メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第105回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2010.6.11


■ネットの危険 その1 ネットオークション訴訟について


「何や、これは……」

マサオは宅急便で届けられたその小包を開封して絶句した。

それには、数日前、あるネットオークションサイトにおいて3万円で落札した携帯電話の人気機種が入っていた。

その出品者はそれを『新品未使用』と謳っていた。

マサオはその機種が欲しくてたまらんかったが、正規の携帯ショップで買うと8万円近くもするから簡単には手が出んかった。

それを3万円という格安価格で落札することができたと喜んでいた。

しかし、届けられたその商品は、どう見ても『新品未使用』とは思えず、誰かが使った形跡があった。

マサオは念のため、以前、ネットショップで購入していた「指紋鑑定・検出キット」で、指紋の採取を試みた。

これは、極微細なアルミニウム粉末を、指紋がついていると推定した個所に刷毛で塗布し、分泌物に付着させて潜在指紋を検出するという最もポピュラーなもので、警察の捜査でも実際に使われているものやという。

その結果、予想通り、マサオ以外の人間の指紋が検出された。しかも、複数、少なくとも3人分程度は確認できた。

それで、『新品未使用』と偽って出品したというのが間違いないと確信した。

マサオはすぐさま、その出品者であるクロダに電話した。

「本日、届いた商品は『新品未使用』ではありませんよね」

「何を言いがかりをつけとんねん。あれはまだ一度も使うてないから『新品未使用』同然や。何か文句があるんか?」

それまで、そのクロダとは支払い方法などの打ち合わせで二、三度話したことがあったが、そのときには紳士的な対応、言葉使いやったのが、一変してヤクザ口調になっていた。

マサオは元来、気が弱い。こういった感じで強気に出られるとすぐ腰の引けた対応になりがちになる。

えらいのと取引した。

咄嗟(とっさ)に、そう思うて後悔したが、どうしてもその機種の新品が欲しかったということもあり、マサオは勇気を振り絞って続けた。

「言いがかりではありません。電話機本体にところどころ指紋がベタベタついて汚れていますし」と。

「ああ、確かに一度は開封したけど、そんなに使うてないのは確かやで。せやから『新品未使用』としてオークションに出したんや」と、クロダは何ら悪びれた様子もなくそう言う。

「でも、それって契約違反ですよね?」

マサオはそれでも尚、食い下がった。

「何をごちゃごちゃ言うとんねん。もう終わったことやないけ。ええ加減にさらせ!! これ以上、変な言いがかりをつけとったら承知せんぞ!!」

クロダはそう怒鳴って電話を切った。

マサオは、クロダにはそれ以上何を言うても無駄やと思うた。

しかし、あきらめるつもりはさらさらない。例え裁判に訴えてでも。

マサオは、そう考えてある弁護士に相談に行った。

「これは、詐欺にはならないんですか?」と。

「お話をお聞きする限り、詐欺罪として警察が立件するかどうかは微妙でしょうね。売買に関して瑕疵があった場合、民事での損害訴訟はできるでしょうが」と、その弁護士。

その損害訴訟を依頼すると、最低でもその弁護士費用として30万円程度は必要やと言う。それ以上かかる場合もあると。

「でも、裁判に勝てば、その費用は相手側が負担するんでしょ」

マサオは判例によく、「訴訟費用は被告の負担とする」という一文があるのを知っていたのでそう問いかけた。

それなら、勝つのはほぼ確実やから、いくらかかってもええ。

そう考えた。

しかし、その弁護士からは「個別に依頼する代理人費用というのは、裁判所で言うところの訴訟費用の中には入りませんよ」という答えが返ってきた。

その費用はあくまでも、依頼人が個別に負担せなあかんものやと。

弁護士費用は、その弁護士それぞれで違う。決まった価格設定というものがない。

安くて良心的な弁護士でも民事訴訟の場合、その訴訟内容にもよるが、1事案につき30万円程度は必要やし、有名な弁護士やとそれが100万円以上になることも珍しくはないという。

それを今回のように被害額3万円程度の事案で、その弁護士費用を負けた側が負担するとなると世の中、とんでもないことになる。

それやと、その初期に投資できる金持ちや企業といった連中だけが有利に裁判を起こすことが想定される。

弁護士を雇うことのできん貧乏人に、金持ちや企業などが雇う高額な報酬を得る一流と呼ばれる弁護士に太刀打ちできるわけがないさかい、どうしても不利になる。

何でもそうやが、専門家と素人が喧嘩をしても勝てる確率は少ないさかいな。

貧乏人は泣くしかなくなるということや。

そんことがあってはならんさかい、その弁護士費用というのは、「訴訟費用」とは分離されとるわけや。

裁判所の「訴訟費用」というのは、あくまでもその裁判を起こすのに必要な手続き上の費用のことで、これは弁護士であろうと、素人であろうと、一定の額にしかならん。

つまり、弁護士費用が「訴訟費用」に含まれると考えるのは誤解ということになる。

しかし、この誤解はマサオに限らず、結構多くの人がしとるようやけどな。

その弁護士は、「3万円の被害額で弁護士費用をかけるのは損ですよ」と、暗に止めといた方がええと言うてるわけや。

これだけを聞くと良心的なように思えるが、弁護士も所詮は営利を求める仕事やから、率の悪い依頼は敬遠したくなる。

こういう一見、親切そうなことを言う裏には、やんわりとした断りの気持ちがあるからやとも言える。

マサオも、確かに3万円の損害請求で30万円以上も弁護士費用をかけるのはバカげているという気持ちから、その相談料の1万円だけを支払って弁護士事務所を後にした。

ただ、このままあきらめるのも癪(しゃく)に障(さわ)るので、少額訴訟を起こしたいとは考えた。

そのことをクロダに伝えた。弁護士に相談したとも。

すると、クロダは一転して、示談にしてもええと言い出した。

結局、クロダは「中古品」としての扱いで、半額の15,000円を返還するからそれでどうかと言うてきた。

マサオは悩んだ末、こんなクロダのような人間とこれ以上関わり合いになるより、それで手を打った方がええと考え、不承不承ながら、その提案を呑んだ。

受け取った携帯電話を使う気にはなれんが、同じようにインターネット・オー
クションで「中古品」として処分すれば、いくらか元は取れると踏んで。

しかし、クロダは一向にその約束を守ろうとせず、何度請求しても、その半金は返還されんままやった。

業を煮やしたマサオは、やはり少額訴訟で訴えることにした。

しかし、その場合は、すべて一人でやらなあかん。それが初めてのマサオにとっては大きな負担やし難しい。

いろいろと法律サイトやブログを調べたが実際、どのように訴状を書いてええもんか、また裁判に臨む心得にはどんなことが必要やかというのを説明しているところは、ほとんどなかった。

たいていは「当方に任せて頂ければ大丈夫」といった類のものばかりや。

それに金がかからんのなら頼んでもええが、そんなところはどこにもない。

そんなとき、ワシらの『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』の『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』(注1.巻末参考ページ参照)という面白そうなサイトを見つけ、ダメ元でもええからと考え、思い切って相談メールを送った。

結果的に、それがマサオを救うことになった。

これは、実際に『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&ANO.890 民事訴訟と揉め事の対処法の違い』(注2.巻末参考ページ参照)でサイトに掲載したものや。

その相談文の持って行き方が実に上手い。


債務不履行で調べていてこのサイトを知りました。大変興味深いことばかりで、連日バックナンバーを拝見しております。

ここで少し気になった点(悪い意味ではありません)がありましたので(失礼ながら新聞とは離れてしまうのですが)ご意見をお伺いできればと思いメールを出させていただきました。

▼NO.712 この場合は解約できるでしょうか?
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-712.html

こちらの相談で、民事裁判の場合の心構えについて、


ここで、ポイントなのは、相手方に理解を示すような発言をする必要は微塵もないということや。

訴えるという行為自体が喧嘩を仕掛けているわけやさかいな。

せやから、そんなことまでもと思うような事でも、相手の落ち度は徹底的に言うという姿勢が必要になる。


と述べられておられます。

しかし、以前のどのQ&Aかは失念してしまったのですが「問題があったときは賢い人ほど相手の話に合わせて、納得させたような形にして、実際は自分の求める結果を得る」という文章があったように覚えています。

これは通常の揉め事の場合と、民事訴訟の対応の仕方はまるっきり違うということなのでしょうか?

実は民事訴訟をこの先予定しているのですが、バックナンバーを読んで「そうか、相手の話に終始、合わせたほうが得策なのだな」とこの記事(NO.712)を読むまでは思っていたのですが、ちょっと混乱してきています。

お忙しいこととは思いますしQ&Aの趣旨とも外れてしまうと思うのですが、なにとぞ、民事訴訟の場合の心構えというのでしょうか、大切な点をご教示願えれば助かります。

お時間のある時で構いませんし、趣旨から外れていると思われるなら無視していただいて構いません。どうぞよろしくお願いいたします。


余談やが、この相談者(マサオ)は相当に賢い人やという気がする。

本来知りたいのは、「ネットオーションで揉めた相手をいかにして訴えるか」ということやと思うが、それを表に出さず、本当にサイトをよく読んで質問されている。

こういったケースでは、そのままストレートに「ネットオーションで詐欺にあったんですが、訴えるにはどうしたらいいですか」と言った類の質問が届くことが多い。

ワシらのサイトを法律専門と勘違いしとるのやろうと思う。あるいは、答が返ってきたら儲けものと考えとるだけかも知れん。

まあ、サイトには契約や訪問販売などの法律について言及している部分もあるので、それらに関係した語句、文章などで検索して訪れてくる人も多い。

そういう人たちはサイトをよく見ない、確かめないで質問してくる場合が多い。

ワシらのサイトを良く見れば、新聞業界、とりわけ新聞拡張員のことを取り上げたところやということくらいは誰にでも分かるはずや。

そんなところに場違いなインターネット・オークションのトラブルについて質問しても、まともな答が返ってくるはずないと考えるのが普通やと思う。

もっとも、「おぼれる者、ワラをも掴む」という心境になっていて、その余裕がないのかも知れんがな。

こんな場合、ハカセはたいてい、『当方は、新聞業界に関連した相談を主に扱っているサイトですので、まことに申し訳ありませんが、他分野の質問にはお答えしかねます』と丁重に断っとるという。

正直、あまり専門外のことには立ち入りたくないということでな。

また、いくらアドバイスだけやと言うても、ええ加減なことを言うわけにもいかんということもあるしな。

知らん事、あやふやな事にはなるべく答えんようにしといた方が無難やと。

ところが、この相談者のように、サイト良く読んでその記述を引用して質問をして来られると断ることができんようになる。

ワシが賢いと言う所以(ゆえん)や。

結果、常連の購読者以外で、そういった相談に乗った、まれなケースということになるわけや。

例によって、ワシは、その相談文に沿った内容の回答をした。

すると、すぐに、その返礼文が届き、その補足として、


たびたび、すみません。

民事提訴(少額訴訟)の内容についてもお伝えできればと思います。

それはオークションで新品未使用だといっていたのにもかかわらず、送られてきたものが使用済み中古品だったという事案です。

この件(中古品だったということ)は相手も認めているので、私はお金を返してもらえればそれでよいのですが「それじゃこれからどうするか」という話し合いをしようとすると、相手が感情的になってしまい話になりません。

また約束したことも守らないため、上記のような法的措置を考えている次第です。


とあった。

それに対してハカセは、


民事提訴(少額訴訟)などの法的措置を考えておられるとのことですが、もし、今後も法律的なアドバイスが必要でしたら、ご協力したいと思います。

なぜ、こんなことを言うのかと申しますと、こういったことに慣れておられない人が、訴状を提出してから失敗したと言われるケースが、結構ありますので。

裁判では訴状の書き方次第で有利にも不利にもなります。それに気づかず後悔されるわけです。

どういった内容の訴状を考えておられるのかということについて教えて頂ければ、それに沿ったアドバイスをさせて貰うことは可能です。

ただ、それで100%大丈夫とは保証できませんが、私どもは過去、幾度か民事裁判に立ち会った経験がありますので、ある程度の要領、ポイントは心得てはいるつもりですが。

といっても、あまり過度な期待をされても困りますけどね。

まったくの素人さんより、いくらかマシで参考になるという程度だとお考えください。

また、そのための費用というのは一切頂くつもりはありませんので、その点でのご心配は無用です。

弁護士などの資格のない人間が法律行為により報酬を得ることは「弁護士法」で禁じられていますので。

但し、事の顛末(てんまつ)を教えて頂いて、それを元に、当メルマガ『ゲンさんの新聞業界裏話』のネタに使わせて頂きたいという希望はありますが。

もちろん、当事者の個人情報などは一切公開しませんし、事前にメルマガの草稿はお知らせしますから、チェックもして頂けます。

そうして頂ければ、このようなオークションでの詐欺まがいのトラブルで困っている方は多いと思われますので、読者の方々にとっても役立つ情報になると考えます。

それ以外に他意はありません。

メルマガには、過去にもそういった情報を教えて頂き、こちらで支援させて貰ったことで解決に至ったという事案も幾つかありますので。

ただ、強制はしませんし、したくもありませんので、どうされるかは、そちらのご判断にお任せします。

メルマガ誌上で公表はしなくても、私どもにはある程度の情報を教えて頂く必要もありますので、その点も併せてよくお考えください。


そう口説いた。

マサオはワラをも掴みたいという思いがあったということもあり、それと承知で相談が寄せられてきた。

これから、それを元に、「少額訴訟のポイントあれこれ」と題して、Q&A形式で話してみたいと思う。


少額訴訟のポイントあれこれ


1.少額訴訟をする意味とは

少額訴訟制度とは、日本の民事訴訟において、60万円以下の金銭の支払請求について争う裁判制度のことを言う。

せやから、金銭の支払いを求めることが主な目的になる。

よく裁判やからと、相手の非を論(あげつら)い、自身の正当性ばかり主張する訴状の内容に終始する人がいとるが、それをしてもあまり意味がない。

ややこしい経緯や理由を訴状を提出すると、少額訴訟制度での受付やなく、通常裁判の移行を勧められ、訴状そのものが棄却されるおそれもあるさかいな。

少額訴訟ではなるべく単純に、「これだけ被害があったから、その分を請求したい」とするだけの方がええ。


2.訴状に記入すべき事とは

訴状には「請求の趣旨」というのがある。

これを今回のマサオのケースに当て嵌めてみる。


1.被告○○は原告に対して、次の金員を支払え。金30,000円。

上記金額に対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで年5%の割合による金員。

2.訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決(及び仮執行の宣言)を求めます。


これは、実際には空欄を埋め、チェックを入れるようになっている。


3.紛争の要点(請求の原因)について


Q.インターネットオークションを通して「新品未使用」と謳う携帯電話を被告から3万円で落札し、購入した。

ところが被告から送られてきた携帯電話はすでに被告によって使用された跡があり、表示内容と著しく違い、詐欺的行為と判断し、その損害を請求するというのはどうか。


A.これについては、「損害を請求する」ということが明確であれば、そのままの訴状内容で構わんと思う。


Q.被告の行為をはっきり詐欺として訴状に明記するのはどうか。または告訴しておいた方がいいか。


A.基本的に少額訴訟制度は民事訴訟やさかい、その中に刑事事件を持ち込むのは、あまり感心せんな。

少額訴訟というのは、即日結審が基本で、ややこしい判断が必要な事案はすべて通常裁判に回される。

つまり、少額訴訟では受け付けて貰えんということになりやすいということや。

それでは意味がないわな。

どうしても、そうしたければ、別途に話を進めるしかない。

具体的には直接、警察署に相談に行くということから始めることやな。

この程度の事案と言えば語弊があるかも知れんが、それを事件化して捜査するかどうかは、その警察署独自の裁量次第やし、起訴するかどうかは検察の判断で決まる。

せやから、いきなり告訴とか、被害届けを出すというのではなく、まず警察署の市民安全課、もしくは市民相談係といった部署に、相談するという形にした方がええと思う。

間違っても、刑事課の刑事に直接、「告訴したい」というようなことは言わん方がええ。

彼らの多くは、少しでも事件を少なくしようという考えが底流にあるさかい、まともに取り合わず、嫌な思いをされるケースも多いと聞くからな。

その点、市民安全課、もしくは市民相談係は、警察のイメージアップを目的に設置された部署やから、比較的対応も良く、その警察署でも上位者が担当している場合が多い。

法律にも精通している担当員が多いので、ヘタな弁護士よりかは頼りになると思う。

実際、ワシらがそう勧めて、刑事課で門前払いを喰らった人が、市民安全課に相談した結果、好転して、捜査が開始されたというケースもあるさかいな。


Q.被告が一旦非を認め、「中古品」としてその半額の返金の要求をしたことを訴状に記載するのはどうか。その約束が守られないことも記載するべきか。


A.「新品未使用」を「中古品」としてその半額の返金の要求するということは、民法第125条3項の「更改」に当たり、新たな契約として追認したと解される可能性が高いと思う。

ここでの「更改」とは、ある債務を消滅させて、新たな債務を生じさせることを言う。

例え、それを提示した結果が不調に終わったとしても、そういう姿勢だったと判定された場合、「騙された」、「詐欺的行為」という主張は弱くなる。

正直にすべてを記載したいという気持ちは分かるが、それやと訴えそのものが棄却されやすい。

というか、少額訴訟には馴染まないと判断される可能性が高いやろうと思う。

結局、その約束を相手が反故(ほご)にしたわけやから、最初の訴えどおり、「新品未使用」による損害賠償請求した方が無難やと考えるがな。

そのクロダ某という人間が、その事実を盾に反論、反証してきた場合、悪くても調停ということになるはずやから、その場で初めて、その交渉を再開させたらええことや。

結論として、実際に実行されていない約束事は記載する必要がないということや。

裁判をしようとする相手方に理解を示すような記述は一切不要で、それをすると却って不利になりかねんさかいな。

まずは訴状を受け付けて貰うことを最優先に考えた方がええ。

裁判の起訴状を書き慣れてない人が陥りやすい間違いに、より多くの情報、経緯を織り込みすぎるというのがある。

たいていの場合、そういったものは何のプラスにもならんことの方が多い。

起訴状には原告に有利な訴えのみをし、受けた被害をただ書き連ね、その損害賠償を請求するだけでええ。

よけいなことを書くと、却ってそれを逆手に取られ、裁判の場では損をすることが多いさかいな。

裁判とは、相手の揚げ足の取り合いというくらいに考えといて、ちょうどええ。


Q.この件に関して「精神的慰謝料」の請求をしようと思うのですが。


A.それをされるのなら、実際に病院の精神科あたりに行って診断して貰い、その診断書を貰うてからにした方がええやろうな。

その診断書を添付すれば、認められる可能性はある。

どんな被害も具体的にそれと証明できんと、裁判の場では何の役にも立たんと知っておいてほしい。

ただ、「精神的慰謝料」の請求は、少額訴訟にはそぐわんのやないかとは思うがな。

それをするのなら、通常裁判に移行してからの方がええという気がする。

まあ、どうしてもと言うのなら、止めはせんが。

結論として、訴状には余分な記述は却ってマイナスになることが多いから、極力必要最小限に抑えて、その損害賠償だけを求めるということが肝心やと思う。

もっとも、そのどこが必要で必要でないかの判断は、素人さんにはしずらいかも知れんがな。

そういう場合は、ワシらに相談して来られれば、それなりに調べた上で回答はさせて貰う。


以上のようなことを、マサオに伝えた。

その後、マサオは、ハカセと何度かのやり取りを交わした末に、その訴状を提出したという。

後日、その少額訴訟の結果として、


本日少額訴訟第一回口頭弁論が無事終わりました。

結論から言いますと、携帯電話は相手側に返して、支払った金銭は返還して貰うという調停での「和解勧告」という形で結審いたしました。

尚、被告はこの日出廷せず、答弁書だけ出してきました。

あとは被告がこの調停調書に異議を唱えなければ裁判は終わりになります。

この調書に被告が異議を唱えると裁判は初めからなかった状態に戻るということでした。

このまま和解が決定しても、今回は判決ではないので再度不法行為で提訴することは可能だそうです。

しかし、それは警察に本件告訴が受理され検察に起訴されればとのことでしたが。

これからは少し本件から離れて、相手方の「和解」事項に対する不履行、あるいは何らかのアクションがあったら改めて考えることにします。

今後は、普通の生活のサイクルや思考に戻していきたいと思います。

もし、相手が調停を蹴るようなことでもあれば、その時は、またお世話になります(笑)。それはないと思いたいですが。

一日の審議でこんなに苦労・疲労するなんて思ってもみませんでした。

自分の権利を適正に守るために個人の力だけで通常訴訟を起こした人を尊敬します。

それでは、また何かあれば連絡いたします。


と言うて来られた。

ネットの危険については、『第90回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞報道とネット社会の今 その3 ネットの危険について』(注3.巻末参考ページ参照)でも詳しく話したが、その中にも今回のインターネット・オークションというのには触れていない。

正直言うて、今回程度の事案は、まだかわいらしい方で、金を払ったが商品が届けられんというケースは腐るほどあるという。

当然のように、それに関係した裁判事例も多い。

そして、それはこれからも増え続け、減る要素は何も見当たらんという。

当然やが、目の前で商品を手に取っての判断ができんインターネット・オークションで購入するからには、そういった危険やトラブルは覚悟しとく必要があるとは思う。

せやからと言うて、そんなあこぎな連中を野放しにしてええとは言わんがな。

泣き寝入りすれば、そんな連中をつけ上がらせ増殖させることになるだけやから、正当な権利を主張して訴えるべきものは訴えたらええ。

民事訴訟というのは、そのためにあるわけやさかいな。

今回の話が、その一助になればと願う。

これからも、まだあまり知られていないネットの危険について知らせていきたいと考えるので、その情報のお持ちの方は、是非、教えて頂きたいと思う。



参考ページ

注1.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

注2.NO.890 民事訴訟と揉め事の対処法の違い

注3.第90回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞報道とネット社会の今 その3 ネットの危険について


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