メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第1回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2008.6.13
■新聞拡張員と売れない物書きの話
ワシの名前はゲン。仕事は新聞拡張員。新聞業界内では、少しは知られた存在の男でもある。
新聞拡張員というのを知らない人のために簡単に説明しとく。
新聞社、新聞販売店の指示や依頼で、ある特定の新聞を勧誘する人間のことを、一般的にそう呼ぶ。
多くは拡張団と呼ばれる新聞専門の営業会社に所属している。
もっとも、4、5年前から業界内では、新聞各社からの通達で拡張員のことを、「セールス・スタッフ」と呼ばせとるがな。
単に「セールス」と言う場合もある。因みに拡張団は「セールス・チーム」や。
しかし、その言い方は未だに一般的とは言い難く認知もされとらんように思う。
今のところ業界内だけで通用する呼び名にすぎんようや。
まあ、60数年もの長きに渡り、「拡張員」と呼び習わされてきたわけやから無理もないけどな。
業界内ですら、未だに抵抗感を示す者も多い。公にそう言うて反旗を翻(ひるがえ)すことはないがな。
新聞社がそうするのは、その評判が著しく悪いからということに尽きると思う。
そのイメージを刷新するために、そう言い換えさせとるわけや。
呼び名を変えることで、イメージの一新を図ろうとするのは新聞社に限らず、多くの企業の常套手段として良く使われる、ありがちな手法ではある。
芸がないというか、それしか思いつかんのやろうな。
ただ、そうしても、その「セールス・スタッフ」という呼び名自体が一般に浸透してないわけやから、実質的なイメージの刷新になっとるのかどうかは怪しい限りやけどな。
そういうこともあり、このメルマガでは一般的に認知されとる「拡張員」という言い方の方を採用して、話を進めることにしたいと思う。
拡張員というのは、新聞を売り込む営業員ということなんやが、先にも言うたように世間的な評価や評判はあまり良くない。
特にネット上でのそれは最悪やと言える。
ワシら拡張員に好意的なHPやブログは皆無に等しいし、掲示板への書き込みも熾烈(しれつ)を極めたものが多い。
人気のないこと夥(おびただ)しい限りや。
もっとも、それにはそれ相当の歴史と理由があるわけやけどな。
多くは、勧誘のやり方にその原因がある。
脅しや脅迫まがいの方法で契約を迫る者。あらゆる嘘や騙しを駆使して契約を取ろうとする者。人の都合を無視するしつこい勧誘を続ける者などなど。
その非を書き連ねたらキリがないほどある。
一度でも、そういった拡張員と遭遇して、えらいめ遭うたと感じた人は、当然のことながら、ええ印象を持つことはない。
人によれば嫌悪するし、毛嫌いもする。また、腹を立て怒る人もおる。
そういう人たちの鬱憤(うっぷん)のはけ口にそういったHPやブログ、あるいは掲示板への書き込みがある。
そこには、拡張員がいかに極悪非道な存在であるかということが、数多く書きつづられている。
それらを目にする人は、それが拡張員のすべてと思い、信じ込む。
確かに、そこで語られているような拡張員が存在するのは確かや。ろくでもない奴もおる。それは否定できん。
しかし、それでもあえて言う。それがすべてやないと。
拡張員と呼ばれる者には、まじめな人間も多い。むしろ、今はその方が、全体からすれば大勢を占めとると断言できる。
ただ、そういう比較的まじめな拡張員は、人を脅かすこともなければ、騙すようなこともせん。
勧誘を断わられれば、それほど粘ることもなく引き下がる者が大半や。
しかし、そういう拡張員が、その批判的なHPやブログ、あるいは掲示板に登場して、それと語られることはほとんどない。
あるとすれば、「オレはこうして拡張員を追い返した」という武勇伝の相手として登場するくらいなものやと思う。
簡単に引き下がる人間を追い返したところで武勇伝にはならんのやけど、イメージが悪い分、それを見る者はそれで納得すると、書き込む者は考えるのやろうな。
彼らにとって、拡張員とは悪の存在でなければならんわけや。
一般からそう思われても仕方のない部分があるのは承知の上で、あえて言わせて貰いたい。
ワシら拡張員も一般人と何ら変わりのない普通の人間なんやと。
人は、その人間を評価するとき、多くはその職業で判断する場合が多い。社会的な地位というのも、それでほぼ決定される。
職業に貴賎はないと言うが、あれは嘘や。そうやったらええなという希望的観測で言われとることにすぎんと思う。
そういう職業差別のようなものは歴然として、この日本に存在しとると、ワシは確信する。
ワシら拡張員は、何も悪さをしていなくても、それと知られるだけで、ええように見られることはまずない。
そういう偏見の目で見る者は、間違いなく拡張員を胡散臭い人間やと見る。
人によれば蛇蝎(だかつ)の如き忌み嫌う。それと口に出さずとも、ワシら拡張員は、そういう視線を常に浴び続けてとるから良う分かる。
これが裁判官や弁護士、医者といった職業の人間なら、無条件に尊敬のまなざしが向けられる。
しかし、そういう人間やからと言うて、ええ人間ばかりとは限らんのやで。
そういう連中でも犯罪を犯す者はナンボでもおる。一々あげつらえたらキリがないほどにな。
もっとも、例えそうやとしても、誰も裁判官や弁護士、医者が極悪非道な仕事とは言わんし、思わん。
たまたま、その犯罪を犯した者が悪辣な人間やったと思われる程度で済む。
ワシらへの見方とはえらい違いや。
何かの事件を引き起こせば、「それ見たことか、拡張員は最悪な連中や」と、拡張員全体が、そう思われやり玉に上げられる。
悪事への批判は、あくまでもそれを引き起こした個人に向けられなあかんと思うのやが、事、拡張員に限っては違うわけや。ワシの僻(ひが)みやろうか。
それに対して、ワシだけは違うと声を張り上げても、誰もそうは思わんし、むなしいだけや。
例え、どんな事情からにせよ、この仕事を選んだ限りは、そういうことも覚悟しとかなあかん。
それが、この仕事の哀しい宿命なんやと。
それがどんなに、理不尽で不条理なことやとしてもな。世の中には、そういう仕事もあるということや。
このへんで止めとこ。考えれば考えるほど気持ちが滅入ってきそうやさかいな。
そんなやりきれん思いでいた、ある日、あることがきっかけで一人の男と知り合うことになった。(注1.巻末参考ページ参照)
もう、かれこれ5年以上も前のことになる。
その男の名前をハカセという。
白塚博士(しらつか ひろし)というのが、その名前やが、ワシが「ハカセ」と呼んだことで、ネット上でそれをハンドルネームにしとる男や。
売れない物書きを自称しとる男やった。
若い頃、小説家を目指して本格的に文章修行をした時期もあったという。
結局、才能と運に恵まれず目が出ないまま、結婚を機にその道をあきらめた。
もう、30年近く昔の話になる。
それが、10年ほど前に、心筋梗塞を引き起こして生死の境を彷徨い、奇跡的に生還したということがあった。
それ以降、身体的に普通の仕事ができんようになったということもあり、またぞろ、その世界に身を投じることにしたのやと言う。
今度は、希望に夢を膨らませてというのやなく、他にすることが思いつかんかったからということやった。
売れない物書きと自分で言うだけあって、あまり金になることはないようや。
作家になれば大金が稼げると考えている一般の人は多いと思うが、実際には、そんな甘いもんやない。
そこそこ名の売れたプロ作家でも食うのがやっと、というのが多いと聞くからな。
作家の収入は、主に原稿料と印税ということになる。
原稿料は原稿用紙1枚につき1000円〜20000円程度までと、作家の知名度の違いや雑誌、専門誌のレベルなどによっても大きな差がある。
雑誌や文芸誌のコラム、小説の連載やと、原稿用紙1枚につき1000円〜5000円ぐらいが相場やとされとる。
平均的には原稿用紙1枚につき3000円程度ということらしい。
原稿料だけで食うていくには、月に最低でも100枚は書く必要がある。
それで計算すると3000円×100=300000円ということになる。
1ヶ月の収入としては一見まあまあのようにも思えるが、作家というのは個人事業者やから、そこから、必要経費や税金を払わなあかん。
結局は知れた額の収入にしかならん。
それでも、文芸誌の小説連載などの場合、いずれ一冊の本として出版することが多いから、そのプラスアルファーとしての印税収入は見込める。
印税収入も作家によってかなり違う。本の価格の5%〜15%までと幅が広い。
業界に精通しとる人間に聞くと、作家の平均年収は300万円程度やという。一般のサラリーマンよりもはるかに下回る。
もちろん、それが平均やからそれ以下という人間も相当数いとる。
売れずに廃業するか、それでもいつか売れると信じて頑張るかのいずれかになる。
一発当たって100万部売れるという大ヒットにでもなれば、数千万円単位の儲けになることもある。
売れない作家はそれを夢見る。
それでも、ちょっと昔、バブルが崩壊する以前の出版業界が隆盛を誇り、華やかかりしやった頃なら、そういうのも結構あった。
どこかの新人賞をとった無名の若者が一躍売れっ子作家になるというのも、それほど珍しくもなかったさかいな。
今は、その頃と比べると業界全体がかなり落ち込み冷え込んでいる。出版業界にとっては冬の時代やと言うてもええ。
いくら実力があろうと、無名の人間の作品が売れるというのはなかなか難しい状況にある。
現在、出版業界は、有名人、著名人に出版依頼が集中しとる。または売れる話題を持っとる人間なんかやな。
文章力であるとか、表現力ということは、昔ほど評価はされとらんわけや。
当然のように、新しい才能を発掘して作家を育てるという出版社も少なくなった。
新人も、即戦力になると判断されん限り、興味の対象にすらならんさかいな。
ハカセが、ある出版社の人間に聞いた話やと、発掘した新人作家で利益に結びつくようになるのは、そこそこ売れる作品が5、6作ほど続いた後からやという。
それまでは、その作家を売り込むためにかけた宣伝費すら回収できんということらしい。
勢い、その門戸は狭く、例えくぐり抜けても金になることは少ない業界やということや。
「もっとも、私の場合はその作家と呼ばれることすらありません。書くことで、いくばくかの報酬を手にすることがあるので、物書きを自称しているだけにすぎませんから」と自嘲的に言う。
それでも、ハカセ本人は、好きなことができるというだけで、結構、現状に満足はしとるようやがな。
そんなハカセと知り合って間もない頃のある日、何を思うたか「ゲンさんの話は面白いからインターネットで公開しようと思うんだけど構わないかな」と急に言い出した。
「インターネット?」
その当時のワシは、そんな世界のことなんか考えたこともなかった。
パソコンは異星人のするもんやと思うてたさかいな。
少なくとも、そこで使われとる言語は、とても人間のそれとはワシには思えん。
あまりにも、わけの分からん言葉が多すぎる。
以前、「ウインド(窓)を開いて」と言われて、中年の男が本当に家の窓を開けるという、とぼけた笑いを誘うテレビCMが放映されてが、ワシにとって、あれはとても笑い飛ばせるものやなかった。
その当時、同じことを言われてたら、本当にそうしたかも知れんからな。
「ええ、ホームページです」
「何や、それ?」
「早い話がそこに、ゲンさんの話を載せて、広く一般に公開しようということです」
そうすることで、ワシの話が、日本全国、いや理論的には世界中に流れるということらしい。
「それで、ワシはどうしたらええんや?」
「ゲンさんは、ただ、この業界やそれにまつわる話について知っていることを、私に教えてくれるだけでいいですから」
ハカセが、ワシの話を聞いて書き、それをホームページとやらに掲載するということらしい。
「どんな話でもええのか?」
「ええ」
「つまり、言いたいことが言えると」
「ええ」
そらええな。素直にそう思うた。
世間の認識まで変えようとは思わんが、言いたいことを言えるというのはええことや。
それが誰かに届くというのも悪くはない。
それまでのワシの拡張員人生10年で培った手口、いや、ノウハウと情報を徹底的にハカセに話すことにした。
ワシは告白めいて拡張の話をするつもりはない。
結果として、拡張員の悪事を暴くことにはなるやろうが、それによって世の善良な新聞読者を救おうやなんて大それた気もない。
それどころか、「こんなえげつない新聞読者もいてんのやで」ということも話すつもりやった。
事実、そうした。
当たり前やが、悪辣な人間は何も拡張員ばかりやない。
ワシらが毎日、叩い(訪問)とる客の中にも、それはそれはえげつない奴もおるさかいな。
すぐに引っ越しするのが分かってて契約し、拡材(契約時のサービス品)だけ取ってドロンする奴。何ヶ月も新聞代を溜めて最初から払う気のない者。勧誘に行って、いきなり木刀を持って襲いかかってくる狂った人間などなど。
こちらも挙げたらキリがないほど多い。
一般読者の中には拡張員を怖がる人もおられるようやが、拡張員にしても行った先でどんな人間と遭遇するか分からんから怖いのは一緒なんや。
一般読者なら、居留守を使ってやり過ごすということも可能やが、ワシら拡張員はそれが仕事やから、例え、どんなめに遭おうとも行くしかないわけや。
拡張員の側からのそうした事実がネット上ではほとんどないから、一般にそれと知られることもない。
しかし、人間の世界には、どこにでも、ええ者もおれば、悪辣な輩もおる。それに一切の例外はないとワシは信じとる。
そういうことを好きなだけ言えるというのやから、こんなええ話はないと思うたわけや。
それについて、どう思うか、考えるかの判断や評価は、それを見ることになる暇な読者が下せばええことやしな。
せやけど……。
「誰が、そんなホームページとやらを見るんや?」
ごく初歩的な疑問が湧いた。
ホームページを公開したことで日本中、あるいは世界中で閲覧可能になったとしても、それで見て貰えることが保証されたわけやない。
単純に考えて、拡張員の悪行の数々をあげつらったサイトやブログ、掲示板などが多いのは、その方が、多くの人間の共感を呼べて、面白いからやないのかと思う。
それに比べて、「中には、こんなええ拡張員もいてまっせ」てなことを言う拡張員のホームページなんか誰が見て共感するというのやろうか。
そんなものは一笑に付されるだけやろ。閑古鳥が鳴くのが関の山やと、そのときはそう考えた。
誰も見るはずがないと。
それが、すぐに杞憂(きゆう)やと分かった。
そして、ハカセという男を見くびりすぎていたと知った。
4年前の2004年7月3日に、ホームページ『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』を開設した3日後、いきなり800を越えるアクセスがあった。
一般的に、無名の素人のホームページで1日100のアクセスがあれば人気のあるサイトと言われるということからしても、異常に多い数字や。
何かの話題にでも上っていたというのなら、そういうこともあるかも知れんが、そんなものは一切ない。
原因が、大手検索サイトGoogle において、「新聞拡張員」のキーワードでいきなり第一位になっていたからやったということが分かった。
その1ヶ月後、Yahoo!トピックスに紹介されたことで、その認知度はさらに上がることになった。
その後、なぜか、そのYahoo!Japan
からは格別の扱いを受けるようになる。
「新聞拡張員」のキーワードで検索すると、2008年6月12日現在、160万件ほどのページがヒットする。
その順位が1位というだけやなく、「登録サイト」として表示されるのは、そのホームページ「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」1件のみになっている。
サイトを開設して僅か1ヶ月余りでそうなった。
これは、人によれば宝くじの1等に当たったくらい凄いことなのやと言う。誰にでも起きるということやないと。
実際、いくら金をかけてもYahoo!Japan の「登録サイト」として登録されること自体難しいというのが、それを専門とするSEO関係者の常識らしい。
普通は、Yahoo!Japanの検索ページで順位を一つ上げるのでも、相当な金をかける場合があるということや。
しかし、ハカセは、そのために金はおろか、何の手間もかけていない。
ハカセがやったことと言えば、HPを立ち上げたときに、そのソフトの指示通りに一度だけ大手検索サイトに登録する作業というのをしただけや。
それ以外には何もしていない。
その中に、Yahoo!Japan
やGoogle
が含まれていたということになる。
勝手にと言うと語弊があるかも知れんが、いつの間にかそうなっていたというのが実状なわけや。
そのせいも大きいと思うが、サイト内のページが、Yahoo!Japanを始めとする大手検索ポータルサイトで上位に表示されることが多い。
そのおかげもあって、ホームページへのアクセス数も順調に増えていった。
現在までのアクセスカウンターの表示は78万以上ある。1日平均、500以上。
頂いたメールの総数は1万5千通を越えた。こちらは1日平均、10通強になる。
もちろん、これは迷惑メールなどを除外した数字や。そんなものを入れたら計測不能になるさかいな。
この数字が多いか少ないかは意見の分かれるところやとは思うが、今や、この業界での知名度はかなり高いものになったのだけは確かやと言える。
冒頭で、『新聞業界内では、少しは知られた存在の男でもある』と言うたのは、それがあるからや。
また、実際にもそれと実感できることも多い。
拡張員同士や販売店などで、そのホームページやワシのことが話題になることが多いさかいな。
もっとも、「ゲン」というのはハンドルネームで、実際にはそう呼ばれとるわけやないから、ワシの正体がそれとは誰も知らんがな。
これだけを見ると、単に運が良かっただけと思われるかも知れんが、ハカセを知るワシとしては、とてもそういう見方はできん。
むしろ、そうなるのが必然やったとさえ思える。
それは、奴さんの姿勢にある。
ハカセは、思いついてすぐポームページを立ち上げたわけやない。
そうしたのは、構想が決まって半年以上が経ってからやった。
その間、ハカセは、何を血迷うたか、実際にしばらくの間、拡張員の仕事をすると言い出した。
ハカセ曰く「物書きが、それを書くために取材をするのは当然なのですが、私は、ただそれを聞き語りで済ますのでは説得力のあるものは書けないと思っています。それを熟知するには、やはり経験することが一番ですからね」ということらしい。
また、そうすることで「ゲンさんの言われることを理解でき、読者に伝えられると思いますので」と言う。
切羽詰まって拡張員をする者は何人も見てきたが、ハカセのような動機で例え短期間にせよ、そうするという人間と出会ったことはなかった。
もっとも、そうは言うても、所詮、素人のすることやから、すぐに音を上げて、泣きが入るやろうと思うてた。
それがついになかった。
実際、拡張員のとしてのレベルも相当な域に達したと認めてもええほどに、仕事そのものを熟知して自分のものにしていた。
「先生の教えがいいからですよ」
「それは違う。あんたの力や」
これは、ワシの正直な気持ちやった。
この拡張の仕事は、誰でも始められるが、誰でも成功するとは限らん。また、どんなに教えても身につくというもんでもない。
向き不向きや持って生まれた才能、性質によっても大きく左右される。
加えて、それに取り組もうとする意気込みの強さも不可欠な要素となる。
そのハカセの意気込みには、ある種、鬼気迫るものがあった。
後日、ハカセ自身の口から、「これをやり遂げることが、私がこの世で遺せる唯一のことだとまで考えてましたから」というほどの思い込みがあったと聞かされた。
大袈裟やなく、文字通り命がけやったわけや。
それだけの思いで書いたものが、人の心を打たんわけがない。
加えて、本格的な文章修行から得た技術的な文章テクニックがあったこともそうやし、全編関西弁にして面白く分かりやすい構成にしたということも大きいと思う。
いくら、大手のポータルサイトで上位にランクされていようと、一度見て面白くないと思われてしまえば、それまでや。
そんなものに、これほど長期間に渡って、安定したアクセスやメールが届くことはない。
さらに言えば、その大手ポータルサイトであるYahoo!Japan のネット担当者にしても、それを見て少なからず共感されたからこそ、そういう扱いをしたと思う。
ええものを書けば、人は自然に集まる。その思いで、地道に続けてきた結果が今やということになる。
「それだけでは、ないと思いますよ」
ハカセは、この新聞の勧誘業界が、一般ではあまり知られない世界やということも大きな要因やと言う。
人が興味を惹くとか面白いと思うのは、その世界のことを良う知らんからやということがある。
つまり、根本はその題材やったということになる。目のつけどころが良かったということやな。
ワシら業界の人間にとっては、そこで語られているのは当たり前のことなんやが、それを見る人にすれば面白く感じられるわけや。
現在、ホームページには、新聞拡張団、新聞販売店などの勧誘業界だけにとどまらず、新聞本社関係者など非常に多くの方々から日々数多くの業界情報が寄せられてくる。
もちろん、一般読者からの勧誘員や販売店などに関係した情報や話も多い。
それらの中には、ほんまかいなと思えるものも数多く存在する。
なんちゅうこっちゃねんと憤るものもあれば、ほろっとくる心温まる話もある。
実に様々や。
迂闊(うかつ)に公表はできんなというものもあるが、それなりの精査、裏付けをした上で、このメルマガ誌上に、それらの話をして行きたいと思う。
また、そういう話は、このメルマガ以外ではできんとも考えとる。
もっとも、それには、その情報提供者が特定されんような配慮をするために、多少のフィクションを加えたり、物語風にしたりということはあるがな。
ホームページ上でも良く言うてることやけど、ワシらは業界の暴露や他者への批判が目的でやってるわけやない。
悪い事は、例え身内の業界内のことであってもそれと伝え、ええと思えるものはアピールしていきたいと思うとるだけのことや。
何でもそうやが、認めるべきところを認め、その上で主張したいことを言わん限り、誰も納得せんし、耳を傾けることもないさかいな。
ただ、この新聞業界は昔から、あまりにもタブーやアンタッチャブルな面が多すぎたのは確かやと思う。
それを話すことが暴露になると言われれば、確かにそうかも知れんが、それは、あくまでもこの業界に良うなってほしいとの思いがあるから、そうするわけや。
それ以外に他意はない。
このメルマガの『創刊準備号』でも、ハカセが知らせてたと思うが、このメルマガは旧メルマガ『新聞拡張員ゲンさんの裏話』(注2.巻末参考ページ参照)の続編とも言うべきものや。
そのバージョンアップ版として頑張るつもりやさかい、これから期待して頂きたいと思う。
参考ページ
注1.新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第2話 男の出会い
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage8-2.html ……ゲンさんとハカセの壮絶な出会いの話
注2.メールマガジン・新聞拡張員ゲンさんの裏話・バックナンバー
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage13.html ……過去ログとして200回分収録
書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』好評販売中
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