メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第109回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2010.7. 9
■マイナーワーカー同盟座談会 その6 盛り上がりに欠ける選挙
あさっての日曜日、7月11日は、第22回参議院議員通常選挙の投票日や。
それやからというわけでもないが、久しぶりに、「マイナーワーカー同盟座談会」を開くことになった。
「マイナーワーカー(下層労働者)同盟」とは、今から4年半ほど前の2006年1月、その年の仲間内だけのささやかな新年会の席上、ワシが、そう提案してできたものや。(注1.巻末参考ページ参照)
世の中には、うだつが上がらん仕事、その世界におったらメジャーな存在になりにくいという仕事がある。
ワシらの拡張員なんかが、その最たるものや。
言えば、世の中の底辺であえぐ下層労働者というやつやな。ワシらは、何ぼ頑張っても、世間から尊敬されたり、認められることはまずない。
もちろん、人から尊敬されることを望んで仕事しとるわけやない。生活の糧を得られれば、それでええとは考えとる。
しかし、人間やから、それなりにプライドはある。バカにはされたくないと思う。
仕事に貴賤はないというのは嘘や。単なる建前で言うてるにすぎん。実際は、職業でその人の値打ちを判断されることが多い。
知識人、著名人、有名人などは一様にそれだけで尊敬されやすい。
一般でも、その会社の規模、役職によっても、その人の値打ちが左右されることが普通にある。
社長、重役、部長クラスと平社員というのでは、世間の見方もまったく違う。さらに、会社の規模も大企業と中小企業とでは、その評価に雲泥の差が出る。
その人の人間性とは別のところで、評価されるわけや。
理不尽やけど、それが人間の社会やと認識するしかない。
ただ、認識してても、何も黙して語らずを貫くことはない。言いたいことは言えばええ。
そうは言うても、普通は、その機会すらないというのが実状や。せいぜい、個人同士の会話で愚痴(ぐち)る程度で、公の場がない。
当然、その声はどこにも届かん。
しかし、ワシに関しては、今、こうして広く世間に向けて好きなことを言わせて貰うてる。
そして、有り難いことに少なからず、それに耳を傾けてくれる読書もいる。
そういう場を拡げるための『マイナー・ワーカー同盟』のつもりやった。
世の中には、ピラミッドの底辺に位置する人間が圧倒的に多い。せやけど、脚光を浴びるのは、常にその頂点付近の人間だけや。
もちろん、それには、それにふさわしい人間が多いのも良う知っとるが、ワシらマイナー・ワーカー(下層労働者)の中にも、それに負けん人間も大勢いとるということを世間に知らしめたい。
具体的には、その仲間を増やすことや。
その輪がHP、メルマガ、ブログ、ツイッターなどで拡がれば言うことない。
どんな仕事にも、必ず人をうならせる話というのは結構あるから、まず、それを知らせることからからはじめればええ。
そう考えて始めたんやが、4年半が経った今も何の変わり映えもしてない。
メンバーは、相変わらず、新聞拡張員のワシ、売れない物書きのハカセ、古紙回収業者のテツ、そして流行らないスナックのマスター、カポネの4人のおっさんたちだけしかおらん。
特に参加希望者も現れんかった。
まあ、普通に考えて、そんな変な人間の集まりに参加したいと考える方が異常なのかも知れんがな。
また、自身を、マイナーワーカー(下層労働者)と考えてなかったら、それもないわな。
いずれにしても、ここ数年、そのままの状態で何となく続けてきたわけや。
開催場所も、いつもカポネの店やった。
もっとも、このカポネの店というのが、一つのミステリーではあるがな。
ワシがこの店のオーナー、カポネと初めて知り合ったのは、もう8年ほど前になる。(注2.巻末参考ページ参照)
店には若い娘はおらんし、カラオケすらない。
いかつい、スキンヘッドで大柄のおっさんが、カウンターに一人おるだけや。
店の造りは、お世辞にもあか抜けとるとは言い難いし5人も入れば座るにも困るほど狭い。
店も古臭く感じる。洋画のワンシーンに登場する場末の小汚い飲み屋という趣や。但し、これは、半分は狙いでそうしとるという。
ワシは開店当初から来とるから分かるが、マスターは、往年のアメリカ西部劇に出てくる酒場のような雰囲気にしたかったらしい。
ただ、日本の内装業者にその意図が上手く伝わらんかった。それに、その材料もないという。
それで、仕方なく、そこらの古道具屋を廻ってかき集めた資材で造った結果がそうなった。
当初、その西部の酒場の雰囲気を醸(かも)し出すために、カウンターだけで、椅子もなしにする予定やったらしい。
知人に「それやったら皆、立ち飲み屋に行くで」と言われて、それもあきらめたということや。
結局、椅子は細長い酒樽をデザインしたようなものを選んだ。
それなら、まだ、センスの内やが、壁に掛けとる数枚の絵は頂けん。
ピカソの絵も、ワシにはさっぱりやが、それでもまだその方がマシやと思える。
砂漠を歩くワタリガニのハサミからチューリップの花が咲いとる絵や、太陽らしき絵の真ん中に1ドル硬貨の図柄のようなものが描かれとるものとか、カエルが口を大きく開けたその中が、宇宙になっとるようなわけの分からん絵ばっかりや。
それも、観る人が見れば芸術ということになるのやろうが、あまりにも店の雰囲気とはかけ離れとる。完全にミスマッチや。
もっとも、後にその絵はカポネの作やと知ることになるがな。
カポネの本職は絵描きで、アメリカのシカゴに長いこと住んでいて、個展なんかも時折やっていたらしい。
もっとも、それだけでは食うていかれんかったということで、酒場でアルバイトをしていて、その経験から日本に帰ってスナックを開いたということや。
ちなみに、そのシカゴ帰りということを聞いて、実在のギャング・スター、アル・カポネにその風貌が似ていると思い、「カポネ」とワシが勝手に命名したことで、それがいつの間にか、仲間内での通り名になった。
実際の店の名が「カポネ」というわけやない。まあ、実在の店やから、それをここで知らせるわけにはいかんがな。
そんなんやから、何も知らんとこの店に迷い込んだ普通の人間は、たいていは驚くか嫌気がさして、すぐに逃げ出す。
その現場なら何度か見た。
儲けるとか流行らせるという意図は皆無のようや。完全にマスターの趣味だけでやっとるとしか思えん。
こんな店が8年以上も続いとるというのは奇跡に近い。
ワシがミステリーやと言う所以(ゆえん)や。
何か裏がある。
この店は世を欺く仮のもので、本当は殺し屋が生業やないのかと本気で疑いたくもなる。
それに賛意を示す人間も多い。うがった見方をすれば、そのために、わざと人を寄せ付けんようにしとるのやないかと。
テツに関しては、ワシやハカセの次にサイトでは有名人やから、その紹介はせんでもええとは思うが、今回、もしくは最近から読み始めた人のために、少しだけしとく。
テツは、京都の古紙回収業者で、4人の中ではワシとの付き合いは最も古い。
今から16年ほど前に知り合った。
サイトの『新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第6話 危険な古紙回収』(注3.巻末参考ページ参照)に、その話がある。
テツは身体がでかい。185センチで100キロやと本人は言うてるが、実際にはもっとあるように見える。
力も半端やない。両脇に120キロほどの新聞を抱えたまま走って運んでたさかいな。並の人間にできる芸当やない。
ワシは、その体型を見て、子供のときによく見たマンガの「鉄人28号」を連想して、「テツ」と命名したわけや。
大男、総身に知恵は回らずと、誰かが言うた言葉があるが、テツは知恵の方も相当なもんや。
ワシが、テツを評価しとるのは、むしろ、この知恵の部分や。こいつといとると勉強になることが多い。
京都では、ちり紙交換員のことを略して「チリコ」と呼ぶが、その「チリコ」の中にも仕事のできる者とできん者の差は歴然としたものになるという。
テツに言わせれば、頭を使わん者は何をしてもあかんということになる。
ワシもその意見に異論はない。拡張員もまったく同じやからな。
拡張員も、チリコも、なるのは比較的簡単やが、それでメシを食うていけるようになるには、そこそこ賢い者やないと難しい。
きつい言い方やが、アホではあかん。
アホとか賢いというのは、学校の勉強ができるか、できんということとは違う。
もちろん、学歴のあるなしでもない。
人間の賢愚の差は、創意工夫出来るかどうかや。これに尽きる。
その創意工夫するために、知識を身に付け活かすことのできる人間が、本当に賢い人間やと思う。
せやけど、そんな賢すぎる人間も、拡張員やちり紙交換員には、おらん。
第一、それほど賢い奴は最初の段階で、その道は選ばんわな。
中途半端な賢さ、良う言えば、そこそこ賢い奴でないと、務まらん仕事ということや。
その後、このテツとは、いろいろと絡むことも多く、メルマガやサイトにも数多く登場しとるので過去のものを見て貰えれば分かると思う。
「今回の参院議員選挙は、もう一つ、盛り上がりに欠けますね」と、ハカセがその口火を切る。
たいてい、議事進行役はハカセや。
ハカセは、文章を書く以上に弁が立つ。
ワシも仕事柄、喋りには滅多なことでは引けを取らんという自信を持っとるが、奴さんには勝てん。
特にその説得力には舌を巻くしかない。
それについては、今まで誰からも束縛されずマイペースで生きてきたワシが、いつの間にか、このメルマガやサイトに引き込まれとるということからも分かって貰えるとは思うがな。
何でも、そうやが上には上がおる。ワシが初めて、そう認めた男や。
ワシが、そのハカセに勝るものがあるとすれば、数多くの修羅場、場数を踏んだことで得られたトラブル、揉め事の処理能力やろうと思う。
それと忍耐力かな。
ワシは営業員ということもあり、人から少々何を言われようが受け流して我慢する術を知っとるが、奴さんは違う。
恐ろしく気が短い。その文章からはそれは分からんやろうが、喋り出すと、その顔を覗かせることが多い。
その現場なら何度も遭遇しとる。相手がヤクザであろうが何であろうがハカセには関係がない。怒りだしたら止まらんというやつや。
例え、その相手がワシであっても同じで、自身が正しいと思えば遠慮することなく、何でもずけずけ言う。
まあ、それはお互い様やけどな。
そんな、おっさんばかりやから、たった4人やと言うても恐ろしくうるさい。
誰一人取っても、滅多に人の意見に屈することがないさかいな。
それもあり、このシリーズには、そこそこ人気があるようや。
「サッカーのワールドカップがあったさかいな」と、ワシ。
周知のように、2010年6月11日から7月11日にかけて、南アフリカ共和国で開催されている第19回FIFAワールドカップにおいて、日本代表は予選リーグ突破という大活躍を見せ日本中を湧かせた。
多くのサッカー関係者、ファンの予想を、ええ意味で裏切ったわけや。
6月29日の決勝トーナメント初戦では、南米の強豪、パラグアイと互角の戦いを展開し、0−0のまま延長に突入した。
そこでも決着が着かずPK(ペナルティ・キック)戦にもつれ込み、結局、3−5と惜敗したわけが、その健闘ぶりの余波が今も続いている。
ここで、PK(ペナルティ・キック)戦についてのウンチクを一つ。
サッカーで言うPK(ペナルティ・キック)とは、本来、相手側の反則によって与えられるものとされとるが、このPK(ペナルティ・キック)戦は、それとは意味合いが違う。
トーナメント戦のように、どちらかを必ず勝者にしなければならない場合のみに行われるものや。
正式なルール名称では、「キックス・フローム・ザ・ペナルティ・キック(kicks from the penalty mark)」となっている。
ペナルティーマークからのキックということで、便宜的にPK(ペナルティ・キック)戦と呼ばれとるわけや。
くしくも、その南アフリカ共和国ワールドカップの決勝戦が行われるのが、今回の参院議員選挙の投票日の7月11日となっているわけや。
日本代表の健闘のせいか、その決勝戦への注目度も高い。
拡張で廻っとると、今は選挙のことより、こっちの方が話題になるさかいな。
当然、ワシも雑談のネタには、その方に力を入れる。
特に、その決勝戦に進出したのは、今大会で日本が制限時間内に敗れたオランダというからよけいや。
ちなみに、オランダは今大会、ここまで全勝して圧倒的な力を見せつけとるわけやが、我が日本代表は、そのオランダに僅か1点しか与えておらず、0−1と惜敗した。
そのオランダが決勝の相手であるスペインに勝って優勝でもすれば、接戦を演じた日本代表の株もさらに上がるのやないかと密かに期待しとるんやけどな。
オランダには、日本からその1点のシュートを放った、MF(ミッド・フィルダー)ウェスレイ・スナイデルや、FW(フォワード)のアリエン・ロッベンといった名選手がいとる。
好感の持てる選手たちや。
言うとくけど、ワシが好感を持てるというのは、何も彼らの頭部が、ワシに似て薄いという理由からやないで。勘違いせんといてな。
もっとも、ワシやなくとも、「同病相憐れむ」の同士たちのええ励みにはなるかも知れんがな。
姿形など関係なく、人はその道に秀でれば必ずヒーローになれる可能性があると。
ただ、彼らの年齢が二人とも、ワシの息子、ユウキと同じというのが、多少引っかからんでもないがな。
彼らを息子と同じようには、とてもやないが見ることはできんさかいな。
それにしても、今更ながらに歳を食ったという実感する現実ではある。
それに対して、スペインの選手も、サッカーファンなら誰でも知っているという名選手がズラリと並んでいる。
GK(ゴールキーパー)のイケル・カシーシャス、センターバックDF(ディフェンダー)ジェラール・ピケ、カルレス・プジョル、MF(ミッド・フィルダー)アンドレ・イニエスタ、シャビ・エルナンデス、FW(フォワード)ダビド・ビジャ、フェルナンド・トーレスなど、その名を聞くだけで心躍るサッカーファンも多いはずや。
その彼らは実力どおり、いずれも今大会で活躍しているさかい、今からその対戦が楽しみや。
「それに、テレビや新聞で連日、大相撲の野球賭博疑惑が報道されいるということもありますしね」と、カポネ。
この大相撲の野球賭博問題では、現役の大関が、それに関わって解雇されるという前代未聞の事件に発展しとるということもあり、大相撲ファンならずとも多くの人々の注目を浴びとる。
最新のニュースでは、警視庁の一斉捜査が行われる前に、複数の力士が携帯電話のメールを削除したとか、不自然な機種交換などをして、その証拠隠滅をしとるのやないかという疑いも浮上しとるというから、まだまだ、この先も拡がりを見せそうな雰囲気にある。
「ああ、NHKが実況中継を取り止めたというのも大きいな」と、テツ。
ワシにとっては、直接というわけやないが、その大相撲に絡んだ(注3.巻末参考ページ参照)事故で親父を亡くしとるからよけい、それが残念でならん。
相撲好きやった親父も今頃、草場の陰で泣いとるのやないかと思う。
それらの出来事が、この時期に集中したということもあり、参院議員選挙への注目度がよけい薄くなっとるわけや。
「それに選挙自体の争点というのが何となく、ボケた感じもありますしね」と、ハカセ。
つい1、2ヶ月までは、沖縄の米軍基地普天間の移設問題、および民主党幹事長の小沢一郎氏の政治団体陸山会が2004年の政治資金収支報告書に虚偽の記載したとされる事案で検察が不起訴としたことで、検察審査会による「起訴相当」と決定したことなどで、結構、政界も大揺れに揺れて、それなりに政治に関心のある人も多かったと思う。
与党民主党への風当たりが強く、参議院選挙惨敗は避けられんという空気に支配されていた。
まさに与党民主党にとっては風前の灯火状態やったわけや。
それが、鳩山総理大臣と小沢幹事長の二人が揃って退陣し、菅直人氏が総理大臣になってからその風向きが変わった。
20%そこそこしかなかった与党民主党の支持率が一気に50%超になったさかいな。
それと同時に鳩山氏と小沢氏の二人への批判的な報道も影を潜めるようになった。
特に小沢氏の問題については、当メルマガの『第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について』(注6.巻末参考ページ参照)でも取り上げた。
まあ、そのメルマガでも言うてたように、言いがかりに近い事案で、小沢氏を退陣に追い込むことが目的のすべてのようやったから、結果が、そのとおりになってしもうたということで、もうその用はないのかも知れんがな。
今後、また小沢氏が復権を果たすようなことでもあれば、またぞろ、その問題も大きく報じられる可能性もあるがな。
一部には、選挙後、その復権もあると噂されている。
「本来、消費税を言い出した与党は選挙では惨敗していますが、今回のは一体何なんでしょうかね」と、カポネ。
「自民党が消費税を10%にすると言うてて、菅総理がそれに相乗りするというのでは争点にはなりにくいわな」と、テツ。
本来、敵対する政党はお互いの政策が違うのが普通で、その是非を問うという形の選挙になるもんやが、これでは、どう判断すればええのか有権者も迷うてしまう。
民主党、自民党という巨大政党に対抗できる政党は今のところ存在せんさかいな。
消費税反対を打ち出している政党にどれだけ票が流れ込むのかということになれば、それはそれで一つの答にはなるが、それにも疑問がある。
その他の少数政党では、その意見を吸収、集約する能力、力があるのかと。
このままやと、近い将来、その消費税増は避けられそうもないということになるやろうと思う。
「消費税増税の前に、まずは無駄をなくすことが先決だと思いますが、この国の政治家は本気でそれに取り組むつもりはあるんですかね」と、ハカセ。
「自民党から出た小さな政党はそのつもりやと言うが、どこまで真剣なのかは何とも言えんのと違うかな」と、テツ。
「まあ、自らを律し、薄給に甘んじてでも人のため、世のためと考える力のある政治家の出現を、今の日本で望むのは無理やろうな」と、ワシ。
力のない政党、政治家は理想論を並べるだけで実行力が伴わんし、力のある政党、政治家連中は権力争いをするためには金が必要やと考える。
それでは、現状が変わる要素は何もない。
「そうですね。多くの政党は選挙に勝つことを目標にしていて、そのための目先の政策しか考えていませんしね」と、ハカセ。
「昔から、国が滅ぶときには必ず役人の腐敗が原因やと言うが、今の日本のように官僚天国と言われているようでは、どうしようもないわな」と、ワシ。
歴史上、名君、英雄として名を残した偉人の多くは、国のため、民のためを最優先とし、自らを律し、薄給に甘んじていたという。
その代表的な人物が、三国志の時代の蜀(しょく)の丞相(現在の首相)、諸葛亮孔明やと思う。
諸葛亮孔明は、中国や日本だけに限らず、世界中に多くのファンを持つ英雄として最も名を馳せとる人物でもある。
昨年、ハリウッド映画として公開された『レッドクリフ』でも、金城武が、その諸葛亮孔明役を演じて、さらにその人気を世に知らしめたという。
多くは、その天才的な軍師としてのイメージがクローズアップされとるが、実在の諸葛亮孔明は、軍師としてより、政治家としての手腕の方が優れていたというのが、歴史家の一致した見解、意見でもある。
その政治力があったからこそ、その当時の魏や呉といった、蜀よりもはるかに強大な国とも互角以上に渡り合えたと言えるさかいな。
その諸葛亮孔明の存命中は、魏や呉といった大国ですら、迂闊に蜀に戦いを挑もうとはせんかったさかいな。
むしろ、戦力的には劣勢な蜀の方が戦いを仕掛けるケースが多かったくらいやった。
諸葛亮孔明の存在が、三国志の時代そのものやったと言うても過言やないと思う。
事実、その諸葛亮孔明の死後、ほどなくしてその三国志の時代に終焉が訪れたわけやしな。
蜀の初代皇帝、劉備はその死に際、諸葛亮孔明に「息子の劉禅が補佐するに値すると思えば、その補佐を、補佐するに値しなければ貴殿が代わりに皇帝となって国を治めよ」と言い残した言葉は、あまりにも有名や。
それだけ絶大な信頼と実力を有した人物でもあった。
しかし、そういう立場にありながら、諸葛亮孔明は、歴史上でも暗愚の皇帝と言われた劉禅に献身的に仕え、自身はおろか、一族の者すべてに多額の財産を有することを禁じ、それを実行させた。
諸葛亮孔明が死んだとき、自身が所有していたのは、自給自足ができる程度の僅かな田畑だけやったという。
それが、今日まで名声を維持している本当の理由やないかと思う。
「私は最近、韓国の歴史ドラマ、朱蒙(チュモン)というのに嵌ってまして、それに登場する当時の朝鮮半島の大国、扶余(プヨ)の大使者(テサジャ)という首相級の大臣プドゥクプルという人物に、その諸葛亮孔明と同じ気概があると知り、感銘を受けました」と、ハカセ。
そのプドゥクプルという人物は、どちらかというと、主人公である朱蒙(チュモン)の敵役として登場している。言わば悪役や。
理知的で策士、非情という形容がぴったりの人物と言える。
実際、朱蒙(チュモン)の実の父親でもある、古代朝鮮流民の英雄、ヘモスをその策略によって幽閉して結果的に死に追いやった人間でもある。
主人公の朱蒙(チュモン)は、ヘモスの親友でもあった扶余(プヨ)のクムワ王の第3王子として何も知らず育てられる。
後年、朱蒙(チュモン)は、高句麗という国を建国するわけやが、プドゥクプルは常に扶余(プヨ)の国益を最優先に考えるために、結果として朱蒙(チュモン)と敵対することになる。
新しい国の建国は、すでにある扶余(プヨ)からすれば敵国になるという判断やな。
あるとき、扶余(プヨ)の大臣や役人たちが賄賂や汚職に身を染めていたという事実をクムワ王は部下に命じて調べていたということがあった。
その際、プドゥクプルが、それこそ家族が食うに困るほどの質素な生活に甘んじていたという事実を知り驚く。
そして、「大使者(テサジャ)こそ、真の忠臣だ」と褒め称える。
栄耀栄華をほしいままにできる立場でありながら、私利私欲を排除して一途に国のためだけに働いていたわけや。
「私も、その一事だけで、そのプドゥクプルへの見方が180度変わりましたね」と、ハカセ。
政治家は、自らの私利私欲を捨て、真に政治のことだけを考えて、その行動をするとき、初めて歴史の上でも評価され、後世にその名を残す。
残念ながら、ワシの知る限り、絶大なる権力を握った後、諸葛亮孔明あるいはプドゥクプルのような人物は、この日本には、まだ誕生していないと思う。
今の日本にそういう人物が現れれば、世の中も少しは変わるのやないかと思うのやが、どうやろ。
真の英雄はいつの時代に現れて不思議はない。
そう信じたい。
まあ、現実問題として、そんな英雄待望論だけ言うてても仕方ないさかい、ワシら一般市民は選挙の場で、その意志を示すしかない。
英雄は、その市民の意志を代表して生まれてくるものと信じて。
今回、もっと各政党のマニュフェストなどの政策に対して突っ込んだ話でもすれば良かったのかも知れんが、この場の4人に、その盛り上がりが欠けているいうことで、これでお開きとさせて貰いたいと思う。
ただ、そのマニフェストなり、政策を比較してから投票したいという方には、そのアドレス(注7.巻末参考ページ参照)を示しておくので参考にしてほしい。
最後に、どんなに盛り上がり欠けていようと、選挙に行くことが大事やと言うとく。
国民一人一人が、その意思を明確に示すようにせん限り、為政者はいつまで経ってもその考えを変えることはないさかいな。
世の中、政治は、あんたのその一票でしか変えることはできんのやと。それを分かってほしい。
参考ページ
注1.第75回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■我らマイナーワーカー同盟
注2.第44回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■その名は、カポネ
注3.新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第6話 危険な古紙回収
注5.第45回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■親父よ、永久に……。
注6.第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について
注7.主な政党マニュフェストおよび政策アドレス集
民主党 | 自民党 | 公明党 | 共産党 | 社民党 |
国民新党 | みんなの党 | 新党改革 | たちあがれ日本 |
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