メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第101回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2010.5.14


■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について


ある程度、予測していたことではあるが、やはり、前回のメルマガ(注1.巻末参考ページ参照)の中で、民主党幹事長、小沢一郎氏の検察審査会による「起訴相当」決定について言及したことへの反響は大きかった。

その掲載をした時点で、ある程度の覚悟はできていた。

ワシらには、そんな気はさらさらなかったが、見方によれば小沢一郎氏擁護と受け取られても仕方のない内容やったさかい、風当たりも相当にきついやろうと。

もっとも、例え、どんな意見が寄せられようと、すべて受け止める気ではいてたがな。

このメルマガで言うたことには、それなりの責任が伴う。その覚悟は常にできとるつもりや。

この件でワシらが言いたい事は、ただ一つ。

新聞やテレビで報道するのなら、正しい、間違いのない報道をしてほしいということだけや。

せやないと、ワシらが長年、このメルマガで「新聞は他のどの媒体よりも信用できる」と言うてきたことが根底から揺らいでしまうさかいな。

世間の認識以前に、ワシら自身が「新聞」そのものを信用できんようになったんでは話にならんわな。

このままやと、そうなりかねん。

この問題は、過去、新聞が冒したどの過ちよりも大きな過ち、失態になると考える。

その意図がなかったとしても、結果として、この件で一人の有力政治家が社会から抹殺されようとしているのは確かや。

新聞はそれに荷担していることになる。

それも本来、罪に問われるはずのない罪を捏造され、「えん罪」として。

調べれば調べるほど、その感が強い。

前回、いみじくも『新聞は世論を誘導したという分かりやすい事例として、この問題が長く語り継がれることになるかも知れん』と、ワシが言うてたことが現実味を帯びてきたと言うしかないほどに。

大袈裟に言えば、この問題はそれくらい大きな出来事やと思う。

しかし、まだ世の中の多くの人たちは、この問題の本質、実態を知らずにいる。

そう考えていた。

それ故、辛辣な意見が多く届くものと覚悟していたわけや。

しかし、その予想に反して否定的な意見は今のところ、まだ何もない。

むしろ、その記述に賛同するような意見ばかりが届いている。

ここで、それを紹介する。


投稿者 Jさん  投稿日時 2010.5. 7 AM 11:24


私も「小沢報道」については、いつの間にか、メディアに先入観を擦り込まれてしまっていたようです。

もっとも、ハカセさんらがおっしゃっているように、「小沢氏はシロ」という方の情報を精査する必要がありますが。

実は、「自分だけはメディアにそそのかされるものか!売らんがための報道手法にはうんざり。」と、日頃から思っていたのにです。

これは私の中で、「テレビ(民放)と週刊誌は信用できないが、新聞は信用できる」という線引きが無意識に行なわれていたため、新聞の内容がスルーされてしまっていたのが原因だと自己分析しています。

嘘を書くのは以ての外ですが、「真実の一部を書かないでおく」ことは新聞の常套テクニックとして使われていることでしょう。

後で第三者からそれを追及されたとしても、「その時は知らなかったんだ」という言い訳ができますからね。

映画「クライマーズハイ」にあった、編集部内でのカンカンガクガクの駆け引きなんかも、実際の新聞社の中でも日常的にあるのかもしれませんが、ともかく、そういうリテラシー(かんぐり力)をもっと鍛えないといけないと思った次第です。


投稿者 Y.Mさん  投稿日時 2010.5. 7 PM 3:18


ゲンさんの話で、新聞やテレビの情報だけを鵜呑みにしてはダメだというのが良く分かりました。

僕もなんとなく小沢一郎は悪と考えていましたが、それは新聞やテレビの情報を鵜呑みにした結果だと知りました。

この問題についての続編を期待しています。


投稿者 Mさん  投稿日時 2010.5. 7 PM 5:51


私も、今回のメルマガでゲンさんが「知らず知らずのうちに、その検察審査会の人たちは、それらの報道に染まっていた、誘導されていた」と言っておられる通りじゃないかと思います。

今回の「起訴相当」の議決をした東京第5検察審査会のメンバーの6人は先月の4月末で6ヶ月の任期満了し、別の6人が新たに選ばれます。

「起訴相当」と議決した事件については、検察は再捜査をしなければなりませんが、それで再び「不起訴」とした場合は、担当検察官に検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与え、審査補助員(弁護士)を必ず付けなければなりません。

次回選ばれる弁護士は今回の「起訴相当」の議決で、検察審査会のメンバーに誘導的な助言したと思われるY弁護士になるとは限りません。

もっと良識のある弁護士が審査補助員につくはずです。

そこで、11人中8人以上の多数でなければ「強制起訴議決」はできない仕組みになっています。

当然ですが、新たに加わった検察審査会のメンバーは最初の「起訴相当」の議決とは異なる判断をしても構いません。

今のままですと、同じ結果が出る場合も考えられますが、人間が入れ替わればまた違った結論が出ることも考えられます。

検察の再捜査期間である3ヶ月の間に世の中の状勢がどう変化するかもわかりません。

現在、新聞やテレビでは「小沢はクロ」的な報道ばかりですが、ネットでは逆に「小沢はシロ」という論調の方が徐々にひろがっています。

まだまだこの先、どうなるかわからないということではないでしょうか。


投稿者 H.Kさん  投稿日時 2010.5. 7 PM 10.16


実は私も新聞に検察審査会に訴えたのが「市民団体」とだけしか記載されていないのが不思議でした。

普通に考えて匿名の市民団体など有り得ないのではないでしょうか。そんなものはあったとしても意味がないでしょう。

ゲンさんの言われるように、その「市民団体」の存在とか実態について新聞社が知らないはずは絶対にないと私も思います。

なぜ堂々と新聞紙面で、その「市民団体」の公表ができないのでしょうか。

そんなことは、ネットで調べれば「在特会(在日特権を許さない市民の会)」という非常に歪んだ「朝鮮半島の方々や中国の方々を排除する」思想の市民団体からの訴えだとすぐわかることです。

これもゲンさんの言われるように、「巨悪を追及する新聞社にとって、マイナスになるような事実と情報は伏せといた方がええ」ということではないかと私も思います。

私は、この検察審査会制度そのものは、そんなに悪い制度とは思いませんが、こんな利用され方をされ、さらに新聞社がそれを利用して報道しているというのは残念でなりません。


投稿者 オガタさん  投稿日時 2010.5. 8 PM 9:31


検察をはじめとする官僚組織や自民党などの旧勢力が最も恐れるのは小沢氏が首相になってしまうことだと思います。

このままだと、西松事件や水谷建設事件の関与だけなら確実に無罪になるでしょう。

そうするとこの冤罪によって代表を辞め総理への道を断たれたということで同情論が湧き小沢氏を首相にと言う声が出ることも十分ありえます。

それは何としても避けたい官僚や旧勢力がメディアを利用して煽るだけ煽っているのではないでしょうか。

小沢氏は豪腕と言われていて、昔から何かと噂の絶えない人ですから、そう煽れば国民の多くは信じるだろうと浅はかにも考えたというのが事の真相のように思います。


投稿者 情報屋さん  投稿日時 2010.5. 9 PM 11:53


そもそも小沢氏は「政治資金規正法」の法律を作った人ですよ。そんな人が、その法律に触れるようなことを果たしてするでしょうか。

新聞には、ただ疑いがあるといった抽象的なことしか書いてなくて、どこのどの部分がどうなっているから罪に当たるということが、まったく書かれていません。

反対に小沢さんが無実だという証拠はネット上に数多く存在します。ちょっと調べればだれにでも判ることですよ。

タイミングがいいことに、メルマガを読ませてもらった5月7日の夜、私がよく見る日テレの「太田光の私が総理大臣になったら」という番組の中で、元検察特捜部検察官の現弁護士、郷原信郎という人が、そのメルマガで言っておられた内容と同じ話をされていました。

郷原信郎さんが言うには「私は小沢さんを擁護するつもりはまったくありません。私はどちらかと言うと小沢さんは嫌いでした。でも検察の問題に関しては言うべきことを言わなければという思いで来ました」ということですから、その話の信憑性も高く、なるほどと納得できる内容のものでした。

というか、メルマガを読んだ後だったから、なおさらそう思ったのかも知れませんが。

ちなみに、現在、その番組の放送は、You Tube でも話題になっています。

小沢『起訴相当』の真相 郷原信郎の爆弾発言
http://tweetbuzz.jp/entry/25807037/www.youtube.com/watch?v=ucJh3LpJkFA

参考までに。


というものや。

先にも言うたように、検察審査会の「起訴相当」決定について支持する意見や新聞記事の正当性を主張する意見は現在に至るまで、ついにサイトに届くことはなかった。

一方的な意見ばかりではあかんと考えるさかい、ネット上で小沢一郎氏への「起訴相当」に正当な理由があると思われている方たちの意見を拾ってみた。

以下は、「小沢幹事長を「起訴相当」と検察審議会が議決 あなたはこの議決をどう思いましたか?」というサイトに投稿されていた中にあったものや。


評価起訴が可能かは別として 極めて妥当な議決と思います。

マスコミ批判をされる意見もあるでしょうが、問題の本質は 石川議員・秘書ら3名が起訴されたにもかかわらず自身は何も説明責任を果たしていない事にあるとおもいます。

会見では、自身が起訴されなかったことで 身の潔白が証明されたかのように言っているが起訴できるだけの証拠が揃わなかっだけの話で、誰も潔白だとは思っていないでしょう。

小沢氏はかつて政党を作っては解散し、その時の政党助成金の扱い、ゼネコンがらみ、大量の不動産、あるいは多額の現金にまつわる疑問について国民が納得できるだけの説明責任を果たす義務があると考えます。

政治家と金にまつわるこれだけの疑惑を野放しにはできないでしょう。

自身が説明責任を果たす気がない以上、法廷で説明するしかないでしょう。


国民の市民感覚は結構鋭いものです。

陸山会の土地購入事件で小沢氏は確認書を偽造して記者会見を行っています。ウソがなければ書類を偽造する必要もないはずです。

小沢氏には西松建設の違法献金、政党交付金の流用、11億とも言われる不動産取得等、あまりにもカネにまつわる問題が絡んでいます。

市民の感覚で起訴相当と判断するのは当然の結果だと思います。

起訴相当と言っても罪を決定したわけでも何でもありません。秘書が逮捕起訴されているのだから、小沢氏の関与を裁判で明確にしようというだけのものです。真実を明らかにしてほしいという素朴な市民の感覚だと思います。

秘書が独断でやった、というのは市民感覚としては到底納得できないものです。

小沢氏は、秘書のやったことであり自分は全く関与していないというのであれば、裁判で堂々と無実を主張べきでしょう。


と、こんな感じのものが多い。

これについての個別のコメントは控える。それぞれの意見なわけやから、それはそれで尊重したいさかいな。

ただ、新聞やテレビ報道での誤った、あるいは不完全な情報を信じた上での発言やと考えるから、ある意味、その方々には気の毒な面があったと思う。

この投稿文を見る限り、見識の高い方々ばかりのようやさかい、よけいそんな気になる。

次は、その新聞記事を紹介する。


http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100427/crm1004272250045-n1.htm より引用


【小沢氏「起訴相当」】「国民感情に沿った決定」と市民団体 別の検察審査会でも審査 2010.4.27 22:49


 東京第5検察審査会が27日に出した議決は、陸山会事件全体のうち、平成16年と17年分の政治資金収支報告書への虚偽記載について出されたものだった。

 これとは別に小沢氏は19年分の虚偽記載についても不起訴処分となっている。こちらは現在、東京第1検察審査会で審査されており、今後の判断が注目される状況となっている。

 19年分については、元公設第1秘書の大久保隆規被告と元秘書の池田光智被告が、小沢氏からの借入金の返済分4億円を収支報告書に記載しなかったなどとされる。

 検察審査会に一連の審査を申し立てた市民団体は27日、「東京地検の不起訴処分は国民の多くが疑問を持っていた。今回の検審の決定は国民感情に沿うものであり評価できる。検察が速やかに起訴することを希望する」とコメントした。


報道は、すべてこういった感じで、肝心の『平成16年と17年分の政治資金収支報告書への虚偽記載について出されたもの』の内容のどこが「虚偽記載」に当たる箇所で何が悪いのかは、どの新聞記事にも触れられていないし、説明もされていない。

その訴えを起こしたという市民団体とやらですら、その詳しい説明をしていない。

もっとも、そうしようにも、できないといった方が正しいのかも知れんがな。

それを法律の素人で構成されている「検察審査会」のメンバーが、審査補助員(弁護士)の助言があったにせよ、「起訴相当」と判断したということになる。

その経緯と根拠は一体何なのか。是非、それを教えてほしい、知りたいもんやと思う。

まあ、おそらくは正しい情報は何一つ知らされてなかったからなのやろうというのは想像つくがな。

知っていれば、少なくとも全員一致でそんな決定が下せるはずがない。

もちろん、ワシがここまで言うからには、それなりの根拠があってのことや。

この問題を調べれば調べるほど、何でこんな決定が全員一致になるのか、それを「国民の総意」でもあるかのように吹聴して報道できるのかが不思議でならん。

国民の多くは、新聞やテレビ報道からの情報のみで判断しとると思われるから無理はないが、それを糾弾する側は、その裏側まで調べて知り尽くしとるはずやのに、それらの事実を完全に無視する愚挙に出たとしかワシには思えん。

事、ここに至っては、「都合の悪い情報は伏せる」というレベルの話やないと考える。

早い話が、目的のためには手段を選ばず何でもするという戦略の一環としか、ワシには見えん。

その目的とは、「小沢一郎」という存在が邪魔で、何としてでも蹴落とし、その政治生命を絶ちたいということやろうと思う。

それが、匿名の市民団体であり、検察であり、それに踊らされた新聞社やないのかと。

加えて、小沢氏の反対勢力の暗躍も十分に考えられる。

おそらく、それを仕掛けとる人間にとっても、この事件程度で小沢一郎氏が罪に問われることなど露ほども考えとらんはずや。

ほぼ100%の確率で無罪放免になる。後日、えん罪やったと知れるのは間違いないと思うさかいな。

それが分かり切っとるからこそ、決定的な敗北を回避するために検察は「不起訴処分」としたわけや。

最後の抵抗として「嫌疑不十分」という一文をつけて。

それに、マスコミも多くの国民も踊らされていることになる。

これは、そんな事案やと思う。

しかし、彼らにとっては、そんなことはどうでもええわけや。

罪に問われるかどうかが問題やなく、その報道をさせることで世論の力を利用して小沢一郎氏への批判を強めさせ、辞任に追い込み、政治生命を絶つことができればそれで十分なはずや。

それが、その目的であり、シナリオのすべてやと考えるさかいな。

そして、それは今までのところ、成功していると言える。

しかし、多くの人が、これから話す事実を知れば、ワシらと同じように必ず、そのおかしさ、異常さに気づくはずや。

それでは、これからその真実に迫りたいと思う。

まず、今回、検察審査会が「起訴相当」とした起訴事実から話す。

政治団体陸山会が2004年の政治資金収支報告書に、小沢氏からの借入金4億円、および土地取得代金の3億5200万円などを記載せず、収支総額に虚偽の記入をしたとされたことが起訴事実となっている。

これについての詳しい内容は、こういった問題の専門家でもある公認会計士、細野祐二氏が2010年2月4日に発表された「細野論文」(注2.巻末参考ページ参照)に、分かりやすい解説があるので、それを引用させて頂く。

1.石川議員は、2004年10月上旬、土地購入のため小沢氏から現金4億円を受領した。

この中から、土地の手付け金1千万円を支払い、残りは同月中旬以降、陸山会の複数の銀行口座に入金した後、一つの口座に集約した。

2.陸山会は2004年10月29日午前、東京都世田谷区の宅地を3億5千万円で購入した。

3.2004年10月29日の土地代金支払いの数時間後、石川議員は他の小沢氏関連の政治団体から陸山会に合計1億8千万円を移し、残っていた資金と合わせて陸山会名義で4億円の定期預金を組んだ。

4.小沢氏は、この定期預金を担保に個人名義で銀行から4億円の融資を受け、同額を陸山会に貸し付けた。

5.2007年に、陸山会は定期貯金を解約し、4億円は小沢氏に返済された。

これが現在判明している事実のすべてやという。

公認会計士、細野祐二氏は、


政治資金収支報告書の虚偽記載というのであるから、本来であれば、この資金移動の事実をどのように政治資金収支報告書に記載しなければならないかという会計上の正解がなくてはならないが、実はこれがない。

信じがたいかもしれないが、検察官も正解を持っていない。

なぜなら、現行の政治資金収支報告書では、単式簿記を前提とした部分的な会計報告書の作成が義務付けられているに過ぎないからである。

中略。(この間、政治資金収支報告書、特定資産・借入書などの詳しいデータが表で示されている)

借入が平成16年で、宅地取得年度の平成17年とずれているのは、購入した不動産の登記が遅れたためとのことであり、こんな事は実務上よくあることで、だからと言ってこれが部分単式簿記上の問題となることはない。

さて、ここで起訴事実は、「陸山会の2004年の政治資金収支報告書に、小沢氏からの借入金4億円、土地購入代金の支出約3億5200万円などを記載せず」となっているのであるから、検察官の主張は次の2点に集約される。

・ 平成16年の資金収支報告書においては、小沢氏からの仮受金4億円を借入金として計上すべきであった

・ 平成17年の資金収支報告書に計上された世田谷の宅地の取得は、平成16年の資金収支報告書に計上されるべきであった

平成16年の資金収支報告書には、小沢氏からの4億円が借入金としてしっかり計上されているのだから、検察官は、この4億円とは別の、例の4億円の仮受金を問題としている。

仮受金ではなく借入金だと言うのである。そんなことをすれば、この年の小沢氏からの借入金は8億円になってしまう。

あの時は、同じ4億円が陸山会の周りをグルグル回っていたに過ぎないのであり、金が回転したからといって4億円の借入金が8億円に化けることなどあり得ない。

既に論証したごとく、10月上旬の小沢氏からの4億円の現金受領は会計上の仮受金であり、仮受金は、現行の政治資金収支報告書上簿外とせざるをえない。

これが法律上認められた部分単式簿記の限界なのであり、なく子も黙る東京地検特捜部といえども、ここに完全複式簿記の正義を押し付ける事はできない。

そこで検察官は、“4億円の現金があって不動産の購入資金が賄えるのに、なぜ利息を払ってまでわざわざ4億円の銀行借入をするのか”と疑問を呈する。

「それは、この現金が人には言えないいかがわしいものだからに違いなく、きっとそこにはゼネコンからの裏献金が含まれているに違いない。宅地の登記を遅らせたのも、4億円の裏金が表に出せないからで、平成16年の4億円の入金が表に出せない以上、同じ年の3億5千万円の出金も表に出せるはずがない。」

これを邪推(じゃすい)に基づく妄想という。

検察庁特捜部の妄想は、5千万円の裏献金という供述を水谷建設から引き出したが、裏づけとなる客観証拠がついてこず、これでは公判維持可能な証拠にはならない。

仮釈放に足摺(あしず)りする服役中の水谷建設幹部をシバキ上げてとった苦心の供述なのであろうが、特捜検察も、莫大な国費を使って無意味なことはやめたほうがいい。

もとより、不動産の購入資金があったからといって、それを使ってしまえば運転資金が枯渇するのであれば、どんな人でも借入れをしたいと思う。

ここで支払われる利息など運転資金枯渇の恐怖に比べればものの数には入らない。

運転資金確保のために利息を払っても借入をするというのは、きわめてまともな事業の常識なのであり、小沢氏は事業家としての常識をもって政治活動を行なっていたに過ぎない。

そんな常識的借入に対して、「利息を損してまで借入をするのはおかしい」などと言いがかりをつけているのは、手厚い身分保障に生きる検察官には運転資金枯渇の恐怖が理解できないからで、ただそれだけのことであろう。

この事件の資金移動を会計的に分析する限り、石川議員以下の3名の被告人は証拠構造上圧倒的に有利であり、それどころか、政治資金規正法が部分単式簿記を前提としている以上、ここには犯罪事実そのものが存在しない。

検察庁特捜部は、「この手の事件では捜査はどうしても供述中心にならざるを得ない。」などと意味不明の訳の分からないことを言っては、現職国会議員を国会会期前に逮捕した。

外部との接触を一切遮断した密室に21日間も監禁して朝から晩まで攻め立てれば、事実にかかわらず人は自白調書に署名する。

足利事件で明らかとなったように、日本の捜査機関による取調べ技術をもってすれば、人を殺してなくとも、「殺したのは実は私です」などと、立派な自白調書が出来上がるのである。

当然のことのように石川議員以下3名は政治資金収支報告書の虚偽記載を認め、本件は自白事件として処理されることになった。

石川議員たちが犯罪事実の存在しない自白調書に署名したのは、そうしなければ何時までたっても保釈が認められないからで、従って、公判が始まれば自白を翻すに決まっている。

ただし、残念ながら、今後の石川議員の裁判において無罪判決が出る可能性は悲しいほど少ないと考えなくてはならない。

部分単式簿記による会計数値という客観証拠と矛盾していても、現行司法では検察官面前調書による自白には、なぜかほぼ絶対的な信用力を認められることになっているからである。

石川議員はあの密室で取られた自白調書の嘘を自ら公判で立証するという、まさに前人未到とも言うべき難行に挑まなくてはならない。

中略。(ここでは鳩山総理の政治資金規正法違反にも触れているので、その部分は割愛させて頂く。但し、本件の論証の補強資料になっているので、興味のある方は本文を読んで頂きたいと思う)

これだけ大騒ぎをして時の最高権力者に捜査の手を伸ばしながら、大山鳴動して秘書3人ではお話にもならない。

しかも小沢氏を1年近く追い回した挙句の不起訴の過程で、検察庁特捜部の「ストーリーを書いてはその筋書きに沿って関係者の自白を強要する」という本当の姿が、マスコミのリーク報道を通じて国民にしっかりとばれてしまった。

検察庁特捜部は、その存在意義とあり方の基本構造が、歴史の審判を受けつつあると考えるべきである。


と、はっきり記されている。

誰が聞いても納得のできる説明やと思う。

はたして、この事実を覆(くつがえ)して、小沢氏を有罪にできるのやろうか。

誰もが優秀と認める東京地検特捜部が、大々的にテレビで報道されていたように大がかりな捜査態勢を布き、ゼネコン各社、および関係者を徹底した家宅捜索までして、相当量の証拠書類を押収しながら、それこそ必死になって捜査していたにも関わらず、結局、土地購入の原資にゼネコンからのヤミ献金が含まれているという事実や証拠は何も見つからんかったわけや。

普通、そこまでして調べて何も出てこんかったものは、その事実がなかったと見るべきやろうと思う。

完全な見込み捜査で失敗やったと。

反対に、小沢氏、および石川議員らが、ほぼ無実やという論証や証拠なら数多くネット上に存在する。(注3.巻末参考ページ参照)

しかし、今更、検察は小沢氏に対して無実とは言えん、言いたくないということで、茶を濁すかのように罪とも言えんような「政治資金収支報告書の虚偽記載」という軽微な罪をデッチ上げ、世間を納得させようとして、この問題の収束を図った。

それがすべての事実やと思う。

それが今、徐々に暴かれつつある。

それ故に細野氏は、『検察庁特捜部は、その存在意義とあり方の基本構造が、歴史の審判を受けつつあると考えるべきである』と結論づけたわけや。

ワシも、この事件がそうなる転機やないかと考える。

ただ、細野氏が指摘されておられるように、『石川議員たちが犯罪事実の存在しない自白調書に署名したという事実で、残念ながら、今後の石川議員の裁判において無罪判決が出る可能性は悲しいほど少ないと考えなくてはならない』というのはもっともな指摘で、謂(い)われもない犯罪が成立する可能性が非常に高いと、ワシも思う。

無茶苦茶な話やが、そういうケースは挙げたらキリがないほど、いくらでもあるさかいな。

余談やが、自身が本当に無実、潔白の場合、警察、検察に対しては絶対に「ウソの自白」をしたらあかんということを、それぞれが肝に銘じてほしいと思う。

細野氏の言われる『外部との接触を一切遮断した密室に21日間も監禁して朝から晩まで攻め立てれば、事実にかかわらず人は自白調書に署名する』というのは事実としてある。

その場を助かりたいために、ほとんどの人がそういう状況に置かれた場合、自白したものは後で覆せばええと、その場は考えてしまうという。

無理もない話やとは思う。

しかし、その場を助かりたいがために、その自白をすれば、今度はその一生が助からんようになる可能性が高い。

例え助かることがあったとしても、多くのえん罪事件がそうであったように、気の遠くなる年月をかけなあかんようになる。

「21日も監禁」されると考えるか、「21日我慢」すればええと考えるかの違いで大きく違うてくるわけや。

その場にならな確かなことは言えんが、ワシなら、そんなアホな自白は絶対にせんという自信はあるがな。

旧メルマガに『第34回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員泣かせの人々 Part3 ノミ屋』(注4.巻末参考ページ参照)というのがある。

その中で、ヤクザのやっていた不法賭博の「ノミ行為」の客として警察に呼び出され取り調べを受けた話をしたことがあった。


刑事もこんな小便事件はさっさと片づけたい。これが一般市民やと、もうちょっと慎重になるんやろうが、ワシのような拡張員は、その範疇にない。ヤクザの見方と同じでカスやと思うとる。

それに、ワシはただでさえ、ヤクザと丸暴の刑事は嫌いや。それが、こんな扱いを受けて大人しく言う通りに出来るわけがない。

刑事が苦し紛れに「刑務所に叩き込むでぇ」と脅せば、ワシは「好きにさらせ。例え、絞首刑やと言われても知らんもんは知らんのや」と喚いて応戦した。

結局、延々と5時間ほど、窓のない狭い取り調べ室で、丸暴の喚き散らす汚い唾を散々被ったあげくに解放された。

当たり前や。どこをどう突っ込んでもワシに落ち度はない。出るとこへ出たらワシの主張の方が間違いなく通る。

ポイントは、現金を渡しとることと、その後、一度も馬券購入の依頼電話をしとらんということが大きい。確かに、ワシは相手をノミ屋と知ってたが、それを証明することは無理や。

ワシが、想定内やと言うたのは、こういう最悪なことにも対処しとったから、そう言うたわけや。

丸暴の刑事が別れ際に「お前のような強情な男、見たことない。それもこんなしょうもないことで、良うそこまで、我が張れるもんやと感心したるわ」と捨て台詞を残した。


このときは、高々、5時間程度のことやったが、それが例え21日間続いたとしても同じやったと思う。

これは損得の問題やなく、人としての尊厳の問題や。

他人に強要されて、それに従わされるというのが死ぬほどワシには我慢できんさかい、そういう相手とは、とことん戦うという気持ちを常に持っている。

また、そうして今まで生きてきたという自負がある。

あのとき『例え、絞首刑やと言われても知らんもんは知らんのや』と言うたのは、単なる売り言葉に買い言葉だけでやなく、心底そう思うて吐いた言葉なわけや。

死んでも言いなりになるかと。

ええ格好に聞こえるかも知れんがな。

ただ、その意志が固いと見たからこそ、百戦錬磨の刑事も相手にするのが面倒臭くなり、投げ出したのやないかと思う。

誰にでも、そうはできんやろうと言われれば、それまでかも知れんが、人はいつ何時、その石川議員のような不幸な立場に置かれんとも限らんさかい、普段から、そう心がけとってもええのやないかという気はするがな。

それくらい、その場逃れの「ウソの自白」は危険なんやと。そして、何より「真実は強い」と信じ続けることやと。そう思い込むことが身を守る最上の方法やと。

そう心しといて損はないと思う。

話を戻す。

ちなみに、ここうした事実を知った上で、一連の小沢氏の報道(注5.巻末参考ページ参照)を見れば、いかにその論調が陳腐でお粗末なものかがよく分かると思う。

ただ、すべての新聞がそういう論調ばかりのものでもなかったがな。

検察が衆院議員の石川逮捕に踏み切った裏には「自殺防止」という意味もあったという報道があった。

実際は、某新聞記者からの「逮捕は自殺を防ぐためですか」という誘導的な質問に、検察の特捜部長が否定しなかったというだけの話で、明確にそう言うたわけやないが、その報道で、そう信じた人は多いと思う。

過去の疑惑事件で秘書が自殺したという事例が幾つかあるから無理もないがな。

正直、その事情を知らんかった当時のワシらも「そうか」と単純にその報道を信じたさかいな。

それに対して夕刊紙であるG紙には、「 石川を“自殺寸前”まで追い込んだ暴走検察の強引手口」(注6.巻末参考ページ参照)という記事が掲載され、検察の姿勢に疑問を呈した論調のものがあった。

実際は、「石川議員に自殺の恐れがある」ということ自体、根も葉もない噂やったと、後日、ある人の証言で判明するわけやけどな。

そのある人というのは、元外交官で石川議員とも親交のある佐藤優氏のことで、氏は、あるシンポジウムで、「石川議員は逮捕前日の1月14日に東京地検の任意聴取を受け、その晩は、衆議院議員の松木兼公氏の自宅に宿泊した」と発言している。

また、翌15日も佐藤氏は石川議員と電話で長時間に渡り話し込んでいて、とても元気であり、自殺の恐れなど微塵も感じさせなかったと話している。

次回の事情聴取も、その翌16日の午後1時から予定されていて、石川議員はそれにも応じるつもりやったと。

ところが、1月15日の夕方、いきなり地検から午後8時に出頭するように要請があり、その要請に応じて出頭したところ、午後10時に逮捕されたということや。

これをどう見るかは、人それぞれやが、少なくともワシには石川議員に自殺の恐れがなかったというのだけは確かやと思える。

自殺を考えるほど精神的に追い詰められて参っている人間に、それほどの精力的な動きができるとは、とても考えられんさかいな。

また、先に寄せられた読者の情報にもあったとおり、「太田光の私が総理大臣になったら」という番組、およびワシやハカセがよく見る「スーパーモーニング」のコメンテーターの人たちが、今回の検察のあり方や報道のあり方に対して疑問を呈した発言をしているというのもあった。

さらに、新聞社が母体である週刊朝日2010年3月5日号において、ジャーナリストの松田光世氏は「定期預金を担保にした借入金については法律上、収支報告書に記載すべき収入(政治資金規正法第4条)ではない」とはっきり言明されている。

こういったことからすると、まんざら、すべてのマスメディアが一方的な見方ばかりしとるわけでもないということやと思う。

それでも、未だに大方のメディアは、「嫌疑不十分で不起訴」という部分を「限りなくクロに近いグレー」として報道し続けとるけどな。

その説明がまったくないままに。

よく、新聞やテレビの報道では、「説明責任」という言葉を頻繁に使うが、その説明責任を果たしてなかったのは、小沢氏よりも、むしろ新聞やテレビ自身やないかと思う。

今回の「嫌疑不十分で不起訴」というのは、土地取得と代金の支払いの時期が2カ月ずれて記載してしまったことに対して、小沢氏が関与したかどうかについて「嫌疑不十分」、つまりグレーやったというだけの話なわけや。

しかし、ワシを含めた一般市民の感覚からすれば、嫌疑不十分というのは水谷建設からのヤミ献金を受け取っていたかどうかについて、疑いはあるが証拠が十分でなかった、つまりグレーやということにるわけや。

そのために、検察審査会の11人全員が起訴相当を議決したのやと。

それもこれも、新聞やテレビをはじめとするメディアの偏向報道のためやと言うても過言やない気がする。

その人たちに、ここにある事実を知らせていたとしたら、その決定を下したやろうかと思う。

ワシが、その検察審議会でのやり取り、経緯が知りたいと言うてたのは、そういう意味からなわけや。

もっとも、それを聞き出そうにも、検察審議会でのやり取りは「終生に渡る守秘義務」が課せられ、それに違反すると6年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すという罰則規定があるさかい、まず無理やろうがな。

それにしても裁判官にすら課してないほどの罰則を一般市民に課してまで、その公表を阻止する理由がどこにあるのやろうかと思う。

この「説明責任」について、昨日の5月13日、「民主・小沢氏、政倫審と再聴取応じる意向表明」(注7.巻末参考ページ参照)というのが新聞各紙の報道で、


 民主党の小沢一郎幹事長は13日、広島市内で記者会見し、自身の資金管理団体による土地購入事件に絡み、衆院政治倫理審査会へ出席し弁明する意向を表明、同時に東京地検特捜部の再聴取に応じる意向を示した。

「どう対応するか」との質問に対し、「選挙民、国民の皆さんにしっかりお話しすることによって理解と支持を獲得することができると思っている」と述べた。


とあったが、小沢氏には是非、そうしてほしいと思う。

これだけの証拠と資料があって、その説明ができんはずはないからな。

そして、メディアは、その一部だけの話を都合良く抜き取って報道するのやなく、そのすべてを報道した上で、どこがおかしいのかということを指摘するのなら、そうしてほしい。

歪曲した報道と思われないように。

ワシらは何度も言うが、何も小沢氏を擁護するために延々とこの問題を話しとるわけやない。

新聞には、正確な情報を伝えて貰いたい一心で言うてるだけのことなわけや。

そのためには、偏(かたよ)った記事、誘導に近いような記事に対しては、はっきり間違っていると言いたいし、言わなあかんと考えとる。

信頼しとる、信頼したいが故に間違ってほしくないと。

そうすることが、取りも直さず、新聞報道の健全化につながり、多くの人の信頼を勝ち得るための最善の方法やと信じとるさかいな。

このメルマガの読者は新聞に対して好意的な方が多い。

その人たちを落胆させんためにも、あかんことはあかんと言い続けたいわけや。

ワシらは、事ある毎に、「正しい事を正しい、間違っている事は間違っていると言いたい」、「何の罪もない人を貶(おとし)め誹謗中傷する正義というのは絶対にない」と、言い続けてきた。

それは何人(なんびと)に対しても言えることやと思う。

物事は、その時々の事象で判断すべきであって、その人物云々が嫌い、気にくわないという色眼鏡で見るべきやない。

色眼鏡で見る限り、本当の景色など見えるわけがないさかいな。

新聞が他者を攻撃するのなら、どこからもグーの音が出んくらいの説得力と事実を示せんかったらあかん。

こんなことは、ワシなんかが言うまでもなく、新聞記事を書く者としては基本中の基本やと考えるがな。

今回の件に関しては客観的に見て小沢氏に非は少なく、どうひいき目に見ても新聞やテレビの論調の方がおかしいと言うしかない。

今からでも、いつからでも遅くはないから、訂正するべきところは訂正してほしいと思う。

せやないと、今回のことは後世にまで悪しき事例として残りかねんさかいな。



参考ページ

注1.第100回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像 その3 新聞業界、それぞれの使命とは

注2.細野論文

注3.小沢一郎が「起訴相当」となった理由

大手マスコミはなぜ謎の市民団体の実態を報道しないのか?

「記載のずれ」は「過失」でも「虚偽記載」でもない(エレクトリックジャーナル特別号002)

政治警察化する検察

注4.第34回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■拡張員泣かせの人々 Part3 ノミ屋

注5.「陸山会」土地購入事件

注6. 石川を“自殺寸前”まで追い込んだ暴走検察の強引手口

注7.民主・小沢氏、政倫審と再聴取応じる意向表明


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