メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第108回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2010.7. 2
■2010年からの新聞営業講座……その7 営業本の活用法について
「ゲンさん、これを読んでみて貰えませんか」
ハカセから、そう言われて一冊の本を受け取った。
それには『0円で8割をリピーターにする集客術』(注1.巻末参考ページ参照)と題されている。
一見して営業本と分かる。
例によってハカセは、その本をどういう経緯で手に入れたかというようなことは何も言わん。
ええか悪いかの書評や感想も一切ない。褒めるでもなく腐すでもない。
ただ、いつもそうであるように、「読み終わったら意見を聞かせてください」と言うだけや。
まあ、何の意味もなくハカセがそう言うわけはないから、ワシも「分かった」とだけ言うて、その本を受け取ったがな。
本の表紙には『こんなことをしているとお店は失敗する!』、『「おいしい」「安い」を売りにしている』、『アンケートでお客様の声を聞く』、『DMを発信する』、『小さな店が大手に勝てる「脱・安売り」ノウハウ』と書かれたキャッチコピーがあった。
どうやら、個人商店向けに書かれた営業本のようや。それなりに意表を衝(つ)く面白そうなキャッチコピーが並んでいる。
しかし、はっきり言うて、巷の営業本で直接、新聞営業(勧誘)に役立つようなものは少ない。
同じ店舗を構えた商店であっても、新聞販売店のそれは他と比べて異質とも言えるほどの大きな違いがあるさかいな。
一般的な店舗での営業法や常識は通用しにくい。
その理由の幾つか挙げる。
1.店舗があっても集客を必要としない。
新聞を買い求めるために新聞販売店にやって来る客は極端に少ないし、店自体も特にその来店客を集めようとは考えていない。
通常の店舗のように商品(新聞)の展示販売なんかもしてないさかいな。
早い話が、店舗に訪れて来る客は新聞販売店にとってはどうでもええわけや。
むしろ、そういう客が多いことの方を嫌う傾向にある。
新聞販売店に来る客というのは、その新聞を買い求めてというより苦情を言い立てるために訪れるというケースが圧倒的に多いさかい、よけいそうなる。
2.来店客を大事にしない。
わざわざ店舗に足を運んで、その日の新聞を1部だけ買い求めるような客には、他の定期購読者のようなサービスもなければ値引きをすることもない。
朝刊130円、夕刊50円という定価でしか売らん。
周知のように、一般紙の宅配による月極め購読料金の最も多い価格設定は、朝夕セット地域で3,925円。朝刊のみの統合版地域の場合は、3,007円となっている。
定価販売した場合、朝夕セット地域だと1ヶ月30日計算で、月に5,400円。朝刊のみの統合版地域の場合は、月3,900円という計算になる。
しかし、定期購読の宅配にすると、それぞれ、1,475円、893円の値引きになるというのが新聞各社の言い分や。
しかも、どんな悪天候や悪条件下であっても1日も欠かさず守られる宅配サービス込みでな。
もっとも、新聞業界の場合、9割を超える宅配客には特別な割引をしていると称し、1割にも満たん店頭販売の方を定価とするのは、どう考えてもおかしな話ではあるがな。
それでは定価の意味がないのやないかと思う。
まあ、それでも新聞各社は断固として、そう主張して譲らんがな。
さらに言えば、定期購読の宅配顧客の多くには相応のサービスがあって、新聞販売店、および駅売りやコンビニなどへわざわざ出向いて定価で買う客には何のサービスもない。
それでいて、来店客を有り難いと考えん希有(けう)な商売ということになる。
それに対して、特に苦情や異論が出ることもない不思議な業種と言うてもええ。
3.特定地域の住民だけにしか新聞の販売と配達ができない。
新聞には「宅配制度」というものがあり、新聞販売店それぞれに営業エリアというのが厳格に決められている。
その範囲内でしか新聞を売って配達することができんされとるわけや。
4.特定の新聞しか営業しない。
新聞販売店の9割以上が「専属販売店」となっていて、「本紙」と呼ばれるメインの新聞を売り込むことを条件に新聞社から営業を許可されている。
新聞販売店は新聞社の一部で同一組織のように考える一般の人がおられるが、それは違う。
その規模の大小はあっても、「業務委託契約書」でつながっているだけの、れっきとした別企業体やさかいな。
新聞社は新聞販売店経営希望者を募り、研修や審査をした上で、その彼らを経営者と認め「業務委託契約書」を交わしているだけの関係にすぎん。
その「業務委託契約書」の中には、『当社の新聞の販売と配達に尽力すること』という一文が明記されている。
つまり、新聞社にとって新聞販売店は、「営業」と「配達」を業務委託した提携先ということになる。
もっとも、提携先とは言うても、新聞社の意向次第で、どうとでもなる一方的な契約解除権があるさかい、とても対等な関係とは言い難いがな。
新聞販売店の生殺与奪を新聞社が握っとると言うても過言やない。
その新聞社の意向で、専属新聞販売店の営業(勧誘)は、その「本紙」だけを売り込むことになっとるわけや。
A新聞の販売店はA新聞だけの販売。Y新聞の販売店はY新聞だけという具合に。
現在は、業界全体の部数減ということもあり、いくらか緩やかになってきたとはいえ、その売り上げが評価の対象にされることには変わりはないという。
その成績次第では「業務委託契約」の解除もあり得ると。
それは「改廃」と言うて、実質的な廃業を意味する。
新聞販売店の生殺与奪を新聞社が握っとるという所以(ゆえん)が、そこにある。
通常、「専属販売店」であっても、スポーツ紙、専門紙、業界紙など数種から数十種の新聞を配達をしているのが普通や。
しかし、多くの新聞販売店では、それらの本紙以外の新聞を積極的に売り込むようなことは、まずない。
それらの新聞は、新聞社同士で配達業務の委託契約が為されていて、販売店はただその業務命令、依頼に従って、そうしとるだけなわけや。
それに該当する新聞は新聞社から通知されることもあれば、購読者から直接、依頼されることもある。
新聞販売店にとって、それらの配達と集金はサービスでやっているという感覚でしかない。
それらの専門紙、業界紙などの部数がいくら増えようと、新聞販売店にとっては某(なにがし)かの手数料が貰えるだけで、新聞社からの評価にはほとんど影響はない。
本紙ならば、その新聞社から「拡張補助金」という名目の営業報奨金も出るが、委託紙にはそれもない。
つまり、いくらそれらの部数が伸びようと営業面でのプラスはあまり見込めんということや。
当然、勧誘員にもその報奨金は支払われんから営業に力を注ぐこともない。
もっとも、このことは一般では理解されにくいがな。
サイトのQ&Aに『NO.69 ゲンさんは専門紙を併売されたことはありますか?』(注2.巻末参考ページ参照)というのがある。
その質問の中に、
先日M紙の拡張の方が見えました。その販売所はM紙の他に日○経済・日○産業・日○融日経流通・電○・日○自動車・日○農業等の専門紙を併売しております。
しかし私がそれを指摘してもまるで上の空でただ○○の一つ覚えのようにM紙のみをセールスしていました。
ある専門紙の購読を希望していたのですがその対応にあきれてお引取り願いました。
常々感じていることなのですが拡張員の方の融通性のなさには失望しております。
1つの新聞販売店が扱っている新聞は何種類もあり各紙それなりの需要はあると思いますが販売する人がこれではちょっと困ります。
というのがあったが、それが一般の人の正直な思いやろうと考える。
普通に考えて、そこで売っている商品(新聞)を売ってくれと言うても売らん商店というのはあり得んさかいな。
そのあり得んことが、この業界では、むしろ普通とされとるわけや。
5.すべての新聞を販売している新聞販売店ではサービスはない。
先の「専属販売店」に対して、複数、すべての新聞を販売している新聞販売店のことを、それぞれ「複合店」、「合配店」という。
「複合店」というのは、例えばA紙、M紙という2種類以上の全国紙や地方紙などを同時に扱う販売店のことで、「合配店」というのは、ほぼすべての新聞を扱う新聞販売店のことや。
「複合店」は、その他紙の販売店が閉店などにより営業できんようになっという事情などで、その配達を依頼されたもので、「合配店」というのは、その地域には、その新聞販売店しかないという状況で生まれたものや。
「複合店」の場合は、まだメインの新聞の力がそれなりにあるさかい、内容的には「専属販売店」に近い店が多い。
しかし、「合配店」となると、その形態がまったく違ってくる。
宅配制度により、その地域においての同一銘柄の新聞は1店舗でしか扱われんという原則があるから、すべての新聞の購読は、その店でしかできんわけや。
その地域の住民が選択できるのは、「新聞を購読するか、しないか」だけや。
新聞を購読するにしても勧誘で他紙と競争する必要性がないために、講読客にはサービスらしきものが、ほとんど何もないのが当たり前やという。
おそらく、最も講読客から嫌われとる形態の新聞販売店やないかと思う。
評判の悪い店が多い。
そらそやわな。
客がサービスのなさについて文句を言うても「新聞がほしいんやったら、うちで取るしかないで。嫌なら止めてくれても構わん」と平気で言うさかいな。
まさに殿様商売そのものやと思う。
当然やが、こんな姿勢の販売店に営業云々についての考え方など芽生えるはずもない。
6.値引き、安売り販売が禁止されている。
新聞は、「再販制度」の「指定再販商品」に指定されている。
「再販制度」とは、再販売価格維持制度、再販売価格拘束制度とも呼ばれとるもので、早い話が、メーカー(新聞社)が小売業者(新聞販売店)に対し商品(新聞)の小売価格の値段変更を許さずに定価で販売させることを言う。
また、新聞の販売に対しては「新聞業における特定の不公平な取引方法(新聞特殊指定)」というものが、1999年7月21日、この法律を運用する公正取引委員会により告示されているものがある。
その告知に違反すると、その特殊指定を外され、「再販制度」の「指定再販商品」の対象からも外される恐れがあるということで、新聞業界は、やっきになってそれを守ろうとしとる。
その告知の内容や。
1.日刊新聞の発行業者は、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること。但し、学校教材、大量一括購読、その他、正当で合理的な理由の場合この限りではない。
2.新聞の個別配達をする販売業者(新聞販売店)が、直接、間接を問わず、地域、相手により異なる定価や定価を割り引いて販売すること。
3.発行業者が販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号に該当する行為をすることで、販売業者に不利益を与えること。
一、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること。販売業者からの減紙の申し出に応じない場合も含む。
二、販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。
というものや。
その中の2.に「値引き、安売り」の禁止事項というのがある。
これについては、2006年3月24日発行の旧メルマガ『第85回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞特殊指定について』(注3.巻末参考ページ参照)の中で触れたことがある。
以上の禁止項目に該当しとると判断されたら、特殊指定を外されるということになる。
公正取引委員会には、実質上、新聞の特殊指定の条項は守られてないのやないかという懸念が強い。
つまり、特殊指定で規定されとる幾つかの禁止事項がすでに、有名無実となって破られとるのやないかということや。
例えば、2.の販売店が値引き販売することについて、そういう所がすでにあるというのは周知の事実やないのかというのがある。
確かに、一部ではそういう所があるのは否定できんとは思う。現在、ワシが入店しとる販売店にはそういうのはないがな。
しかし、過去に、ワシが経験した極端な例では、新聞代が1500円にしとるという販売店もあった。
その当時、それに対抗して拡張するのに難儀したことを覚えとる。
また、新聞の購読契約では、1年契約で3ヶ月サービスというケースは良うあることやが、これを公正取引委員会では「無代紙」と呼んで、値引きとして扱うとる。
と言うてたが、その実態において怪しいところが見え隠れしてはいても、形の上では新聞の「値引き、安売り」販売は禁止されとるわけや。
新聞社はそのために尽力していると主張する。
万が一、「新聞特殊指定」および「再販制度」の「指定再販商品」の対象から外されるようなことにでもなったら、新聞の命運も尽きてしまうさかいな。
7.サービスに制限がある。
独占禁止法の補完法に「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」というのがある。
新聞営業(勧誘)の場合、客に渡せる景品の上限は新聞業界の打ち出した自主規制が、公正取引委員会の認定を受けることで法律になっている。
それにより、景品の上限の最高額が、取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲と決められた。
業界で俗に「6・8ルール」と呼ばれとるものが、そうや。
それが決められた当時の「景品表示法」での一般業種の上限は、その取引金額の10%までということから考えても、新聞業界の自主規制の厳しさが分かる。
普通、業界が法律に対して具申するのは「甘めに手心を加えて貰いたい」という意向があって、そうするケースが多いもんやが、これに関しては逆に、より厳しい内容のものやったから、その法律を運用する公正取引委員会としても、その申し入れを無下(むげ)にできんかったのやろうと考える。
法律というのは横並びに判断され融通性のカケラもないのが普通やが、事この法律に関しては例外的にそれを認めとることになる。
現在、その公正取引委員会は一般的な業種の景品の上限を20%にまで緩和しとるが、新聞業界はその後も以前のまま、その「6・8ルール」に拘(こだわ)り続け、その変更の兆(きざ)しは未だにない。
普通、法律が緩和されれば、多くの業界も自然にその方向に向かうもんやが、新聞業界に関しては違うということや。
そこに「値引き、安売り」は絶対させんという新聞業界の強い意志を感じる。
先に言うた「正常化の流れ」というのは、他でもない、この「6・8ルール」を厳守しようということやさかいな。
ワシの目からは、少々強引すぎるきらいがあって、あまり、それを支持する気にはなれんがな。
それが功を奏するか否かというのは今後の推移を見てみんと何とも言えんが、少なくとも、この業界では大ぴらに「値引き、安売り」販売をすることができんということだけは確かやと思う。
8.勧誘員個人が勝手に過度なサービスをする。
新聞の勧誘員は、他の業種の営業員と比べても突出した厳しいノルマを課せられ、それを大きなプレッシャーとして感じている人間が多い。
そのため、中には、その契約を確保する際、業界で禁じられとるような、とんでもないサービスに走る者もいとるという。
サイトのQ&A『NO.81 爆カード廃止の取り組みについて』(注4.巻末参考ページ参照)にその詳しい実態がある。
酷(ひど)いのになると、「その新聞代はこちらが負担するから」とまで言い出すケースもある。
タダにした上で、景品も渡すと。
ここまでくると最早、営業ですらないわけやが、そういうのはサイトのQ&Aに寄せられる相談にも結構多い。
本来あってはならんことやが、哀しいかな、この業界にはそういう実態があるのも、また事実なわけや。
大体、これらのことが新聞販売店の営業が他の業種とは大きく違う点やと言える。
そのため、一般的な店舗用の営業本で役に立つものは少ない。
その新聞販売店に特化した営業本でもない限りな。
しかし、今のところ、そういったものはない。少なくともワシらが、それを目にすることはないさかいな。
あるのは、それぞれの販売店に合わせた独自のマニュアルがあるくらいやが、この業界の新聞販売店にはそれすらないところも珍しいことやない。
そういう所では、従業員の方が独自に当サイトの『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座』(注5.巻末参考ページ参照)を始めとし、このメルマガやサイトのQ&Aの内容をその教材にして勉強して頂いているという。
それについては有り難いと思う反面、一抹の寂しさも感じる。
新聞業界は、新聞社百数十社、新聞販売店約2万店舗、新聞拡張団1千社余りにもなる巨大産業でもある。
それに携わる人たちも悠に5、60万人は超える。
それでいて確立された営業本やマニュアルがほとんどないわけやさかいな。
なければどうするか。答は決まっとる。
例え他の業種用に書かれた営業本であっても使えるものは使う、参考にできるものは参考にすることや。
また、そのままでは使えんものでも使えるようにアレンジするという手もある。
ハカセが、ワシにその『0円で8割をリピーターにする集客術』という営業本を手渡した理由がまさしく、それやったわけや。
ワシなら、それを活かせるやろうと。その方法を考えるやろうと。そう信じて。
もっとも、活かそうにも活かしきれん本では、どうしようもないが、この本は使える。
そう直感して読み進めた。
後日、ハカセから聞いた話によると、この本の存在は、いつもハカセが購読しとるという「本のできるウラガワ」(注6.巻末参考ページ参照)というタイトルのメルマガに、その告知があって知ったという。
このメルマガの筆者は書籍の編集者で、そのウンチクや裏話が面白く、ハカセはその発行当初から欠かさず読んでいるらしい。
今回のこの書籍は、その筆者が編集者として担当した本ということと、その紹介文から新聞営業に役立つ内容があるのやないかと考えて買って読んだと。
確かに、その本の内容は新聞営業で使える部分もあるが、先にも挙げたように新聞販売店の特殊性から、使えんものもあるというのが、ワシの正直な印象であり評価や。
それでも使えるものが僅かでもあれば使う。役立てられるものは、どんなものであっても役立てる。
ワシは、そうして過去、数十年という長い時間をかけて営業に取り組んできたという自負がある。
もっとも、それで営業を極めたとは、とても言えんが、それでも、そうした書籍を役立てる術は、それなりに知っとるつもりや。
その方法を今から話す。
ただ、そのすべての内容の引用は著作権などの問題と、物理的な問題でとても無理な話やさかい、それは理解してほしい。
部分的ではあっても、それにより、営業本の役立て方というのを知って頂ければと思う。
書籍『0円で8割をリピーターにする集客術』に学ぶ新聞営業法
1.安売りをしない。
この本は、まずそれを訴えている。
その理由として、その著者、一圓 克彦(いちえん かつひこ)氏は、
私は、安売りはするべきではないと思っています。
安売りすると、言うまでもなく利益が減ります。今まで以上に売れなければ、経営を苦しくするだけです。
一時的に売れ行きは伸びても、安売り前に比べ下がっていることもよくあるのです。
安くするために、流通コストを削減するべく流通会社の負担を大きくしている、従業員に残業を強制する、賃金削減で無理を強いているなど、激安はどこかにしわ寄せのいくケースが多いでしょう。
誰かの首を絞めて安売りしているところが多いようです。
と言うておられる。
これを新聞営業に当て嵌めると、「過度な拡材(景品)サービスをするべきではない」となる。
過度な拡材(景品)のサービスをしすぎると利益は減る。より多くの契約が取れなければ経営を苦しくするだけにしかならん。
そうすることで一時的に契約数を伸ばせても、そのサービスをする前と比べて利益が減っている場合が多いと。
さらに言えば、過度な拡材(景品)のサービスに釣られて客になった人間は、同じようなことを他がすれば離れてしまいやすい。
つまり、リピーター客にはなりにくいということや。
ワシが普段から言うてる「拡材(景品)のサービスだけの営業はしても意味がない」ということに通じる。
加えて、新聞営業の場合は、勧誘員個人がその拡材(景品)のサービス分の負担をするような、アホな者がいとる。
そうすることで、その勧誘員個人がつぶれるだけやなく、その販売店そのものの評判も落とし、結局は客離れするということになってしまう。
誰にとってもプラスになることなどない。
そんな単純なことが分からんわけや。
例えそれが一部の人間であったとしても、そんなやり方をなくさん限り業界の未来はないと思う。
2.リピーターがいれば商売繁盛。
この書籍でのリピーターとは再来店して商品を買ってくれる客のことを言うてるが、新聞販売店のそれは少し違う。
この業界のリピーターとは、例え他紙販売店の客になったとしても再び自店の新聞を契約をしてくれる人のことを言う。
ワシもこういった客の確保を常に推奨しとるわけやが、新聞販売店の経営者の中には、こういう客を「交代読者」と呼び、固定客ほど有り難いとは思わんケースがある。
もちろん固定客は大事にせなあかんのは確かやが、それと同じかそれ以上の努力で、その客に「また契約してもええな」と思わせるように持っていかなあかんと考える。
そうでないと一旦離れた客は戻らず、限られた購読客しかいない限定された地域の営業で生き残ることなんかできんさかいな。
そのためには何が最も必要か。
それはその販売店の評判を上げることであり、経営者を初めとした従業員の客への細かな心遣いを広くアピールすることやと思う。
それがリピーター確保につながる。
そういった細かな心遣いができるという人間的な要素に起因するものは金をかけずともできる。
その意識さえあればええわけやさかいな。つまり、その意識のあるなしで差がつくわけや。
3.従業員の離職率を下げる。
当たり前やが、販売店の評判を上げるには、そこの従業員の考え方や質が、それに見合うレベルやなかったらあかん。
客が心やすくなるのは、その販売店との間に人間関係ができるからやさかいな。
ワシも、この人間関係の構築に力を注ぐべきやと力説しとる人間の一人やが、具体的な方法としては、この「従業員の離職率を下げる」という方法が最もええ結果につながるやろうと思う。
この本では、その「従業員の離職率を下げる」ことでの効果として、
何度も来るお客様なら、従業員もその方の名前を知っていたり、外でバッタリ出会ったら立ち話をする関係になることもあります。
と言うてるが、まったくそのとおりで、人と人との付き合いは、こういうところから深まるわけや。
従業員と客との付き合いが深まれば、その商品は自然と売れる。誰でも同じ買うのなら、心やすい所で買いたいという気になるさかいな。
そのためには当然やが、従業員がそこに定着できな、そうしようとしても無理な話ということになる。
そのためには、その従業員の働きやすい環境を作ることから始める必要がある。
ただ、新聞販売店というのは、すべての業種の中でも最低ランクに位置するくらい離職率の高い仕事ということもあり、そうは言うても簡単なことではないがな。
それには、その仕事の過酷さのワリに条件面で恵まれんとか、人からあまりええように見られんということがあるからやと思う。
それを払拭するには、その販売店の経営者が、「従業員を大事にする」ということと、従業員自身が「多くの人のためにしている仕事」だという誇りを持てるようでなかったらあかんと考える。
この「従業員を大事にする」というのは何も金銭面や社会保障などの待遇面を良うしたらええというものでもない。
場合によれば、例え低賃金の職場であっても「お前を頼りにしとるからな」と、その経営者が心底そう思うて信頼するだけで、その意気に感じて頑張るというケースも多い。
もっとも、その従業員自身も、それに応えられるくらい仕事に打ち込める性質と気持ちの持ち主やないとあかんがな。
それらが一体となってというのは口で言うほど簡単なことやないかも知れんが、この業界で成功しとると目される販売店の多くが、そういう状況にあるのは確かやと思う。
経営者は従業員を大事に思い、従業員は経営者を信頼する。そういった信頼関係にある販売店は間違いなく、客も大事にする。
当然やが、大事にされた客はその販売店を快く思う。快く思える販売店には多くの客がつく。
それがさらなる評判となって拡がる。すべてが好循環になっていくということや。
4.売るための努力が必要。
新聞販売店が新聞を売るための努力というのは「勧誘営業」に力を注ぐことやが、これを勘違いしとる者が結構多い。
この本でも、
売りが安さではいいリピーターを確保できません。お客様は「お店」ではなく、「安さ」のリピーターになっているだけ。
と言うてるように、これでは本当のリピーターを確保したことにはならんのやが、サービスさえすれば客が増えると考えとる勧誘員があまりにも多いのが、この業界の現実やと思う。
まず、その考えを捨てんと先には進めん。それを分かってほしい。
サービスを多くしたり、商品の値段を安くしたりするというのは、はっきり言うて誰にでもできる。
それは単に競争しとるだけのことで、営業で「努力」しとるとは言わん。
それについて、この本では、
必要なのは、お客様の声をしっかり聞き、それに合わせてちょっと努力の方向を変えてみること。
それだけで、今までの努力が報われるんです。
とある。
この努力の方向とは、その客にとって何が一番必要なことかということを真摯(しんし)に探り考えることやと思う。
その一番確かな方法は、直接、その客に聞くことや。
もちろん、いきなり、そんな話をしてもあかんが、客と雑談を常に交わす習慣がついていれば、その会話の中で、それと知ることができる。
売るための努力とは、そのちょっとしたことなんやが、それに気づかん人間が多い。
逆に言えば、それに気づきさえすれば、人より秀でた営業マンになれるということでもあるわけなんやがな。
これらの他にも、この本には「脳内SEO」の効用やDM(ダイレクトメール)、メールマガジンを利用する集客法といったものにも触れとるが、それについては、ワシ自身がまだよく理解できとらんから、ここでの説明は悪いが控えさせて貰いたい。
また、新聞の営業に限らず、一般の商店、商売には有効な方法が多いと思うから興味のある人は読んで損はない本やと思う。
ワシはよく、『どんな名言、人生訓があっても、「ええこと言うなあ」で終わってしもうたんでは、それまでや。そんなものは、すぐに忘れ去られてしまう』ということを口にするが、それはこういった書籍についても言えることや。
要するに、どんなにそれが素晴らしい内容のものであっても、それを活用できん限り、それは、ただ文字が羅列されただけの書物にしかならん。
その本を書く人間が偉いのは確かやが、それ以上に、それを評価、利用できる人間の方が、もっと偉いとワシは考える。
今回は、この書籍を例にとって話したが、よほど箸にも棒にもかからんような低レベルな営業本でもない限り、その活かし方というのは、それなりにあるはずやと思う。
それを自分で探すのが最上の方法やが、それができにくいというのであれば誰か分かる者に聞けばええ。
もちろん、ワシらに質問するのでもええ。答えられる範囲のアドバイスはさせて貰うつもりや。
もっとも、あまり過度な期待をされても困るがな。
そのアドバイスについての最終的な判断、取捨選択は、その本人がするしかないことやさかいな。
参考ページ
注1.0円で8割をリピーターにする集客術
注2.NO.69 ゲンさんは専門紙を併売されたことはありますか?
注3.第85回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞特殊指定について
注4.NO.81 爆カード廃止の取り組みについて
注5.ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
注6.本のできるウラガワ
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