メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第115回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2010.8.20


■新聞トラブルあれこれ その5 無理が通れば道理は引っ込む?


『泣く子と地頭(じとう)には勝てぬ』という、ことわざがある。

地頭とは、鎌倉時代、および室町時代に、各地の荘園や公領の軍事、警察、徴税、行政を任され、直接、土地や百姓などを管理支配していた役職を指す。

その当時の百姓にとっては絶対権力者で逆らえない存在ということから、このことわざが生まれたとされている。

現在で言えば、我がままなワンマン経営の会社社長といったような存在やな。

ちなみに、この業界でも新聞拡張団の団長、新聞販売店の所長を指して、そう揶揄するケースがある。

「泣く子と団長には勝てぬ」、「泣く子と所長には勝てぬ」といった具合に。

逆らっても無駄で、逆らうだけ損やという意味を込めてな。理屈の通じる相手やないと。

ある新聞販売店の所長、アカギが正にそういうタイプの男やった。

「何? 金を払わん客がおるやと?」

「ええ、先代からの約束だから、今回のうちの請求は呑めないと言いまして」と、古株のイワシタ。

アカギは今年から、先代の経営者ウエノが廃業した販売店の後釜として、それまで勤めていた販売店グループの本店の社長マエダから打診されて所長になった男やった。

「ウエノみたいな甘いことを言うてたら改廃になるのも無理はないわい」というのが口癖で、従来のやり方を徹底して否定し、販売店の大改革を決行しとる男やった。

古株のイワシタの言う客というのは、モリオカという、親の代から数えると50年以上にもなる古くからの購読客やった。

モリオカは現在40歳になる独身で、年に3、4回程度、仕事の関係で出張のため家を空けることがあり、その間はいつも休止扱いになっていた。

長くてその月の半分、短いと1週間ほど留守になる。その間は日割り計算で、その支払いをしていた。

しかし、アカギはそれを認めず、「休止分は取り置きしろ」と言ってそうさせ、その新聞の束を持って行って「1ヶ月分請求して支払わせろ」とイワシタに命令した。

イワシタは仕方なく、「現在は所長が替わってまして、以前のように休止扱いにはできませんので」と言って、その代金を請求した。

しかし、モリオカは、「それは、そっちの勝手やろ。オレは今までどおりしか払わんからな。それに、取り置きて何やねん。こっちが頼みもせんのに勝手にそんなことをして金を払えやと、ふざけるな!!」と怒り出し、そのイワシタを追い返した。

結局、モリオカは、「以前の状態に戻すまでは支払いは保留にする」と宣言した。

モリオカは、そう言えば、その所長とやらも必ず折れてくるはずやと考えた。

この対応は、ある意味、正しい。

「休止分」というのは配達されても読むことのできん期間の新聞で、読むことのできん新聞は必要ない。それに対しての対価は当然、必要ない。

そういう約束になっていた。

それが、経営者の交代で変更、できんようになったのなら、事前にそう通告するなり相談なりがあってしかるべきや。

というモリオカの論理に破綻はない。道理に適っている主張や。

これは誰が聞いても、販売店側が無理を言うてる印象を与える。

ただ、「地頭」のように無理難題を押しつける人間に論理や理屈で対抗しても、あまり意味がない。

ほしい物をあきらめない、駄々をこねる「泣く子」と一緒で、自分の言うとおりにしない者は「悪い」としか考えんさかいな。

説得のしようのない相手には、その要求を拒否して、世の中には、そんな我がままは通用しないということを教える必要がある。

幼い子供は親からそれを教わり、人として育つ。

新聞販売店にとって、新聞代は是か非でも払ってほしいはずや。払ってほしければ、客の要求には応じるしかない。

それも理に適った、道理の通った要求なら尚更で、結局、折れることになるのは、その新聞販売店のはずや。

そう考えた。

しかし、そのモリオカの考えは見事に外れた。

イワシタの報告を聞いたアカギは、「それなら、新聞を止めろ。契約不履行で契約解除して違約金を取れ!!」と、激怒する。

イワシタは、嫌々ながらも、再度、モリオカ宅を訪れ、そのアカギの意向を伝えた。

「まことに申し訳ありませんが、明日から新聞を止めさせて頂きます。つきましては、新聞代を支払われないというのは、そちらの契約不履行になりますので、残り6ヶ月分に対しての解約違約金のお支払いをお願いします」と。

それを聞いたモリオカは、当然のように「違約金を払えやと? 何、眠たいこと言うてんねん!!」と、こちらも激怒する。

「そっちが、その気なら、こっちにも考えがある」と、モリオカは徹底した反撃を開始することにした。

「目には目、歯には歯や。見てろ」と。

本来、この「目には目。歯には歯」というのは、古代バビロニア(現イラク)のハンムラビ法典の中にある教えで、これには「自分がやられた以上の報復を相手にしてはならない」という意味がある。

しかし、現在は、これを「やられたら、やり返せ」という意味で使われることが多い。

もちろん、モリオカもそのつもりで吐いた言葉や。

当然のように、そこには「自分がやられた以上の報復を相手にしてはならない」などという考えや配慮は毛頭ない。

やるか、やられるか。それしかないと考えた。

そうは言うても、モリオカもバカやないから、アカギが「地頭」タイプの程度の悪い人間やというのは承知していた。

旧知でもある古株のイワシタという専業員からも、「どうも、すみません。新しい所長は、どうも言い出したら聞かない人で、私のように雇われの身ではどうしようもありませんので」と聞かされていたさかいな。

箸にも棒にも掛からん、典型的な人間やという。

その「地頭」タイプの人間に勝つにはどうするか。

1.団体で交渉する。

同じような境遇、不満を持っている人間を集め、団体交渉する。

2.一揆を起こす。

反乱を起こすということやが、この場合、その地域で、その新聞の不買運動をするというのが、それに近いのやないかと思う。

自身が「新聞を止める」だけでは弱い。

実際、アカギは、「それなら、新聞を止めろ」と言うてるわけやから、それやと結果として負けになり、相手にダメージを与えることはできんさかいな。

3.その地頭より立場が上の人間、頭の上がらない存在に訴える。

この場合、新聞販売店が頭が上がらない相手というのは新聞社になる。

昔の農民は、たいていこの三つの方法で無理難題を言う地頭に対抗していた。

「1.団体で交渉する」、「2.一揆を起こす」というのは、いかにも手間暇がかかり面倒や。効果のほどや即効性も怪しい。

モリオカはそう考え、迷わず、「3.その地頭より立場が上の人間、頭の上がらない存在に訴える」という方法を選んだ。

つまり、新聞社にこのことを訴えたわけや。

「うちは、お宅の新聞を50年以上も取り続けているのに、販売店の経営者が替わった途端、今までの約束は守れないと急に言い出し、何の相談もなく勝手に新聞の取り置きをして金を払えと言う始末です。挙げ句の果てに、こっちが新聞を止めるとも何とも言ってないのに、配達を止めるから違約金を払えと言ってきました。お宅では販売店にそんな無法なことをしろと指示されているのですか!!」

モリオカは電話口に出た苦情係の担当員という若い男に、強めにそう抗議した。

言われた苦情係の担当員は、びっくりしたのか、おどおどとした口調で「わ、分かりました。事情を調べて、ご連絡しますので」とだけ言うて電話を切った。

その数時間後、アカギから電話がかかってきた。

「おいこら、モリオカ。お前、何で本社なんかに電話したんや!!」と、最初から喧嘩腰やった。

「何や、その態度は!! それが客に向かって言う言葉か?」

「アホッたれ!! 新聞代も払わんような人間は客やないわい!!」

「そうか。そっちがその気なら、それでもええ。こっちは新聞社に文句を何度でも言うだけや。この電話のことも言うたる。脅かされましたてな」

モリオカは、新聞社に通報したことには効果があったと確信した。

だからこそ、この電話をかけてきて悪態をついとるのやと。

喧嘩は弱みを見せたり、逃げ腰になったりした方が負ける。

理屈の通らん相手と喧嘩して勝利するには、こちらに、とことん攻める姿勢があると知らせることや。

それ以外にはない。

モリオカは、そう確信していた。

「……」

それを察したのか、アカギは何も言わず、その電話を切った。

間髪を置かず、モリオカは再度、新聞社の苦情係に電話した。

「さっきの件やけど……」

「先ほどの件と仰いますと?」

「午前中に電話した、○○町のモリオカという者や。話くらい聞いとるやろ?」

「さあ……、担当者は誰でした?」

「担当者……て、そんもの一々覚えとらんけど……」

確か、名乗ったような記憶はあるが、それがそれほど重要なことやとは思うてなかった。

新聞社の苦情係と言うても、せいぜい数人程度でやっとるものとばかり考えてたさかい、モリオカの話くらいは他の者、全員に伝わっているものと思うてた。

しかし、その苦情の件数が多いのか、担当者やないと分からんシステムになっとるという。

これやったら、役所のたらい回しか、どこかの大会社の受付、もしくは電話のオペレーターと一緒やないか。

また一から説明せなあかんのかと考えると、そのうっとうしさにモリオカはよけい腹が立ってきた。

このモリオカのような経験をされた人も多いと思うので、何でこういう対応になっとるのか、またそうなるのか、ここで、その理由の一端を話す。

すべてやないが、新聞社の中には、苦情係という部署そのものを電話代行業者に任せとるケースがある。

これはWEBサイトや新聞紙面の「○○センター」などと表示されているフリーダイヤルに多く、そこにかけると、そういう所とつながることがある。

もっとも、電話代行業者と言うても、それなりに強い権限を委譲されとる場合が多いというがな。

ここでは、各販売店へのクレームをポイント制にして管理しとるという。

あまりにもクレームが多い販売店に対しては、新聞本社の販売部に通告すると、そこから業務改善命令が出されることもある。

もっとも、新聞販売店の人間ですら、その存在を知らんケースがあるから、その指示の出所は一緒やと思うとるようやがな。

そのオペレーターの中には、その応対マニュアルを渡され、それを見ながら話すだけの臨時のアルバイト職員も多いという。

ただ、そうであっても、そのマニュアルに沿って強気で販売店に指示するケースも結構多いとのことやけどな。

また、そうしろと上から指示されている。

特に、今回のように、モリオカに噛みつかれた者は、よけいその新聞販売店にきつめに伝えるということになりやすい。

「こんなクレームは、ごめんですよ」とばかりに。

ただ、所詮はアルバイト職員ということもあり、新聞についての専門的な知識に欠けるケースがあるから、そのマニュアルにない苦情を言われるとまごつくことも多い。

モリオカが最初にかけたとき、その若い担当者が、おどおどとした対応をしたというのは、そういうことやったと考えれば納得できそうや。

もちろん、モリオカにそこまでは分かるはずもないから、相手はあくまでも新聞社の人間として訴えを続けるしかななかった。

面倒やったが、一からまた説明した。

すると、今度は、「分かりました。そういうことでしたら、こちらから、その販売店に指導しますので、ご迷惑をおかけして、まことに申し訳ありませんでした」という返事が返ってきた。

そのときには、「何や、応対した人間によって、かなり違うんやな」という程度の印象しかなかったというが、それはそのとおりやったと思う。

余談やが、消費者センターあたりでも、その担当者によって対応がまちまちやちというのは良うあるケースで、皆が皆、同じように適切なアドバイスをする者ばかりとは限らんさかいな。

その応対に出た人間の能力、経験のあるなしでかなり違うてくるというのは仕方なく、ありがちなことやと思う。

適切な言い方かどうかは分からんが、当たり外れがあると。

それからすると、例え怒りに任せたにせよ、このモリオカの「何度でも電話する」という姿勢は結構、重要で意味があったと言える。

当然やが、何度も電話していれば、その能力の高い人間に当たる確率も高くなるわけやさかいな。

ただ、普通は最初に電話をかけた際の応対次第で、すべてを「ここは、こんなものや」と思い込む人は多いがな。

良ければ次もと考え、悪ければ二度と相談しないということになる。

その1時間後、電話がかかってきた。

「私はマエダ新聞販売店グループの統括責任者、イズミと言う者です。この度は、当グループのアカギが大変失礼なことを申し上げ、まことに申し訳ありませんでした。つきましては、こちらからお詫びにお伺いしたいと思うのですが、ご都合はよろしいでしょうか」と。

「マエダ新聞販売店グループ?」

そのイズミとかいう男の話やと、アカギの店はその販売店グループの一つやという。

モリオカは親の代から、元の販売店のことは良う知っとるつもりやったが、そんな話は聞いたこともなかった。

もっとも、そうなったのは、つい最近のことやから、モリオカが知らんというのも無理はないがな。

現在、全国的に新聞販売店の数が減少傾向にある。

それには部数減のため従来の販売店の経営ではやっていかれんようになって廃業するというケースがあるというのも確かやが、それ以上に経営者不足というのが深刻になっているというのもあるという。

今までは、その廃業者があっても新聞社がその経営者を募れば比較的簡単にその人材を集めることができた。

今は不景気ということもあり状況的にそれも難しい。

昔ほど新聞社が支援できんというのもあるし、何より銀行の貸し渋りというのもより顕著になっとるということで、気軽にその資金を調達できんようになったということも大きい。

そうかといって、廃業した地域の新聞販売店をそのままにするわけにもいかん。

その地域の客には、どんなことがあっても新聞を配達せなあかんさかいな。

そこで、必然的に、業界では、その廃業した販売店を吸収合併する大型店舗が増える方向になったということや。

それが新聞販売店数減少の背景にある。

その販売店グループのシステムはいろいろやが、そのマエダ新聞販売店グループでは、各店が独立採算制を取っていて、基本的には営業方針はそれぞれの所長に任せていた。

しかし、実際に新聞社から公認されとるのは、そのマエダ新聞販売店の本店だけやから、そのグループ店への苦情は、そのままマエダ新聞販売店の本店への苦情という形で、クレームのポイントが増える。

しかも、今回の場合は、事情はどうあれ、50年以上も購読を続けている顧客に暴言を吐き、その上、一方的に契約を打ち切ると通告するというのは新聞本社としてはあってはならんことやと考えるさかい、よけいそのポイントが高くなりやすい。

それを抑えるには、そのモリオカの怒りを静めるしかない。

そう考えての低姿勢やと思われる。

翌日の午後7時。

モリオカ宅に、そのイズミとアカギの二人がやって来た。

マエダ新聞販売店統括営業本部長。

イズミの差し出した名刺にそうあった。

どうやら、そのマエダ新聞販売店グループのナンバー2のようや。

「この度は、当方のアカギが大変失礼なことを言ったそうで……」と、まず謝罪の言葉があった。

その横で、アカギは電話口での威勢の良さは微塵もなく、「どうも、すみません……」と、小さくなっていた。

モリオカは勝負あったと思うたのか、その器量のあるところを見せようとして、「謝ってくれれば、それでいいですけど、何でアカギさんは、あんなことを仰ったんです。あれでは古くからの顧客をなくしますよ」と言った。

「実は、それは私どもにも原因がありまして……」と、イズミが助け船を出すように口を挟んだ。

イズミの話によると、以前の経営者ウエノのやり方というのは、マエダ新聞販売店グループとしては、やってないものばかりやったという。

今回問題となった「休止扱い」にしても、それで処理するのは特別なケースで、年に3、4回もコンスタントにあるというのは基本的には認めてないと。

そういう場合、マエダ新聞販売店グループとしては、アカギのやった「取り置き」で対処することが多い。

それには、客へ休止扱いをして、その分の支払いを猶予しても、新聞社にそれは関係なく、その分の仕入れ代金を支払わなあかんからやと。

そのため、そういう客には「取り置き」を了解して貰って代金を支払って貰うか、それが嫌なら止めて貰うかのいずれかにするケースが多いと。

「すると、その所長さんの言われとるのは間違いやなかったと言うわけか」と、モリオカ。

「ええ、そういうことになります。もっとも、以前、それでやっておられた方には、経営者が替わったことと合わせて、事前にその旨をお知らせして了解を取っておくべきで、その通告もなく、うちのアカギが勝手にそう考えて、モリオカさんに無礼な言動をしたのは、あきらかにこちらの落ち度ですが」と、イズミ。

「それなら、これからはどうなる?」

「本来でしたら、当方のシステム上はできないのですが、モリオカさんの場合、特別に残りの契約期間の間は、今までどおり『休止扱い』ということで対処させて頂きますが」

「その後は?」

「その後は、新たな契約になりますので、こちらのシステムを了解して頂きたいと思います」

「それなら、ずっと取り置き分の支払いをせなあかんということか?」

「そうなります」

「それは呑めん。オレの仕事は出張が多いさかい、どうしても新聞を読めん期間というがあるからな。休止扱いにできんというのなら契約を止めるしかない」

「残念ですが、それはそれで仕方ありませんね」と、イズミは冷たくそう言い放った。

ここまで聞いてモリオカは、やっと気がついた。

このイズミという男は、表向きは「謝罪」という形を取りながら、その実、手前勝手なシステムとやらを押しつける気なのやと。

どうでも、こちらを切るつもりなのやと。

「そういうことなら、こっちも引き下がれんな」と、モリオカ。

「どういうことでしょうか」と言うイズミの視線に力がこもっていた。

やはり、その闘いに持って行く腹やったのかと、モリオカも理解して確信した。

「お宅は、今回の件で、私が怒っている本当の理由をご存知なんですか?」

「と、仰いますと?」

「そこのアカギさんは、私に違約金を払えと言ったのですよ」

「それは、モリオカさんが解約すると仰ったと誤解した上のことで、完全な早トチリだったと謝ります」

「私が解約すると言ったと誤解? それはないでしょう。古くからの従業員の方でイワシタさんという人から、そちらのアカギ所長さんに、はっきりと『新聞代を払わないのは契約不履行だから違約金を払って貰え』と言われたと言ってましたよ」

顧客が正当な理由なく新聞代を払わないと拒否するのは形の上では「契約不履行」ということになる。

新聞購読契約とは、新聞販売店は遅滞なく新聞を配達する責務を負い、購読者はその新聞代金を支払う義務を負うものとされとるからな。

どちらか一方が、それを破れば「契約不履行」が成立し、立派な契約解除理由になる。

しかし、モリオカの場合は、いきなり契約内容を変更されたことに抗議する意味で、「以前の状態に戻すまでは支払いは保留にする」と通告しとるさかい、それは通りにくい。

「分かりました。それでは、どのようにさせて貰えばよろしいので?」

「そちらが、契約不履行を理由にするのなら、こちらも当初の契約とは違うので契約不履行を理由に、そちらから解約違約金を支払って貰う。せやないと納得できん」

これは以前、サイトのQ&A『NO.904 販売店が一方的に契約を終了させるなんて許されることなのですか?』(注1.巻末参考ページ参照)で似たような相談事例があった。

その相談者もモリオカと同様に、「違約金6ヶ月分だなんてバカな話を持ち出されたので、逆にこちらがそれを請求しても良いのではないかとさえ考えています」と言うておられた。

それに対するワシの回答部分を抜粋する。


業者である販売店が、自己事由による途中解約を希望する購読者に対して、その後の売り上げの損失を補填するという意味で「解約違約金」を請求するという事例は、このQ&Aでも数多いが、『違約金6ヶ月分だなんてバカな話を持ち出されたので、逆にこちらがそれを請求しても良いのではないかとさえ考えています』とその逆をされたいというのは今回が初めてのケースや。

理論上はできるやろうという思いはあったが、実際にそういうことが可能なのか、この件に関して、サイトの開設当初から法律顧問をして頂いている法律家の今村英治先生に、そのあたりのご意見を伺った。

それを紹介する。


もちろん 双務契約ですから、原則的には対等の立場だとは思いますが、これはあくまでも原則論で、こうした場合に、業者側が「解約違約金」を支払う契約にはなっていないと思います。

従って、契約上当然に違約金を請求できるわけではないでしょう。

債務不履行について、契約上何の取り決めもない場合、民法に従い、履行遅滞となった場合の債権者が取りうる手段は次の通りです。

@現実的履行の強制
A損害賠償請求
B契約解除

現実論から申し上げますと、まずは契約を履行せよと請求しますよね。

でも販売店もへそを曲げていますから、配達はしないと思います。

次のステップとして、損害賠償を請求することになります。その際、購読していない分の支払い済分を返せとは言えるでしょうが、今後、その新聞を読まなかったことによる実損を計算して賠償請求するしかないのですが、これも聊(いささ)か無理があり、現実的ではないですよね。


というものやった。

@現実的履行(配達)の強制は要求できるが、その販売店が嫌と言う以上は難しいやろうし、裏から新聞社をつつくという手もなくはないが、「それは販売店の方とお話ください」と逃げられる可能性が大やと思う。

何より、あんたが『こんな仕打ちを受けてまで購読を希望したいなんて思うほど愚かではありませんし、結果としてはそれでいいと考えています』ということなら、その線は消えるわな。

問題は、A損害賠償請求で、『購読していない分の支払い済分の返却』は当然のこととして認められるやろうが、今村先生の話にもあったように、購読者の側から『今後、その新聞を読まなかったことによる実損』の請求は難しいと思う。


と。

「申し訳ありませんが、当方としましては、その違約金とやらのお支払いには応じかねます」と、イズミ。

「それでは、こちらも今回のことを水に流す気はありません。引き続き、新聞社に苦情を申し立てします」

「そうですか、それは仕方ありませんね。とにかく、当方としましては、現在のモリオカさんのご契約の期間中は以前のように取り計らいますが、以後の契約については、それは致しかねますとお伝えしておきます」

結局、イズミとアカギは謝罪のしるしにと、菓子箱の入った手提げ袋を置いて帰って行った。

事実上の決裂というやつや。

当初、モリオカは「非公開」を条件にサイトにこの事を知らせてきた。

本来なら、このメルマガでの公開もなかったのやが、ワシの回答を見たモリオカが、それだけでは物足りないと思ったのか、読者の意見も知りたいということやったので急遽、このメルマガに掲載することにしたわけや。

参考までに、その際のワシの回答を手短に話す。


今回のケースは、確かにあんたの指摘されるとおり、その販売店の落ち度は大きいと思う。

しかし、その実状はどうあれ、形の上では「謝罪」しとるわけで、現在の契約期間中は以前のままにすると言うとるさかい、それ以上、望むのは難しいのやないかという気がする。

あんたとしては最上の結果が得られたことになる。

あんたは、その「解約違約金」とやらに固執されとるようやが、当方の法律顧問、今村英治先生が言われるように、『違約金を請求できる契約』になってない限り、例え裁判所に訴えても、そうさせるのは難しいと言うしかない。

次の契約も同じようにしろと強制するのは残念ながら、その販売店が望まん限り無理やないかと思う。

契約事というのは、お互いが納得して交わすもので、どちらか一方が拒否した場合、どんな契約も強制することはできんさかいな。

新聞社に訴え続けるのは、あんたの自由にされたらええ。それを止めるつもりはない。

ただ、新聞社の基本的な姿勢として、一般購読者との契約事は、新聞販売店に一任しとるという建前がある以上、新聞社も「その販売店と話し合ってくれ」と言うしかない。

新聞社が介入できるのは、あきらかな不正、不法行為に対してだけやさかいな。

あんたは、それで客を逃すことになるのは新聞社も損なはずやから必ず味方につくと考えておられるのなら、それは期待せん方がええと言うとく。

あんたにとっては腹立たしい事であっても、その新聞販売店グループの責任者の言うことに違法性は何もないさかい、それに対して「指導」云々などと言う新聞社は、まずないと思う。

あまり、それを言い過ぎると、結局、あんたがアカギに対して「地頭」のように考えておられるのと何ら変わりのない無理難題言うてるのと同じことになる。

ヘタをすると、悪質なクレーマーだと受け取られかねん。

ワシの意見、回答としてはそうやが、どうされるは、あんた次第やさかい、良う考えて決められたらええ。


ワシの回答の後、モリオカが『つまり、無理が通れば道理が引っ込むということですか』とメールしてきたことが何とも印象的やった。

ワシは、そう回答するしかなかったと思うとるが、モリオカの無念な気持ちも分からんではない。

そもそも、新聞の宅配制度というものは、新聞社が勝手に取り決めたもので、購読者が、その新聞の販売店を選ぶことのできんシステムというのはおかしいというモリオカの主張にも一理あると思うさかいな。

ワシも業界の仕組みを購読者だけに押しつけるのはどんなもんやろうとは考える。

購読者のためを考える販売店から新聞を取りたいというのは当たり前の考えやないのかと。

それについて意見があれば是非、ワシも知りたい。

特にその期間を設けるつもりはないので、ご意見のある方は、いつでも結構やからメールで知らせて頂けたらと思う。



参考ページ

注1.NO.904 販売店が一方的に契約を終了させるなんて許されることなのですか?


意見  メルマガでの問いかけに対して

投稿者 Jさん  投稿日時 2010.8.26 PM 1:18


先週のメルマガのゲンさんの問いかけについて、意見を述べたいと思います。


> そもそも、新聞の宅配制度というものは、新聞社が勝手に取り決めたもので、
> 購読者が、その新聞の販売店を選ぶことのできんシステムというのはおかしい
> というモリオカの主張にも一理あると思うさかいな。
>
> ワシも業界の仕組みを購読者だけに押しつけるのはどんなもんやろうとは考え
> る。
>
> 購読者のためを考える販売店から新聞を取りたいというのは当たり前の考えや
> ないのかと。
>
> それについて意見があれば是非、ワシも知りたい。


「新聞を買う店を選べない」というのは、やっぱり時代にそぐわないと思いますし、なにより日本の消費者にとっては「不幸」であると考えるべき時期に来ているのかもしれません。

規制の多い携帯電話でさえ、直営代理店以外からでも買えるわけですし。

ですから、せめて携帯電話会社がやっている販売システムくらいまで法的保護(特殊指定等)を無くしていくのが妥当だと思っています。

なにより、販売チャンネルの自由化が、新聞編集に不正や偏りを生じさせるとも思えないからです。

現状、新聞発行部数の落ち込みが、販売店の統廃合を加速させているというのであれば、新聞社は、なおさら、自由な発想を持った第三者資本の参入を奨励すべき時に来ていると思います。

ちなみに、もし既存の販売店(純正ディーラー?)を優遇したいのであれば、他社に卸す場合は、新聞の卸価格を割高に設定するなど、条件面で差をつければよいのではないかと思います。

もちろん、そんな条件で、新聞販売ビジネスに名乗りを挙げる企業がいるかどうかという話は別問題です。(もしかしたら宅配便の会社や、地域に宅配ビジネスを展開している生活協同組合、ネットスーパー、はたまた、ピザ宅配のチェーン店などが自分の都合のよいエリアで営業したいと考えるかもしれません。)

逆に、いざ自由販売してもいいよと新聞社が門戸を広げても、誰も名乗りを挙げてくれない事態になったとしたら、新聞の未来は、限りなく暗いものになるでしょうね。

以上です。


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