚や親兄弟からも見放されてたと話す。
その間、小説の新人賞などにも良く応募してたという。その当時、まったくの素人が作家デビューする道はそれくらいしかなかったからな。
何度かその最終選考にも残ったことはあったが、結局、目が出ず終いやった。
その後、今の奥さんと知り合い、結婚するために、その夢を捨てたということや。
もっとも、そういうのはどこにでもある別に珍しい話やないがな。
「あきらめたのは、単に、その才能がなかっただけですよ。気がつくのが遅すぎましたがね」と、自嘲気味にハカセは言う。
ハカセは、平凡なサラリーマン勤めを選んだ。
もっとも、その仕事が平凡かどうかは意見の分かれるところやが、会社勤めやったのは間違いない。
ハカセ自身も、それなりの起伏に富んだ人生を歩んできとるが、あまり人には多くを語りたがらん。
「それに、私の身の上話など、聞いても面白くもなんともないですし、サイトやメルマガのテーマにもなりませんからね」
それが、多くを語らん理由らしい。
その後、二人の子供に恵まれ、それなりに幸せやったから、その小説家になりたいという夢にも未練はなかったという。
8年前、その生活が一変した。
急性心筋梗塞を引き起こし、緊急入院をした。ICU(集中治療室)で、心肺停止にもなった。
そのとき、奥さんは、担当医から「覚悟してください」と言われ、二人の子供を抱え、その場に泣き伏したという。
何とか一命は取り止めたが、このまままやと余命1年やと宣告された。
確実に助かるには、心臓移植しかないとも言われた。その時分は、そういうのが頻繁に行われていた頃でもあった。
それを知らされた時、ハカセは、すべてに絶望したという。
しかし、結果は、未だに生きとる。
「奇跡的な回復ということらしいです」
もっとも、余命1年という診断は、その担当医の誤診の可能性が高いのやないかとハカセは疑っていたということやけどな。ヤブとまでは言うてないが。
現在は、その病気の全容が分かったから、その担当医がそう診断したのも無理はないというのも分かった。
ハカセは、けいれん性の狭心症やったという。これは、いつ発作が起こるか分からん病気ということらしい。
それが、頻繁に起こっている状態のときを医師が診れば、間違いなく危ない状態やと診断する。
ところが、何もない状態では、それが、分かりにくい。奇跡的な回復と言われたのも、そのせいやという。
やっかいな病気や。しかし、薬さえちゃんと服用しとれば、それほど心配はないと、今では分かっとる。
その病気になって、普通の仕事ができんようになった。
紆余曲折の末、ハカセのできることは、その昔に多少の心得のあった文章を書くことだけやったから、それを生活の糧に選んだ。
選り好みのできる状態やないから、何でも頼まれるままに書いたという。
それについては、ここでは割愛するが、いずれ何かの折に話したいとは言うてた。
そして、今から4年ほど前、ワシと知り合うことになる。
ワシらは妙に気が合うた。
オリジナルなものが書きたいというハカセの思いで、ワシの話をHPで公開することにまで話が及んだ。
当初、ワシは、はっきり言うて、ハカセの単なる道楽くらいに受け取っていて、それほどたいそうなことやとは考えてなかった。
ハカセの書く文章は、身内で褒め合うのも何やが、面白いと思う。
その意味では、評判になっても不思議やないが、いかんせん、ハカセは宣伝するということをまったく知らん男や。
これでも、ワシは営業マンのはしくれやから、どんなええもんでも、人に宣伝せなあかんというのは知っとるつもりや。
もっとも、ワシは、パソコンの知識なんかほとんどないから、どうすればHPの宣伝になるのかというアドバイスはできんがな。
これが、一軒、一軒、新聞の勧誘のように売り込めばええのやったら、簡単なことなんやけどな。
ただ、ほとんど、そういう宣伝らしきものをしてないにも関わらず、ワシらの予想を大幅に超えた訪問者が日々、サイトに訪れるようになった。
「ハカセ、本を出したいのやったら、HPの文章をまとめて、どこかの大手の出版社に企画として持ち込んだらどうや」
HPを開設して1年が経過した頃、ワシは本気でそう言うたことがある。
「いや、もし、その値打ちがあるのなら、出版社の方から何か話があるでしょ」と、意外にも、にべもない答が返ってきた。
妙なプライドがあるのか、単にそうまでするのが面倒なのかは分からんがな。
いずれにしても、ワシは、その考えには懐疑的やった。
有名人とか話題性の高いものやったらそういうこともあろやろうけど、無名の素人のHPなんか、よほどの偶然でもなかったら、大手出版社の目に止まることすらないと思う。
例え、目に止まったとしても、書いてあることが書いてあることや。
新聞の勧誘話というのは、未だに報道機関ではタブー視されとる。少なくとも、新聞業界で歓迎されるものやない。
そして、何やかやと言うても、まだ新聞業界の力は、テレビ業界を従えとるということもあり、歴然とした影響力がある。
確かに、最近は、元新聞社関係者やジャーナリストによる新聞内部の暴露的なものや批判めいたものが本にはなっとる。
一部では知られ、それなりに売れとるとも聞く。
それでも、ワシらのような、生々しい勧誘の現場を描写しとるわけやない。また、読者の生の声を反映しとるものでもない。
そういうのを、業界で受け入れるほどには、まだその懐が広くはなってないと思う。
新聞業界は、出版業界へもそれなりの影響力がある。
それら、もろもろのことを考えたら、単に面白いなという程度では、出版社は食いつかんはずや。
その食いつかんはずが、食いついてきた。
去年、2006年3月の中頃、あるメールが届いた。
『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』サイト管理者、白塚博士様
私は○○出版の○○と申します。
週刊ダイヤモンド2006.3.11号の特集「大混乱 間違いだらけの個人情報保護 Part3
業種別・混迷の実態」での白塚様のコメントを拝見しました。
ホームページも大変面白く情報量が豊富で驚きました。
つきましては、当社で出版のご支援をしますので、一度、ご検討願えませんか。
というものやった。
唯一、雑誌社からの取材を受けたのが、その週間ダイヤモンド誌やった。
その時の経緯は、「第83回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『週間ダイヤモンド』誌への掲載で思うこと」にあるから、サイトのバックナンバーからでも見て貰えたら、その詳しいことが分かると思う。
週間ダイヤモンド誌というのは、書店売上NO.1のビジネス週刊誌との定評がある。
それを見てというのなら、そういうこともあると頷ける。
ハカセも、悪い話やないと思い、その後、何度かメールのやりとりをし、大阪で落ち合うことになった。
その打ち合わせの様子を帰ってきてから尋ねた。
「どうやった?」
「話にならないですね」
少し、むくれた様子でハカセがそう吐き捨てた。
「もっとも、ある程度、予想はしていたことですけどね」
その出版社の名前自体はハカセも聞いたことがあるという。
全国紙の広告欄にもその出版社の広告がある。
それでも、ハカセは、その出版社を一応は調べた。相手の話だけを聞いて鵜呑みにするほどのお人好しでもないさかいな。
ハカセは、その出版社が、どういう本を出版しているかと調べた。それだけでも、かなりのことが分かるということや。
まず、得意分野である小説からやった。
ネットで見る限り、ここから、出版されとる作家に有名どころがほとんど見当たらんかった。というか、ハカセの知らん人間ばかりやったという。
それを見れば、有名作家に相手にされてないか、もしくは、本を売ることにそれほど執着のない出版社という見方ができる。
結果的に、これについては、ハカセの見方が正しかったことになる。
次に、新聞業界関係の暴露的な内容を扱った書籍があるのかという点にも目を向けた。
それが、あれば、少なくとも、サイトへの理解があっての誘いやと納得もできる。
それも、まったくない。
それなら、なぜ、ハカセに声をかけたのかという疑問が湧くが、それも後になって簡単に説明がついた。
その出版社のサイトを良く見ると、どうやら出版希望の人間を集めて、出版させるのが目的らしいと分かった。
そのことを、メールで問い質したが、詳しくは会ってからでないと言えないという。社外秘事項が含まれとるかららしい。
それで、その不信感はさらに増大したのやが、話は聞いてみても損はないと思い、その招きに応じたということや。
これは、ハカセのように物を書く人間にとっては大切な姿勢でもある。
例え胡散臭いことであっても、その実態をさぐる機会があれば、逃がすべきやない。
つまり、半分は取材やと思えばええわけや。
会ってすぐ、その出版社のヤガミと名乗った担当者は「白塚様のホームページを本にして出版しませんか」と持ちかけてきた。
「それは、いいですけど、私に原稿依頼をするということですか?」
「いえ、当社と白塚様とで協力して出版しようということです」
「協力?」
「ええ、当社と白塚様とで費用を分担して出版するというシステムがあるんです」
どうやら制作・販売・宣伝に要する費用を双方で分担して、本を出版しようということらしい。
「要するに自費出版しろということですか?」
「いえ、それとは少し違います。自費出版は、著者の方がすべてを負担して、販売までする必要がありますが、私どもは、原稿の作成から販売までを一環して、ご協力をしようというものです」
「具体的には、どうするわけです?」
「まず、出版する本の体裁と出版部数を決めて頂き、それに比例した委託金を収めてもらいます」
いよいよ、怪しさを増してきたとハカセは思うたが、わざとそれに乗る素振りを見せた。
ヤガミは、その見本となる本を示して、それぞれ説明を加えた。
基本は、初版で最低500部からということらしい。
「このタイプやと、私はどの程度、その委託金とやらが必要なんですか」
ハカセがそう言うて手にした見本は、ソフトカバーで書店に一般的良く並べられているものやった。200ページほどの厚みがある。
「これですと、500部の場合で、企画費、管理費、印刷・製本費、編集・校正・デザイン費で、計210万円ほどになります。税別ですが」
ヤガミは素早く電卓を叩いてそう告げた。
「210万円? 500部でそんなにかかるんですか?」
そうだとすると、単純に計算して1冊作るのに4200円はかかることになる。
しかも、それは、出版社と折半してということなら、1冊に対して8400円もの費用がかかることになる。
いくら何でも、それは考えにくい。
「この見本の定価は1700円ですよね。これだと、全部売れても赤字になりますよ。それでは、そちらも損でしょう?」
「ええ、そうですが……」
ハカセの突っ込み口調の質問に、ヤガミの声が急にトーンダウンした。
「しかし、それは、再版することによって利益を出せればいいと当社は考えてますので」
「では、再版のときは、どうなるのですか?」
「それは、そのケースでいろいろあります」
「ということは、こちらの負担金がまだ必要ということですか?」
「いえ、刊行時から1年以内に増刷が決定すれば制作費は当社の全額負担で行います。但し、1年以降に増刷が決まればご相談させて頂くことになりますが」
「それで、どの程度、売れたら利益が出るようになるのですか?」
「最低、3000部ほどからだと思います」
「それで、私の方へはいくら入るのです?」
「それについては、増刷時に本の定価の7%の印税をお支払いします」
「私の本の定価は?」
「白塚様の本は、専門書になりますので、2000円くらいかと」
「それは高い!!」と、思わず叫びそうになった。
そんな値段では売れるもんも売れん。その言葉を、ハカセは必死に呑み込んだ。
この頃になると、ハカセは、すでに本を出すという目的やなく、この出版社の実態が知りたくなっていた。
せやから、その質問を慎重に選んだ。
「私も本を出したいとは思っているんですが……」と未練たっぷりに言うてみた。
すると、てきめんにヤガミは食いついてきた。
「白塚様の出版されることについてのメリットですが、当然ながら出版とは多数の人に著者のかたの主張、思想を届けることが大前提です」
急に雄弁になった。おそらく、これはセールス・トークの一環やろうと思う。
「著者の方に入る収入は、プロ・アマ問わずに印税となります。よって、委託金の額からしても出版での収入のメリットは、大変低いものです。そのことは、ご承知おきください」
ヤガミは、ハカセのことを何も知らん素人と思うとる。
『著者の方に入る収入は、プロ・アマ問わずに印税となります』というのは、所定の原稿料を貰って、尚かつ、その本が出版された場合に支払われるものや。
当然やが、著者は一銭も負担することはない。
双方の出資で出版しようというからには、リスクもお互いが負う必要もあるが、それで売れ上げたものは、その制作費を差し引いた利益が折半にならなおかしい。
素人相手に印税を持ち出せば簡単にごまかせると思うとる。
もっとも、そんなことを指摘しても無駄やし、意味がないがな。こういう人間は、都合が悪くなると貝になるだけや。
「分かりました。最後に聞きたいのですが、本の販売方法はどうなっています?」
「当社では、主要な書店と契約していまして、当社で出版して頂くと必ず、それらの書店に並ぶことになっています」
「そうですか」
これ以上の話は、ハカセも必要ないということで、「考えておきます」とだけ言うて別れた。
何のことはない。ヤガミは、ホームページに惹かれてメールを寄越してきたわけやない。
単に客を探す目的でその雑誌に目が止まっただけのことやったわけや。
そのヤガミの言うてることは、おそらく大半が嘘か、ええ加減な話やとワシも思う。
特に『当社と白塚様とで費用を分担して出版する』というくだりはな。
費用は、すべてハカセ持ちや。
それだけやなく、その出版社の利益もすべてハカセから徴収する金の中に含まれとるはずや。
本が売れようとどうしようと関係ない。ほとんどは、売れるわけはないと考えとるはずやから、増刷なんかよほどのケース以外ないに等しいと思う。
ハカセに出版を決意させることが、ヤガミの営業のすべてやさかいな。
ハカセも早い段階で、それと見抜いていた。
ヤガミは出版社の人間を名乗っとるが、文章についての知識は皆無やった。意識的にその話題を避けとったさかいな。
普通、出版社を名乗り、出版本の打診をするのやったら、「ホームページも大変面白く情報量が豊富で驚きました」というコメントだけというのは頂けん。
具体的に、どの部分を本にするか、あるいは、こういうものにした方が面白いというくらいの提案がなかっら話にもならん。
出版社の編集者なら必ず言うことや。それがない。
出版させるだけが目的の営業マンというのなら、それも納得やけどな。
ハカセから見たら、こういう出版社は論外ということになるけど、純粋に本だけを出したい人間には、それなりにメリットがあるのかも知れん。
普通、いくら本が出したいと考えても、まったくの素人ではその方法すら分からんやろうからな。
販売目的や儲けを度外視して、少々金がかかっても単純に本が出したいだけなら、こういう出版社もそれなりに利用価値があるとは思う。
ただ、こういう出版社に、編集や校正、デザインまで任せるというのは、よした方がええと、ハカセは言う。
そらそうやわな。目的が、本の販売にあるわけやないから、中身なんかより、本としての体裁が仕上がったらそれでええと考えとるだけや。
そんな出版社で作っても、ろくなもんができるはずがない。
素人のワシでもそう思うで。ほんま。
その後、ハカセは、この手の出版社がネットに結構、存在しとるのを知った。
そして、それに対する批判記事が多いことも分かった。
その中で、ヤガミが言うてた、特定の書店と提携しとるということに書かれとるものもあった。
それによると、単に専用の「棚」を借りとるだけということのようやった。
当たり前やが、書店に置くのと、売れるというのはまったく別のことや。
そうして出版した本の多くは売れることもなく、1〜2週間程度で、その棚から撤去されるという。
次の客の本を並べるためにな。
もし、そういうことを考えている読者がおられるのなら、悪いことは言わん。良う考えることや。
「しかし、お陰で、自費出版の道を模索できましたよ」
ハカセも、うすうす、サイトの内容を商業出版するのは難しいやろなとは気づいていた。
待っても、おそらく、どこからも商業出版の声がかかることはないと。もちろん、企画として持ち込んでもはねられる確率が高い。
ハカセが、それまで行動を起こさんかった理由がそこにある。
それなら、本当に自分で本を作って売ればどうやろうと考えた。
その本の印刷と出版だけを頼める出版社を探す。それやったら、何とかなる気がする。
今回のことは、それを考えるきっかけになったのやから、そういう意味では良かったということになる。
そして、自費出版だけを頼める出版社を見つけることができた。
それが、今回の顛末や。
ただ、これからせなあかんことが山積みしとる。
販売方法も決めなあかん。それが決まらな、肝心の本の値段すら決められん。
もちろん、本の宣伝も必要やろうと思う。
今回のメルマガでは、残念やが、まだこの程度のことしか話せん。
もう少ししたら、もっと具体的なこともはっきりするから、いずれ、このメルマガで発表することになると思う。
取りあえず、今回は、本を出すことになったとだけ言うておく
Part 2 厳しい出版業界へ続く
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