メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第119回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2010.9.12


■公営住宅でのペット飼育の是非について Part 2


モリ女史からハカセにメールが届いた。


白塚様。

こんにちは。今日も暑いですね。

団体さんの賛同はボチボチ集まっています。現在30団体ほどです。

署名については、議員さんは5名、一般は1000名を超えました。沢山のボランティアさんが、協力してくださり、寄付も募ってくれました。

ボランティアさんは増えましたが、肝心の県営住宅のペット飼育者からの協力、署名共に乏しいです。

三重県からのアクションはありません。未だ強硬姿勢を崩さず、誓約書を取りに回っているようです。

確実な話ではありませんが、3ヶ月という期限は言わなくなったと聞きました。

ただ、念のため県に誓約書期限を確認したところ、3ヶ月と言われましたが…。
あと、あのポスティングのチラシが県を批判しているので、かなり怒っていたと聞きました。

近いうちに、応援していただいている三重県の県会議員さんと一緒に、賛同団体のリストを持って行きます。その時に県の状況を聞いてきます。

まだ、これといった話題がなくてスミマセン。。。


というものや。

このモリ女史というのは、『第116回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■公営住宅でのペット飼育の是非について』(注1.巻末参考ページ参照)で話したように最近になって市民運動を始められたという方や。

モリ女史は、ペットの飼育が確認された県営住宅の住民に対する三重県の県土整備部住宅室の「ペットを移動するか、住居を立ち退くか」の二者択一の誓約書を提出するよう求めているやり方に対して憤りを覚え、その反対運動をすることにしたのやという。

県営住宅に住むペット飼育者たちの多くは、それで追い出されると他で生活できる余裕がなく、そのため、やむを得ずペットを手放すにしても、その里親を探すのは極めて難しい状勢にあると。

それにも関わらず、県は3ヶ月という期限を設定して「ペットを処分するか」、「立ち退くか」の選択を迫っていると。

この措置が強行されれば、ペットと生死を共にすると決めた住民は貧困のため行き場を失い路頭に迷うことになる。

そうかといって保健所に持ち込めば愛するペットは、ほぼ確実に殺処分される。

それを避けるためにペットを泣く泣く捨てる人も現れ、動物愛護法上の犯罪を犯す状況に追い込まれることも予想される。

県営住宅に住むペット飼育者たちにとっては、正に八方塞がりの状態に置かれとるわけや。

モリ女史らは、そんな悲惨な状況を見かねて、少しでも多くのペットたちを救えないかとの思いで立ち上がったのやという。

最初に起こした具体的な行動が、主な県営住宅に、そのことを訴えたチラシを投函することやった。

そのチラシの文面や。


    県営住宅入居者の皆様へ


今年度に入り、三重県はペット飼育調査を始めました。

現在、ペット飼養者にペットを取るか、住居を取るか、二者択一を迫る誓約書を記入させています。

現実、里親探しは大変困難です。

ペットを捨てることは動物愛護法違反になり、50万円以下の罰金です。

保健所にペットを持ち込めば、確実に殺されます。

保健所での殺処分は一般に安楽死と言われていますが、実際には二酸化炭素ガスによる苦しみながらの窒息死です。

犬は「10分間」猫は「15分間」の噴射。

無理矢理、洗面器の水の中に顔を突っ込まされたようなもの。

想像してみてください。

もがき苦しみ、中には死に切れず生きながらにして焼却炉で焼かれる子もいるそうです。

決して安楽死ではありません。

保健所に持ち込まれた動物たちがどんなに悲しく、心細いか、殺処分される時、彼等は訳も分からず堪え難い苦痛を強いられ命を奪われる事になるのです。

県の今回の措置にお困りの方、ご相談ください。相談者のプライバシーは厳守します。


迷惑をかけないペットの飼い方を推進する会


たまたま三重県のある公営住宅に住んでおられる、オオカワというメルマガの読者からサイトにメールが寄せられたことで、ワシらは、そのチラシの存在を知ることになった。

何でも首を突っ込みたがる性癖のハカセが、そのモリ女史に連絡を取り、直接会って話を聞いたというのが、前回の成り行きやった。

モリ女史らは、その『迷惑をかけないペットの飼い方を推進する会』という市民団体を立ち上げて間もないのにも関わらず、弁護士に依頼し、三重県の県土整備部住宅室のやり方に抗議するため、野呂昭彦三重県知事宛てに内容証明郵便で、その抗議文を送付したという。

動きが素早い。

それと同時に、危うさも感じたとハカセは言う。

チラシを投函したのは、後日、野呂昭彦三重県知事にその抗議のための面接に行った際、署名があった方がええという弁護士の助言に従ったのやという。

しかし、チラシについて真っ先に反応してきたのは、それに反対する側の人間やった。

この手のチラシを配布すると、必ずと言うてええほど、その反対の人間から苦情が出るというリスクを伴う。

中には相当な嫌がらせをする者も現れることがある。それは、予め覚悟というか、織り込み済みとして承知してなあかんことやと思う。

このケースでは、そのチラシには事務所の住所と代表者の名前を明記されとったから、近隣の住民が飼っているペットに悩まされている人にとっては格好の標的になりやすい。

その彼らにとっては、そのチラシにある『ペット飼養者にペットを取るか、住
居を取るか、二者択一を迫る誓約書を記入』させるという県の姿勢は歓迎した
いということになる。

公団で動物を飼ってはいけないというのは常識や。誰でも知っている禁止事項でもある。ペットが飼いたいのなら公団に住むべきやない。

集合住宅である公団の一室で動物を飼えば、飼い主がどんなに注意を払っても必ず迷惑がかかる。

単に、その鳴き声がうるさいというだけでなく、匂いも耐え難いと感じる人に
は我慢できんものや。

体毛などの抜け毛を気にする人も多い。それが風などに乗って開け放した窓から入ってくるのは不潔極まりないと。

動物嫌いな近隣の住民にとっては相当の我慢、苦痛を強いられとると。

多くの場合、飼い主にその細かな配慮のある者は少ない。少なくとも、被害者意識の強い住民はそう感じている。

それらのどこに擁護する値打ちがあるのかと、その人たちは考え、怒る。

よけいなことはするなと。

それが、現在までにハカセが聞いた三重県下の県営住宅に住む反対意見の住民たちの声やったという。

モリ女史らは、そのチラシを投函した際、連絡をしてくるのは、三重県のペット追い出し策に困っている県営住宅の住人だけやろうと考えた。

反対意見の住民もいるというのは分かっていたが、まさか、あからさまな嫌がらせ行為などは、しないやろうと。

完全に性善説で物事を考えていたようや。

「実は、そのチラシを配布してまだ一週間ほどですが、こんなものがポストに
投函されていました」と、モリ女史。

それは便せん一枚にびっしりと書きつづられた匿名の手紙やった。

それには女性と思われる字で、今まで、いかに公団でペットを飼っている人間に苦しめられてきたかということを切々と訴える内容の文章になっていた。

サイトのQ&Aにもありがちやが、被害者意識の強すぎる人が、まれにおられる。

そういう人の考え方や行動は危険を伴うことが多い。自身にとっても、相手にとっても。

それでも、サイトのQ&Aに相談して来られる方は、まだええ。

ワシらが、それなりのアドバイスをすれば、そのことに気づいて貰えることが
多いさかいな。

しかし、それもできずに悶々と思い悩む人は、自分自身ですら、その危険な思
考、行動になっているという自覚がないケースがある。

その匿名の女性は、その住所を頼りに、その場所を探し当てたわけやから、文句の一つも言いに立ち寄ろうと思えば、そうできたはずやが、それをせず、ただその苦情を並べ立てた手紙だけを投函して帰って行った。

その手紙の投稿者がそうした理由は一つ。

そのチラシを入れたという行為に恨みを抱いた、快く思ってないからや。話し合う余地がないと考えるほどに。

それ以外には考えにくい。

しかも、それはまだ予兆の段階で、それと同じ思いをしている人は他にも多いはずや。

モリ女史の話では「少なくとも1割以上の家庭でペットが飼われていると推認
されます」ということやが、裏を返せば残り9割弱は、それを迷惑に思う可能性がある人たちということになる。

そのチラシの投函を今後も続ければ、さらに過激な反応を示す人間が現れる可能性は大きい。

ハカセが、そのことを諭し、その危険と苦言を呈したことで、モリ女史らは、その後、そのチラシの投函は止めたとのことや。

もちろん、ハカセは止めろとは一言も言っていない。あくまでも、その人の自主性と判断に任せるというのが、ワシらの普遍的なスタンスでもあるさかいな。

ただ、危険があると考えられるケースでは、その可能性を伝えるだけのことや。

結局、モリ女史らは、ハカセの提言どおり、まずはそのネットワーク作りから先に専念する、力を注ぐということやった。

驚いたことに、チラシを投函し、行政に内容証明郵便まで出していながら、ハカセと会った時点では、まだホームページすらできていなかったという。

順序が逆や。

普通は、そういった準備をして有志を募り、それなりに地盤を固めてから、チラシの作成や配布などといった様々な行動に移すのが、一般的な市民運動やと思う。

まあ、モリ女史らの気持ちの中には、今回の三重県の動きが、あまりにも性急すぎると映ったために、急いで行動を起こす必要があるという焦りがあったとのことやがな。

無理もない。

モリ女史らのような動物愛好家にとっては、そうせなペットの命がないと考えるだけで、いてもたってもいられないという気持ちにもなるやろうしな。

先日、そのモリ女史から、ホームページが出来上がったという知らせがあった。

「パソコンに詳しいボランティアさんが作ってくれました。ホント助かりました」と嬉しそうやった。

『グリーンNet』(注2.巻末参考ページ参照)というのが、それや。

なかなか良うできたホームページやと思う。

見た目がシンプルやというのも、こういった運動のホームページとすれば好感が持てる。

トップページの猫が寂しげにトボトボと歩いている後ろ姿はどことなく悲哀と哀愁が漂い、狭い路地の突き当たりに白い柵が見えるというのも、檻を暗示させているようで、「おい、そっちに行ったら危ないぞ」と思わず声をかけたくなる気持ちにさせる。

このホームページの制作者がそこまで意図して、この写真を使ったのかどうかまでは分からんが、そのセンスの良さが感じられる。

どうやら、モリ女史らは素晴らしい人を仲間にしたようや。

いかにして有意義で有能な仲間を集めることできるか、どうかが、市民運動の成否を別ける重要な条件、要素になると考える。

モリ女史がメールで知らせてくれた『団体さんの賛同はボチボチ集まっています。現在30団体ほどです』、『沢山のボランティアさんが、協力してくださり、寄付も募ってくれました』というのも、結成間もない団体とすれば驚異的とすら言える。

市民運動を成功させる上で、最も重要なのが、そのリーダーの資質やと思う。

これは何も、高い能力が必要やということとは違う。能力など大してなくてもええ。情熱も他の人より少し強いという程度で十分や。

それよりも、そのリーダーに、どれだけの人がついてくるか、協力して助けようとするか、またそうしたいと思える人物かということが重要になる。

それを判断する上でも、ボランティアでホームページの制作に協力されたという人の手腕が際立つわけや。

そういう人が協力しているのだから、『現在30団体ほどです』、『沢山のボランティアさんが、協力してくださり、寄付も募ってくれました』ということになっとるのは、さもありなん、なるほどと人を納得させる材料になる。

極論すれば、そのリーダーによって、その団体の成否が決まると言うても過言やないということや。

裏を返せば、それがどんなに素晴らしい運動に思えるものでもリーダーにその魅力と人望がなければ、その成功は覚束(おぼつか)んということを意味する。

その点、リーダー格である、モリ女史、および立ち上げ時からの同志ハヤシ女史の二人には、その要素と資質が備わっていると言える。

せやなかったら、それだけの人が短期間にボランティアとして協力を申し出るはずがないさかいな。

また、あの偏屈でヘソ曲がりのハカセが、大して動物好きでもないのにも関わらず、ここまで肩入れするはずがない。

余談やが、ハカセの家では、奥さんのチエさんが苦手ということもあり、動物を今まで飼ったことがないという。

そのハカセが動かされたわけや。

その運動の意義に賛同したのやなく、あくまでも、そのモリ女史らの真摯な態度と心情に惹かれたからやと。

まあ、それにはハカセもワシと同様、助けを求めてくる人に対して黙って見過ごすことができんという性質もあるからやけどな。

持ち上げて落とすようで気が引けるが、そのモリ女史やハヤシ女史は、口が上手いとか説得力があるという種類の、「できる人物」というのとは違う。

どちらも、こういった運動家にありがちな情熱家で熱弁を振るうというタイプでもない。

取り立てて、オーラとか雰囲気、迫力といった雰囲気があるというわけでもない。カリスマ性もあまり感じない。

どちらかと言うと、二人とも大人しく控えめな感じのする清楚なご婦人たちやという。話し方も穏やかそのものやと。

ただ、多くの人に好感を持たれるのは確かや。少なくとも、二人とも嫌われることの少ない人たちやと思われる。

リーダーとして、それがあれば後は情熱と努力次第で何とかなる。努力だけでは得られんものをすでに持っとるわけやさかいな。

そのモリ女史が『ボランティアさんは増えましたが、肝心の県営住宅のペット飼育者からの協力、署名共に乏しいです』と寂しげに言うとるが、それはそんなものやろうと思う。

予測された当然の結果や。

署名に協力すれば、その住所から県営住宅に住んでいてペットを飼っているということが、県に知られる可能性が高い。

実際にペットを飼っている住民は、それを恐れる。

県営住宅の住民でペットを飼っている者は、なるべくその事実を隠そうとする。どうしても、自身にいけないことやとの認識があり、負い目を感じるさかいな。

モリ女史らの調べたところでは、全住居者の約1割程度がペットを飼っているとのことやが、それからしても少数派ということになる。

どんな世界でも少数派の人は迫害されるという被害者意識が強いもんや。堂々とそれに立ち向かえる人は少ない。

一番最初に、この問題を知らせてきた県営住宅の居住者であるオオカワの話やと、例のチラシの影響もあるのか、最近になって誓約書の存在をかなりの住民が知りつつあるという。

それまでは、そういった事実は、あまり知られてなかったらしい。オオカワも知らんかったと。

チラシというのは、たいていの人間にとってゴミという扱いでしかないから、見て貰える確率というのは、恐ろしく低い。

「団地には、毎日、多い日には2、30枚くらい、いろんなDM(ダイレクトメール)やチラシがポストに放り込まれます」と、オオカワが言うてることからも、それが分かる。

加えて、そのポストに入り切らんチラシ群が、そこら中に巻き散らかされ見苦しいこと、この上ない状態になっとるのやという。

それを掻き集めて捨てることが、オオカワの日課になっとるほどやと。

そのチラシを作り配る方は、ほとんどの人がそれを目するはずやと考えるが、そんなものは、ええとこ数十枚、数百枚に数枚程度、読んで貰えたら御の字やと思う。

それから問い合わせがくるとなると、千枚、2千枚で1件程度あればええ方ということになる。

DM業者は、それを想定して大量のチラシを配る。

参考までに、新聞の折り込みチラシの方が、まだインパクトとしては強く、目にして貰える確率が高いと言うとく。

但し、若干の費用は必要になるがな。

加えて、モリ女史らのチラシは、ペットを飼うことに対して否定的な住民の方が、割合からしても目に付くことが多いということで、その事実が拡がっているのやという。

以前のメルマガで、


行政は、どちらに与しても恨まれるような行動を積極的にすることはまずない。少なくとも、それを表に表すような愚は避けたいと考えるのが普通や。

このモリ女史のような方たちには意外に思われるかも知れんが、県の役人の多くは、公団住宅などでペット飼っていることへの苦情を個人で言い立てた場合、「ペット禁止というのは軽い約束みたいなもので規制や規定といったものではないので、どうしようもありません」という返答が返ってくることが多いという話や。


と言うてたように、一般の問い合わせに対して、役所の人間が明確に答えることはないという。

はぐらかされることが多いと。

せやから、表立っての苦情に対しては取り合って貰えないと考えてあきらめる人もいてたと。

しかし、県が『住居を取るか、二者択一を迫る誓約書』の存在を知り、ペットを飼っている住民に書かせているという事実が分かったことで、一部の住民の間では『チク(密告)れば何とかなる』ということが囁(ささや)かはじめ、それが横行するようになったようやと、オオカワが知らせてきた。

オオカワは、そういうのが嫌いやから相手にはせんが、ペットを飼うことを快く思っていない住民同士の会話に、よくその話題が出ているのやと言う。

現在、オオカワの住む県営住宅ではペットを飼っている者は息を潜めていると。

以前のメルマガで話した、オオカワとトラブった、シーズー犬を飼っていた住民のスギウチという老人も、最近では散歩にすら、その犬を連れ出すこともなく、室内に閉じこもったままのようやと。

そんな状況で名乗り出てくる。あるいは署名に協力するだろうと期待するのは難しいのやないかと思う。

あるとすれば、よほど切羽詰まった一部の人だけやろうと。

モリ女史らの運動が、もっとメジャーな存在になり、そこに相談、もしくは駆け込めば、何とかなるということが広く認知され、確かな保障があるということが分かれば別やがな。

そうでなければ、その署名に参加する、相談するということは住民たちにとっては諸刃の剣になるわけや。

今の状況やと迷った末に、「止めておこう」と考える人の方が多いと思う。

お上に楯突くには、楯突けるだけの力があって始めて、人は頼ってくる。

そう認識すれば、『肝心の県営住宅のペット飼育者からの協力、署名共に乏しいです』という現状も理解できるのやないかな。

ただ、今回の問題は、何も県営住宅の住民だけの問題にする必要はない。

県の姿勢を質す資格は全県民にあるわけやさかい、その県が強要しとるという誓約書を止めさせるための署名は県民すべてから募ればええことや。

その理由、大袈裟に言えば「錦の御旗」はいくらでもある。

そのペットをやむなく処分して殺すことになるのは動物愛護精神に反するというのもそうやし、保健所で薬殺するための費用も税金で支払われるというのもそうや。

つまり、好むと好まざるとに関わらず、すべての人が、その行き場のないペットたちの命を奪うことに荷担しとることになるわけや。

そんなバカな話はない。ないが、それが現実としてある。

また、ペットの命を助けたくてやむを得ず遺棄することで、その住民たちに対して動物愛護法違反などの犯罪を助長するだけでなく、そのペットが野生化して人に迷惑をかけるというのも、県民全体の被害、負担になる可能性のあることや。

実際、各地で犬猫に限らず、外来種と呼ばれる生物たちが、その遺棄によって、日本の生態系そのものが壊れかけるまでになっていて、現在もその問題がより深刻化しつつあるのが現状や。

当然やが、それらの問題を処理するのにも多額の税金が投入されることになる。

極端なことを言えば、県の姿勢は、その傾向に拍車をかけようとしとるわけや。

そのことを訴えればええ。

そして、この問題についての県民の理解が深まり、その署名の数が多く集まれば、それなりの大きな力になる。

当然やが、県も、その市民団体の存在を無視できんようになる。歩み寄りも生まれるはずや。

そうなって初めて、肝心のペットを飼っている県営住宅の住民を助けられるのやないかと思う。

『三重県からのアクションはありません。未だ強硬姿勢を崩さず、誓約書を取りに回っているようです』というのは、強硬姿勢と言うより、単に役人として上からの命令変更がないと、その仕事を放棄することができんだけの話やないかな。

市民運動家の人たちは、よく『役所の姿勢が変わらない』ということを問題にしがちやが、役所の現場担当者も、そうすることで嫌われる、恨まれるという損な役回りは、できればしたくないというのが本音やと思う。

命令された仕事やから仕方なくやっているだけやと。

『確実な話ではありませんが、3ヶ月という期限は言わなくなったようです』というのは、弁護士事務所から内容証明郵便が届いたことで、その誓約書に期限の記載を強制するのは法的にも拙いと考えたからやと思う。

憲法第13条に、『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』という条文がある。

この中の『幸福追求に対する国民の権利』に照らせば、犬や猫などのペットを飼うことは、その基本的人権の一つとして認められるという解釈が成り立つ。

それからすれば、ペット飼育住民にその処分を強要する『誓約書』は違憲やということになるわけや。

もっとも、そのペットの飼育の仕方次第では、他人に対する危害、迷惑行為としての違法性を問われる可能性もあり、絶対の『権利』とまでは言えんかも知れんがな。

そのケースにもよるが、『他人に対する危害、迷惑行為としての違法性』は、多くの場合、法廷での争いになれば、『幸福追求に対する国民の権利』に勝ると考えられるさかいな。

当然やが、その被害者にも同じように『幸福追求に対する国民の権利』があるわけで、それが不法行為により犯されることになるわけやから、議論の余地すらないわな。

ただ、ペットを飼っているというだけの理由で住居の追い出しをすることは法律では認められとらんということや。

役所の人間も、その程度のことを知らんはずはないから、弁護士が介入して、その抗議文が届いた段階で、その行為を慎む、あるいは方向転換せな仕方ないと判断したのやないかな。

その点では、ある程度の成果があったという気がするがな。

『ただ、念のため昨日県に誓約書期限を確認したところ、3ヶ月と言われましたが…』というのは、そのとき電話に出た人間が、そう思い込んで言うただけのことで公式な見解やないと思う。

県の役人とはいえ、皆が皆、公式見解どおりの回答するとは限らんさかいな。

電話での急な質問やったということ、あるいは相手が大人しそうなモリ女史ということで、少し気が緩んだのやないかという気がする。

または、モリ女史をペットを飼っている住民と勘違いして、思わずいつもの本音が出たのと違うかな。

早い話が甘く見られたわけや。

それとも法律に関して、その人間が、まったくの無知やったのか。

いずれにしても、そんなところやと思う。そういう迂闊な対応をする役人は結構多い。

もっとも、そのことを公に突っ込んで指摘すると、その電話の内容そのものを否定するのは、ほぼ間違いないがな。

実際、ハカセも以前のメルマガで、


三重県の県土整備部住宅室に問い合わせたところ、「こちらでも苦慮しています」の一点張りで、モリ女史らの言う「ペットの飼育が確認された住民は、ペットを移動するか、住居を立ち退くかの二者択一の誓約書を提出するよう求めている」ということには一切触れようとせず、言及せんかったという。

その点を突っ込んでも口ごもっていただけやと。それで、ハカセは、それは公
にはできんことやと察したというがな。


と、県の人間が言うてたということを話した。

これなんかは、その電話に出た県の人間が慎重やったのか、ハカセに対して迂闊な返答ができんと考えたのかは定かやないが、少なくとも、それなりの注意を払って対応したのは間違いないと思われる。

人により、相手により、その対応が違うというのは、どの世界でも普通にあることや。

その違いがあったということやないかな。

以上のことからも、『ペットを処分するか、住居を立ち退くかの二者択一』を県営住宅の住民に強要、強制する権限は県にはないということや。

せやからこそ、その『誓約書』を出させようとしとるわけや。自発的に退去、もしくはペットを手放すよう仕向けるために。

それなら何の問題もないさかいな。

その入居者次第やが、あくまでも争うという姿勢を示せば、それを排除するためには、県はその住民に対して強制立ち退きのための裁判を起こすしかない。

実務上は可能かも知れんが、実際にはそこまでのことはできんやろうと思う。

それには、先ほど言うたように、そのペット飼育住民に、それに見合う過失があるという証拠が必要になる。

これが一般経営の集合住宅の場合なら、ペット禁止住居での不法行為違反住民に対して退去命令が出されたという最高裁の判例もあるが、公営住宅では、今のところ、それはない。

それをすれば全国的なニュースになるのは、ほぼ間違いないと思う。

場合によれば世論を巻き込んだ大きな騒ぎになる。

現在、多くの自治体ではペット飼育可能な公営団地を建設しようという動きがある。全体としては、ペット飼育容認という流れになっとるわけや。

それに完全に逆行することになる。

当然、動物愛護団体などの様々な市民団体からの突き上げも熾烈を極めるはずや。

新聞記事になるのは当然として、テレビでも連日報道されることになるかも知れん。

それにも関わらず、訴訟してまで、それを遂行しようとすると、世論の反発も大きいやろうというのは容易に想像できることや。

それに苦慮しとるからこそ、長い間、どこの自治体でも、この問題を解決できずに頭を悩ませてきたわけや。

県に、それが分からんはずはない。

『あのポスティングのチラシが県を批判しているので、かなり怒っていたと聞きました』というのは、県の誰が怒っとるのやろうか。

本当に、そういう人間が、県の担当者、責任者の中にいとるのやとしたら、文字の読めん、読解力のないアホとしか言いようがないで、ホンマ。

モリ女史らが投函したというチラシが『県を批判している』というのは、まったくの言いがかり以外のなにものでもない。

あのチラシで県についての記述は冒頭の、


今年度に入り、三重県はペット飼育調査を始めました。

現在、ペット飼養者にペットを取るか、住居を取るか、二者択一を迫る誓約書を記入させています。


という部分くらいやが、これは県の公文書という証拠に基づいた事実を記述しとるだけのことで、批判的な文書でも何でもない。

ここに、『県のこのやり方は人道的にも許し難い、非人間的な暴挙』やとか、『高齢者の慰めや楽しみ、心のより処を奪おうとする悪魔の所業』とでもあるのなら、批判と受け取れんこともないが、これはそういうのとはまったく違う。

また、モリ女史らも、純粋にその事で遺棄され、あるいは命を奪われるかも知れないペットたちを助けたいという一心でのことやさかい、県を批判しようという意識など毛頭なかったと思う。

そういう言いがかりに対しては、逆に突っ込めば、ほぼ間違いなく「私どもはそんなことを言った覚えはありません」と逃げるはずや。

気にすることはない。

ハカセが以前、モリ女史に、「こういった問題に対して詳しい専門家の方はおられるのですか」と尋ねたことがある。

「特にいない」という返事やったが、今からでもええから、そういう人の協力を仰いだ方がええ。

全国には、同じような市民運動をしとる人は、それこそ五万とおられるから、その気になって探せば、力になって貰える人は必ずどこかにいとるはずや。

その助言を参考にすれば、役所の人間の言うたことやとか、自分たちの行動に思い悩むことも少なくなると思う。

今までどおり、ハカセに相談するのもええが、やっこさんは本人も言うてたように、特別、動物愛護精神の強い男やないから、完全な味方と考えとると失望することになるかも知れん。

モリ女史らと同じ方向でモノを見る、考えるとは限らんさかいな。

まあ、過去に環境保護団体のNPO組織の支部長をしてたくらいから、市民運動の専門家やったことには間違いないので、その意味での意見、助言を聞く分にはええやろうが、それでも過度な期待はせん方がええと言うとく。

やっこさんの判断基準は、他の人間とは少し変わっていて、例え、どんなに親しい間柄であっても、あかんと思うたことは平気で、そう指摘する男やさかいな。

協調性というのがあまりない。良く言えば自分を持っている男で、悪く言えば意固地な、おっさんということになる。

早い話が、組織の中では扱いにくく、嫌われるタイプの男や。

仲間に引き入れるのはどうかとは思うが、公平な視点、相手側の立場にも十分に配慮できる男やから、距離を置いたアドバイザー程度の存在ならええのやないかと思う。

本人も、その方が気が楽やろうしな。

現在、依頼している弁護士さんの助言や協力して貰っているという県会議員さんたちのアドバイスも、それなりに有効やとは思う。

ただ、やはりどんなことをするのでも、その道の専門家は必要や。おった方がええ。

例えは悪いかも知れんが、ワシが普段からよく言うてることに「泥棒に入られたくなかったら泥棒の話を聞け」、「詐欺に遭いたくなかったら、詐欺師の言葉に耳を傾けろ」というのがあるが、そういうことやと考えてくれたらええ。

その道の専門家でないと分からんことも多いさかいな。

『近いうちに、応援していただいている県会議員さんと一緒に、賛同団体のリストを持って行きます。その時に県の状況を聞いてきます』ということやが、それについては、今、このタイミングでどうなんやろうな。

それ自体がどうこうと言うのやなく、抗議のために面接するという当の相手、野呂昭彦三重県知事に、そんな余裕があるのかなと思う。

野呂昭彦三重県知事は、現在、息子さんの事件で大変な時やさかいな。果たして、そういう話がじっくりとできるのかという気がする。

3週間ほど前の8月27日。

この問題をテーマにしたメルマガ『第116回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■公営住宅でのペット飼育の是非について』を発行した当日、『野呂三重県知事の長男逮捕 女性に覚せい剤譲渡の疑い』(注3.巻末参考ページ参照)という事件報道があったのが、それや。

正直、このニュースにはワシらも驚いた。

余談やが、なぜかはワシらにも分からんが、過去、このメルマガで話した後、それに連動、関連したタイムリーな事件や出来事がよく起きることがある。

そのことを、わざわざ知らせてくれる読者の方もおられる。

これもその一つや。

偶然にしても、よくできた話やといつも思う。

とはいえ、息子さんが犯罪絡みで逮捕されたと言うても、すでに立派な大人なんやから、いくら親である三重県知事といえども、事件に関わり合いがなければ、その責任を取る、あるいは感じる必要はないと個人的には思うが、政治家というのは、そういうことも問題にされ責められるさかいな。

県会議員さんと同行されるとのことやが、平時なら、その議員さんと一緒というのは、それなりに有効な方法やと思うが、こんなときはどうなんやろう。

その同行される議員さんが、それを責める側の人やったら、すんなりと会うて貰えるかどうかは分からんのと違うかな。

また、親として、心ここにあらずということも考えられるから、実のある話し合いができるのかなとも思う。

よけいな気の回しすぎかも知れんがな。

まあ、『その時に県の状況を聞いてきます』というのは、いろんな面で興味深いことではあるがな。楽しみにしとく。

いずれにしても、この問題は難しい事も多く、今後も長びきそうやから、何か事があれば、その都度、話すことにする。

誰にとっても、ええ結論が出ればええのやが、それはちょっと望めそうもないかな。



参考ページ

注1.第116回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■公営住宅でのペット飼育の是非について

注2.グリーンNet

注3.野呂三重県知事の長男逮捕 女性に覚せい剤譲渡の疑い


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